小川陽平 村田・兵動・中田研―3 砂のせん断強度およびダイレイタンシー特性に及ぼす拘束圧の影響 村田・兵動・中田研 1, まえがき 小川陽平 自然地盤内に生じる応力は、地表面付近における低圧域から大規模構造物基礎直下における非 常に高い圧力域まで広範に及んでいる。また、砂のような粒状材料に対し広範な応力域において室内試験を 行うと高圧域においては、せん断強度の低下や負のダイレイタンシーの増加など様々な力学定数の変化が見 られる。そのため高圧下における砂の力学特性や低圧から高圧に至るまでの砂の状態の変化を把握しておく ことは重要である。本研究は広範な応力域において排水せん断試験を行い、それらの実験結果に基づいて砂 のせん断強度およびダイレイタンシー特性におよぼす拘束圧の影響を明らかにすることを目的とした。 2, 試料および試験の概要 実験に用いた試料は 0.18mm∼2.0mm に粒 2.5 度調整した silica 砂 ( 珪 砂 )、(Gs :2.65,emax :0.93,emin :0.58)と 形状が整っているのに対し、Chiibishi 砂は粒子強度が低く、それ ぞれの粒子が特異な形状をしている。供試体は直径 50mm、高さ 100mm で相対密度 90%を目標に作成した。実験は、低・高圧三軸試験機を用 いて、排水せん断試験をひずみ制御(0.1%/min)で行った。 3, せ ん 断 特 性 図- 1 は拘束圧 50kPa∼500kPa まで排水せん断試験を 行った際の各試料の応力-ひずみ関係である。まず応力比η-軸ひず みεa 関係から silica 砂は、この範囲の拘束圧下ではいずれの拘束 圧においても明確なピークが現れている。Chiibishi 砂は、拘束圧 50kPa、100kPa の結果では silica 砂と同様な挙動を示すものの、拘 Stress ratio η (Gs :2.82,emax :1.57,emin :0.98)である。silica 砂は粒子強度が高く、 2.0 束圧 300kPa、500kPa の結果では明確なピークが消失している。また、 圧 50kPa、100kPa では Chiibishi 砂は silica 砂に比べ高い応力比を ー挙動を示している。Chiibishi 砂は 300kPa、500kPa の実験結果で は収縮挙動を示していることがわかり、その要因として粒子が脆弱 で初期間隙比が大きいことが考えられる。 図- 2 は拘束圧 1MPa ∼ 40MPa まで排水せん断試験を行った際の各試料の応力-ひずみ関係 である。まず応力比η-軸ひずみεa 関係から silica 砂は 1MPa を超 えると明確なピークが現れていないことがわかる。次に、体積ひず みεv と軸ひずみεa 関係から silica 砂は 1MPa∼5MPa にかけて収縮 挙動になることがわかる。Chiibishi 砂はいずれの拘束圧において Stress ratio η 係から、silica 砂はいずれの拘束圧においても正のダイレイタンシ 300kPa 500kPa 0.0 0 5 10 15 20 25 10 15 20 25 -20 -10 0 10 20 0 5 Axial strain ε a (%) 低 拘 束 圧 下 の 応 力- ひ ず み 関 係 2.0 1.5 1.0 silica Chiibishi 1MPa 5MPa 0.5 20MPa Volumetric strain εv (%) 程度の応力比となっている。次に、体積ひずみεv と軸ひずみεa 関 silica Chiibishi 50kPa 100kPa 2.5 ずみεv と応力比ηが一定となる定常状態に至っている。また、拘束 れる。しかし、300kPa と 500kPa の拘束圧下では各試料ともほぼ同 1.0 図- 1 各試料ともεa が 15%を超えるといずれの拘束圧においても体積ひ 示している。これは、Chiibishi 砂の粒子形状によるものと考えら 1.5 0.5 Volumetric strain εv (%) 0.1mm∼2.0mm に粒度調整したカーボネイト砂としての Chiibishi 砂 40MPa 0.0 0 5 10 15 20 25 30 10 15 20 25 30 -20 -10 0 10 20 0 5 Axial strain ε a (%) 図- 2 高 拘 束 圧 下 の 応 力- ひ ず み 関 係 も収縮挙動であることがわかる。図- 3 は拘束圧 40MPa までの排水せん断試験結果に基づいて、応力比がピー ク時の体積ひずみεv の増加をそれぞれの平均有効主応力 p の増加に対して示したものである。Chiibishi 砂 は silica 砂と比べていずれの p においてもεv が高い値を示しており、ピーク強度に至るまでの変形量が大 が変化しない領域(p<500kPa)、 v 15 10 0 5 Chiibishi 低下する領域(500kPa<p<20MPa)、 一定となる領域(p>20MPa) に分 けられる。一方、Chiibishi 砂 1.2 Steady State Line 0.9 0.6 0.3 silica -5 0.01 0.1 1 10 100 Mean Principal Effective Stress p(MPa) ではφ’peak が変化しない領域が 図- 3 0.0 0.01 0.1 1 10 100 Mean principal effective stress p (MPa) 応 力 比- ピ ー ク 時 の 体 積 ひ ず み- 現れず 20MPa までφ’peak は低下 図- 5 平均有効主応力関係 (deg) 時のφ’crit を同時に示している。 φ いえる。そこで、ピーク時の 1.5 Chiibishi 50 白 抜 き φ 'peak 塗 りつ ぶ し φ 'crit silica 45 40 , peak 効主応力に依らず一定であると φ , crti ε vmax また図中に、各試料の定常状態 せ ん 断 中 の 間 隙 比- 平 均 有 効 主 応 力 関 係(silica 砂) 55 し、その後一定となっている。 この結果より、φ’crit は平均有 Void ratio e 動を見ると silica 砂ではφ’peak 1.5 Chiibishi Void ratio e る。p の増加に対するφ’peak の挙 Peak ε と平均有効主応力 p の関係であ 村田・兵動・中田研―4 silica strain at ク時のセカントアングルφ’peak 20 Volumetric きいことがわかる。図-4 はピー (%) 小川陽平 1.2 0.9 0.6 Steady State Line 35 0.3 30 0.1 1 10 100 Mean principal effective Stress p(MPa) 0.0 0.01 0.1 1 10 100 Mean principal effective stress p (MPa) φ’peak と定常状態時のφ’crit の 差はダイレイタンシーによる強 度増加とみなすことができる。 図 - 5,6 はせん断中の各試料の 図- 4 セ カ ン ト ア ン グ ル- 図- 6 平均有効主応力関係 平 均 有 効 主 応 力 関 係(Chiibishi 砂) 間隙比 e-平均有効主応力 p 関係 State Parameter である。低圧域における e は増加傾向を示しているのに対し、silica いることがわかる。ここで各拘束圧におけるせん断試験において定常 状態に至った e を結ぶことにより図中に示すように、ある曲線が得ら れる。この曲線を定常状態線とする。この線と各拘束圧の初期間隙比 Steady State Line Void ratio e 砂は 2MPa、Chiibishi 砂は 200kPa 以降の応力域では減少傾向を示して せ ん 断 中 の 間 隙 比- Normal Conslidation Line Stat e Pa ramet er ψ =encl-e ssl の差はダイレイタンシー挙動を示すものである。そこで、Been らに習 い図- 7 に示すようにこの線と初期間隙比の差を状態パラメーターψ とした。図-8 はピーク時のφ’peak と定常状態時のφ’crit との差と状態パ Mean principal effective stress p 図- 7 ラメーターψとの関係を示している。silica 砂、Chiibishi 砂とも右 状態パラメーターの定義 20 本研究で得られた知見を以下に示す。 φ 1,Chiibishi 砂は silica 砂に比べ粒子形状が複雑なため低圧域では , crit 4, まとめ -φ らダイレイタンシーによる強度増加が推察できることを示している。 強度が大きくなる。しかし、粒子が脆弱で間隙比も大きいためピーク 強度を発揮するまでに大きな変形が確認された。 2,各試料とも拘束圧の増加に伴いφ’peak が低下し、高圧下ではφ’peak が 一定となる拘束圧依存性が確認された。 15 Chiibishi 10 , peak 同程度であることがわかる。このことは、せん断中の間隙比の変化か (deg) 下がりの直線関係が見られ、φ ’peak からφ’crit を引いた値の減少割合は 5 silica 0 -0.3 図- 8 -0.2 -0.1 0.0 0.1 State parameter ψ 0.2 0.3 φ’p e a k −φ’c r i t と ψ と の 関 係 3,ピーク時のφ’peak と定常状態時のφ’crit との差と状態パラメーターψとに相関性が見られ、これは、せん断 中の間隙比の変化からダイレイタンシーによる強度増加を推察することができることを示している。
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