非燃焼発生源の推定 - 廃プラ処理による公害から健康と環境を守る会

大気中非メタン炭化水素濃度と窒素酸化物濃度の比を用いた地域環境評価
その1−非燃焼発生源の推定
○野口美由貴, 裵 文珠, 熊谷一清, 井上靖雄, 柳沢幸雄
東京大学 大学院新領域創成科学研究科 環境システム学専攻
4.結論
NMHC/NOX 比の経年変化を考察することで、特
定の地域に設置された発生源からの影響を推定する
ことが可能であることを示した。
10.0
寝屋川
東大阪
四条畷
9.0
8.0
7.0
6.0
5.0
4.0
3.0
1997
1998
1999
2000 2001
年度
2002
2003
2004
Fig.1. NMHC/NOX 比の経年変化
16.0
結果および考察
本指標を用いた地域環境評価の一例として、大阪
府寝屋川市(寝屋川:一般局)を選び、非燃焼系発
生施設の建設に伴う NMHC/NOX 比の推移を検討し
た。対照データとして、近隣の一般局(東大阪)お
よび自排局(四条畷)を選定した。1997∼2004 年度
の NMHC/NOX 比の年次推移(Fig.1)
、および 2004
年度における月次推移と気温(Fig.2)を示した。
1997∼2000 年度までの NMHC/NOX 比は、一般局
40
寝屋川
東大阪
四条畷
気温
14.0
3.
NMHC/NOX
12.0
10.0
35
30
25
8.0
20
6.0
15
4.0
10
2.0
5
0.0
℃
研究方法
NMHC の発生源は燃焼を伴うもの(以下燃焼系)
と揮発、発酵、溶融といった燃焼を伴わないもの(以
下非燃焼系)に大別される。燃焼系からは NMHC
と NOX が排出されるが、NMHC は主に燃料の不完
全燃焼によって排出され、NOX は主にサーマル NOX
として排出される。一方、非燃焼系からは NMHC
のみが排出される。従って、一般環境における
NMHC/NOX 比は、燃焼系・非燃焼系別の発生源の寄
与を評価する指標となると考えられる。
また、NMHC と NOX の年平均濃度に寄与するよ
うなマクロな拡散や希釈の条件は、同一測定局であ
れば物質に依らずに共通であると考えられ、さらに
両者の比を用いることで取り除くことができる。す
なわち、この指標を用いることで、時間・空間の異
なる濃度データの比較が可能となり、膨大に蓄積さ
れた常時観測データの活用が可能になる。
2.
である寝屋川、東大阪はともに同程度であることか
ら、非燃焼系発生源からの NMHC への寄与の変化が
なかったと考えられる。
しかし 2001 年度付近から両
者の比は解離し、2002 年度以降寝屋川は高値を維持
している。これは、寝屋川市において非燃焼系発生
源からの NMHC 寄与が大きくなったことを示して
いる。寝屋川市では、2002 年度に廃プラスチックの
全戸収集、圧縮梱包が開始され、2004 年度に廃プラ
スチック中間処理場が建設され、操業が開始されて
いる。寝屋川の測定局が中間処理場から約 2km の地
点にあることから、この工場が NMHC/NOX 比の増
大の原因である可能性が高いと考えられる。
さらに、寝屋川では夏季に NMHC/NOX 比が高値
を示す傾向が顕著である(Fig.2)。この非燃焼系発
生源は、気温の上昇に伴い NMHC の排出量が上昇す
るような施設であることが示唆され、前述の可能性
を支持する結果である。
NMHC/NOX
はじめに
大気中の揮発性有機化合物(以下 VOC)は、それ
自体が有害なだけでなく、浮遊粒子状物質や光化学
オキシダント生成への関与が指摘されるため、平成
16 年の「大気汚染防止法改正」により、その排出規
制が強化されている。しかし、中小規模の施設はこ
の規制の対象外であるため、これらの施設から排出
された VOC による地域汚染は、実際の健康被害が
報告されるまでは適切な対応がなされない恐れがあ
る。本研究では、大気環境常時監視測定局(一般局、
自排局)にて観測されている非メタン炭化水素
(NMHC)と窒素酸化物(NOX)の年あるいは月平
均濃度、及び NMHC/NOX 比を用いて、未知の VOC
による地域環境の汚染の程度を簡便に評価する方法
を提案する。
1.
0
4
5
6
7
8
9
10
11
12
1
2
3
月
Fig.2. NMHC/NOX 比の季節変化と気温変化