第7回

静止電位
1) 細胞膜とイオンチャネル
(1)細胞膜
細胞膜 = 細胞仕切りの薄い膜
基本構造: 厚さ数nmのリン脂質の二重層
所々にタンパク質が埋め込まれる
リン脂質
グリセロールに二本の脂肪酸鎖が結合
残った水酸基にリン酸基 - 親水性小分子が結合
リン脂質 = 両親媒性
疎水性の尾部
親水性の頭部
水中 •
疎水性の尾部が互いに接触
親水性の頭部を水と接触させるよう集合
= 袋状に閉じた脂質二重層を形成
脂質二重層膜
単純な拡散
→ 水分子や小型で非極性の分子は自由に通す
各種イオンや水溶性分子は通さない
細胞膜
必要な物質の細胞外への流出
→ ブロック
有害物質の細胞内への流入
逆にいえば
特別な通路が必要 = 膜輸送タンパク
運搬体タンパク
イオンチャネル
(2)イオンチャネル
脂質二重層を貫通する水で満たされた通路(チャネル)を持ち、
この通路が開いている間に特定の無機イオンが通過
特定のイオンのみを通過させるためのフィルター
通路の開閉を制御するためのゲート
開状態と閉状態をとる
イオンチャネル ion channel
漏洩チャネル
細胞内外の状態にかかわらず、ランダムに開閉を繰り返し、
開状態で特定のイオンが自由に移動
多くのチャネル = ゲートのあるチャネル
電位依存性チャネル
細胞膜をはさんでの内外にかかる電位の変化で
チャネルが開閉
2)静止電位
全ての細胞
→ 細胞膜を境に、細胞内部と細胞外液の間に電位差
= 膜電位
ニューロンが非興奮状態
細胞の外側に対し、細胞内の方が負 = 静止電位
ニューロンや骨格筋細胞 = -60から-90mV
平滑筋細胞や肝細胞 = -30から-55mV
ニューロンの興奮時
興奮部分の膜電位 → 急激、かつ一過的にプラス方向に変化
= 脱分極
閾値を越えると、+30 から 55 mV に達する活動電位が発生
細胞内記録法 intracellular recording
微小ガラス管電極 microelectrode
→ 電解質溶液を詰め
→ 細胞内に刺入
→ 細胞外に不関電極
→ 二電極間の電位差を測定
2本の電極が細胞外
→ その間に電位差なし
→ その電位をゼロと規定
微小電極の先端が細胞膜を通過
→ マイナス方向への電位差
= 静止電位
静止電位
ゼロmV
約-70mV
静止電位
ニューロンの静止電位: - 60~90mV
細胞内外の各種有機・無機イオンの分布濃度 = 著しく不均衡
細胞内K+濃度
細胞外よりも20~100倍高い
Na+濃度
細胞外が細胞内に比べ5 ~ 15倍高い
細胞内に存在するタンパク分子の多く
イオンに解離しマイナスの電荷を持つ
細胞膜
Na+よりもK+に対しての透過性がはるかに高い
(神経細胞では25倍以上)
= 選択的透過性
K+漏洩チャネル >>> Na+漏洩チャネル
(1) 細胞内のK+はその濃度勾配(化学的勾配)に従って、
細胞外に拡散しようとする
(1)
化学的勾配
(2)
(3)
(4)
電気的勾配
(2) K+ → 細胞外
= プラスの荷電を細胞外にへ持ち去る
内部の陰イオンはK+と共に細胞外へ出ていけない
→ 細胞の内側は電気的によりマイナスになる
(1)
化学的勾配
(2)
(3)
(4)
電気的勾配
(3) K+がさらに外へ向かって拡散を続ける
→ 内側のマイナスの極性の程度は一層増大する
この電気的勾配
K+を細胞内に引き留めるように働く
(1)
化学的勾配
(2)
(3)
(4)
電気的勾配
(4) これらの勾配(電気化学勾配)が釣り合い平衡状態をとる
= 平衡電位
個々のK+は細胞内・外へ動いているかもしれないが、
総和としてのK+の動きは正確に釣り合っている
(1)
化学的勾配
(2)
(3)
(4)
電気的勾配
実際のニューロンの静止電位 -60mV程度
K+の平衡電位 -75mV よりも少し脱分極側(=プラス側)
ほんの少しだが、Na+チャネルの一部が開いている
•
Na+が細胞外からある程度流入している
Na+-K+ポンプ
運搬体タンパクの一種
細胞内のNa+を細胞外へ排出し
同時に流出したK+を取り入れ
↓
細胞内外のイオン濃度を一定に保つ
ある分子の細胞外濃度が内部よりも高く
適当なチャネルか運搬体タンパクが細胞膜にあれば
→ その溶質は自然に膜を透過して細胞内に入り込む
= 受動輸送
輸送タンパクによるエネルギーの消費は起こらない
溶質を濃度勾配に逆らって移動させるには
何らかの代謝エネルギーの供給を共役的に受けながら
坂を登る方向の輸送をしなければならない
= 能動輸送
Na+ - K+ ポンプ
電気化学勾配に逆らい、Na+とK+を移動させる能動輸送
= ATPの加水分解のエネルギーを利用
(1) 細胞内のNa+
→ ポンプの細胞内に露出している部分に結合
→ ATPアーゼの活性化
(2) ATPが分解
→ ADPが解離
→ リン酸基は高エネルギー結合によりポンプに結合
= リン酸化
(3ー4) ポンプの構造が切り替わる
→ Na+が細胞外へ放出
→ 同時にK+の結合部位が外表面に露出
→
(5) 細胞外のK+が結合
→ ポンプからリン酸基が取り除かれる = 脱リン酸化
(6) ポンプは初めの構造に戻る
→ K+は細胞内に放出される
ポンプの1回転
実際には、3個のNa+が放出され、2個のK+を取り込み
= 差し引き1個の陽イオンが細胞外に排出
= 膜電位はマイナス側に保たれる
動物細胞:全ATPの30%以上がこのポンプに使われている
パスワード
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