材質識別や定量測定が可能な エネルギー弁別型放射線ラインセンサ (X線カラースキャナ) 浜松ホトニクス株式会社/富田康弘 物質の中を透かして見ることができるX線透視は、非破壊検査において有効な手段の1つであ る。しかしながら、X線透視画像は単純なX線による物質の影絵にすぎず、物質内部の形状検 査以外に用いられることはなかった。新たに開発されたエネルギー弁別型放射線ラインセンサ (X線カラースキャナ)は、X線のもつエネルギー情報を得ることで、複数の異なるエネルギー領 域のX線画像データを同時に取得し、物質の材質識別や定量測定が可能である。 1 はじめに 2 X線カラースキャナの構造と原理 近年の X 線による透視検査では、X 線源や X 線 写真 1 に、大学や企業の研究開発向けに開発さ 画像検出器の高性能化により、高空間分解能な画 れた X 線カラースキャナ(C10413:浜松ホトニク 像を取得することができる。しかしながら、X 線 ス社製)3)の外観を示す。X 線カラースキャナは、 透視はいずれも X 線の透過強度によって物質内部 X 線を電気信号に変換する放射線検出素子と、放 の形状を画像化するものである。したがって、物 射線検出素子からの電気信号を読み出すための信 質の形状はわかっても、物質の材質を詳しく知る 号処理回路から成り、USBを介してパソコンと接 ことは困難である。 一方で、人間の目は光の強度 続され、専用のソフトウェアで制御される。 情報と同時に光の波長情報を捉えることができる 放射線検出素子には、直接変換型半導体(テルル ため、われわれは物質の形状だけでなく材質も識 別することができる。X 線においても、単に X 線 の強度情報を捉えるだけではなく X 線のもつエネ ルギー (波長) 情報を捉えることができれば、その エネルギー情報を基に物質の材質を識別し画像化 できる可能性がある。 そこでわれわれは、X 線の エネルギー情報が取得可能な次世代型放射線検出 器の開発に取り組んできた 1 、2)。 本稿では、X 線 フォトン (光子) のエネルギー弁別が可能なエネル ギー弁別型放射線ラインセンサ (以下、X線カラー スキャナ) について説明し、X線のエネルギー弁別 により期待される応用例について紹介する。 eizojoho industrial 写真 1 X 線カラースキャナ (C10413) February 2015︱41
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