公益通報者保護法(平成 16(2004)年 6 月 18 日法律第 122 号) 改正案(明治学院大学「法と経営学」研究科) 2015 年 6 月 25 日 第 1 条(目的) この法律は, 〔 (O)企業コンプライアンスの推進体制の整備を促し,企業の公益を害する行 為を防止することを前提とし〕 , 〔 (K) (T)公益通報者の通報を支援すること及び〕公益通報 (O),降格,減給等,他の社員と比して差別的 をしたことを理由とする公益通報者の解雇〔 な取り扱い〕の無効〔及び不利益取り扱いの禁止,不利益取り扱いを受けた場合の通報の真 実性の推定,損害賠償額の推定,事業者がこの法律に違反して公益通報者を解雇又は不利 益取り扱いをした場合の罰則の創設〕等並びに公益通報に関し事業者及び行政機関がとる べき措置を定めることにより,公益通報者の保護を図るとともに,国民の生命,身体,財産 その他の利益の保護にかかわる法令の規定の遵守を図り,もって国民生活の安定及び社会 経済の健全な発展に資することを目的とする。 第 2 条(定義) ①この法律において「公益通報」とは,労働者(労働基準法 (昭和 22 年法律第 49 号)第 〔,役員及び退職者並びに取引先の労働者及び 9 条 に規定する労働者をいう。以下同じ。) 役員, (O)又は事業又は事務所との取引等で当該通報対象事実を知った者(以下「事業関係 者」という。 ) (O)又は事業者の不正を直接見聞きした第三者, (C)又は代理人等外部の第 三者〕が,不正の利益を得る目的,他人に損害を加える目的その他の不正の目的でなく,そ の労務提供先(次のいずれかに掲げる事業者(法人その他の団体及び事業を行う個人をいう。 以下同じ。 )をいう。以下同じ。 )又は当該労務提供先の事業に従事する場合におけるその役 員,従業員,代理人その他の者について通報対象事実が生じ,又は(O)まさに生じようとし ている生じるおそれがある旨を, 〔 (O)当該事実を公共に発信する機能を持った者又は〕当 該労務提供先若しくは当該労務提供先があらかじめ定めた者(以下「労務提供先等」とい う。 ) ,当該通報対象事実について処分(命令,取消しその他公権力の行使に当たる行為をい う。以下同じ。 )若しくは勧告等(勧告その他処分に当たらない行為をいう。以下同じ。)を する権限を有する行政機関又は(O)その者に対し当該通報対象事実を通報することがその 発生若しくはこれによる被害の拡大を防止するために必要であると認められる者(当該通 報対象事実により被害を受け又は受けるおそれがある者を含み,当該労務提供先の競争上 の地位その他正当な利益を害するおそれがある者を除く。次条第三号において同じ。)当該 通報事実を国民に対し知らせる機能を有する第三者機関等に通報することをいう。 一 当該労働者を自ら使用する事業者(次号に掲げる事業者を除く。) 1 二 当該労働者が派遣労働者(労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保 護等に関する法律 (昭和 60 年法律第 88 号。第 4 条において「労働者派遣法」という。)第 2 条第二号に規定する派遣労働者をいう。以下同じ。)である場合において,当該派遣労働 者に係る労働者派遣(同条第一号 に規定する労働者派遣をいう。第 5 条第二項において同 じ。 )の役務の提供を受ける事業者 三 前二号に掲げる事業者が他の事業者との請負契約その他の契約に基づいて事業を行 う場合において,当該労働者が当該事業に従事するときにおける当該他の事業者 ②この法律において「公益通報者」とは,公益通報をした労働者〔 (O)又は事業関係者〕を いう。 ③この法律において「通報対象事実」とは,次のいずれかの事実をいう。 一 個人の生命又は身体の保護,消費者の利益の擁護,環境の保全,公正な競争の確保そ の他の国民の生命,身体,財産その他の利益の保護にかかわる法律として別表に掲げるもの (これらの法律に基づく命令を含む。次号において同じ。)に規定する罪の犯罪行為の事実 二 別表に掲げる法律の規定に基づく処分に違反することが前号に掲げる事実となる場 合における当該処分の理由とされている事実(当該処分の理由とされている事実が同表に 掲げる法律の規定に基づく他の処分に違反し,又は勧告等に従わない事実である場合にお ける当該他の処分又は勧告等の理由とされている事実を含む。) 〔二の二 消費者基本法第 5 条 2 項等の法令上の事業者のコンプライアンスに違反する 事実若しくは事業者団体が定めたコンプライアンスに違反する事実若しくは当該組織が定 めたコンプライアンスに違反する事実又は公益通報者が組織の社会的に責任を果たしてい ないと認識する事実〕 〔 (K)二の三 政治資金規正法,公職選挙法及び税法等,その違反行為が国民生活に重大 な影響を及ぼしかねない行為〕 〔 (O) (C)二の四 故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害し たとされる事実〕 ④この法律において「行政機関」とは,次に掲げる機関をいう。 一 内閣府,宮内庁,内閣府設置法 (平成 11 年法律第 89 号)第 49 条第 1 項 若しくは 第 2 項 に規定する機関,国家行政組織法 (昭和 23 年法律第 120 号)第 3 条第 2 項に規定 する機関,法律の規定に基づき内閣の所轄の下に置かれる機関若しくはこれらに置かれる 機関又はこれらの機関の職員であって法律上独立に権限を行使することを認められた職員 二 地方公共団体の機関(議会を除く。) 2 第 3 条(解雇の無効) 公益通報者が次の各号に掲げる場合においてそれぞれ当該各号に定める公益通報をしたこ とを理由として前条第 1 項第一号に掲げる事業者が行った解雇は,無効とする。 一 通報対象事実が生じ,又は(O)まさに生じようとしている生じるおそれがあると思 料する場合〔であって,通報をした場合に,当該通報対象事実に係る証拠が隠滅され,偽造 され,又は変造されるおそれがなく,かつ,通報によって個人の生命又は身体に危害又は危 険が生じるおそれも,解雇その他不利益な扱いをも受けることがないと信じるに足りる相 当の理由がある場合(串岡説) 〕 当該労務提供先等に対する公益通報 二 通報対象事実が生じ,又は(O)まさに生じようとしている生じるおそれがあると信 ずるに足りる相当の理由がある場合〔であって,通報すれば,当該事業者に対して適切な措 置又は指導が行われる,かつ,通報者に対して,個人の生命又は身体に危害又は危険を含め て,解雇その他のあらゆる不利益な扱いを受けることがないと信じるに足りる相当な理由 がある場合(串岡説) 〕 当該通報対象事実について処分又は勧告等をする権限を有する行 政機関に対する公益通報 三 通報対象事実が生じ,又は(O)まさに生じようとしている生じるおそれがあると信 ずるに足りる相当の理由があり,かつ,次のいずれかに該当する場合 その者に対し当該通 報対象事実を通報することがその発生又はこれによる被害の拡大を防止するために必要で あると認められる者当該通報事実を国民に知らせる機能を有する第三者機関等に対する公 益通報 イ 前二号に定める公益通報をすれば解雇その他不利益な取扱いを受けると信ずるに 足りる相当の理由がある場合 ロ 第一号に定める公益通報をすれば当該通報対象事実に係る証拠が隠滅され,偽造 され,又は変造されるおそれがあると信ずるに足りる相当の理由がある場合 ハ 労務提供先から前二号に定める公益通報をしないことを正当な理由がなくて要求 された場合 ニ 書面(電子的方式,磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない 方式で作られる記録を含む。第九条において同じ。 )により第一号に定める公益通報をした 日から 20 日を経過しても,当該通報対象事実について,当該労務提供先等から調査を行う 旨の通知がない場合又は当該労務提供先等が正当な理由がなくて調査を行わない場合 ホ 個人の生命又は身体に危害が発生し,又は発生する急迫した危険があると信ずる に足りる相当の理由がある場合 3 第 4 条(労働者派遣契約の解除の無効) 第 2 条第 1 項第二号に掲げる事業者の指揮命令の下に労働する派遣労働者である公益通報 者が前条各号に定める公益通報をしたことを理由として同項第二号に掲げる事業者が行っ た労働者派遣契約(労働者派遣法第二十六条第一項に規定する労働者派遣契約をいう。)の 解除は,無効とする。 第 5 条(不利益取扱いの禁止) ①第 3 条に規定するもののほか,第 2 条第 1 項第一号に掲げる事業者は,その使用し,又は 使用していた公益通報者が第 3 条各号に定める公益通報をしたことを理由として,当該公 益通報者に対して,降格,減給その他不利益な取扱いをしてはならない。 ②前条に規定するもののほか,第 2 条第 1 項第二号に掲げる事業者は,その指揮命令の下 に労働する派遣労働者である公益通報者が第 3 条各号に定める公益通報をしたことを理由 として,当該公益通報者に対して,当該公益通報者に係る労働者派遣をする事業者に派遣労 働者の交代を求めることその他不利益な取扱いをしてはならない。 (O) (T)第 5 条の 2(不当な扱いを受けた公益通報の真実性の推定及び公益通報者に生じ る損害額の推定) ①公益通報者が前三条に該当する取り扱いを受けた場合には,公益通報者の通報事実は真 実であるものとみなし,公益通報者は虚偽の通報等のすべての責任を免れる。 (T)①公益通報者が,通報対象事実がまさに生じようとしていると思量して通報したが, その事実がなかったと判断される場合も,保護の対象とする。 ②通報のため又は後の不利益的取扱いから身を守るために事業者の内部資料を持ち出した 場合,その資料の持出行為も,保護の対象とする。 ②公益通報によって告発先に生じると推計される,または,それによって実際に告発先に生 じた損害は,もしも,告発先が公益通報を尊重し,適宜かつ適切な改善策をしていれば生じ なかった損害であるとみなす。 ③前三条に該当する不当な扱いを受けた公益通報者に生じた損害は,前項の損害額と同額 であると推定する。 (O)第 5 条の 2(公益通報者に生じた損害額の算定方法) 第 2 条の公益通報者が不当な扱いを受けたときに,その通報内容が真実と推定される場合 には,それによって生じた一切の損害を使用者が金銭で賠償する。損害賠償の算定額は,精 神的損害,不当な扱いによって公益通報者に支払われた給与と,その者が本来得られたで あろう給与の差額等である。 (S)第 5 条の 2(公益通報の真実の推定,損害額の推定) 公益通報の真偽について,通報者側と事業者の双方の意見を聞き,両者に対等な第三者によ って事実を推定する。また,通報者は事業者に対し,他の同等な労働者と同額の給与を不当 な扱いを受けた期間分請求できる。 4 (C)公益通報は国民の利益の擁護に役立つものであり,企業風土や意識改革が進んでいな い現状においては,公益通報の真実の推定及び公益通報者に生じる損害額の推定を明確に する必要がある。 第 6 条(解釈規定) ①前三〔四〕条の規定は,通報対象事実に係る通報をしたことを理由として労働者又は派遣 労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをすることを禁止する他の法令(法律及び法律 )の規定の適用を妨げるものではない。 に基づく命令をいう。第 10 条第 1 項において同じ。 ②第 3 条の規定は,労働契約法(平成 19 年法律第 128 号)第 16 条の規定の適用を妨げるも のではない。 ③前〔二〕条第 1 項の規定は,労働契約法第 14 条及び第 15 条の規定の適用を妨げるもので はない。 (T)④前条の規定は,民法の規定の適用を妨げるものではない。 第 7 条(一般職の国家公務員等に対する取扱い) 第 3 条各号に定める公益通報をしたことを理由とする一般職の国家公務員,裁判所職員臨 時措置法(昭和 26 年法律第 299 号)の適用を受ける裁判所職員,国会職員法(昭和 22 年法 律第 85 号)の適用を受ける国会職員,自衛隊法(昭和 29 年法律第 165 号)第 2 条第 5 項に 規定する隊員及び一般職の地方公務員(以下この条において「一般職の国家公務員等」とい う。 )に対する免職その他不利益な取扱いの禁止については,第 3 条から第 5 条までの規定 にかかわらず,国家公務員法(昭和 22 年法律第 120 号。裁判所職員臨時措置法において準 用する場合を含む。 ) ,国会職員法,自衛隊法及び地方公務員法(昭和 25 年法律第 261 号) の定めるところによる。この場合において,一般職の国家公務員等の任命権者その他の第 2 条第 1 項第一号に掲げる事業者は,第 3 条各号に定める公益通報をしたことを理由として 一般職の国家公務員等に対して免職その他不利益な取扱いがされることのないよう,これ らの法律の規定を適用しなければならない。 (O) (T)第 8 条(他人の正当な利益等の尊重) 第 3 条各号に定める公益通報をする労働者〔,役員及び退職者並びに取引先の労働者及び 役員〕は,他人の正当な利益又は公共の利益を害することのないよう努めなければならない。 〔ただし,第 3 条から第 6 条までの規定を考慮して,公益通報者が事業者等から不利益取 り扱いを受けた場合には,公益通報者の行為によって第三者に損害が生じたとしても,正 当行為として免責される。 〕 (O)第 8 条(他人の正当な利益等の尊重) 第 3 条各号に定める公益通報をする労働者〔又は事業者の不正を直接見聞きした第三者〕 は,他人の正当な利益又は公共の利益を害することのないよう努めなければならない。 〔た 5 だし,第 3 条から第 6 条までの規定を考慮して,公益通報者が事業者等から不利益取り扱 いを受けた場合には,公益通報者の行為によって第三者(一般消費者を除く?)に損害が生 じたとしても,正当行為として免責される。 〕 第 9 条(是正措置等の通知) 書面により公益通報者から第 3 条第一号に定める公益通報をされた事業者は,当該公益通 報に係る通報対象事実の中止その他是正のために必要と認める措置をとったときはその旨 を,当該公益通報に係る通報対象事実がないときはその旨を,当該公益通報者に対し,遅滞 なく,通知するよう努めなければならない。 第 10 条(行政機関がとるべき措置) ①公益通報者から第 3 条第二号に定める公益通報をされた行政機関は,必要な調査を行い, 当該公益通報に係る通報対象事実があると認めるときは,法令に基づく措置その他適当な 措置をとらなければならない。 ②前項の公益通報が第二条第三項第一号に掲げる犯罪行為の事実を内容とする場合におけ る当該犯罪の捜査及び公訴については,前項の規定にかかわらず,刑事訴訟法(昭和 23 年 法律第 131 号)の定めるところによる。 第 11 条(教示) 前条第 1 項の公益通報が誤って当該公益通報に係る通報対象事実について処分又は勧告等 をする権限を有しない行政機関に対してされたときは,当該行政機関は,当該公益通報者に 対し,当該公益通報に係る通報対象事実について処分又は勧告等をする権限を有する行政 機関を教示しなければならない。 (高安)第 12 条(罰則) ①事業者が第 3 条又は第 4 条に違反して,公益通報者を解雇した場合には, 〔1 億円以下〕 の罰金を科す。 6 附 則 第 1 条(施行期日) この法律は,公布の日から起算して二年を超えない範囲内において政令で定める日から施 行し,この法律の施行後にされた公益通報について適用する。 第 2 条(検討) 政府は,この法律の施行後五年を目途として,この法律の施行の状況について検討を加え, その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとする。 附 則 (平成 18 年 6 月 14 日法律第 66 号) 抄 この法律は,平成 18 年証券取引法改正法の施行の日から施行する。 附 則 (平成 19 年 12 月 5 日法律第 128 号) 抄 第 1 条(施行期日) この法律は,公布の日から起算して三月を超えない範囲内において政令で定める日から施 行する。 附 則 (平成 24 年 4 月 6 日法律第二七号) 抄 第 1 条(施行期日) この法律は,公布の日から起算して 6 月を超えない範囲内において政令で定める日から施 行する。 附 則 (平成 25 年 6 月 28 日法律第 70 号) 抄 第 1 条(施行期日) この法律は,公布の日から起算して 2 年を超えない範囲内において政令で定める日から施 行する。ただし,次条及び附則第 18 条の規定については,公布の日から施行する。 第 17 条(罰則の適用に関する経過措置) この法律の施行前にした行為に対する罰則の適用については,なお従前の例による。 第 18 条(政令への委任) この附則に規定するもののほか,この法律の施行に関し必要な経過措置は,政令で定める。 7 第 19 条(検討) 政府は,この法律の施行後 3 年を経過した場合において,この法律の施行の状況を勘案し, 必要があると認めるときは,この法律の規定について検討を加え,その結果に基づいて必要 な措置を講ずるものとする。 別表 (第二条関係) 一 刑法(明治四十年法律第四十五号) 二 食品衛生法(昭和二十二年法律第二百三十三号) 三 金融商品取引法(昭和二十三年法律第二十五号) 四 農林物資の規格化及び品質表示の適正化に関する法律(昭和二十五年法律第百七十五 号) 五 大気汚染防止法(昭和四十三年法律第九十七号) 六 廃棄物の処理及び清掃に関する法律(昭和四十五年法律第百三十七号) 七 個人情報の保護に関する法律(平成十五年法律第五十七号) 八 前各号に掲げるもののほか,個人の生命又は身体の保護,消費者の利益の擁護,環境の 保全,公正な競争の確保その他の国民の生命,身体,財産その他の利益の保護にかかわる法 律として政令で定めるもの 8
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