慶應義塾大学矢上キャンパス 授業概要 (シラバス) 1 講義の目的と

慶應義塾大学矢上キャンパス
授業概要 (シラバス)
2015 年度
秋学期
科目名 : フィナンシャル・エンジニアリング特論第2
担当者氏名 : 枇々木 規雄
1
講義の目的と進め方
個別の株式や債券のポートフォリオ選択問題
プレゼン (全 3 回)
(1) 12/22: プレゼンテーション (1 日目)
をはじめ、資産配分問題 (アセット・アロケー
(2) 1/12: プレゼンテーション (2 日目)
ション)、ALM(資産負債管理) の問題解決のた
(3) 1/19: プレゼンテーション (3 日目)
めに、数理計画モデルによる最適化手法が用い
中間テスト : 11/3
られている。本講義では、金融工学分野で用い
※ 12/8: 学会出張のため、休講
られる最適化手法、特に数理計画法によるモデ
ル化の考え方や手法を中心に講義する。
金融工学で取り扱う問題に対するモデル化の
考え方を理解し、体得するために、中間テスト
を1回、プレゼンテーションを1回行う。プレ
ゼンテーションのために、各自で論文を1本読
2
講義担当者
◇ 枇々木 規雄(ひびき のりお)
◇ オフィス : 25-610B, 内線 42660
み、発表する。具体的には以下の予定で講義を
◇ メールアドレス : [email protected]
実施する。
◇ ホームページ : http://www.ae.keio.ac.jp
/lab/soc/hibiki/lecture/afe 2015/index.htm
枇々木 [HBK] 第 1 章∼第 7 章 (全 9 回)
(1) 9/29: 金融工学のための最適化モデル
(2) 10/6: リスクとリターン
(3) 10/13: 効率的フロンティア
3
教材
講義資料は配付するが、各自で、ホームペー
(4) 10/20, 11/27: ポートフォリオ選択問題
ジからダウンロードし、印刷すること。ただし、
(5) 11/10, 11/17: 様々なポートフォリオ選択
資料を印刷するためには、パスワードが必要で
モデル
(6) 11/24: 戦略的資産配分問題に対する数理
計画モデル
(7) 12/1: シナリオ・ツリー型多期間確率計画
モデル
枇々木・田辺 [HT] (全 1 回)
(1) 12/15: ポートフォリオ最適化モデルのモ
デリング・テクニック
ある。講義の際には配付しないので、忘れずに
持参すること。
教科書
[HBK] 枇々木規雄 : 金融工学と最適化, 朝倉書
店, 2001.
[HT] 枇々木規雄, 田辺隆人 : ポートフォリオ
最適化と数理計画法, 朝倉書店, 2005.
その他参考文献
で定義する。さらに、危険資産を例に挙げて、
ポートフォリオのリスクとリターンの計算法と
[EG] E.J.Elton and M.J.Gruber : Modern Port-
特性について調べ、それらの関係を図示する。
folio Theory and Investment Analysis,
(Fifth Edition), John Wiley & Sons, 1995.
[HK1] 今野浩 : 理財工学 I — 平均・分散モデ
ルとその拡張 —, 日科技連, 1995.
[HK2] 今野浩 : 理財工学 II — 数理計画法によ
る資産運用最適化 —, 日科技連, 1998.
[HT] 竹原均 : ポートフォリオの最適化, 朝倉
書店, 1997.
[L-KSH] D. Luenberger : Investment Science,
◇ リスクとリターンの定義
◇ ポートフォリオのリスクとリターンの
計算
◇ ポートフォリオのリスクとリターンの
関係
(2-2) 効率的フロンティア : 10/13
投資可能集合の中からリスク回避的な投資家
Oxford University Press, 1998. (翻訳 :
の選択対象となる効率的フロンティアを定義す
今野浩、鈴木賢一、枇々木規雄共訳 : 金
る。さらに、仮定により異なる 4 通りの効率的
融工学入門, 日本経済新聞社, 2002.)
フロンティアの形状を図示し、それを求めるた
めの具体的な計算手続きを調べる。
4
授業計画
枇々木 [HBK] の第 1 章∼第 7 章, 枇々木, 田
辺 [HT] の第 6 章を行う。以下の内容に沿って、
授業を進めるつもりであるが、履修者数や進行
具合によって変更する可能性があり得る。
(1) 金融工学のための最適化モデル : 9/29
◇ 投資可能集合と効率的フロンティア
◇ 効率的フロンティアの形状
◇ 効率的フロンティアの計算法
(2-3) ポートフォリオ選択問題 : 10/20, 11/27
投資家がどの投資対象にどれだけ投資したら
よいかという問題をポートフォリオ選択問題と
様々な分野で広く使われている回帰分析では
いう。ポートフォリオ選択は投資家の満足度を
最小二乗法と呼ばれる最適化手法によって問題
最大にするように行われる。その満足度を表す
が解かれている。そこで、はじめに回帰分析を
ための効用関数について最初に説明する。次に、
例にして、最適化問題とはどのような問題であ
ポートフォリオ選択問題を実際に解くために最
るかを考える。次に、最適化手法の概要と数理
もよく使われている平均・分散モデルについて
計画のモデル化の方法、実際に問題を解くとき
説明する。さらに、市場インデックスのみを要
に使うソフトウェアについても簡単に紹介する。
因にしてリターンの生成プロセスを記述するシ
ングル・インデックス・モデルを中心にインデッ
◇ 最適化問題
クス・モデルのポートフォリオ選択への利用に
◇ 最適化手法
ついて説明する。
◇ 数理計画のモデル化とソフトウェア
(2-1) リスクとリターン : 10/6
ポートフォリオ分析の基本的な考え方を学ぶ。
そのために、まず、リスクとリターンを測る尺
度を定義する。リターンは資産 (または証券) の
期待収益率、リスクは収益率の分散 (標準偏差)
◇ 効用関数
◇ 平均・分散モデル
◇ インデックス・モデルとポートフォリオ
選択
(2-4) 様々なポートフォリオ選択モデル : 11/10,
(2-6) シナリオ・ツリー型多期間確率計画モデ
ル : 12/1
11/17
ポートフォリオ選択問題は平均・分散モデル
戦略的資産配分のためのシナリオ・ツリー型
で考えたように、リターン (期待収益率) とリス
多期間確率計画モデルについて議論する。はじ
クの 2 パラメータ・アプローチにより取り扱う
めに、そのモデル化に必要な考え方を整理する。
ことができる。ここではまずはじめに、リスク
投資比率決定モデル、投資額決定モデル、投資
尺度として、(1) 分散 (標準偏差) だけでなく、
量決定モデルの 3 つのモデルを段階的に定式化
(2) 下方半分散、(3) 絶対偏差、(4) 下方部分積
を行う。最後に簡単な数値実験の結果を示す。
率、(5) オープン L 偏差、(6) 不達成確率、(7)
区分線形・2 次リスク、(8) 条件付きバリュー・
アット・リスク、を用いるモデルを取りあげ、
その定式化を示す。さらに、各種モデルの比較
を行う。また、ポートフォリオ選択を行う方法
にはベンチマーク・ポートフォリオの収益率を
◇ モデル化のための準備
◇ モデルの定式化
◇ 数値実験
(3-1) ポートフォリオ最適化モデルのモデリン
グ・テクニック : 12/15
目標にする方法 (ポートフォリオ複製アプロー
チ) も考えられる。2 パラメータ・アプローチ
に用いたリスク尺度の考え方を利用して、ベン
実際に修正・追加するであろう定式化とし
て、
チマークリスクを定義し、それらを用いた定式
◇ 上限制約式の設定
化も示す。最後に、数値実験例も示す。
◇ 下限制約式の設定
◇ 2 パラメータ・アプローチによるポート
フォリオ選択問題
◇ 各種モデルの比較
◇ ポートフォリオ複製アプローチ
◇ 数値実験
(2-5) 戦略的資産配分問題に対する数理計画モ
デル : 11/24
株式や債券などの資産クラスに対する配分比
率を決定する資産配分問題 (アセット・アロケー
ション) の概要を示す。次に、資産配分に対する
数理計画モデルとして、投資家のビュー (見通
し) を考慮したモデルと長期的な最適資産配分
のためのモデル化の方法を説明する。最後に、
最適な動的資産配分を行うための多期間確率計
画モデルに必要な考え方や基本的な定式化など
を示す。
◇ 資産配分問題の概要
◇ 資産配分に対する数理計画モデル
◇ 多期間確率計画モデルの概要
◇ 銘柄数の固定
◇ リバランスを考慮する場合に追加すべ
き制約式
◇ シャープ測度、トレーナー測度を用いた
比率尺度モデル
◇ マルチ・ファクターモデルを利用する
場合
の定式化を説明する。
5
評価基準と成績評価
成績はテストとプレゼンテーションによって評
価する。ただし、中間テストの出来によっては、
追加レポートを課すとともに、配点も変更する
可能性があります。
• 中間試験(配点 40 点)
2015 年 11 月 3 日 (火)
— 範囲 : 枇々木 [HBK] 第 2 章∼第 4 章
— 資料等の持ち込みは、事前に配付する A4
用紙 1 枚のみ (自筆のみ) を可能とし、試
験当日に回収します。電卓の持ち込みは
可です。
— 原則、追試は行いませんが、個別に対応
します。就職活動の場合は認めません。
• プレゼンテーション(配点 60 点)
— プレゼンテーションのために読む論文は
各自で探してもらうが、以下の制約を設
ける。
⃝
1 「ポートフォリオ (portfolio)」「最適化
(optimization)」の両方をキーワードと
して含むこと。
⃝
2 2010 年以降に発表された論文であるこ
と。
⃝
3 昨年度までの本講義におけるプレゼンテー
ションで使われた論文 (ホームページに
掲載) を除くこと。
⃝
4 枇々木以外の著者の論文であること。
⃝
5 枇々木研究室の学生は日本人以外の著者
で英語で書かれた論文であること。
⃝
6 論文集、もしくは研究成果が掲載された
本の1章分でもよい。
— 論文が決まり次第、論文名と希望日程を
枇々木にメールで連絡してください。早
い者勝ちとします。
— 発表時間は 10∼15 分で、受講者数によっ
て決定します。受講者多数の場合には、
2 人で共同で発表してもらう場合もあり
ます。
— プレゼンテーションで用いる資料は、2
日前の日曜日の 24 時までに枇々木まで
メールで送付すること。
— 自分で見つけられない場合には、枇々木
に早めに相談してください。
成績評価
成績
100 点満点
A
75 点以上
B
60 点以上
75 点未満
C
45 点以上
60 点未満
D
45 点未満
※ 中間テスト未受験者、プレゼンテーション
未発表者の評価は「D」です。