欧州環境情報 - 日本産業機械工業会

情 報 報 告
ウィーン
欧州環境情報
欧州、EEA のレポートでは 2050 年の環境目標達成は困難
3 月 4 日、欧州環境庁(EEA)による 5 年ごとの評価レポートでは、欧州が、人類、水、大
気、土地を守るためにいくつかの重大目標を達成できない可能性があり、経済の回復が天
然資源への圧力を高めていることを明らかにしている。また、リサイクルとグリーンエネ
ルギーにおける大きな進歩が認められる一方で、欧州大陸は破壊行為の慣習、過剰な漁獲、
汚染を止めることに失敗してきたことも指摘している。
「 我 々 の 繁 栄 を 維 持 す る 自 然 の シ ス テ ム を 傷 つ け 続 け て い る 」 と EEA の Hans
Bruyninckx 氏は警告する。EU28 ヵ国は 2050 年までに生態学的な許容範囲内で生活する
目標を設定しているが、この目標達成からは程遠いことをレポートで述べている。予想の
ように世界経済や人口が今後数十年に増加するならば、責務は一緒に負うことになる。レ
ポートでは、「これらの発展は、我々の消費や生産パターンが依存するものについて、地
球の生態学的限界が経済成長を維持することが可能であるかどうかの疑問を大きくする」
と述べている。
欧州の生態学的フットプリント(資源を提供し、廃棄物の吸収するために必要とされる地
域)は、すでに土地面積の 2 倍であり、レポートは、「欧州は不調和な生物多様性の損失の
2020 目標を達成することが困難である」と指摘している。飲料水の質は改善された一方で、
欧州の飲料水用水資源の半分が、2015 年に“適切な生態学的状態”に対する要件を満たし
そうにない。河川や沿岸の水の 40%以上が工場からの殺生剤や肥料の浸出によって影響を
受け、工場や下水および廃水処理施設のような発生源での汚染によって 20%から 25%が影
響を受けている。EEA は、「海洋や沿岸の生物多様性は、特に懸念される分野である」と
述べ、例として、海底の損傷、汚染、侵略的な種族や酸性化などがあるという。地中海で
は、評価された生息数の 91%が 2014 年に過剰に漁獲されていた。
レポートには、EU 加盟国にアルバニア、ボスニア・ヘルツェゴビナ、アイスランド、コ
ソボ、リヒテンシュタイン、モンテネグロ、ノルウェー、セルビア、スイス、マケドニア、
トルコも含まれている。2012 年に欧州の農場の 6%未満だけが有機栽培を使用していたこ
とも明らかになった。大気汚染は大損害を人類に与え続け、2011 年には、微粒子物質によ
る呼吸疾患で 43 万人が早死にしているという。
しかし、良いニュースもあった。2004 年から 2012 年の期間に 21 ヵ国でリサイクル率が
向上したことで、消費者の廃棄物量が減少し、埋立て率の減少が 31 ヵ国中の 27 ヵ国で認
められた。国内資源の消費量は 2007 年の人口 1 人あたり 16.7 トンから 2012 年の同 13.7%
へと低下し、その理由のひとつとして、多くの国で建設量の下落が考えられている。
欧州、エネルギー同盟創設で合意
3月19日、EUは、Brusselsで首脳会議を開き、EU域内のエネルギー安全保障の強化に向
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け“エネルギー同盟(Energy Union)”の創設を進めることで合意した。ウクライナ問題を
めぐり対立するロシアに天然ガス・石油の輸入を依存する現状から脱却し、安定的で持続
的なエメルギー供給を確保することを目指す。
EU は域内のエネルギー需要の53%を輸入に依存しており、輸入額は年間で約4,000 億
ユーロにのぼる。特に、天然ガスでは中東欧の6ヵ国がロシアからの輸入に100%依存する
など、エネルギー供給の弱さが明らかになっている。欧州委員会は2月、こうした課題に対
処するため、エネルギー同盟構築に向けた戦略案を公表していた。
首脳らはエネルギーの安定供給を確保するため、電気とガスの供給網の相互接続強化な
どインフラ整備を加速させることや、現行のエネルギー法制を厳格に執行していくことを
確認し、域外のガス供給業者との購入契約をEU 法に合致させて透明性を高め、エネルギ
ー安全保障規定と両立させるよう求めた。また、省エネの推進や再生可能エネルギー技術
の開発、エネルギー生産国と通過国との間で協力強化を図っていくことなどでも合意した。
ドイツ、EU が Industry4.0 用の域内市場を議論する
3 月 5 日、“Industry4.0”は欧州の政策において重要な問題である。欧州委員会に続い
て、現在、EU 加盟国もデジタル製品に対処している。Brussels で開催された競争に関す
る委員会の席で、各加盟国の経済省や文部省の代表者らは、現在までに目に見える成果が
生まれていないとしても、“Industry4.0”に対する域内市場がどのようなものかを議論し
た。デジタル製品のための一様な域内市場は、欧州政策の条項においてドイツ機械工業連
盟(VDMA)の主要な要求事項の 1 つである。VDMA は、新しい技術への投資はより素早く
見返りが得られるので、強力な国内市場が欧州の“Industry4.0”にとって重要な要因であ
ると強く信じている。しかし、デジタル産業製品に関する国境を越えたルールがこの目標
を達成するために確立される必要がある。
VDMA の Dr. Reinhold Festge 代表は、今年 2 月に Brussels を訪問した際に、欧州委員
会の Günther Oettinger デジタル委員にこの要求を概説している。議論のための欧州評議
会の基準において欧州のデジタル化の統一された展開の欠落が、現在、注目されている。
欧州の生産業の会社の 60%がすでにデジタル化された生産による恩恵を受けているが、そ
れらの 1.7%しか完全にデジタル化されない可能性がある。さらに、各加盟国間の技術的か
つ法的な障害の緩和について、評議会も訓練と教育をより大きな目標とすることを議論し
た。改善されたインターネットの安全性や理論的な資産の最新の保護、それらすべてが
VDMA も重要であると考える問題である。また、現在の工業製品に対する標準化システム
への約束を支持している。参加者らは標準化政策ならびに標準化への中小企業の投資が果
たす重要な役割を強調し、VDMA はそれらを歓迎している。
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ドイツ、暖房用の再生可能資源の後押しに努める
3 月 11 日、ドイツ政府は、建築物やオフィスの暖房用のエネルギーに再生可能資源の使
用を試み、そして、支援するための補助金ガイドラインの変更を決定した。2014 年のドイ
ツにおいて電力使用量の約 28%を再生可能エネルギーが占めたが、暖房用はほんの 9.9%し
かなく、2020 までに 14%のシェアという目標から程遠い。
Sigmar Gabriel 経済・エネルギー相は声明文の中で、「改善されたインセンティブによ
って、我々は大幅に熱市場における再生可能エネルギーの拡大を加速させたい」と述べて
いる。変更の下、政府は総額 3 億ユーロ相当の市場インセンティブプログラムを修正し、
太陽熱だけでなく野心的な効率化の条件が含まれる。また、プログラムは暖房用の熱資源
に投資する中小企業のためのボーナスだけでなく、より大きな企業に対する助成金や融資
などを想定している。
日本の福島の災害の余波で、Angela Merkel 首相の政府は原子力と化石燃料から風力、
水力、太陽やバイオマスのような再生可能資源への転換を加速させている。2014 年 12 月、
政府は、建築物の近代化や断熱性の改善によって 2,500 万トンから 3,000 万トンの二酸化
炭素(CO2)排出量低減が見込まれる国家効率化計画を含めて、2020 年までに 7,800 万トン
の排出量を低減させる措置を発表している。
ドイツ、政府が WEEE 返却の権利拡大のための法案を採択
3 月 12 日、ドイツ連邦政府は、遅ればせながら、EU の「廃電気・電子機器指令(2012/19/EU)」
(WEEE 指令)をドイツ国内法に反映させた連邦環境省(BMUB)の法案を採択した。法案は、
WEEE の収集を 2019 年までに 65%に引き上げ、より多くの価値のある二次原料をリサイ
クルし、環境的に優しい方法で残さを処分することを意図している。この「ElektroG」の
最終改正のために、とりわけ、大きな製品の WEEE の収集義務がある。また、法律の適用
範囲には、太陽光(PV)モジュールも含まれている。
法案で提案された重要な改正点は以下のとおり。
・消費者に対して WEEE 返却の手助けをするため、大規模な流通業者(例、電気・電子機
器の販売面積が 400 平方メートル(m2)以上ある店舗)は、一般消費者が同様の新しい製
品を購入した場合、消費者から WEEE を引き取る必要がある。外寸が 25cm を超える
WEEE は、新しい製品の購入なしで大規模流通業者に返却することができる。また、
法律の義務は E-コマースにも適用される。400m2 の販売面積の代わりに、保管および
輸送面積を考慮して条件が計算される。
・法律の適用範囲は、2018 年 8 月 15 にまで明らかに除外されている WEEE を除く、す
べての WEEE にまで拡大されている。移行期間中は、附属書に記載された WEEE に
適用される。提案された改正案によって、一般家庭で使用された太陽光(PV)モジュー
ルおよび照明装置が附属書 1 にある WEEE の適用リストに含まれることになる。
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・廃棄物管理の対象は、第 1 節の高い資源効率を目的に補われる「ElektroG」適用され
ている。
・2016 年までに、最低収集率は 45%になる。それは 2013 年までに 65%まで引き上げて
いる。計算は過去 3 年間に収集された WEEE の平均重量にもとづき行われる。
・特に、途上国への不正輸出を防止するために、
「ElektroG」は輸出に対する最低要件を
設定している「WEEE 指令」をそのまま反映させている。
ドイツ、エネルギー企業が再生可能エネルギーへの転換を加速させる
3 月 12 日、ドイツのエネルギー企業最大手である E.ON 社は、化石燃料による事業を利
益の無いものにしたとしてドイツ政府を非難している。E.ON 社は、再生可能エネルギーお
よび来年のエネルギー効率の高い製品に向けた予定された重点の転換の前に、再生可能エ
ネルギーに費やす金額を増加している。先日、同社は 2014 年の決算が化石燃料施設の価格
減少によって 31 億ユーロの損失であったことを報告した。2013 年は 21 億 4,000 万ユーロ
の利益を得た。今回は E.ON 社にとって、VEBA 社と VIAG 社の合併による 2000 年に設
立されて以来、最大の損失である。同社は、化石燃料施設の状況が良くなかったことから、
2014 年の損失については予測していた。2014 年 12 月に E.ON 社は、再生可能エネルギー、
エネルギー効率化とエネルギーの配給事業に注力することを公表した。今回の決定は、
E.ON 社が再生可能エネルギーと化石燃料の両方に注力しようとした数年後に行われたも
のであり、現在、同社は 50 ギガワット(GW)の化石燃料による発電施設を管理している。
12 月に、今後数年間でより大きな成長の可能性があるとして再生可能エネルギーとエネル
ギー効率化部門を見ていると述べている。E.ON 社は、ガス発電施設の利益を損なわせる原
因として再生可能エネルギーに対する補助金のようなドイツ政府の決定に不平を述べた。
また、ドイツのエネルギー大手の RWE 社は、2014 年に 10%の損失があったことを報告し
た。2013 年、E.ON 社は化石燃料事業の収益が 56%悪化した一方で、再生可能エネルギー
部門は 6%の増加であった。また、同社はユーロの価値の下落と継続的な低金利政策につい
ても非難している。
英国、欧州委員会が発電所の排出量を超えているために法的手続きを取る
3 月 26 日、欧州委員会は、Wales の Aberthaw 石炭火力発電施設からの排出量の削減が
見られないために裁判所に英国を照会した。同発電所からの窒素酸化物(NOx)排出量が、許
容範囲を超えていることが認められた。
大規模燃焼施設からの排出量に関する EU 法の下、2008 年 1 月までに、EU 加盟国は発
電施設からのいくつかの汚染物質の排出量を低減する必要があった。Aberthaw 発電施設は、
「大規模燃焼施設指令(2001/80/EC)」の要件を満たしていない。同指令に設定されている 1
立法メートル(m3N)あたり 500mg の NOx の法的濃度に反して、現在は同 1,200mg の排出
上限が設定された許可の下で運転している。
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欧州委員会は、2013 年 6 月に公式の警告文書でその懸念を表明し、2014 年 10 月には理
由付き意見書が送付している。欧州委員会は、英国が解決策を見つけることを目指して、
建設的にこの問題に取り組んできたことに留意している。今回の背景には、欧州委員会は、
施設を更新するための投資について英国当局からの多くの最近の指示を歓迎しているが、
現在、その施設は有毒な NOx を高濃度で排出することを許可された状態で運転を継続して
いる。そのため、欧州委員会は今回の例を裁判所に照会している。
ノルウェー、世界中で 10 億人以上が電気へのアクセスを持たない
3 月 6 日、世界中で 10 億人以上の人々が、そこに技術があるにもかかわらず、自分の家
で調理または照明のために使用する電気へのアクセスを持っていない。電気へのアクセス
への意見に関するより具体的な調査が、バングラデシュで実施された。
1 つの電球だけが家族の日常生活を照らし、家族が屋内でのさまざまな作業を行うのを可
能にしている。子供達の宿題、母親の縫製や食事の準備などを照らし、屋内照明は年配の
親族の世話を簡単にしてくれる。 “願い事リスト(wish-list)”での次の事項は、暑い日に
冷却用ファンを運転するための十分な電気、テレビ、そして、携帯電話の充電用の電気で
ある。バングラデシュの最も貧しい農村地域でさえ、携帯電話を所有する人々がいる。
ノルウェーのエネルギー関連団体は、現在、13 億人の人々が電気へアクセスする手段を
持っていないと非難している。国際エネルギー機関(IEA)によると、このような人々の多く
が南アジアやサブサハラに住んでいるという。近年の太陽光(PV)発電パネルのような再生
可能資源のコストで大幅な低下が見られるにもかかわらず、低価格で利用可能な技術が数
百万人の新しい利用者に対して、電気の利用を確保するには不十分である。ノルウェー外
務省は、直にこれを体験した。再生可能エネルギーに対する同国の開発援助への調査にお
いて、ノルウェー会計監査院の決定は極めて明確である。ノルウェーの貢献は、再生可能
エネルギーの生産を高めるにはとても小さかった。援助は、水力発電のようなよく知られ
た技術に基づく大規模で金額も約 90 億クローネ(約
10.8 億ユーロであったが、何かが不
十分であった。
Oslo 大学の Hanne Cecilie Geirbo 氏は、
「このようなプロジェクトの初期段階において、
多くの場合で技術的な解決策に注目が置かれ、修繕や維持管理は二番目となる。我々の意
見では、逆にする必要があると考えている。現地の状況に適応した修繕や維持管理が技術
的解決策の選択に影響を与える」と説明する。4 年間にわたり、同氏は Bangladesh での
Grahmeenphone(現地の通信事業者でノルウェーの Telenor と Oslo 大学が一部所有)との共
同でパイロットプロジェクトを調査してきた。プロジェクトからの経験は、現在、『Solar
powered village electrification based on mobile network infrastructure』のレポートで公
開されている。
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ポーランド、ABB が電動機の生産をポーランドとフィンランドに移設する
3 月 20 日、電機機器のコングロマットの ABB 社は、低圧電動機の生産をスウェーデン
からポーランドとフィンランドに移設することを計画している。ABB Sweden 社の最高経
営責任者である Johan Soderstrom 氏は『VLT』紙に、「中型の電動機はスウェーデンの
Vasteras の製造工場で生産を続けると」話しているが、同 CEO は今回の計画によって、ス
ウェーデンでは約 200 人が職を失う可能性があることを認めている。2016 年後半まで、工
場の移設が実施される予定はない。ABB 社は 25 年にわたりポーランドで事業を行ってお
り、現在、同国全域に事務所や工場を持ち、約 3,300 人を雇用している。
ハンガリー、VeokiaがE.ONのハンガリー発電所を買収
3月18日、ハンガリー競争当局(GVH)は、フランスのユーティリティ大手Veoliaの現地子
会社Veolia Energia Magyarország(旧Dalkia Energia)によるドイツのエネルギー大手
E.ON社のハンガリー発電所買収を承認した。両社は2014年9 月に買収契約済みで、年内の
手続き完了を予定する。買収価格は明らかにしていない。
Veoliaが買収するのはハンガリー東部にあるDebrecenとNyíregyházaの発電所で、総熱
供給能力が760 メガワット(MW)、総発電容量が160 MWに上る。両発電所は燃料である天
然ガスの価格上昇と電力価格低下で採算が取れなくなり、2013 年秋に稼働を停止した。
ただ、地域暖房サービスはボイラーなどの設備刷新をして継続しており、同事業分野を強
化したいVeoliaにとってこれが買収の大きな理由である。買収後は個人顧客数が6万7,000
世帯から約11万世帯となり、法人顧客数は数千社から数万社へと飛躍的に増大する。
スロベニア、再生可能エネルギーからの電力容量が 516MW に上昇
3 月 5 日、2014 年にスロベニア政府がグリーン(再生可能資源由来の)電力生産者のため
に提供した補助金は 1 年間に 10%上昇したことが、電力市場オペレーターの Borzen 社の
データで明らかになった。Borzen 社によると、スロベニアの再生可能エネルギーおよび高
効率な CHP(熱電併給)発電施設に対する電力向け固定価格支援制度には、3,767 発電施設が
対象となっており、合計の設備容量は 516 メガワット(MW)になるという。これら施設の総
発電量は、1 年間に 13%増の 907.1GWh となった。また、2014 年には、全 348 ヵ所の発
電施設が追加され、その中には 205 ヵ所の新規参入者がおり、それらだけの合計の設備容
量は 23.9MW になる。残りの施設は、所有者または支援の種類が変わった施設であった。
主な新規参入者は、98 ヵ所の太陽光(PV)発電施設(総設備容量 8.9MW)と 87 ヵ所の化石燃
料を使用する高効率型 CHP 施設(総設備容量 8.8MW)である。
2014 年の補助金の大半は太陽光(PV)発電所に与えられており、その額は 6,260 万ユーロ
であった。次いで、化石燃料を使用する CHP 施設には 2,770 ユーロが与えられた。バイオ
ガスと木質バイオマスの発電施設には、それぞれ、1,580 万ユーロと 1,400 万ユーロの補助
金が与えられている。
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スロベニア、欧州委員会が引火性の高い廃タイヤの清掃を怠ったとして法的措置を取る
3 月 26 日、欧州委員会は、EU の廃棄物規制の要件を遵守しなかったとして、スロベニ
アを相手に法的措置に取っている。2006 年以降から、4 万トン以上の引火性の高い廃タイ
ヤが保存されている Lovrenc na Dravskem polju にある不法埋立て地に関するものである。
2007 年と 2008 年には、この場所で大規模な火災も発生している。EU の廃棄物規制に違反
して運営する埋立て処分場は、人間の健康と環境に脅威を与える可能性がある。火災のリ
スクに加えて、高圧電力線に近接しており、スロベニア最大の飲料水源の 1 つがある地域
にあるという事実から、この場所は埋立て地には特に適していない。スロベニアは廃タイ
ヤを清掃し、問題に対処することで合意していたが、進展が非常に遅いため、欧州委員会
は司法裁判所の前にスロベニアを呼び出した。
欧州委員会は、2012 年 10 月にこの問題に関する侵害訴訟手続きを開始しており、2013
年 3 月には理由付き意見書を送付している。その後、スロベニアはその場所の清掃と修復
のための工程表を提出したが、それが認められることはなかった。
ブルガリア、2020 再生可能エネルギー目標を達成する
3 月 10 日、EU 統計局の Eurosutat が発表したデータによると、2013 年の EU の最終消
費エネルギー量に占める再生可能エネルギー量の割合が 15%に達し、2004 年の同 8.3%か
ら約 2 倍となった。最終消費エネルギー量における再生可能エネルギー量の割合は、
“Europe 2020“戦略の主要な指標の 1 つである。EU が、2020 年までに達成すべき目標は、
最終消費エネルギー量に対する再生可能エネルギー量の割合を 20%にまで引き上げること
であり、各 EU 加盟国はそのために独自の目標を持っている。各国の目標はそれぞれの再
生可能資源の潜在性や経済指標などが考慮され、開始点が異なる。エストニア、スウェー
デン、そして、ブルガリアの 3 ヵ国が、現在、必要な国家目標に到達している。さらに、
リトアニア、ルーマニア、そして、イタリアは、それぞれの目標に対して約 0.5%少ないだ
けである。
ブルガリアは、2020 年までに再生可能資源由来のエネルギーの比率を 16%に引き上げる
ことに同意していた。この目標は、2012 年にはすでに達成されており、2013 年の割合は
19%と目標を超えていた。
ブルガリア、2014 年に 10.1MW の風力発電容量が追加
3 月 20 日、毎年恒例の EurObserv'ER の風力発電バロメータによると、2014 年にブル
ガリアで設置された風力発電所の設備容量は 10.1 メガワット(MW)であった。そのレポー
トによれば、ブルガリアの風力発電所の累積設備容量は 2014 年時点で 686.8MW に達して
おり、2013 年末時の 676.7MW よりも増加している。EU 全体では、2014 年に 12.4 ギガ
ワット(GW)が設置されており、同年末時点の累積設備容量は 130.3GW を記録している。
2014 年末時点で、欧州ではドイツが累積容量 40.4GW で最も多く、同年に 6.1GW を追
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加している。第 2 位はスペインで、2014 年に 55MW を設置し、累積容量は 23GW である。
人口あたりの設備容量では、デンマークが第 1 位であり、1000 人あたり 862kW である。
EU の平均が 1000 人あたり 258kW であるのに対し、ブルガリアは同 95kW であった。
レポートによると、EU の風力発電所は 2014 年に 247 テラワット時(TWh)の電力を生産
しており、年間ベースで 5.3%増加している。2014 年末の EU の電源構成における風力発
電の割合は、消費電力で 2013 年の 7.1%から 7.5%に増加している。2014 年のブルガリア
の風力発電による電力生産は 1.304TWh で、2013 年の 1.240TWh から増加している。
ルーマニア、都市ごみのリサイクルが EU の中で最下位
3 月 4 日、欧州環境庁(EEA)が 5 年ごとに発行するレポートの最新版(『The European
environment — state and outlook 2015’ found』)では、ルーマニアが都市ごみのリサイク
ル率に関して EU 内で最低であったと報告しており、2012 年における同国の都市ごみのリ
サイクル率が 4.5%しかなかったと報告している。しかし、EU で最低であるにもかかわら
ず、今回の結果は、2004 年時の 1%から継続して向上しているが、ルーマニアは全 EU 加
盟国と同じように 2020 年までに、50%のリサイクル率を達成する必要があるが、依然とし
てその道のりは遠い。
他国はかなり上手く進んでおり、いくつかの国ではすでに 50%を超えている。レポート
では、マルタが 2 番目にリサイクル率の低い国であったが、その数値は 20%であった。ル
ーマニアの近隣国であるブルガリアとハンガリーは、それぞれ 30%のリサイクル率を達成
している。ドイツが 70%で最もリサイクル率が高く、オーストリアが 60%、ベルギーが
55%でそれに続いている。EU 圏外では、トルコ、モンテネグロ、セルビア、マケドニアが、
ルーマニアよりもさらに悪いリサイクル率であった。ルーマニアは、リサイクル率が最低
なので、都市化のペースに追い付いているように見えない。
リサイクル率は、発生した都市ごみに対してリサイクルと堆肥化されたごみの百分率で
計算されている。
ルワンダ、EU がルワンダのエネルギー効率改善のために 2,300 万ユーロを提供
3 月 22 日、EU はルワンダのエネルギー効率の改善を進めるために、2,300 万ユーロの支
援を行う。今回の支援によって、2017 年から 2018 年の会計年度までに、ルワンダの人口
の 70%以上が電気へのアクセスが可能になる。
プログラムでは、3 年間にわたり主に電力インフラの供給に加えて技術的支援が実施され
る予定で、ルワンダ・エネルギー・グループ(REG)のグリッド損失プログラムの約 45%を
カバーする。ルワンダ Claver Gatete 財務大臣とルワンダの欧州連合代表部の Michael
Ryan 大使が署名した。Gatete 大臣は、「エネルギーは、ルワンダの社会・経済的発展の
触媒作用となる基礎的分野の 1 つである。今回の支援は、技術的損失の低下への貢献と国
家のグリッドへの送電を可能にし、Kigali の供給の安全の信頼性と品質を高めるために不
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可欠なインフラの改善と建設を助けてくれるものである」と述べた。また、「我々はより
多くのエネルギーを輸入するので、インフラもまた確実に近代化する必要がある」と補足
した。プロジェクトの最終目標は、Kigali 山、Birembo と Jabana の変電所の更新に加え、
新しい Gahanga 変電所の建設である。全長 23km の 110 キロボルト(kV)送電線が変電所へ
の接続のために建設され、“Kigali-Ring”と呼ばれる系統が完成する。
Ryan 大使は、「エネルギーは EU が新しく注目する部門であり、今回の件がルワンダの
エネルギー部門の活気を生み出すための大きな一歩であると考えている」と述べた。
世界、WHO がナノ材料の免疫毒性に焦点を当てる
3 月 10 日、世界保健機関(WHO)の化学物質リスク評価ネットワークは、“ナノ材料
のばく露に関する免疫毒性のリスク評価のための原理および手法”についての環境衛
生基準についての書類を作成する。
WHO は、ナノ材料が体の他の部分より免疫系と相互作用する可能性が高いと、最
新の化学物質リスク評価に関するニュースレターの中で述べ、この分野に専門知識を
有する科学者らのグループの招集に取り組んでいる。
この指揮は、オランダのBilthovenにある国立保健環境研究所(RIVM)の免疫毒性学・
アレルギー性過敏症に関するWHO協力センターが拠点になる。検討範囲の絞り込み
(スコーピング)のための会合は、4月に予定されている。
欧州、科学委員会が医療機器内の BPA に関して意見を述べる
3 月 4 日、欧州委員会の新興および新規に特定された健康リスクに関する科学委員
会(SCENIHR)が、歯科材料で使用されるビスフェノール A(BPA)からのばく露は無視
できるほどの人間の健康のリスクしか引き起こさないことを医療機器内の BPA の安
全性についての最終見解で結論付けた。
見解書によると、経口ばく露は、最近、欧州食品安全機関(EFSA)によって導き出さ
れた 1 日に体重 1kg あたり 4 マイクログラム(μg)の一時的な耐容一日摂取量(TDI)を
はるかに下回っている。しかし、SCENIHR は、患者が長期間に渡って全身でその化
合物にばく露されるとき、BPA の有害性に対するいくつかの潜在的リスクを認めてい
る。これは、非経口経路を通して行われ、集中治療室内の新生児、長期の医療処置を
受けている乳児、そして、透析患者に影響するという。
SCENIHR は、BPA が含まれる製品の交換は代替物の効率性と毒性学的側面に対し
て考慮する必要があると補足しながら、BPA を出さない医療機器の使用を優先すべき
であると結論づけている。
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欧州、欧州委員会がエコラベル基準の有効期限を延長する
3 月 6 日、欧州委員会は、履き物の“EU エコラベル”を認定するための現行のエコラ
ベル基準の有効期限を延長する決定を発表した。さらに、この決定は以下の製品グル
ープに対して、2016 年 12 月 31 日まで現行の基準の有効期限を延長するとしている。
・キャンプ場サービス
・旅行者の宿泊施設サービス
・木製の床仕上げ材
・食器洗い機用の洗剤
・衣類洗濯用洗剤
・食器の手洗い用洗剤
・汎用クリーナーおよび衛生用洗浄剤
その一方で、欧州委員会は、屋内用・屋外用の塗料とワニスに対する EU エコラベ
ルを認定するための生態学的基準を規定し、この製品グループに対する以前の決定を
修正している。新しい基準(2014/312/EU)は 2018 年 5 月 28 日までに発効される予定。
欧州、ECHA が附属書 XV の制限に関する諮問への回答を毎月公表する
3 月 13 日、欧州化学品庁(ECHA)は、EU の「化学物質の登録、評価、認可、制限
に関する規則(REACH 規則)」の附属書 XV(一式文書)の制限に関する報告についての
6 ヵ月間の公開諮問に対する回答を公表する手段を変更する。
提出される情報の質を向上させ、回答者となる可能性のある者が、すでに提出され
たコメントを閲覧できるようにする試みとして、ECHA は、機密保持のために公表で
きない場合を除き、公開諮問中に提出されたすべての回答を毎月公表することを予定
している。これまで、回答は諮問手続きの最後に発表されているのみであった。
ただし、一式文書(ドシエ)の提出者または報告担当議員からの回答は、諮問の完了
時まで発表されないため、これについては現在の手段と同じである。
上記の変更は、3 月末のデカブロモジフェニルエーテル(decaBDE)およびパーフル
オロオクタン酸(PFOA)をめぐる諮問から開始される。
欧州、ECHA が次の評価サイクルの対象となる 134 種類の物質を承認
3 月 17 日、欧州化学品庁(ECHA)は、2015 年から 2017 年までの共同体ローリング
行動計画(CoRAP)に基づき評価を行う、134 種類の物質を承認した。
今後 3 年間に 21 の加盟国が、今回新たに選ばれた 66 種類の物質と前回の CoRAP
の更新で選ばれた 68 種類の物質について評価を行うことになる。加盟国は、今日か
ら 12 ヵ月の間に、2015 年に評価すると明記された 48 種類の物質の評価を行うこと
になっている。
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目標では、2016 年に少なくとも 48 種類の物質について、さらに、2017 年には約
38 種類の物質について評価を行うことになっている。しかし、ECHA によると、2016
年 3 月末に CoRAP が再び更新されることになっており、どちらの年についても対象
物質が変更または追加される可能性があるという。
欧州、欧州委員会がタトゥーインクに関する措置を熟考する
3 月 19 日、欧州委員会は、タトゥーインク(入れ墨用インク)の安全性を確保するた
めの可能な規制上の選択肢について評価を進めているが、そうした措置の必要性につ
いてはまだ決定されていない。
欧州委員会の法務・消費者総局の Ana-Maria Blass-Rico 委員は、「EU の複数の国
が、タトゥーインクに関して国家レベルでの規定を採択しており、一部の国は EU レ
ベルでの措置を求めている。しかし、タトゥーインクは、製品を基準とした現在の規
制のいずれにもうまく適合しないため、欧州委員会に可能な措置が不明瞭である」と、
Brussels で開催された製品に含まれる化学物質の規制に関する会議で述べた。
EU で使用されているタトゥーインクの約 70%が輸入品であり、その大部分がアメ
リカ製であると、同委員は説明した。
Blass-Rico 委員によれば、現在のところ、タトゥーインクは化粧品としても、医療
機器としても規制することはできないが、危険な成分については、EU の「化学物質
の登録、評価、認可、制限に関する規則(REACH 規則)」によって対処できる可能性
があるという。
デンマークおよびオーストリアは、この 2 年間に、発がん性、変異原性、または生
殖毒性(CMR)を有する化学物質を含むタトゥーインクの輸入・販売を国内で禁止する
措置を導入している。また、デンマーク環境保護庁(EPA)は、2014 年、インクの生産
者およびタトゥーアーティストが顧客を健康リスクにさらさないことを確保する の
に役立つようにタトゥーインクに関するガイダンス文書を発表した。
欧州委員会によると、2010 年以降、EU 諸国によって消費者に深刻な危険をもたら
すタトゥーインクに対して講じられた措置は約 100 件届けられているという。
届出に使用された規則は、2008 年に採択された「タトゥーおよび落ちないメイクの
安全性に関する要件および基準についての欧州評議会の勧告」で提示されたもので、
皮膚に注入されるインクへの使用を避けるべき化学物質の一覧を掲載している。
Blass-Rico 委員は、同勧告は拘束力を持たないため、すべての加盟国で国民が平等
に保護されているわけではないと指摘している。
欧州、ECHA がメタノールの制限提案を検討する
3 月 19 日、欧州化学品庁(ECHA)は、メタノールに対する制限提案について、9 月
18 日までに協議することを要求している。その提案では、物質は一般市民への供給の
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ために市場に売り出されてはならないとしている。
・フロントガラスの洗浄液の成分として、重量比で 3.0%以上含まれるもの
または、
・変性アルコール類への添加剤として、重量比で 3.0%以上含まれるもの
加盟国は、すべての既存物質と物質に対するより厳しい制限を維持するために許可が
必要となる。
欧州、化学物質は製品リスクの主要事項である
3 月 25 日、玩具、衣類や繊維、育児用品のような製品中の有害な化学物質の存在が、
EU 市場から撤回または停止される製品の主要理由のままであることが分かった。欧
州委員会によって提示された危険な食品以外の製品に対する“EU の緊急警告システ
ム(RAPEX)”の 2014 年版レポートによると、2014 年に加盟国当局によって通知され
た危険な製品の約 4 分の 1 が化学物質に関するリスクによるものであった。
今回の結果は、通知された危険な製品の約 5 分の 1 が化学物質に関するリスクであ
った 2013 年からわずかに増加した。2014 年に最も多く通知されたものには、靴や皮
革製品中の皮膚感作性の六価クロムの存在、玩具や育児用品におけるフタル酸可塑剤
の使用、貴金属における有害な重金属の使用であったと、欧州委員会は報告している。
その他のリスクには、感電、絞殺、怪我、窒息が含まれている。製品リスクについて、
一般的に、玩具が最も多く(28%)、衣類、繊維やファッションアイテム(23%)がそれ
に次いで通知された。危険であるとして通知された製品の 3 分の 2 が中国製であり、
EU の輸入における同国のシェアを反映させた結果であった。
欧州委員会の Vera Jourova 法務・消費者委員は、
「改正された製品の安全性と市場
監視パッケージの採択が製品中の化学物質に関する EU 規則のより厳格な実施を確実
にしてくれることを期待している」と述べた。提案された規制案は、欧州議会と閣僚
理事会で議論されている。
世界、レポートは主要災害リスクとして洪水を強調する
3 月 1 日、ベルギーの災害疫学研究センター(CRED)は、(洪水におおわれる)氾濫原、地
震帯や他のリスクの高い地域が通常の自然災害を大災害にする可能性を高めていることを
示す自然災害時の人間のコストに関するグローバルレポートを発行した。
1994 年から 2013 年の間におきた災害の大半は洪水であり、記録された出来事の 43%を
占めており、約 25 億人に影響を与えた。暴風雨は第二番目に多い災害であり、津波を含む
地震がそれに続いた。また、干ばつは同期間に発生した災害の 5%しか占めていないにもか
かわらず、10 億人以上に影響を与えている。ほとんどの災害は、主にその規模によってア
メリカと中国で記録されている。
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情報報告 ウィーン
世界、世界水の日では水供給に焦点を絞る
3 月 22 日、国連の“世界水の日”では、水管理が劇的に改善されないかぎり、2030 年まで
に世界中の 40%が水供給不足に直面するという広範なレポートや活動に焦点があてられた。
『国連世界水開発報告書(2015 年版)』の“持続可能な世界のための水”では、水の使用や管理
の方法を緊急に変化させる必要があることを強調している。農業やエネルギー部門を中心
的な問題として見ている。
報告書では、「現在から 2050 年までに、農業は大半の水を消費し、途上国では 100%で
世界的には 60%以上の食料を生産する必要があり、農業部門が水の使用効率改善のために
水の損失を低減させる必要がある」と述べている。工業製品に対する需要は高まり、2000
年から 2050 年の間で世界中の製造業の水需要が 400%増加し、その他の部門よりも水資源
に関してより多くの圧力がかかると報告書は予測している。また、報告書は、現在の過剰
に搾取されている帯水層の約 20%で、地下水の供給能力が減少することについて懸念して
いる。さらに、沿岸の帯水層を汚染することになる海面上昇についても強調している。
報告書では、“持続可能な開発目標(SDGs)”の一部となるべき世界レベルでの水サイクル
の管理を要求している。「つまり、提案された SDGs が、ガバナンス、水質、廃水管理や
自然災害の予防の問題を考慮する」と述べている。国連児童基金(UNICEF)は、飲料水への
アクセスがミレニアム開発目標(MDG)の最大の成功物語の 1 つであるにもかかわらず、い
まだに世界中で 7 億 4,800 万人が安全な飲料水へのアクセスが困難であるという事実を強
調した。UNICEF の“WASH プログラム”の責任者である Sanjay Wijesekera 氏は、「1990
年以降から飲料水へのアクセスについての話は、信じられないほどの悪条件に面しながら
も驚異的に進化しているものの 1 つであるが、やるべきことはもっとある」と述べた。水
は生命にとって不可欠であり、主に貧困層や(社会の主流から)取り残された約 7 億 5,000 万
人の人々が、現在も、この最も基本的な人権を奪われたままである。
また、パレスチナ水道局(PWA)とパレスチナ中央統計局(PCBS)が、「パレスチナは、ほ
ぼ完全にイスラエル管理下のままである水資源の不公平な配給に苦しんでいる。この不公
平さの証拠として、イスラエルの人口 1 人あたりの毎日の比率はパレスチナの 7 倍も大き
くなっている」と、共同で声明を発表した。パキスタンの講演時の話で、Indus 川委員会の
Mirza Asif Baig 氏は、「水利用と配給に関してインドが支配的影響を持つことを意味する
“Sindh-Taas 条約”の交渉時に、パキスタン側が過ちをおかした」と説明した。しかし、同
氏は、パキスタンがその過ちから学び、その権利を取り戻す必要があることを指摘した。
“世界水の日”を祝うためのクウェートでのイベントにおいて、クウェート水・電力省から
の Dr Mashaan Al-Otaibi 担当次官は、同省が飲料水の需要拡大への対応と自給達成を目指
す中でさまざまな課題に直面していると述べた。Dr Mashaan Al-Otaibi 担当次官は、同国
の淡水化施設が 1 日あたり 5 億 3,000 万ガロン(同約 200 万 m3)であるが、今後 7 年間で 1
日あたり 9 億ガロン(同約 340 万 m3)に生産能力を引き上げる計画があることを明らかにし、
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情報報告 ウィーン
それには、工事中の“Az-Zour North プロジェクト”や Doha や Khiran の新しい施設が含ま
れている。
欧州、水枠組み指令と洪水指令に関する進捗レポートが発行される
3 月 17 日、欧州委員会は、欧州の水政策が動的な水部門の創出を支えてきた EU の「水
枠組み指令(2000/60/EC)」と「洪水指令(2007/60/EC)」の実施状況に関する 2 つのレポー
トを発行した。そして、持続可能性と環境目標を達成するためのより優れた政策の実施が
成長のために必要であると警告している。
欧州委員会の環境・海事・漁業担当の Karmenu Vella 委員は、「EU において、良質な
水の確保に着実に貢献してきた強固な法律が施行されていることは幸運であるが、私は自
己満足している余地はない。発行された政策文書やレポートでは、EU 加盟国が、汚染、過
度の抽出と河川の変化に対処しながら人々、自然と環境に利益をもたらす「水枠組み指令」
と「洪水指令」を実施するための行動の維持および強化を必要としていることを示してい
る。このために、EU の資金融資の機会が最大限に活用されるべきである」と述べた。
【洪水指令】
EU 域内における洪水のリスク・悪影響を削減することを目的とした洪水リスク管理指
令が、11 月 26 日に施行された。この指令は、国境を越えた洪水リスク管理を要求するも
ので、透明性、市民参加を増すという重要な約束も盛り込まれている。EU 加盟国におい
ては、洪水のリスクのある流域とそれに関連する沿岸域を特定し、洪水リスクマップお
よびかかる地域の管理計画を策定することが求められる。
ドイツ、2014 年の水と廃水のエンジニアリングは成功と評価
3 月 19 日、ドイツの水処理、廃水および汚泥処理のための部品やシステムの製造業者は、
2014 年の市場状況が難しいものであったにもかかわらず、輸出の面で 0.5%の若干の増加を
記録したことが、ドイツ機械工業連盟(VDMA)によって明らかにされた。
ロシアへの輸出は大幅に減少(マイナス 35%)にもかかわらず、水と廃水に関する技術を持
つドイツのサプライヤーは、高い輸出レベルを維持した。2013 年の 9 億 4,500 万ユーロと
比べて、2014 年の輸出取引高は 9 億 5,000 万ユーロに上昇した。世界で最も強い輸出市場
のランキングでは、中国が 9 億 50 万ユーロ(プラス 30.4%)でリードし、フランスが 6 億 9,800
万ユーロ(プラス 13.1%)、ロシアが6億 9.500 万ユーロで続いている。EU28 ヵ国は、依然
として、ドイツの水エンジニアリングの製造業者にとって優先すべき輸入地域のままであ
る。これらの地域への輸出取引高は 7.6%増の 3 億 9,900 万ユーロであった。1 億 9,600 万
ユーロで、アジア市場も大きな輸出国であった(プラス 8.7%)ので、この地域は輸出の割合
で北米地域を超えている。
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英国、欧州最大の飲料水用海水電解滅菌施設に ClorTec システムが選ばれる
3 月 6 日、
欧州で最大規模の飲料水用海水電解滅菌施設である英国 Chester の Huntington
水処理場は、Severn Trent Services 社の現場型 ClorTec 次亜塩素酸発生システムを採用す
ることを決定した。総額 3,500 万ポンドの更新工事の一部として、大量の液体塩素による
リスク低減の必要性に対処する。また、今回の更新工事は英国の United Utilities 社による
36 億ポンドの投資の一部である。
本来のプロジェクト範囲では、現地で液体塩素のドラムを貯蔵するための新しい施設の
建設を要求している。しかし、プロジェクトチームは、作業員のリスクを低減しながら健
康と安全性の面でのベストプラクティスを実践し、そして、有害な液体塩素を貯蔵する必
要性を無くすような代替プロセスを明確にした。
Severn Trent Services 社は 6 台の ClorTec HCT-1500 ユニットを設置しており、1 台あ
たりの製造量は、1 日あたり塩素当量で最大 680kg。装置全体では、1 日あたり同 4,080kg
の製造能力を持つので、Huntington 水処理場の最大塩素需要量の 3,360kg は約 20 時間の
運転で製造可能となる。
スペイン、Veolia 子会社が La Cartuja にある廃水処理施設の工事を獲得
3 月 22 日、フランスの水事業会社である Veolia 社のスペイン子会社の Utedeza 社が、
100 万人の人口当量を持ち、Zaragoza とその周辺自治体にサービスする La Cartuja 廃水処
理施設で行われるエネルギーの効率化と廃液の水質改善プロジェクトに参加する。
同施設は Veolia 社の Actiflo Duo マイクロサンド(アクチサンド)沈殿プロセスを装備する
予定で、生物反応槽用のエアレーションシステムの変更により、年間に 140 万キロワット
時(kWh)のエネルギーの節約に貢献する。さらに、排出部と Ebro 川の落差を利用する水力
タービンによって、1 年間に 68 万 5,000kWh のエネルギー生産を見込んでいる。
スウェーデン、GE が世界最大の MBR 式廃水処理施設に装置を供給する
3 月 10 日、世界最大のコングロマットの GE 社は、Stockholm Vatten(水道公社)に
Henriksdal 下水処理施設に膜分離活性汚泥(MBR)装置を供給することを公表した。同処理
施設はスウェーデンの首都 Stockholm の都市下水の 3 分の 2 を処理しており、今回の更新
が完了すると、1 日あたり最大 86 万 4,000 立法メートル(m3)の廃水を処理することが可能
になる。
Stockholm の中心部に位置する Henriksdal 下水処理施設は、岩の内側にある世界最大の
処理施設の 1 つである。岩構造物に作られた 18km を超えるトンネルによって、同程度の
フットプリントで施設を拡張するには大きな課題が存在する。Stockholm Vatten は、装置
の改良と更新のために、GE 社の LEAPmbr テクノロジーを採用した。LEAPmbr の中核技
術は、全世界の 1,000 施設以上で使用されている GE 社の ZeeWeed 500 である。GE 社と
の契約には、膜ろ過のパッケージ全体の設計、供給とサービスが含まれている。これは、4
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年から 5 年間に渡り、複数の段階で完成させながら行われる。また、2015 年中に設計は完
了し、最初の出荷は 2016 年に開始されることが予定されている。
トルコ、Water Right Campaign が水不足をもたらすプロジェクトを非難する
3 月 22 日、環境団体の Water Rights Campaign の調査レポートでは、黒海と Marmara
海を結ぶイスタンブール運河(Kanal Istanbul)を含めて、都市の気候を変化させ、深刻な水
不足につながる公正発展党によって追求されているいくつかの“おかしなプロジェクト”を
非難している。そのレポートでは、運河や予定されている第三空港のようなプロジェクト
が土地利用、湿度や温度の変化の原因となり、ガスや電気の使用が新しい熱源を作りだす
ことを計画している。また、第三空港が Istanbul の飲料水源である Terkos 湖近くに影響
をおよぼす汚染物質を排出すると予測している。さらに、イスタンブール運河プロジェク
トが実施された場合、Istanbul に水を提供する Sazlidere 貯水池が破壊されるだろうと警
告している。
モロッコ、Abengoa が Agadir の施設の建設開始を発表する
3 月 9 日、スペインの環境ソリューション企業の Abengoa 社が、プロジェクトの融資契
約が締結されているモロッコ南部の Agadir にある 1 日あたり 10 万立方メートル(m3)の処
理能力を持つ限外ろ過(UF)膜と逆浸透(RO)膜による淡水化施設の建設開始について発表し
た。同社によれば、施設能力は将来的に倍増することが可能であるという。モロッコ国営
電力・水道公社(ONEE)は、官民パートナーシップとしてこのプロジェクトを進めている。
アフリカ、成長目標を達成するために水部門の資金調達の引き上げを提案する
3 月 16 日、アフリカ大陸の中長期的な成長目標において、水および廃棄物管理部門は重
要な役割を担うので、アフリカは水および廃棄物管理への投資を引き上げる必要性がある
ことを Deloitte consultancy 社の新しいレポートでは述べている。このほど発行された年次
レポートの『Deloitte African Construction Trends』では、5,000 万ドル以上のプロジェク
トを対象としており、「アフリカの急速に成長する中流階級は、持続可能な社会インフラ
に対する需要の原動力であり続け、天然資源と農業が地域の成長を刺激するだろう」と予
測している。
2014 年の建設中のインフラ・プロジェクト数が、2013 年の 322 件から 257 件に減少し
たことについては、プロジェクト数は減少しているものの、それらの合計金額は 2013 年の
2,227 億ドルから 3,258 億ドルに増加していると述べている。
Deloitte 社は、2014 年の南部アフリカで対象とした全インフラ・プロジェクトの 5%が
水部門のものであり、それには、南アフリカと隣国のレソトによって実施中のレソト高地
水輸送計画(14.5 億ドル)の第二期工事が含まれている。向こう数年間に渡り予定されている
大規模なこの拡張プロジェクトは、南アフリカの経済的ハブである Gauteng 州にレソトの
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Senqu 川からの水の迂回を伴う。第二期工事には、Mokhotlong 地区(レソト)の Polihali ダ
ムの建設と Kobong 揚水式水力発電プロジェクトが含まれている。Deloitte 社はレポートの
中で、特に、小さな自治体の上下水処理施設の補修によって補われる場合、差し迫った必
要性が必要であるため、水インフラの必要性が高まるには長い時間を要すると述べている。
西アフリカについて、同社は対象とした全プロジェクトに対し、2013 年の 5%から 2014
年は 12%にまで上昇したと報告している。水部門は、輸送、不動産、製造、電気通信を含
む新しいプロジェクトで増加した 5 つの中の 1 つであった。しかし、特に、複雑な調達手
続きを必要とする政府プロジェクトへの傾向が、アフリカ全域のインフラ・プロジェクト
の広がりを妨げていると警告している。Deloitte 社の André Pottas 氏は、「建設活動のペ
ースで期待される進展に影響を与える課題は、延々と続く計画作業と多くの場合で複雑な
メガプロジェクトに関連する調達プロセスに起因している。例えば、南アフリカ政府は今
後 3 年間で運営開始すべきインフラ計画に対して 707 億ドルを約束しているが、彼らがす
べきことを完全にしていないので、この市場は建設請負業者からの不満レベルが高まって
きているように見える。これが、戦略的計画、事前検討、実現可能性や調達段階の長期化
の大きな原因である」と説明する。
UN Water による以前の警告にもかかわらず、アフリカは経済的水不足の状況に直面し
ており、水を管理するための機関、資金、人材能力が不足している。さらに、アフリカは
直面している課題よりも前進する多くの機会を持っており、2013 年から 2014 年の 1 年間
にメガプロジェクトの建設価格が 46.2%の伸びを示している。アフリカで建設中のメガプ
ロジェクト価格に対する投資は 2014 年に 46.2%まで伸びており、2013 年の 2,220 億ドル
から 2014 年には 3,260 億ドルまで大幅に上昇しているとレポートは提示している。
インド、Suez が上下水道プロジェクトの機会を窺う
3 月 20 日、フランスの Suez Environnement 社は、インドでの数多くの上下水道プロジ
ェクトの入札に参加し、そこで、都市固形廃棄物の管理および廃棄物からのエネルギー回
収プロジェクトにおいて大きな役割を果たすことを計画していると報じられている。Suez
社は、南インドの Chennai で予定されている 1 日あたり 40 万立方メートル(m3)と 15 万
m3 の 2 つの大規模な淡水化施設ならびに事前資格者である Mumbai の廃水処理施設への入
札を予定していると言われている。
同社の最高経営責任者(CEO)の Jean-Louis Chaussade 氏は、「現在、インドは非常に小
さなシェアしか占めていないが、我々の期待はそれを大きくすることである」と、報道陣
に対して話した。
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