"花のソコが知りたい!" vol.14 デルフィニウム編

花のそこが知りたい
デルフィニウム編
夏を青く彩る花材の代表格デルフィニウム。市場流通以来数多くの交雑・品種改良を経ていますが、特性たるボリュー
ム感あふれるフォルムを損なう事なく、しなやかかつ優雅な姿を我々にアピールしています。元々夏場中心の流通でした
が、昨今では種子系(エラータム系・いわゆるジャイアントやリトルタイプ)やシネンシス・ラクスパー・ベラドンナと共に出荷
期間が拡大しており高級花材のイメージから脱却し、求め易い花材に立ち位置を変えています。
デルフィニウム DATA
種別:キンポウゲ科デルフィニウム属
※ トリカブト等と同じ科
デルフィ ニウム
学名: Delphinium
デルフィス
ギリシア語のdelphis (イルカ)に起源する。
和名:大飛燕草(オオヒエンソウ)
生育:比較的冷涼な高地(アジアおよび南
ヨーロッパ及び北米)が生育に適して
いる。湿潤より乾燥を好みます。
花言葉:清明・慈悲等
日本の産地はドコ?
主に知られている産地として
北海道・長野・愛知・岡山・香川・愛媛・宮崎
などがあげられます。
先述のとおり涼しい高地の原産である為、産地も高冷地であるところが目立ちます。但し、愛知等の一部の産地では平野
部の生産になりますが、施設栽培及び高い技術により高品質のデルフィニウムを生産・出荷しています。
さて、シネンシス系・ラクスパー系など魅力的な品種だらけですが・・・
今回のそこ知りは、エラータム系に注目していきたいと思います!
エラータム系
ジャイアントタイプ
非常に高生な種。花幹も太く少々ワイルドなイメージ。
草丈も 1m~2m以上のものまであり、まさにジャイアントの名に相応しい種であるといえます。サマースカイ・ギネバー・キ
ングアーサーといった薄青から濃青の大花の品種、ピンク色鮮やかな栄養系のプリンセスカロラインもこの系統に属します。
最近では従来の大型種と比してしなやかで花揃いが良いだけでなく、生育にばらつきの少ないF1種のキャンドル・オーロ
ラといったタイプがあり現状の出荷品種の多数を占めます。
ジャイアントタイプの代表種
ホワイトキャンドル
ライラックキャンドル
リトルタイプ
かつてのマジックフォンテンに代表される。高さや大きさはやや控えめな矮性種です。
オーロララベンダー
育成上の特性
デルフィニウム圃場の様子
花芽分化は20℃前後の気候と長日処理(※1)により促されます。従ってわが国における理想的な播種は、高温多湿な
夏以降が望ましいとされています。
但し、注意すべきは気温の低下及び日照時間の短縮といった影響を受けロゼット(※2)が発生し易くなり、抽台(※3)しな
くなるという点です。
栽培法については無加温及び電照栽培等品種や地域特性に則って行なわれているのが現状です。
※1
Q:長日処理って?
A:日中以外の時間帯に電照等をもちいる事に
より光の当たる時間を延ばすといった開花
調整を目的とした処理の事です。
※2
Q:ロゼットとは?
A:右の写真の様に、葉が茎の周囲に輪状につく状態をいいます。
ロゼットを生業とした植物は別ですが、デルフィニウムや
リシアンサスはロゼット化すると花が咲きません。
エラータム系はデルフィニウムの中でもロゼット化し易い品目です。
※3
Q:抽台って?
花芽をつけた茎が伸長していく事です。別名とう立ちとも呼ばれます。菜類など結実する
ものに関して、実や根の成長を阻害する為その作用を抑えねばなりませんが、花きの大
半は開花の為にこの抽台を維持・促進させる必要があります。
ロゼットを防ぐには

気温に関しては20℃前後を維持したうえで、長日処理をまめに施すと良いとされます。

ロゼットが見られた場合、そのまま生育してしまわぬよう低温下に長時間さらすという逆療法もある様です。

ロゼットは症状をそのまま放置する事により奇形等の障害を発症し、商品価値の低下あるいは最悪の場合喪
失に繋がる為に充分な管理を必要とします。
デルフィニウム作柄の一例
1
開花期
2
3
4
5
6
7
暖地
高冷地
8
9
10
11
12
施肥
種蒔き
ディスプレイ・アレンジの主役を張れるエラータム系、汎用性に富むシネンシス系や可憐さが売りのラクスパー等、バラエ
ティーに富んだ品種構成のデルフィニウム。青を基調とした色彩で茹だる暑さの夏に一服の清涼感を与えてくれています。
冒頭で夏の花といいましたが日本特有の高温多湿はこの花の持ち味を損なう為、日差しの強い場所や西日を避ける等、
管理に注意を伴います。とはいうもののアレンジ等でなくてはならない花材とあらためて感じました。
今回、紹介は出来ませんでしたがシネンシス・ラクスパー等も含めあらゆるステージを涼感たっぷりに彩り、使い手を満足
させるデルフィニウム。是非お使いになってみては如何でしょうか?
(株)大田花き
品質カイゼン室