αブロッカーの振動障害への応用 - e

●αブ回 ッ カ ー の 臨 床 応 用
沼 義 英
ロッカーもまた、有用性が期待できよう。
れてきたが、これらと薬理機序が違う末梢性αブ
拮抗薬、プロスタングランジン島など︶が試みら
の拡張を目的として、いくつかの薬物︵鉱イオン
める方法と、薬物治療がある、後者には末檜血管
ことがある。この治療としては、物理的に直接暖
とレイノ ー 症 状 ︵ い わ ゆ る 白 ろ う 指 ︶ が 頻 発 す る
ら、平常でも手が冷たいとか、寒冷に全身を晒す
を生じる症候群である。とくに、手の循環異常か
腕の末梢循環障害、末梢神経症状や変形性関節症
振動障害は、振動機具を長期間使用すると、手
は低血圧を誘うほどではなかった。指標とした指
血圧のみが下降したが著明ではなく、一回投与で
は一二八/七六から一一八/七七㎜取と、収縮期
血圧は非投与時に一時間の前後で不変。内服で
ブナゾシン一㎎の単独投与との場合を比較した。
午前中の一時間のあいだで、非投与時の対照と、
ルを持って判定するべきである。このようにして、
は、時間と室温を一定にした個人内のコントロー
動するものである。従ってこのような薬物の効果
温熱治療や一日の時間帯、周囲の温度で大きく変
の平均値は二七度で、異常に低かった。これは、
常な者の指の温度は、約三二度である。患者のそ
岸 祐 幸・
そこで、塩酸ブナゾシン内服による急性効果を
尖温度は、ブナゾシン内服の前後で、二六・三度
αブロッカーの振動障害への応用
一四名の振動障害患者で観察した。末梢循環が正
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特集・αブロッカーの臨床
阿浅
な症状の起こりやすい条件が、個々の患者で予測
んで八○%であった。このような温感は、患者に
できる場合がある。本剤は内服薬なので外来でも
から二七﹂八度と上昇した。これは平均値であり、
一指だけではなく、別にサーモグラフィーで両
使いやすい。将来こうした症例では、予防的投与
よっては足部や体幹にまで及ぶ例もあった。
手の全指と手背の変化を詳しく観察してみると、
法として、本剤を用いることができるのではない
振動障害の冷感は、朝方や、寒冷環境の作業中
内服後の全指平均では三・二度の上昇があり、対
かと考えている。
バラツキが大きいので、改めて各人の上昇度をみ
照での自然な上昇度より、やはり明らかに高い。
︵北海道大学付属病院登別分院 講師 内科学︶
に強く、レイノーもまたそうであるが、このよう
より中枢側の手背では、二・三度の上昇で、対照
*︵北海道大学付属病院登別分院 教授 内科学︶
シン内服後では三・○度の有意の上昇であった。
を上回るが、指の改善効果ほどではない。
ると、対照では一・六度の上昇に対して、ブナゾ
振動障害患者で手の温度分布の特徴は、まず指
先で冷たく、しかも各指間や手背との較差が大き
いことである。つまり、より末梢において不均等
な血流減少をうかがわせるのである。ブナゾシン
内服後には、このような不均等性も是正された。
このことから、末梢での改善作用が顕著であると
推測される。
自 覚 的に手の温感が得 ら れ た の は 六 〇 % で 、 サ
ーモグラフィーによる他 覚 改 善 率 は 、 こ れ ら を 含
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