産技研 金属表面処理系のシーズ・ 技術紹介 燃料電池用電極としてのシェル構造触媒 【提供できる技術】 燃料電池・電解などへの白金系合金微粒子触媒電極の提供 <特長> 天然ガスやメタノールなどを水蒸気改質して作られる水素には、不純物として0.5~1%程度のCO(一酸 化炭素)が含まれている。低温(100℃以下)で作動する固体高分子形燃料電池では、白金触媒がそのCO により吸着被毒されて、触媒の活性が低下するため,このような環境下でも劣化しない触媒が求められて いる。 我々は,めっき法を活用した電極触媒の創製に取り組んでいる。電析時に2段階の電位(合金の析出電 位とニッケルの溶解電位)を印加することにより、表面が白金で覆われた層構造の微粒子(径:数nm)の作 製に成功した。このよう製造した触媒は,酸素還元特性が白金に比べて優れ、耐食性も優れており,燃料 電池用の酸素還元電極としての活用が期待される。 <技術資料> 資料1 パルス電解法による白金系合金微粒子触媒の開発 資料2 パルス電解法で作製したPt系合金微粒子のCO酸化特性 資料3 ダブルポテンシャルステップ法で作製したPt系合金微粒子触媒の安定性 資料4 _電析法により構造制御した白金系合金微粒子の触媒特性 <保有技術> 特開2008-004396 燃料電池用電極触媒およびその製造方法 (特許は放棄した状態であるが,技術サポート,共同開発などの将来展開は可能である) 技術資料1 D-15 パルス電解法による白金系合金微粒子触媒の開発 機械金属部 金属表面処理系 ○西村 崇、森河 務、横井 昌幸 ○研究の背景 現在、白金系の触媒はさまざまな用途で使用されています。身近なところでは、廃水処理やVOCの除去な どに用いられ、近年では特に、燃料電池用の電極触媒などの環境・エネルギー分野で注目されています。 ところが、白金等の貴金属は資源としての埋蔵量・生産量が少なく非常に高価です。また、触媒の作製方 法も現在主流の方法では反応の制御が難しく、生産コストが高くなります。そのため、安価な製造方法を 見つけ出すこと、触媒中の白金量を出来るだけ低減することなどが重要な課題となっています。 ○パルス電解法とは? 電源 合金の析出とニッケルの溶解を行う2種類の電 位を印加することで、表面が白金リッチな微粒子 を作製することが可能となり、耐食性の優れた微 粒子を得ることが出来るようになりました。 また、電気めっきが基本であるため、 ①反応量のコントロールが容易 ②還元に電源を用いるため安価 ③浴の管理が容易 という利点があります。 従来の方法の 問題点 - + 溶液 電位 電位パルス 従来の方法は、化 学めっき法を用いて いるので、①反応の 制御が難しく、②還 元剤が必要であるた めコストがかかり、 ③浴の管理が難しい という問題点があり ます。また、作製し た微粒子は組成が均 一で、合金成分が溶 出しやすい構造と なっています。 時間 Pt PtNi PtNi Ni 担体 担体 PtNi Niの溶出を防ぐ 微粒子表面付近の Niを溶出させて、表 面をPtリッチにする PtとNiの合金を 析出させる 担体 (耐食性向上) ○触媒作製条件及び性能(燃料電池の空気極を想定) -1.00.20 Current density / mA cm -2 作製条件 溶液:ワット浴 + 塩化白金酸 析出時間:5s 溶出時間:10s 析出電位:-0.7V (vs. Ag/AgCl) 溶出電位:0V (vs. Ag/AgCl) 析出5sを1回 + 溶出10sを1回:パルス1回 -3.0 5nm 0.30 0.40 0.50 0.60 Pt PtNi -5.0 0h 24h 48h パルス 電解法 18% 16% 15% スパッタ 法 16% 9% 5% -7.0 Potential / V vs. Ag/AgCl 透過型電子顕微鏡(TEM) による観察(パルス4回) 数nmほどの微粒子の作製に成功した 酸素還元特性(回転電極法) 溶液:0.1M 硫酸水溶液(酸素飽和) 温度:30℃ 掃引速度:5mV/s 回転数:2000rpm Ptのみに比べて酸素還元能が向上した 浸漬試験 溶液:0.1M 硫酸水溶液(酸素飽和) 温度:30℃ ※数字はPtNi合金のNiの割合を示す。 分析はXPSで行った。 耐食性の優れた触媒の開発に成功した B-13 パルス電解法で作製した Pt系合金微粒子触媒のCO酸化特性 機械金属部 金属表面処理系 大阪府立大学 ○西村 井上 技術資料2 崇、横井 博史 昌幸 ○研究の背景 天然ガスやメタノールなどを水蒸気改質して作られる水素には、不純物として0.5~1%程度のCO(一酸 化炭素)が含まれます。低温(100℃以下)で作動する固体高分子形燃料電池では、白金触媒がそのCOによ り吸着被毒されて、触媒の活性が大きく落ち込んでしまいます。そのため、現在は耐CO被毒の点で優れて いるPt-Ru合金が触媒として多く使用されています。しかし、Ruは非常に高価で希少な金属なので、それに 代わる金属の探索が望まれています。Ru以外にも遷移金属との合金も耐CO被毒性を有することが報告され ていますが、耐食性に劣るなどの要因のため、まだ実用化にはいたっていません。 ○パルス電解法とは・・・ 2種類の電位(合金の析出電位とニッケルの溶解電位)を印加することで、表面が白金で覆われた微粒子 (径:数nm)を作製することに成功しました。また、析出電位や溶液中の白金の濃度を変化させることで 合金微粒子の表面組成を制御することが可能です。 溶解 パルス電解法は電気めっきが基 本であるため、 Pt ・反応量のコントロールが容易 電位 PtNi ・還元に電源を用いるため安価 担体 析出 ・浴の管理が容易 時間 という利点があります。 パルス電解法で作製した 微粒子の模式図 電位パルスの波形 ○触媒作製条件及び触媒特性 これまでの我々の研究で、パルス電解 法を用いて作製したPtNi合金微粒子は、 酸素還元特性が白金に比べて優れており、 また耐食性が優れていることを明らかに しています。 今回は、更にCO酸化特性も、白金より 優れていることが分かりました。 Pt-Ni合金微粒子の作製条件 試料 (Niの割合) No.1(0%) 析出電位 (vs. Ag/AgCl) -0.7V 溶解時間 塩化白金酸(2.5×10 M) No.2(12%) ワット浴+塩化白金酸(2.0×10 M) -2 -0.5V No.3(24%) ワット浴+塩化白金酸(2.5×10 M) 10s -3 -0.7V No.4(38%) ワット浴+塩化白金酸(1.25×10 M) 10s -0.85V 30s 溶液 -3 -3 10s 0.3 Current density [mA/cm 2 ] Pt 0.2 0.1 0 -0.4 No.1 No.2 No.3 No.4 0 Pt-Ni合金微粒子のピークは、Pt微粒子の ピークより低電位側にシフトしている。 Pt-Ni 0.4 0.8 1.2 合金化によりCOの酸化が起こりやすくなった。 つまり パルス電解法で作製したPt-Ni合金微粒子は、 耐CO特性が白金より優れている -0.1 Potential [V vs. Ag/AgCl] PtおよびPt-Ni合金微粒子のCOストリッピングボルタモグラム 技術資料3 2 PtNi Pt PtNi 10nm TEM CO -0.21 0.94V PtNi 1000 Ni Pt PtNi PtNi PtNi PtNi Ni 10 Ni:4れ Ni:7れ Ni:20れ Ni:32れ 1 技術資料4
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