画像の解像度と植生の判別精度の関係に関する研究 ―小型 UAV を用いて

A01
Research Abstracts on Spatial Information Science
CSIS DAYS 2015
画像の解像度と植生の判別精度の関係に関する研究
―小型 UAV を用いて―
山本 遼介,泉 岳樹,松山 洋
首都大学東京 都市環境科学研究科
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(1) 動機: 植生は,地球規模では二酸化炭素の吸収
源や生物多様性の保持という役割を持ち,都市規
模ではヒートアイランドの緩和効果や景観の形成な
ど様々な役割を持つため,その実態を詳細に把握
することは重要である.リモートセンシングによる植
生の把握では,従来,衛星画像を用いて樹種・樹
齢などが一様な林相単位で把握されていた.しか
し近年では,高分解能衛星や UAV(無人航空機)
を用いた高解像度画像が取得可能となったことで,
単木単位での把握が可能となってきた.
画像から得られる情報の詳細さは解像度によっ
て規定されるため,適切な解像度の選択は重要で
ある.一方で,解像度が高いほどデータ量も膨大
になるため,データの管理や解析に要するコストも
膨大になってしまうという問題も生じる.しかし,大
量のデータのうちどのデータが必要でどのような解
析手法が適するかという議論は十分になされてい
ない(Weng 2014).そこで本研究では,近年技術
的発展の著しい小型 UAV を用いて,様々な解像
度の画像を取得し,高解像度画像を用いたリモー
トセンシングによる植生把握に必要な画像の最適
解像度を定量的に明らかにすることを目的とする.
(2) 方法: 研究対象地域は,①都市域の広葉樹林とし
て,東京都八王子市の松木日向緑地,②自然地
域の針葉樹林として,熊本県阿蘇山南東部の森林
を設定する.UAV(図 1)に 2 台のデジタルカメラ
(RICOH GR および Canon S110,後者は近赤外域
を撮影できるよう改造したもの)を積載し,高度を変
えながら飛行することで,様々な解像度の画像を撮
影する.RICOH GR を基準とすると,例えば高度
38m で解像度 1cm,高度 19m で解像度 0.5cm の
画像が得られる.
撮影した画像からコンピュータによる自動的な植
生の判別を試み,解像度による精度の違いを検証
する.判別は従来のピクセルベースでの解析に加
え,オブジェクトベース画像解析を用いて行う.この
手法は,性質の近いピクセルのまとまりを「オブジェ
クト」として扱うため,単木の樹冠などを捉えられる
可能性があり,高解像度画像に適するとされている.
オブジェクトを生成するパラメータは定量的な決定
法が確立していないため,解像度とパラメータの関
係についても明らかにしていく.
最適な解像度の考察にはバリオグラムを用いる
(図 2).バリオグラムは,空間における変量のばら
つきを求める地球統計学の手法であり,観測値の
空間代表性を求めるために使用される.そこで本
研究では,判別結果の精度とバリオグラムの結果を
比較することで,最適な解像度を考察する.
(3) 結果: 2 つの対象地域において UAV を飛行させ,
解像度 0.5cm から 3cm までの複数の画像を撮影し
た.図 3 は,松木日向緑地において RICOH GR を
用いて撮影した画像を拡大したものである.解像度
によって植生の見え方が大きく異なり,解像度 2cm
以上では目視で認識できない葉の形状が,解像度
0.5cm では明瞭に認識できる.今後は植生判別を
行い,精度がどのように異なるのかを検証する.
(4) 参考文献:
波多野和儀・泉 岳樹・中山大地・松山 洋 (2004)
バリオグラムを用いた AMeDAS 気温データの空間
代表性に関する解析. 「GIS-理論と応用」, 12(1),
35-46.
Weng, Q. (2014) Scale Issues in Remote Sensing.
John Wiley & Sons.
解像度 0.5cm
図 1: 本研究で使用
する UAV の例
図 2: バリオグラムの例およ
び本研究における適用法
(波多野ほか 2004 に加筆)
-7-
解像度 2cm
解像度 1cm
解像度 3cm
図 3: 松木日向緑地において
撮影した画像