México Newsletter

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在日メキシコ大使館刊行物
カルロス・フエンテス
さようなら、そして、ありがとう...
偉大なメキシコ人作家カルロス・
フエンテスが、5月15日、83
才で逝去した。小説家、エッセイ
スト、映画の脚本家、劇作家、コ
ラムニスト、文芸批評家と多方面
にわたり活躍した文士フエンテス
は、いわゆる「ラテンアメリカ文
学ブーム」の代表格として、フリ
オ・コルタサルやガブリエル・ガ
ルシア・マルケス、マリオ・バル
ガス・ジョサと並び立つ存在で、
最も傑出したメキシコ人作家の一
人であった。父親であるメキシコ
人 外交官ラ ファエ ル・フ エンテ
ス・ボエティヘルの息子として、
パナマで生まれ、アルゼンチンや
エクアドル、ブラジルやチリ、米
国などに在住した。法学を専攻し
てUNAM(メキシコ国立自治大学)及
びInstituto de Altos Estudios
Internacionales de Ginebra
(ジュネーブ国際高等研究学院)で
学んだ、若くして文才を発揮する
一方では、1954年から
Secretaría de Relaciones Exteriores(メキシコ政府外務省)に勤
務した。1975年には、駐フラ
ンス共和国メキシコ大使に任命され
た。フエンテスは、その生涯を通じ
て、現代の抱える大命題についての
熟考を重ねた。また、メキシコとラ
テンアメリカの民主化にコミット
し、普遍性を備えるメキシコ人で
あった。
日本語に訳された作品には(訳
注:以下は邦訳のタイトル)、『メ
ヒコの時間』『聖域』『アウラ』
『脱皮』『アルテミオ・クルスの
死』『私が愛したグリンゴ』『埋め
られた鏡』『澄みわたる大地』など
がある。
視聴覚分野で手がけた最後のプ
ロジェクトはテレビ番組『プエブ
ラ:150年前』の制作で、メキシ
コ軍が外国軍の侵略を阻んだ歴史的
戦闘を描いた。その中で、カメラに
向かって彼は問いかけた。「我々
は、Identidad(西語ではイデンティ
ダー、英語ではアイデンティティ:
「同一性」、「個性」、「独自
性」)とDiversidad(西語ではディベ
ルシダー、英語ではダイバーシ
ティ:「相違性」、「多様性」)を
如何にして調和させることができる
のか?。Diversidadはとても深いも
ので尊重されるべきであり、政治や
モラル、性や教育にもそれが存在
し、これらのすべてがメキシコの
Diversidadだが、メキシコでその合
体を達成せねばならない。メキシコ
が国家としてめざすプロジェクト
(構想)は、diversidadを備えた
identidadを持つことだ。」
パラシオ・デ・ベジャス・アル
テスの建物で挙行された慰霊式典で
は、列席した著名人、作家、知識人
刊行7年目 No.107
2012年4& 5月
気候変動一般法
2
大相撲夏場所優勝者 へのメキシコ
賞授与
3
経済
二国間貿易の増加
3
EPA合同委員会
3
サムライ債の発行
4
食肉産業展
4
バハ・メッド料理試食会
5
メキシコ製履物展示会
5
純正テキーラの販売増
6
メキシコ産アボカド
7
文化イベント・講演会
クラシック・ギター演奏会
7
カフェイリブロスで「メキシコ
の日」
アイデンティティー、バイカル
チャー、バイリンガル
ラテンアメリカの文学・芸術の
中の日本
伊豆シャボテン公園でのメキシ
コ古代文明七不思議展
ボスコ・ソディ絵画展「色見え
で」
学生グループの大使館訪問
7
8
8
9
9
10
文化のカプセル
パスと林屋と芭蕉
文化イベント掲示板
10
11
たちが故人の作品や人柄に
ついて語った。カルデロン
大統領は、その弔辞の中で
こう述べた。「亡くなった
作家へのオマージュとし
て、『その作品を読む』以
上のものは無い。CONACULTA
(文化芸術庁)総裁の回想に
よれば、『メキシコは、
(2ページに続く)
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常に、彼の仕事の中心にあった。』のである。
メキシコ人作家で政治批評家でもあったフェデ
リーコ・レジェス・エローレスの意見では、
『カルロス・フエンテスは、常に、文化と文化
の遭遇が生むパワーを信じていた。』のであ
る。」
彼の書いた最後の論説記事は、フランスに
ついて述べたもので、逝去当日の紙面に掲載さ
れた。フランス共和国の新大統領フランソワ・
オランド氏にとって初の公的活動は、フエンテ
スに対する追悼の辞を述べるコミュニケの発表
であった。「信念の人であり、規範やドグマに
反逆する人。人間が抱く簡潔で品位あるアイ
ディアをエネルギッシュに擁護する人。...
メキシコのアイデンティティを掲げる偉大なる
作家。極めて豊かで独自性を持つ文学の創造生
産を介して、その国に備わる合流点の特質をか
くも素晴らしく表現し得た作家。」
多数の文学賞で表彰を受けているが、主な
ものには、1979年のPremio Alfonso Reyes(アル
フォンソ・レジェス賞)、1977年のPremio Rómulo Gallegos(ロムロ・ガジェーゴス賞)、1987年
のPremio Cervantes(セルバンテス賞)、1944年の
Premio Príncipe de Asturias(アストゥリアス皇太子
賞)がある。2001年には、Academia Mexicana de la
Lengua(メキシコ言語アカデミー)名誉会員に選出され
た。2008年には、80才祝賀式典をCONACULTAが開催
し、世界中から150名をこえる名士が出席し、その功
績を称えた。Premio Nacional de Ciencias y Artes
(国家科学芸術賞)を2009年に受賞。2011年には、全作
品への顕彰としてPremio Fomentour de las Letrasが
授与された。同年10月、Michel de Monaigne Burdeos
3大学より名誉博士号が授与された。
今年8月には、彼が生涯に知己を得た人々の思い
出を綴る小説『Personas(人々)』が刊行される予定で
ある。2013年には、フエンテスとドイツ人哲学者フ
リードリッヒ・ニーチェが対話する内容の『Federico
en su balcón』が出版される。
カルロス・フエンテスは足跡を残した。フエンテ
スは、その作品の普遍性によって、メキシコの特質で
あるriqueza(豊かさ)とcomplejidad(混在性)、hondas
raíces(深いルーツ)を高く掲げながら、地球上の隅々
にまでメキシコの国名を浸透させ、国威を発揚した。
メキシコ連邦議会、「気候変動一般法」を可決
4 月 19 日、メ キ シ
コの下院で「気候変動
一般法」が可決された
後、当該の法的措置を
取るため連邦政府に関
係書類が送付された。
この種の法令としては
世界で二番目のもので
ある。同法には、2000
年の温室効果ガス排出
量と比較して、2020年
ま で に 30%、2050 年
までに50%の削減目標
が盛り込まれている。
また、再生可能エネルギーが
より高い競争力をもつよう、
国の電力の35%が2024年まで
に再生可能エネルギーで供給
され、化石燃料への補助金を
徐々に減らすことが明記され
ている。この目標実現を支援
す る た め、公 的、私 的、国
内、国外の資金を調達、供給
するために「気候変動基金」
が 設 立 さ れ た。ま
た、気 候 変 動 の 悪
影 響 を 緩 和 し、新
たな目標に適合さ
せる活動に州政府
や地方自治体に対
し活発な参加を促
し て い る。「気 候
変 動 一 般 法」に よ
り、グ リ ー ン 経 済
に基づく雇用の創
出、ク リ ー ン 技 術
や再生可能エネル
ギーの革新を促進
し、持続可能な発展や低炭素
化経済への移行というメキシ
コのコミットメントが確認さ
れた。
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Año 7, Núm. 106
駐日メキシコ大使、五月場所でメキシコ賞を授与
5月20日、クロド・ヘレル大使は大
相撲五月場所で優勝した旭天鵬関(モ
ンゴル出身)に賞状、並びにメキシコ
合衆国友好盾を授与した。メキシコは
1981 年、シ ウ ダ ー・デ・ロ ス・デ ポ ル
テス地区にあるフランシスコ・モンテ
ス・デ・オカ武道館で二度相撲公演を
行っており、日本相撲協会理事長以下
110名がメキシコを訪問した。同公演以
来、メキシコはメキシコ合衆国友好盾
を授与している。
2012年第一四半期での墨日貿
易、11.1%増加
メキシコのサプライヤーとして第3位
の位置を占める。日本メキシコ経済連
携協定は2005年に発効し、爾来、貿易
だけでなく、投資や技術協力を円滑化
した。発効後6年目にして、二国間貿
易は200億ドルに達した。
日本メキシコ経済連携協定(墨
日EPA)は経済活性化の手段
2012 年 の 貿 易 は 好 調 を 持 続 し て お
り、第一四半期では約52億ドルに達し、
前年同期比で11.1%の伸びを示した。メ
キシコの対日輸出は10億5900万ドルを記
録し9.3%の増加。日本の対墨輸出は前年
同期比で11.5%増加し、41億8900万ドル
に達した。日本はメキシコにとり第4番
目の貿易パートナーであり、メキシコの
第 8 番 目 の 輸 出 先 で あ る。ま た、
4月30日、ビジネス環境改善委員会
が開催された。同委員会は、両国間の
ビジネスを円滑にするための様々な要
素をを特定し、対処するため墨日EPA
により設立された協議と対話のメカニ
ズムである。同委員会は毎年、閣僚レ
ベ ル 会 合 を 初 め、両 国 の 民 間 セ ク
ター、経済、金融、農業、観光、農業
など政府当局代表者の参加による会合
を行っている。同会合では、インフラ
整備、新規ビジネスへの支援、裾野産
業 の 強 化、市 場 ア ク セ ス、エ ネ ル
ギー、二国間協力などに関する議題に
ついて討議された。
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メキシコのサムライ債発行は信頼の表れ
メキシコ政府は10億ドル
に相当する総額800億円のサ
ムライ債(円建て 外債)を
保証なしで日本市場で発行
した。この10年間で新興国
が日本市場で保証なしで発
行する円建て外債としては
最大の額である。この発行
はメキシコ経済の改善と
ファンダメンタルズの指標
への信頼の表れである。こ
うした動きはメキシコ政府
の金融調達源の多様化戦略
の一環である。メキシコの
サムライ債発行は期間3年と
5年の二本建てで、それぞれ
の 償 還 期 限 は 2015 年(利
率 : 1.29%)、お よ び 2017
年(利率:1.56%)である。
メキシコ、「食肉産業展2012」に出展
近年、メキシコの食肉製品は、その優れた味覚や衛生状態、品質、無害性などにより
徐々に需要が高まっている。この傾向を助長し、日本でのプレゼンスを保持する目的で、メ
キシコは「食肉産業展2012」にメキシコ・パビリオンを出展し、25名の関連業者が参加、18
ブランドが紹介された。
パビリオンのオープニン
グにはクロド・ヘレル 駐日
メキシコ大使が出席した。
パビリオン内にはシェフの
ため料理スペースが設けら
れ、出展業者は洗練され、
フレッシュかつ代表的なメ
キシコ料理を紹介した。
本展は1977年から開催さ
れ、今回は4月4日~6日まで
の期間に、食品・飲料品関
連業者から、商社、輸入業
者を含む卸売り・小売業者
にいたる食肉産業の約7万人
のバイヤーが参加した。
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Año 7, Núm. 106
高級料理BajaMed 試食会
BajaMedはオリジナルで革新的な料理に関する一つ
の提案であり、三つの料理の伝統の影響によりバハ・
カリフォルニアで生まれたものである。一つ目は、20
世紀の移民によりバハ・カリフォルニアに存在する東
洋的伝統。二つ目はバハ・カリフォルニア州の気候条
件により得られる食材を活用した地中海的伝統。三つ
目は、勿論、メキシコ料理の伝統。この料理は、
BajaMedの概念を創った有名なシェフ、ミゲル・アンヘ
ル・ゲレーロにより、メキシコ大使館の「エスパシ
オ・メヒカーノ」で4月19日に紹介された。ゲレーロ氏
は、料理に際し、アボカド、マグロ、貝、チレ、トウ
モロコシ、アワビ、ナツメヤシの実などのメキシコ食
材を醤油、味醂や酒などの日本の食材とミックスさせ
調理した。BajaMed料理の試食会は、バハ・カリフォル
ニア州のワインの試飲会とともに行われた。参加した
ワイン製造会社は、モンテ・サニック、サント・トマ
ス、バロン・バルチェ、サン・ラファエル、ラ・
チェットなどである。試食・試飲会のオープニングに
あたり、クロド・ヘレル駐日メキシコ大使は、メキシ
コ料理は人類の無形文化遺産であると強調した。
本イベントには、アレハンドロ・ムンガライ
バ
ハ・カリフォルニア州政府経済開発長官、アントニ
オ・ロドリゲス・エルナンデス
農畜産振興長官、ホ
セ・キニョネス
観光次官らの他、ソムリエのフディ
ス・メドゥラノ、ファビアン・マルチネス両氏が出席
した。
バラエティに富んだバハ・カリフォルニアワインや創
造性溢れるBajaMed料理はイベント参加者に驚きを与え
た。
メキシコ製履物の販売に着実な伸び
メキシコ製の履物(靴)が日本
市場での評価を獲得しつつあ
る。日本側統計によれば2011年
の輸入実績は2012年の295,532足
から倍増し、626,532足を記録し
た。4月16日と17日の両日、プロ
メヒコ(ProMéxico)とメキシコ大
使館の後援を得たメキシコ企業
五社が製品の展示会をおこな
い、トラディショナルからアバ
ンギャルドまでの幅広いデザイ
ンに加え、リサイクル紙を原料
とした新製品までを含めた、多
数のサンプルを並べた。墨日E
PAの枠組み下では、モデルに
よって、免税扱いの製品や低関税輸
入枠の対象品目もあることから、日
本企業にとっては大きなビジネス・
チャンスとなっている。
過去三年間には、メキシコ製履
物の輸出は数量では47%の伸びを
記録しており、2010年の1500万足が
2011年の1900万足、2012年の2200万
足となった。また、金額では、2009
年の2億5700万ドルから2011年の4億
8000万ドルに増大している。輸出先
の国別では、米国が82%、第二位が
日本で2.7%、第三位がカナダで2%で
ある。
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日本でテキーラ(アガベ100%)の輸入数量が増加
日本のテキーラ輸入は徐々に増加してい
る。昨年3月11日の大震災後、レストランや
バーでの消費が減少し
たが、2011年の輸入は
前年比で10%伸び、159
万リットルに達した。
日本のテキーラ輸入
は、この10年間で倍増
した。日本の市場で
は、約100種類のテキー
ラが販売されている。
PROMEXICOの日本事
務所は、Consejo Regulador de Tequila (仮
訳:テキーラ規制審議
会)及び輸入企業と協力し、試飲会や
セミナーを実施し、日本でのテキーラ文化を
普及させるための努力を行ってきた。4月25
日、 メキシコ大使館の「エスパシオ・メヒ
カーノ」で開催されたテキーラ・セミナーで
は、テキーラの種類、香
り、色合い、ボディの特徴
について説明がなされた。
また、アガベ(リュウゼツ
ラン)の生産地域が示さ
れ、テキーラ生産に関する
基準について説明がなされ
た。また、種類に応じたテ
キーラの理想的な試飲の方
法が紹介された。セミナー
には、輸入業者や飲食関連
業者など30名が参加した。
日本メキシコ経済連携協定
により、テキーラ、ワイン、ビールの輸入は
免税扱いとされている。
日本の若者に人気のメキシカン・アボカド
4月20日、主要な日本のアボカド
輸入業者および東京のファースト・
フード レストランチェーンの主催に
より、アボカドの栄養についての知
識を普及させるため、アボカド料理
の試食会が日本の若者を対象として
開催された。料理は野菜や果物の専
門家である「野菜ソムリエ」小針衣
里加氏により作られ、32名の参加者
にアボカドの栄養学的健康価値や多
様な料理法について説明した。
PROMEXICOメキシコ大使館商務部を代
表してアアロン・ベラ氏は日本市場
においてメキシコのアボカドが成功
を収めていることを強調。イベント
では13の食材とミックスして、ア
ボカド・ソースを作るコンクールも催された。
メキシコのアボカドは約25年前に日本市場に参入し、既に日本家庭の食卓に浸透している。メ
キシコは年間、約100万トン強のアボカドを生産し、その三分の一を輸出している。最も多く輸入し
ている国々の中で、日本は第二位を占め、日本に輸入されるアボカド全量の90%はメキシコ産
で、3万2633トンに達する。日本の食品・飲料産業はアボカドの使用方法を多様化し、日本料理にも
西洋料理にも使用されている。
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クラシックギター奏者カルロス・ベルナル コンサート
「バロックから現代音楽へ、そして、西洋から東洋へ:二つ
の文化の遭遇」
去る5月23日、在日メキシコ大使館エスパシオ・メ
ヒカーノにおいて、日本在住のメキシコ人 名ギタリス
ト カルロス・ベルナル氏のコン
サートが開催された。
当コンサートのプログラム
は、ベルナル氏による入念な準備
をもって構成され、そこでは墨日
両国の魅力的な楽曲やベルナル氏
の優れたギターテクニックによっ
て興味深いものに仕上がった数曲
が披露された。会場を訪れた聴衆
らは、マヌエル・M・ポンセの
「ギターソナタ第三番」、ディー
トリッヒ・ブクステフーデの「組
曲ホ短調」、ヨハン・セバスチャ
ン・バッハがリュートのために作
曲した「プレリュード、フーガとアレグロ」を楽しん
だ。プログラムで重要なパートを占めたのは、20世紀
中最も多才な日本人音楽家の一人、武満徹が作曲した
「すべては薄明の中で」であった。この作品は聴く者
を内省や自然に対する愛しさへといざ
なうものである。
演奏者であるカルロス・ベルナル氏を
紹介するにあたり、クロド・ヘレル駐
日メキシコ大使は、カルロス・ベルナ
ル 氏 が プ ロ の 奏 者 と し て20 年 間 に わ
たって活躍してきたこと、ニューヨー
クのマンハッタン音楽学校でギタリス
トのマヌエル・バルエコ氏に師事した
こと、世界15カ国で腕前を披露してき
たことに言及した。また、数年前から
は、著名なサウンドエンジニアである
ジョン・テイラー氏とイギリスの平原
に建つ教会で収録作業に専念している
ことや最新ディスクが武満徹作品を演奏したものであ
ることにも触れた。
“Café y Libros”で開催された「メキシコの日」
都内目黒駅近くに所在するラ
テン文化サロン「Café y Libros(カ
フェ・イ・リブロス)」で、4月2
0日、その創立4周年記念イベン
トとして、”Día de México(メキシ
コの日)”が開催され、およそ120
名の参加者があった。プログラム
には、講演会風にプレゼンが三つ
あり、メキシコの民族衣装ファッ
ション・ショーや音楽・料理も提
供されて盛り上がった。
最初の講演では、「メキシコ
の女性」という題目でメキシコ大
使館のEmy Kameta(亀田恵美)教
育・科学技術・国際協力担当官が
話し、メキシコの先スペイン期か
ら現代に至る様々な時代にメキシ
コ人女性がどんな活躍をしてきた
かを歴史的な観点から紹介した。
独立運動におけるホセファ・オル
ティス・ドミンゲスやメキシコ革
命でのラス・アデリータス、革命後
のフリーダ・カーロや現代のエ
レーナ・ポニアトウスカ、ロレー
ナ・オチョア、アロンドラ・デラ
パーラ、等々。
二番目の講演者は、元駐ベネ
ズエラ日本国大使の伊藤昌輝氏
で、60年代に8年間在メキシコ
大使館で勤務した折の経験談を話
し、メキシコの数千年に及ぶ偉大
な歴史と文化に対する畏敬の念を
強調した。
猪股せい子氏は、今に至るメ
キシコと日本の交流史で端緒と
なった史実、400年前にガレオ
ン船サンフランシスコ号が房総半
島御宿沖で難破したが、地元漁民
の活躍で317名のノビスパン人
が救助された出来事を紹介した
後、彼女の夫で彫刻家の故ラファ
エル・ゲレーロ氏が残した作品の
一 つ「El Abrazo(エル・ア ブ ラッ
ソ:抱擁)」が、2009年に御宿
町メキシコ記念公園で催された日
本メキシコ交流400周年記念式
典 の 際 に、設 置 披 露 さ れ た エ ピ
ソードなどを紹介した。
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アイデンティティーとバイカルチャー、バイリンガルの問
題点:コミュニティーとの対話フォーラム
4月14日、日本に在住するラテンアメリカ諸国出身の
人々が、「アイデンティティー、バイカルチャー、バイ
リンガルについての考察:日本で新しい道を開拓する」
と題したフォーラムに参加した。会場のエスペシオ・メ
ヒカーノ(大使館別館5階多目的ホール)には、大勢の
参加者がつめかけ、講師を務めた三名のメキシコ人女性
が語る話に興味深く聞き入った。イルマ・アラウスとシ
ルビア・マルティーネス、マルセーラ・ラマドリーは、
教育や心理学、異文化間コミュニケーションなどの専門
家で、日本社会へに適応化に関しての討論会形式で意見
交換をおこなった。このイベントは、大使館領事部と在
日メキシコ人協会の共催による企画で実現し、日本で所帯を持ち子供たちと暮らす父母たちや教育
関係者、日系人や留学生などが出席して、質疑応答の部分には積極的に参加した。約70名中の男性
は11名だけで、大部分は女性であった。今回のような会合は有意義であり、東京以外の都市にも、
こうしたイベントを開くスペースが必要だとの意見が述べられた。カルチャー・ショック、コミュニ
ケーションや行動規範における相違点、言語上の障壁などが家庭内でも存在し、大きな課題となっ
ている。日本でも暮らしを改善していく上で基礎となるのが自分自身のアイデンティティーであ
り、それを探りつつ、互いを認め合う方向にポジティブな発想を持ち、自発的な努力を重ねること
が重要である点で、見解の一致が見られた。
21世紀ラテンアメリカ文学と芸術の中の日本
4月12日、アラセ
リ・ティナへロ博
士(「現代ヒスパ
ニック系アメリカ
の中のオリエンタ
リズム」他著者)
による講演が行わ
れた。この講演
は、多くの作家や
芸術家によって21
世紀ラテンアメリ
カ文学や芸術の中
会に属する観察者が、東洋(オリエンタル)
を見て、それを解釈・研究・表現する際の視
点である。観察者たるアラセリ・ティナへロ
博士は、オリエンタリズムのルーペを通し、
作家や芸術家が、自らと異なるが故に他者で
ある東洋を誇張、歪曲、批判し、もしくはそ
の特徴を極めて理想化したり賞賛したりする
ときに、特別の注意を払い分析を行うのであ
る。ティナへロ博士の講演の目的は、スペイ
ン語とポルトガル語を使って俳句を表現した
ラテンアメリカの3人の作家の作品、紀行文
学、シナロアの作家、エバ・ヒルの小説の分
で表現された日本
人像を分析する内容であった。
ティナへロ博士の分析はオリエンタリズム
と い う 学 術 的 観 点 から 取 り 組 ん だ も の であ
る。この観点は、西洋(オキシデンタル)社
析、写真や絵といったビジュアルアーツの表
現 に つ い て の 分 析 で あ る。テ ィ ナ へ ロ 博 士
は、この概要について述べた後、出版された
ばかりの著書「Kokoro」に言及した。
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「メキシコ古代文明の七不思議展」
静岡県伊豆半島にある
サボテン植物園「伊豆シャ
ボテン公園」で、3月24日か
ら6月5日の期間、メキシコ
先スペイン期文化の考古学
遺物が展示された。
本展は、屋内及び野外
展示にて、考古学遺跡の環
境を再現する形で行われ
た。オルメカ文明展(2010
年~2011年)に合わせて
2010年に東京の古代オリエ
ント博物館で展示されたオ
ルメカヘッドのレプリカが
ここでも展示された。
こ の 企 画 展 の み な ら ず、
同植物園そのものがまさしく
メキシコのテーマパークと呼
びうる多くの様相を有してい
る。
ボスコ・ソーディ展 「色見えで」(京都)
4月13日から5月26日まで、タカ・イシイギャラリー京都
で、メキシコ人アーティスト、ボスコ・ソーディの作品
展 示 会 が 開 催 さ れ た。メ キ シ コ、バ ル セロ ナ、ニ ュ ー
ヨークに暮らし、芸術活動を続けてきたソーディは、有
機素材を使用し、オリジナリティ溢れる6点の作品を作
り上げた。本展示会のタイトルは和歌より発想を得たも
のである。
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中学生が大使館を訪問
についての紹介を非常に興味
深げに聞き入っていた。
また、5月11日には、メキ
シコの歴史、墨日関係やメキ
シコの現況について学びたい
と訪問要請をしていた山形県
の中学生が当大使館を訪れ
4月25日、新潟県新発田市
の中学生が、メキシコ大使館
を訪れた。今回の訪問で、自
分たちで作成した資料を使い
新発田市に関する発表をした
中学生たちは、大使館側が
行ったメキシコの歴史と現在
た。大使館員は、レクチャー
の最後に、中学生らに対し、
将来観光でも留学でもよいの
でぜひメキシコを訪れてほし
いと語った。
文化のカプセル
人と文学作品の出会い:オクタビオ・パスと林屋永吉、そ
して松尾芭蕉
メキシコと日本が織りなした
文学上の関係に見られる最も
情熱的なコラボレーションの
ひとつが、オクタビオ・パス
と林屋永吉の共訳「Sendas de
Oku (おくのほそ道)」であ
る。
情熱的。第一には、両者
が用いた手法から。次に、オ
クタビオ・パス自身が『詩作
は翻訳不可能だ』という見解
を述べていたにもかかわら
ず、この挑戦がそれは可能で
あることを明らかにしたこと
から。その結果は、きわめて
幸運で光り輝く再解釈となっ
た。パスの才気と林屋の確実
性が、芭蕉が4世紀前に記し
た文学的イメージを現代に蘇
らせたのである。「Sendas de
Oku」を著した時に、(訳注:
芭蕉の著作全般について)パ
スはこう語っている。
『芭蕉は旅日記(紀行文)を
5作、挿絵や感想、コメント
などの書付けを残した。それ
らの旅日記は、彼の時代に流
行したジャンルを代表する作
品である。そのジャンルの作
家としても巨匠であり、俳句
を取り囲む島々のようなも
の、それが俳文である。詩篇
と散文で綴る旅が互いに補い
あって、互いに光を照らしあ
う。旅日記の最高傑作は「お
くのほそ道」だという評価で
衆目は一致している。この日
記帳には、言葉によるスピー
ディーな素描と突然現れる隠
喩(アリュージョン)-作者が
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読者と交わす知性のサイン-
詩作が省察と、ユーモアがメ
ランコリーと、逸話(アネク
ドート)と思索(コンテンプ
レーション)とがそれぞれ交じ
りあう。』
『つかまえるとっかかり
すら見せない本を読むことは
難しい。-その香気が伝説の
中に消失している場合にはな
México Newsletter
おさら難しい。-そこには、
風景の描写が連続して現れ
る。おそらくは、田園を眺め
るように、読まねばなるま
い。当初はあまり注意を払わ
ずに、丘や樹木、空や雲の切
れ端、岩など...をただぼ
んやりと見るように。急にそ
こらの石ころの前で立ち止ま
る。そこから目が離せない。
そこで一時あても無く周りの
事物と会話する。この芭蕉の
本には太陽と雤と雲、巫女た
ちや一人の少女、巡礼者た
ち、それ以外には何も現れな
い。何も通りかからない。生
と死以外には。
『春 な れ や 名 も な き 山 の
薄霞』
(訳注:「野ざらし紀行」より)
文化の掲示板
写真展「マヤ 記憶の空間 」
(名古屋6 / 6~7 / 1、東京7 / 6~7 / 19)
ハビエル・イノホサ氏撮影によるマヤ文明の写真コレクションの展示会が6月6日から7月1日までの日程
で名古屋市市政資料館にて開催される。(問い合わせ先:名古屋市市政資料館 052-953-0051)
同写真展は、7月6日から19日(月~金 10:00-17:00)までは、メキシコ大使館エスパシオ・メヒカーノ
においても開催。(問い合わせ先:メキシコ大使館 03-3581-1131)
ハビエル・イノホサが撮影した写真は、美術関連の書籍や図録など100を超える出版物に掲載されている。
また、メキシコの他海外各地で60以上の展覧会に出展し、1980年代からは個展も開催してきた。その作品
は、メキシコ国立人類学歴史学研究所(INAH)主催の第三回考古学フォトコンテスト最優秀賞をはじめ複数
の賞を受けるなど高い評価を得ている。
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México Newsletter
メキシコ映画 “Sólo con tu pareja”
6月各土曜日・セルバンテス文化センター
“Sólo con tu pareja” (邦
題:「最も危険な愛し方」)は、“Y
tu mamá también” (邦題:「天国
の口、終りの楽園。」)の監督とし
て国際的に知られるアルフォンソ・
キュアロン氏の長編映画デビュー作
品である。
この映画は、主に登場人物や彼
らを取り巻く状況の不条理さと滑稽
さをベースに、複雑に絡み合ったプ
ロットが展開するコメディーであ
MoMA
る。同映画はアリエル賞(メキシ
コ・アカデミー賞)最優秀脚本賞を
受賞している。
会場:セルバンテス文化セン
ター東京(入場無料)
上映スケジュール:
6/2 (14:30),
6/9 (17:00),
6/16 (14:30),
6/30 (17:00)
Destination: Mexico
ニューヨーク近代美術館(MoMA)主催の最も興
味深い企画のひとつであるMoMA Design Store
Destinationシリーズ。2005年から始まった同シ
リーズも今回で第10回となり、メキシコが登場し
た。
「Destination: Mexico」は 60
を超えるメキシコ人デザイナー
や企業らにとって輝かしい表現
の場である。彼らは、300を超
MoMAショップまた同オンラインショップ、更にメキ
シコ国内でのプロジェクト促進のために、フランツ
メイヤー美術館、ソウマヤ美術館、ドローレス・オ
ルメド美術館、UNAM現代美術館(MUAC)、オアハカ
現 代 美 術 館(MACO)、モ ン テ レ イ 現 代 美 術 館
(MARCO)でも販売される。
え る 候 補 者 の 中 か ら ア ー ト・
キュレーターのアナ・エレナ・
マジェット女史による何段階も
の選抜を経た後、プロジェクトに参加することと
なった。メキシコの101プロダクトは2012年4月から
7月までの期間、ニューヨークと東京(表参道)の
第12回ラテンアメリカ研究講座:国際シンポジウム「ラテン
アメリカ地域統合への挑戦」(6月29日)
京都ラテンアメリカ研究所
(IELAK)は、京都外国語大学ス
ペイン語学科、ブラジルポルト
ガル学科、国際教養学科との共
催で、同大学創立65周年と同研
究所創立35周年記念事業の一環
として第12回ラテンアメリカ研
究講座を開催する。同シンポジ
ウムでは、ラテンアメリカ現代
史並びにラテンアメリカ・カリ
ブ諸国共同体(CELAC)発足に向
けたプロセスなど同地域の統合
の流れについて講演がなされ
る。シンポジウムの詳細につい
て は、お 電 話(075-312-3388)
も し く は、メ ー ル
([email protected])に て お 問
い合わせ下さい。
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México Newsletter
写真展「メキシコ 光のモザイク」
(京都:6月29日~7月5日)
日本大使としてメキシコ在任
中、小野正昭氏は26の州を訪問
し、その風景や 伝統、日常 をカ
メ ラ に 収 め て き た。2009 年、ト
ルーカのルイス・ニシザワ美術
館にて、2010年にはタパチュラ
において40枚の写真が展示され
た。本展は、芸 術的センス に満
ち溢れたコレクションの展示で
あり、印象的なメキシコの風景
の豊かさと今日のメキシコにお
ける日常生活のイメージを伝え
るものである。今回日本での展
示は、京都外国語大学創立65周
年と京都ラテンアメリカ研究所
創立35周年記念事業の一環とし
て開催される。写真展の詳細に
つ い て は、お 電 話(075-3123388)も し く は、メ ー ル
([email protected])に て お 問
い合わせ下さい。
彫刻家 イスマエル・ロドリゲスが越後妻有アートトリエン
ナーレに参加(7月29日~9月17日)
3回目を迎える越後妻有アー
リゲスは室野集落に、「自然と文
ている。これは、魂の鏡を表す球
ト ト リ エ ン ナ ー レ が、総 面 積
化の出会う公園/室野プロジェク
体のメキシコ黒曜石を中心に配置
2
762km に及ぶ会場で、32ヵ国148
し、その周りをガーディアンの
人のアーティストが参加して行
役目を果たすチャネケ(訳注:
われる。展示される作品は、日
メキシコの精霊の一種)で囲ん
本北部に位置する新潟県の自然
だ オ ブ ジ ェ で あ る。イ ス マ エ
風景、共同体の風習、住民の日
ル・ロドリゲスは、この作品で
常生活との調和という共通の
メキシコ文化を日本の神道と共
テーマを有する野外芸術プロ
鳴させようと試みた。メキシコ
ジェクトのもと現地で創作され
の精神性についてのロドリゲス
た。草間彌生(日本)、ジャン
の解釈は最終的に、日本のこの
=ミシェル・アルベローラ(フ
地域で、メキシコに対する人々
ランス)、キ キ・ス ミ ス(ド イ ホルヘ・イスマエル・ロドリゲス・ロペス・デ・ララの の関心を引くこととなった。
作品(新潟県十日町市室野)
ツ・ア メ リ カ)ら 名 高 い ア ー
http://www.echigo-tsumari.jp/eng/
ティストも参加。メキシコ人造形
ト2012 希望の森」という作品を
作家、ホルヘ・イスマエル・ロド
設置し、同プロジェクトに係わっ