北海道バスケットボール協会 指導者育成専門委員会 2015/02/02(月) タクティクス(HBA指導者育成専門委員会ブログ) 『2014 NO. 161 長崎がんばらんば国体に参加して』 北海道少年男子監督 田島 範人 東日本大震災復興支援第69回国民体育大会『長崎がんばらんば国体』が、2014年 10月12日~22日の期間で長崎県にて開催されました。長崎駅前を中心に長崎県内は 歓迎ムード一色であり、日本三大夜景に数えられる長崎市において開催される大会に参加 できたことは、素晴らしい経験となりました。 今回の報告記は、【国体北海道予選会】【長崎国体までの事前準備】【長崎国体大会報告】 に分けてご報告させていただきます。 【国体北海道予選会】 今年の国体北海道予選会は、例年開催されている江別市体育館が耐震工事のため使用で きず、8月15日~17日の期間で旭川市にて開催されました。苫小牧選抜は、駒大苫小 牧高校と北海道栄高校の選手で構成、スタッフはヘッドコーチを私が務め、アシスタント コーチには北海道栄高校の木村匡宏先生にご協力をいただきました。幸せなことに、私と 駒大苫小牧高校の選手は、直前に開催されたインターハイに出場させていただきました。 ここで得た反省点を基に、国体でのチーム作りを考えました。予選会に向けて取り組んだ ことは、以下の内容です。 ① シュートセレクションの再構築 ➣ 私達のチームは、トランジションを重視し、ファーストブレイクから得点を取るこ とを目指してきました。もちろん、理想はレイアップシュートなどゴール付近での得 点ですが、3ポイントシュートを含めたノーマークのシュートは積極的に打ち、入ら なくてもオフェンスリバウンドを頑張って、もう一度攻撃を仕掛けていました。しか し、そのシュートも飛び抜けて高確率で成功するわけではなく、オフェンスリバウン ドが取れなくなると、逆に走られる状態に陥っていました。また、自チームのオフェ ンストランジションよりも優れたディフェンストランジションを持つチームには、最 初のシュートセレクションさえも与えてもらえず、苦し紛れの1対1など、タフショ ットを選択させられていました。以上の問題点はインターハイの2回戦で現れます。 相手の長身選手にディフェンスリバウンドを支配され、走られてしまう展開でした。 そのため、ファーストブレイクによってイージーシュートが出来ない場合、セカンダ リーブレイクからセットオフェンスへとスムーズに移行させ、より良いシュートセレ クションを選択する必要性を感じていました。インターハイを終え、帰道前にチーム の再構築と国体北海道予選会に向けた強化を図るために、駒澤大学や明治大学を訪れ、 大学生の胸を借りました。この練習試合の中でスクリーンの活用を学び、早速セット オフェンスに取り入れることにしました。こうして、ファーストブレイクでのイージ ーシュートを選択できない場合に、打ち急がず、次のシュートチャンスを作り出すオ フェンスへ移行することに取り組みました。結果、予選会では40分間での攻撃回数 -1- は減りましたが、3試合を通じた平均得点は81.6点。十分な得点を奪うことがで きたことに加え、シュートセレクションの選択が向上したことで、逆速攻を出される ことも少なくなり、無駄な失点も減らすことができました。 ② 1対1でのディフェンスの粘り ➣ 当たり前のことですが、1対1の攻防はバスケットボールの基本だと考えます。チ ームディフェンスとしてのヘルプ&ローテーションは、あくまでも危機管理、1対1 を破られた時の備えであって、失点を防ぐ万能な方法ではないと考えます。しかし、 チームディフェンスを追求するなかで、選手一人一人の、1対1のディフェンスへの 意識が希薄になり、失点はヘルプ&ローテーションの精度が低いことが原因であると 選手たちが考えているように感じました。現に、簡単にドライブを許している選手が、 チームメイトにヘルプをもっと早めるように要求しているケースがありました。つま り、オフェンスに1対1を自由にさせている状態で、チームディフェンスをしている。 言い換えれば、いつもアウトナンバーを守っている状態です。これでは失点する確率 が非常に高まります。そのため、もう一度自分のマークマンに責任を持つこと、絶対 に抜かれない、簡単にシュートを打たせないという1対1の粘り強さを要求しました。 予選会では、選手たちが見事に応えてくれたことで、3試合の平均失点は58.6点。 これが、予選会で優勝することができた最大の要因であると考えています。 【長崎国体までの事前準備】 ① 北海道選抜の選手選考 ➣ 北海道予選会は苫小牧選抜として15名で臨みましたが、長崎国体では11名に 絞らなければなりませんでした。出来ることならば、全道優勝を勝ち取ったメンバ ーを全員ベンチに座らせてあげたいという思いでしたが、それが叶わず、メンバー 選考から漏れた選手には、今でも申し訳ない気持ちでいっぱいです。しかし、北海 道を代表して試合に臨むのですから、1つでも多く勝ち上がり好成績を目指す必要 があります。そう考えた時、苫小牧選抜の戦力分析を行い、補強ポジションを検討 し、得点力のある選手と外国人留学生とも対等に戦える長身選手が必要であると考 え、札幌選抜から3名の選手(東海大四高校より内田君・白旗君・大内君)を補強 させていただきました。 ② 強化計画 ➣ 9月上旬に選手選考が終わり、チームのスケジュールを作成しました。9月中は 週末に合同練習、10月は4・5日に北海道バスケットボール協会主催の強化試合、 翌週の10・11・12日は福岡県へ強化合宿、翌週の16日に長崎県へ出発。現 地で調整を行い、18日からの競技開始という内容でした。 次に、合同練習の内容を考えました。9月は、苫小牧地区、札幌地区それぞれで ウインターカップの地区予選が開催されるため、11名が揃って練習できる日数が 多くありませんでした。そのため、ゲーム形式の練習を通じて、オフェンス面では、 どの5人が一番コンビネーションが合うかをスタッフで模索することに時間を費や しました。また、ディフェンス面ではハーフコートマンツーマンと2-3のゾーン ディフェンスの2種類を用意し、ローテーションのルールなどを確認しました。さ らに、ベースラインとサイドラインからのインバウンズプレーを作り、選手と共に 習得していきました。 こうして10月4・5日に開催された強化試合を迎えました。新潟県少年男子選 抜と千葉県少年男子選抜と対戦させていただきました。オフェンスは試合を重ねる ごとにリズムも良くなりましたが、もう少しドリブルドライブからの得点や崩しを 増やしたいと感じました。ディフェンスはインサイドプレーヤーのマークマンのポ ジショニングに課題を見つけました。ただ、北海道選抜として戦った初めてのゲー ムとしてはある程度満足できる内容でした。 翌週の10月10・11・12日には福岡県で強化合宿を行いました。この合宿 はアクシオン福岡を会場に、福岡県少年男子選抜、山口県少年男子選抜、福岡第一 -2- 高校(福岡県)、福大大濠高校(福岡県)、開志国際高校(新潟県)、延岡学園高校(宮 崎県)が集いました。北海道選抜は福岡県選抜・山口県選抜と対戦させていただき ました。福岡県選抜戦は、ディフェンスのプレッシャーが非常に強く、ボールマン が孤立するケースが多く見られました。ゲームの途中から内田をPGに起用してゲ ームが安定してきましたが、福岡県選抜の長身選手の走力が高く、ファーストブレ イクからの失点を防ぐことができずに敗戦しました。山口県選抜戦は、相手のマン ツーマンディフェンスとゾーンディフェンスのチェンジングに上手く対応すること ができ勝利。特にゾーンに対してのオフェンスは、ピックからドリブルキックアウ ト、ハイ・ローの合わせの2パターンを確認することができました。また、山口県 選抜のオフェンスは、長身選手はいませんでしたが、豊富な運動量で5アウトから カットを繰り返し、オフボールスクリーンも巧みでしたので、ゾーンディフェンス で対応しました。ゾーンディフェンスの効果はありましたし、リバウンドからのフ ァーストブレイクも随所で見られましたが、ショートコーナー付近での受け渡しに ミスが生じるケースがあり、コミュニケーションを徹底するといった課題が見つか りました。 なお、福岡県での強化合宿を開催するに当たり、福岡県バスケットボール協会の 皆様をはじめ、多くの方々にご尽力賜りました。特に、福岡第一高校の井手口先生 には、宿舎の手配や選手の送迎など、大変お世話になりました。この場をお借りし 皆様にお礼を申し上げます。ありがとうございました。 【長崎国体大会報告】 ① スカウティング ➣ 10月18日より1回戦がスタートしました。北海道選抜は1回戦シード、2回 戦は鹿児島県選抜と福井県選抜の勝者との対戦でした。同日、北海道選抜は午前中 に長崎西高校の体育館をお借りし、練習後、午後から鹿児島県選抜と福井県選抜の 試合を全員で観戦。試合は福井県選抜が勝利。翌日の対戦相手は福井県選抜に決ま りました。宿舎に戻り、スタッフで再度映像分析を行い、夕方ミーティングを行い ました。福井県選抜は北陸高校の選手が中心で、1対1の能力が高く、ディフェン スもアグレッシブにプレッシャーをかけてくるチームでした。特に鹿児島県選抜戦 で42得点(3ポイント11本を含む)の活躍を見せた#14の得点能力は高く、 フォーワード・センター陣はオフェンスリバウンドに果敢に飛び込んでくる印象で した。 ② 福井県選抜戦に向けて ➣ オフェンス面では、ボールマンに対してのプレッシャーが厳しいので、パスでボ ール動かしながらシュートへ向かうこと。また、内田、白旗の得点はある程度計算 できたので、川村、大岸にはオフェンスリバウンドとファーストブレイクへの参加、 大内にはハイポストへフラッシュしてからのプレーを多用すること、小辻には積極 的にドライブを仕掛けるように指示しました。 ディフェンス面では、マッチアップ、ハリーバック、ボールミートから踏ん切り 良くシュートを打たせないために相手の足元へ入ること、ドライブへの対処、ボッ クスアウトの徹底を確認。鹿児島県選抜戦で42得点を挙げた#14には白旗に徹 底マークを任せました。また、相手のチームオフェンスのバリエーションとして、 ピックから始まるハイ・ロープレーと、ボールサイドカットから作ったスペースへ のストロングサイドへのドライブの2点を選手と確認しました。 ③ 福井県選抜戦の内容 ➣ 予想通り福井県選抜はディフェンスのプレッシャーを強めてきました。特に、内 田、白旗の両名には厳しくマークしてきました。ただ、北海道も白旗が相手の#1 4を完璧に抑え、序盤はロースコアの展開でしたが、途中#14が負傷退場してか ら、ディフェンスの的が絞りにくくなり、代わりに出てきた#8に活躍を許してし -3- まいました。さらに、#5のポストプレーを警戒するように大内に指示を出してい ましたが、ポップアウトからのアウトサイドシュートを多く決められました。後半 は内田、白旗の得点が伸び、大岸、川村もリバウンド・ルーズボールで貢献、山田 も苦しいところで3ポイントを決めるなど奮闘しましたが、結果は77-88で敗 戦となりました。 ④ 福井県選抜戦の反省 ➣ たくさんありますが、スカウティングの部分で情報不足でした。これは私の責任 であり、選手には大変申し訳なく思っています。#5のシュートレンジの広さを認 識していなかった点(北海道戦29得点)、前の試合にベンチスタートだった#8、 #10の高い得点力(北海道戦2人で28得点)です。スカウティングの資料では、 福井県選抜のオフェンスの多くは#14のフィニッシュで終わっていました。その ため、私達は#14を必死に抑えることを考えました。ただ、チームのエース級は 当然徹底マークに合いますし、どのチームも抑えに来ます。今回は#14のような チームのエースが抑えられたとき、もしくは不調などによってベンチに下がったと き、そのチームは誰を起点にオフェンスを展開してくるかという点を想定していま せんでした。相手の最初の一手だけでなく、二手、三手先まで想定することができ なかった私の力不足、経験不足でした。また、シーソーゲームの中でこちらが動く ことによって逆に劣勢になるのではないかと、選手交代やディフェンスを変化させ る踏ん切りも悪く、この点も悔やまれます。 【最後に】 今回の長崎国体に参加させていただくに当たり、北海道バスケットボール協会の皆様 には、チーム編成へのご助言、申し込み手続きや強化合宿の実施に向けた準備、新潟県・ 千葉県少年男子選抜を招いての強化試合の実施など、多大なるご尽力を賜りました。ま た、国体北海道予選会から北海道栄高校の木村匡宏先生にはチームのアシスタントやマ ネージメントなど多くの役割を果たしていただきました。さらに、国体直前までU-1 8日本代表のスタッフとして海外遠征されていた東海大四高校の佐々木睦巳先生は、帰 国後、休む間もなくチームに加わってくださり、私や木村先生に多くの経験に基づく知 識や理論を惜しみなくアドバイスしてくださいました。私達にとってこの貴重な経験は、 今後のコーチングの大きな糧となると思います。結果は2回戦敗退で終わってしましま したが、この間苫小牧選抜として北海道予選に参加した15名の選手、北海道選抜とし て参加した11名の選手は練習から試合まで常に全力で取り組んでくれました。優秀な 選手の皆さんと全道優勝、そして全国の舞台を経験することができたことを心から誇り に思います。佐々木先生、木村先生、選手の皆さん、北海道選抜へご支援、ご協力を賜 りました皆様に心から感謝を申し上げます。ありがとうございました。 HBA(北海道バスケットボール協会)指導者育成専門委員会 -4-
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