第32号 平成19年11月 - 秋田産業保健総合支援センター

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熱心な産業看護職の方々
基幹相談員の工藤康嗣先生によると、事
業場の安全衛生管理体制として衛生管理者
秋田産業保健推進センターでは、産業保
と産業看護職が連携して職務にあたってい
健、産業看護職、産業医、カウンセリング
る場合、労使の間で中立とはいっても立場
の各種研修・セミナーを開催しております。
としてはどうしても衛生管理者は事業場側、
産業看護職研修はもちろんですが、カウ
ンセリング研修も常連とも言える産業看護
です。
職の方々が熱心に受講されています。噂に
産業看護職は、労働者としては学生時代
よるとグループを結成されて任意の勉強会
の「保健室の先生」のような身近な相談相手
をされているようです。
として頼れる存在なのでしょう。
カウンセリング研修を通じてメンタルヘ
改正労働安全衛生法を踏まえた過重労働
ルスの重要性を認識されたこともあってか、
による健康障害の予防措置としての医師の
その中から存じ上げているだけで2名の方
面接指導や衛生委員会(安全衛生委員会)
が昨年度の産業カウンセラー試験に合格さ
の付議事項(議題として話し合われなけれ
れました。
ばならないこと)としての労働者の精神的
在職当時にも数名の産業看護職の方々と
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産業看護職はより労働者側になるとのこと
健康の保持増進対策(メンタルヘルスケア)
の面識はありましたが、これだけ熱心な
の樹立等、これからの労働衛生管理を推進
方々が県内に多数いらっしゃることは正直
していくためには産業看護職の役割はより
言って驚きでした。
重要になっていくものと思われます。
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衛生管理者の方々の
産業保健推進センター
活用について
残念ながら衛生管理者の方々の当センタ
く機会に受講していただきたいと思ってお
ります。
衛生管理者制度について
ーの活用は多いとは言えません。
労働安全衛生法では業種を問わず常時労
昨年度から(社)秋田県労働基準協会が実施
働者数が50人以上の事業場においては衛生
する衛生管理者受験準備講習の講師をさせ
管理者を選任しなければなりません。
ていただいております。受講生(受験生)
推計すると、県内で選任されている衛生
管理者の方は少なくとも約900人いらっし
ゃいます。
の顔ぶれとしては年齢の若い方がほとんど
です。
免許取得後は衛生管理者として選任される
現行の衛生管理者免許には有効期間が設
べく、事業場の業務命令で受講されている方、
けられていないことから、自動車運転免許
純粋に資格取得のために受講されている方、
のように更新の機会ごとに講習等により最
両方いらっしゃると思いますが、この方たち
新の知識を身につけていただくことはでき
が衛生管理者として選任された場合、果たし
ません。
て「衛生に関する措置をなし得る権限を与え
そのため、厚生労働省では「能力向上教
られ」(労働安全衛生規則第11条第2項)そ
育に関する指針」で衛生管理者の職務に従
れを行使することができるのだろうかという
事するようになった後も最近の技術革新の
素朴な疑問を抱いております。
進展等、社会経済情勢の変化に対応してい
衛生管理者制度は、昭和22年の労働基準
ただくため、一定期間(目安として5年)
法の制定時に創設されました。「当時の経緯
ごとに定期的に教育を受講することが望ま
としては、医師だけでは事業場の衛生管理
しいと定めています。
を行うことは困難であり、保健指導員のよ
単純に900人を5で割ると、年間約180人
うな者が必要であるとの考えから、諸外国
が受講対象になるはずですが、現実は、業
の産業保健婦制度とは異なる我が国独自の
務の都合等により必ずしも希望する時期に
制度として発足した」とされています。(中
受講できないでいる方も多いのではないか
央労働災害防止協会「新/衛生管理(上)第
と思われます。
1種用」より)
当センターの研修・セミナーは能力向上
当初想定されていた衛生管理者の職務と
教育に替わるものではありませんが、より
しては、ちょうど現在の衛生管理者と産業
専門性の高いテーマで担当の相談員等が講
看護職の折衷のようなものだったのかなと
師を務めておりますので、ぜひご都合のつ
想像されます。
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これからの労働衛生管理、特に前述の過
部を使用させていただいております。
重労働やメンタルヘルスの問題に対応して
また、講習を開催したいというご要望は
いくためには衛生管理者の役割はより重要
他の機関を経由して当センターへいただく
になっていくものと思われます。
場合もあり、秋田県の各保健所や秋田市保
健所、秋田県臨床心理士会、(社)日本産業カ
メンタルヘルスについて
ウンセラー協会東北支部(秋田ふれあいこま
ち会)等、行政や民間の専門機関との連携は
最近の秋田産業保健推進センターへのご
欠かせないものになっております。
相談としてはメンタルヘルスに関するもの
が増加しております。
自殺対策としてのメンタルヘルス
また、事業場が労働者や管理職を対象に
独自に講習会を開催され、講師派遣依頼等
残念なことに、秋田県は自殺率が12年
により、センターからご説明のために伺う
間連続全国一だということがニュースに取
機会も多くなってきております。
り上げられています。
講習会開催の理由としては、今回の労働
秋田県内の自殺対策としては県単独の各
安全衛生法の改正を機にというよりは、「実
種の施策はもちろんですが、行政や民間団
際に労働者の中にうつ状態等のメンタル不
体の連携で心のセーフティネット「ふきの
調の方がいるので、どう対応したらよいか」、
とうホットライン」の構築、昨年度の自殺
「メンタル不調により長期休業中の労働者が
予防「こころのネットワーク」の結成、今
復職を予定しているが、管理職や同僚とし
年度の「自死遺族支援全国キャラバン」の
てどう接したらいいか」という、より切実
全国に先駆けての開催と、いわゆる草の根
なものが多い印象があります。
の活動が活発になってきております。
実際に講師として受講者の方々に説明や
昨年度、秋田大学の公開講座「自殺予防
実習を行ってみると、職場の同僚、友人、
への積極的アプローチ」を受講いたしまし
知人等に自殺者が出ている方もあり、より
た。講義の中で当センターの基幹相談員で
身近な問題として認識されていることが伺
もある本橋豊教授(現在は秋田大学医学部長)
えます。
は、自殺対策基本法の制定に関わった経験
私が今使用しているメンタルヘルスにつ
から、総合的自殺予防対策として悩みを抱
いてのご説明資料には、秋田県医師会副会
える個人への支援のネットワークの構築に
長でもある齊藤所長からご了解をいただき、
ついて触れられ、藤里町をはじめとする市
秋田県医師会うつ病・自殺予防対策委員会
町村モデル事業を例にキーパーソンを中心
作成の「うつの人への上手な接し方」の一
に総合対策を推進する地域モデルが効果を
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上げているというお話をされました。
ような定年前の中年男性がメンタル不調に
また、公開講座のほかの講師の先生からは
より職場を退職して自宅で療養している場
「地域の取り組みに比較して職域の取り組み
合は、元職場の事業場としては当然のこと
は弱い」という率直なご指摘があり、受講者
ながら籍のない労働者のケアはできないで
の方たちも一様に頷いていらしたことに私自
しょうし、地域の方は「あの人いつも家に
身少なからずショックを受けたのでした。
いるようだけど・・・」等と不審に思われ
職域の取り組みイコール労働局・産業保
るでしょうが、情報がないために結果的に
健分野ということでしょうから、そちらに
自殺予防のネットワークに乗せることがで
身を置く者としては、秋田労働局は県と共
きないということが考えられます。
催で事業場を対象に県内6ヶ所で「メンタ
個人情報、守秘義務等の問題もあり簡単
ルヘルス講習会」を開催しています。また、
ではないと思いますが、事業場の持ってい
中央労働災害防止協会では「メンタルヘル
るメンタルヘルスケアの記録等の情報を地
ス対策支援事業」として支援専門家等が事
域の保健センターの保健師等のキーパーソ
業場を訪問し、助言・指導を行うサービス
ンに提供するといった対策がとれたらいい
事業を無料で行っています。何より産業保
のになぁと思っています。
健推進センターがカウンセリング研修等を
また、今年8月に秋田県精神保健福祉セン
行っています。等々と反論することができ
ター内に開設された「あきたいのちのケア
なかったことが心残りでした。国と県や市
センター」の担当者で私の産業カウンセラ
町村の間、地域と職域の間には目には見え
ーの先輩から最近いただいた指摘は、「事業
にくいけれども確かに壁らしきものが存在
場に在職している労働者から仕事に関連し
するのだなぁという感想を抱いた出来事で
た電話相談があった場合にケアセンター以
した。
外に、メンタル不調等の個人的な相談に乗
メンタルヘルスの課題
ってくれるカウンセラー等の相談員のいる
常設の窓口がない」というものでした。
現在、秋田産業保健推進センター、県内6
地震や台風、大雨等による河川の増水等
箇所の地域産業保健センターどちらも残念
の天災による地域住民の避難指示、避難勧
ながら労働者個人のカウンセリングに対応
告等が出た場合の避難場所として事業場が
する常設の窓口は設置しておりません。
工場や倉庫等の施設を開放する動きが全国
的に始まっております。
自殺予防対策としてもこのような取り組
ニーズがどれだけあるのかといった未知
数の部分はあるにせよ、今後取り組んでい
かなければならない課題だと思います。
みができないものでしょうか、例えば私の
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