「労働基準法のポイント」補助レジュメ - 山梨労働局

平成 27 年 3 月 25 日
山梨労働局監督課
改正労働法セミナー・「労働基準法のポイント」補助レジュメ
1
有期労働契約の締結、更新及び雇い止めに関する基準
有期労働契約が 3 回以上更新されているか、1 年を超えて継続して雇用
↓
契約更新せず、「雇止め」とする場合には、少なくとも契約の期間が満了する日の
30 日前までに、その労働者に「雇止めの予告」が必要
※1 年契約の場合、2 回目の更新前には予告が必要。
3 回以上更新の場合、1 ヶ月を 3 回更新しても 30 日前の予告が必要。
労基法 15 条及び上記基準には以下の注意事項が記載されている。
① 契約締結の際、契約満了時に更新の有無、更新する場合にはその判断基準をは
っきり伝えること。
【更新の有無の例】
・自動的に更新する、更新する場合がある、契約更新しない
【判断基準の例】
・契約期間満了時の業務量、労働者の能力、経営状況により判断
② 契約更新をしない場合、30 日以上前の予告を行うこと。
③ 契約更新をしない理由の証明書を渡すこと。
④ 契約更新をする場合、契約の実態や労働者の希望に応じ、期間を出来るだけ長
くなるよう努めること。
※②~④については、あらかじめ契約更新しない旨の明示がある場合を除く。
※裁判例によれば、契約の形式が有期労働契約であっても、期間の定めのない契約
と実質的に異ならない状態に至っている契約である場合や、反復更新の実態、契約
締結時の経緯等から雇用継続への合理的期待が認められる場合は、解雇に関する法
理の類推適用等がされる場合がある1。
1
主な裁判例として例を挙げる。①期間の満了毎に当然更新を重ねてあたかも期間の定めのない
契約と実質的に異ならない状態で労働契約が存在していたといわなければならない場合、雇止め
の意思表示は実質において解雇の意思表示にあたり、雇止めの効力の判断に当たっては、解雇に
関する法理を類推すべきである(最高裁第一小法廷 昭和 49 年7月 22 日判決) 。②期間の定め
のない契約と実質的に異ならない関係が生じたということはできないものの、季節的労務や臨時
的労務のために雇用されたのではなく、その雇用関係はある程度の継続が期待されていたもので
あり、5 回にわたり契約が更新されていたのであるから、このような労働者を契約期間満了によ
って雇止めするに当たっては、解雇に関する法理が類推される(最高裁第一小法廷 昭和 61 年 12
月4日判決)
2 解雇
(1)解雇の方法
書面で行う。単に「来なくて良い」と伝えるだけではなく、書面で伝える必要。
(2)解雇の予告期間について
※
※
10 月 1 日
解雇予告日
10 月 2 日
解雇予告期間開始日
10 月 31 日
解雇予告期間終了日
11 月 1 日
解雇の効力発生日
翌日起算するので、解雇予告日
と解雇の効力発生日との間で
30 日間の起算が必要
解雇予告であれば少なくとも 30 日前に必要。30 日間は暦の日。
予告期間と手当の併用も可
(例)10 月 31 日に解雇する場合、例えば、10 日分の平均賃金を支払うの
であれば、10 月 11 日までに解雇予告すれば足りる。
(3)解雇の予告の適用除外について
・試みの試用期間中の者については、たとえ会社の規則で 30 日間の試用期間を定
めていたとしても、14 日を超えた時点で、解雇予告の規定が適用される。
・解雇予告の適用除外者でも、解雇制限の規定が除外されるわけではない。
※14 日間を超えて使用していない試の使用期間中の者は、業務上で負傷した時、
即時解雇できない。
3
休業手当
使用者の責めに帰すべき自由による休
業に該当するもの
使用者の責めに帰すべき事由による休業
に該当しないもの
・経営障害(材料不足、輸出不振、資金
難、不況等)による休業
・予告又は予告手当の支払い無しに解雇
した場合の予告期間中の休業
・新規学卒採用内定者の自宅待機
・天災地変等の不可抗力による休業
・代休付与命令による休業
・労働安全衛生法66条の健診結果に基
づき使用者が労働者を短縮させて働かせ
た場合
4 労働時間管理
(基本)使用者が自らが現認するか、タイムカード等客観的な記録を基礎に把握。
(例外)自己申告制
※フレックス制を採用している部門、営業、研究開発部門が代表例。
5
就業規則
就業規則は周知が必要。労働条件通知書の交付の代わりに就業規則を交付しても
良い。就業規則への「解雇事由」の記載が必要。裁判例でも就業規則に定められて
いない理由による解雇は無効とされる場合がほとんど(特に懲戒解雇)2。
どういう場合に解雇されるかをわかりやすくするため、就業規則に「退職に関す
る事項」として「解雇の事由」を記載する必要がある。
6
年次有給休暇について
年次有給休暇の取得するため、半日休暇導入のすすめ。
【半日の年次有給休暇を取得する制度についての就業規則の規定例】
<目的>
年次有給休暇の取得の促進及び平日に役所、金融機関、病院などへ行く場合等の
私用の便宜をはかるため年次有給休暇を半日単位で取得することが出来るものと
する。
<勤務時間>
午前に年次有給休暇を取得する場合=13:00~17:00 を勤務時間とする
午後に年次有給休暇を取得する場合=8:00~12:00 を勤務時間とする
<申請>
原則として申請書により前日までに申請し、上司の許可を得る
<法定年次有給休暇の繰り越し>
従来通り、法定分の年次有給休暇の残日数は、翌年に繰り越すことが出来る。繰
り越しの単位は 0.5 日とする。
<半日年次有給休暇取得日の残業>
所定労働時間を超える実労働時間に対して時間外手当を支給する。
<その他>
半日の年次有給休暇 1 回は、年次有給休暇使用日数の 0.5 日とする。
勤務時間に遅れて出勤した場合は、従来の勤務規則に準ずる。
年次有給休暇の取得の順序は、従来通り法定分を優先する。
2
判例によると、本件各休職処分は、原告に対し、就業規則に定めない種類・内容の懲戒処分
を課したことになり、各処分は、その余の点について判断するまでもなく、いずれも無効であ
ると言わざるを得ない。
7 過労死等防止対策推進法について
(1)経緯
「過労死防止基本法案」が平成 25 年 12 月4日、野党 6 党の共同提案の形で第
185 回臨時国会に提出。
自民党の雇用問題調査会には「過労死等防止に関するワーキングチーム(WT)」
が起ち上げられる。全国過労死を考える家族の会をはじめ、関係省庁・団体に対
するヒアリングを交えて8回にわたる議論を重ね、このほど「過労死等防止対策
推進法案」(超党派案)がまとめられ、先の野党案に差し替える形で審議入り。
平成 26 年 6 月 20 日、「過労死等防止対策推進法」成立、同年 27 日公布。平成
26 年 11 月 1 日施行。
(2)概要
(第 2 条関係)
過労死等を「業務における過重な負荷による脳血管疾患もしくは心臓疾患を原
因とする死亡、もしくは業務における強い心理的負荷による精神障害を原因とす
る自殺による死亡、またはこれらの脳血管疾患もしくは心臓疾患もしくは精神障
害」と定義。
(第 4 条関係)
過労死等を防止するための対策を効果的に推進することを「国の責務」(地方
公共団体には国と協力する努力義務、事業主は対策協力の努力義務、国民には過
労死等を防止する重要性を自覚し関心と理解を深める努力義務)と定める。
(第 7 条関係)
過労死等の防止のための対策に関する大綱の策定義務(平成 27 年年央に予定)。
大綱には下記 8 条~11 条までの規定された 4 つの対策を盛り込む。
(第 6 条関係)
過労死等の概要および政府が講じた施策の状況に関する報告書の国会提出義務。
(第 12・13 条関係)
厚生労働省内における過労死等防止対策推進協議会(被災者、家族、遺族代表
者、労使、専門家の委員(20 名)で構成)の設置。
大綱案を作成する際、協議会の意見を聞くこととしている。平成 26 年 12 月 17
日、平成 27 年 2 月 20 日開催3。
(第 5 条関係)
過労死等防止啓発月間(11 月)の設定を規定。
(第 8 条関係)
過労死等に関する調査研究等の実施(国が実施)。
(第 9 条関係)
過労死等の防止の重要性に係る啓発(国・地方自治体が実施)。
(第 10 条関係)
過労死等に関する相談体制の整備等(国・地方自治体が実施)。
(第 11 条関係)
民間団体の活動に対する支援(国・地方自治体が実施)。
3
山梨労働局ホームページ参照。
(3)労働基準行政における動き
平成 26 年度は 11 月を「過重労働解消キャンペーン」期間として、①労使団体
に対して主体的な取組を行うよう要請②若者の「使い捨て」が疑われる企業や長
時間にわたる過重な労働による過労死等に係る労災請求が行われた事業場等に対
する重点監督の実施③11 月 1 日(土)に実施した全国一斉の無料電話相談等の対策
を行ったところ。また、平成 26 年 11 月 14 日には厚生労働省本省にて「過労死等
防止対策シンポジウム」を開催(主な内容・川人博過労死弁護団全国連絡会議幹
事長基調講演、全国過労死を考える家族の会による体験談)
平成 27 年 1 月 17 日(土)には、「過労死防止法成立記念講演会」(働くものの
いのちと健康を守る山梨県センター)に山梨労働局監督課長が出席。
来年度も毎年 11 月の「過労死等防止啓発月間」に全国 11 カ所で「過労死等防
止対策推進シンポジウム」を実施予定。
平成 27 年度は過労死防止対策として 7.6 億円を予算要求中。