レスリング競技におけるジュニア選手層と 高校部員数の関係についての

レスリング競技におけるジュニア選手層と
高校部員数の関係についての一考察
レスリング専門部
山形県立上山明新館高等学校
角
崎
朋
博
1 はじめに
レスリング競技は、いわゆるマイナー競技としてのイメージが強く、競技人口も少なく昭和 50 年代のこ
ろまでは、高校に入学してから初めてレスリングという競技を始める選手がほとんどであった。現在では
1984 年(昭和 59 年)から始まった全国少年少女レスリング選手権大会のおかげもあり、ジュニア層の充実
も進んできている。開催当初は 382 名、32 クラブと参加選手数もクラブ数もそれほど多くはなかったもの
の、現在では参加者数は 1500 名を超え、クラブ数は 236 を数えるほどに普及した。またジュニア層の強化
の成果として、1993 年には全国高校総体で初めて 1 年生王者が誕生した。
全国中学生選手権はさらに古く 1975 年に第 1 回大会が開催された。しかしながら、中体連に加盟してい
る県は茨城県と千葉県のみにとどまっており、クラブ活動として活動している中学校数は全国でわずか 26
校である。
現在、全国大会で上位入賞をしている選手のほとんどが小学校からレスリングを始めた選手である。さら
には、昨今のオリンピックで活躍した選手もジュニアの経験者であることを考えると、本県の強化の現状と
今後の課題があらわになるのではないかと思い、この研究に取り組んでみた。
山形県では、平成 4 年に開催されたべにばな国体の強化の一環として、昭和 58 年から山形市に「山形市
少年レスリング教室」が発足し、ジュニアの育成と普及に貢献している。それ以前に、レスリングに特化し
ているわけではないが、昭和 56 年に発足した「二井宿スポーツ少年団」においても、レスリングのジュニ
ア層の育成と普及に取り組み、各種大会に出場している。
本県では現在、
「山形市少年レスリング教室」
、
「二井宿スポーツ少年団」
、
「米沢レスリングクラブ」
、
「庄内
少年少女レスリングクラブ」
、
「米沢アルカディア Jr.レスリングクラブ」と5つの団体がジュニア層の育成と
強化に取り組んでいる。発足時期は異なるが、その選手たちのなかで、どの程度の人数が高校に進学してレ
スリングを継続しているか調査してみた。
また、女子レスリング競技のオリンピックにおける日本選手の活躍をみると、今後は女子レスリングの普
及も必要となることから、県内の高等学校における女子選手数の推移も併せて調べてみた。
2 研究の方法
(1)調査方法 アンケート
(2)調査対象 県内レスリング実施校 指導者
県内ジュニア選手育成 クラブ指導者
(3)調査期間 平成 26 年 7 月
(4)調査内容 平成 17 年~平成 26 年(10 年間)の選手数の推移
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3 結果と考察
(1)アンケート結果の分析および考察
① 県内の小学生選手数の推移
80
70
60
山形市少年
レスリング教室
50
40
二井宿スポーツ
少年団
30
米沢レスリング
クラブ
20
10
庄内少年少女
レスリングクラブ
0
ここ 10 年間では、平成 21 年度の 68 名をピークに 50 名前後で推移している。
平成 19 年から庄内地区に、新たに庄内少年少女レスリングクラブが発足した。クラブ数が増加したにも
かかわらず、選手数は伸びていない。小学生の活動日数は週に 2~3 回。活動状況としては、高等学校の道
場を借りて練習しているクラブが、米沢レスリングクラブ→米沢工業高校、山形市少年レスリング教室→山
形南高校で活動している。二井宿スポーツ少年団は二井宿小学校体育館で活動しているが、使用するマット
が老朽化している。庄内少年少女レスリング教室は独自の練習場を確保しているが、施設としてはマット 20
枚を敷く程度である。
② 県内の中学生選手数の推移
9
8
7
山形市少年
レスリング教室
6
5
米沢レスリング
クラブ
4
3
庄内少年少女
レスリング教室
2
1
米沢アルカディア
Jr.レスリングクラブ
0
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中学生の選手数の推移である。クラブチームでの活動もあり、小学校から継続して活動している選手たち
ではあるがごく少人数である。活動日数と活動内容は小学生と同じである。ただ、置賜地区では平成 19 年
から中学生の活動は、米沢レスリングクラブから新設された米沢アルカディア Jr.レスリングクラブに移行し、
中学生の活動日数は週 6 日と大幅に増えている。
③ 県内の高校生選手数の推移
70
60
50
鶴岡高専
40
日大山形高校
30
米沢工業高校
上山明新館高校
20
山形南高校
10
山形商業高校
0
高校生の選手数の推移である。ここ 10 年間は 50 名前後で推移している。大きな変化として、高校での部
活動にはないが、日大山形高校と鶴岡高専に入学した小学校・中学校での経験者が、クラブ活動のない高等
学校に進学してもレスリングを継続し、各種大会に出場している。活動場所は、日大山形高校の選手は山形
南高校の練習に参加し、鶴岡高専の選手は、庄内地区にレスリングの実施校がないため、庄内少年少女レス
リング教室で練習を継続している。
④ 県内高校生レスリング選手の小学校・中学校でのレスリング経験者数
12
10
8
鶴岡高専
日大山形高校
6
米沢工業高校
4
上山明新館高校
2
山形南高校
山形商業高校
0
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県内高校生レスリング選手の小学校・中学校でのレスリング経験者数の推移である。微弱ではあるが増加
傾向にある。特に、平成 19 年に発足し中学生中心に活動している米沢アルカディア Jr.レスリングクラブの
選手が米沢工業高校に進学し、レスリングを継続しているデータが見てとれる。
本県でのレスリング実施校は4校で活動場所は限られている。しかしながら、今後は日大山形高校や鶴岡
高専のように、経験者が高校の選手として活動できる環境の整備を早急に整えなければならない。
⑤ 県内女子選手数(小学生・中学生)の推移
18
16
山形市少年
レスリング教室
14
12
二井宿スポーツ
少年団
10
8
米沢レスリング
クラブ
6
4
庄内少年少女
レスリング教室
2
米沢アルカディア
Jr.レスリングクラブ
0
女子選手数は少しずつではあるが増加傾向にある。しかし、選手のほとんどは小学生で、中学生は米沢ア
ルカディア Jr.レスリングクラブに平成 21 年から平成 23 年まで 1 人選手がいただけである。小学生では体
格的にも男子に負けないが、中学では女子選手はほとんどおらず、性的にも男子との練習には抵抗がある。
⑥ 県内女子高校生レスリング選手数の推移
5
4
3
米沢工業高校
2
上山明新館高校
山形商業高校
1
0
平成20年 平成21年 平成22年 平成23年 平成24年 平成25年 平成26年
県内女子高校生レスリング選手数の推移である。グラフから見て取れるとおり、女子高校生選手はまだ未
普及の状態である。しかし、今後は女子レスリングもインターハイ種目を目指していることもあり、女子レ
スリング部の設立も視野に入れて、普及していかなければならない。
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4 まとめ
今回の調査結果から、小学生および高校生の選手数は伸び悩んでいる。しかし、高校の選手のなかでレス
リングを経験してきた選手の数は、徐々にではあるが増加傾向にある。しかも、部活動のない日大山形高校
や鶴岡高専に進学しても、競技を継続して大会に参加している選手の存在は大変喜ばしいことである。その
一方で、高校での女子レスリングの普及についてはまだまだ遅れている。
県レスリング協会と高体連レスリング専門部では、小中高の一貫指導体制の確立を最重要課題として推進
している。先に記した全国少年少女レスリング選手権大会において上位入賞を果たした選手も数多くいる。
過去には、全国中学チャンピオンも県内から誕生している。そのような選手を育成する素地は十分にあると
考えられる。今後は、平成 29 年の南東北インターハイに向けて、女子選手も含めた選手の発掘と継続した
指導を、連携して行うことが必要である。
最後に、アンケートにご協力いただいた各高等学校、クラブチームの指導者の方々に感謝を申し上げ、本
研究を終了したい。
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