東日本大震災被災地の復旧・復興に対する早稲田大学の支援活動の提案 社会環境工学科 教授 濱田政則 東日本大震災発生より1カ月以上が経過し、福島第1原子力発電所事故による避難地域を除いては、 復旧・復興活動が本格化して来るものと考えられる。しかしながら、復旧・復興に向けて、それぞれの 被災地域は以下のような課題を抱えている。 1)復旧・復興では、それぞれの地域の風土・環境・文化・人口・産業・地形・地理等を考慮した地域 毎の復旧・復興計画の早期立案が不可欠である。この役割はそれぞれの自治体が担うべきものであ るが、多くの自治体が、被災者の保護・支援等に忙殺されており、自治体のみでは十分に対応でき ないのが現状である。 2)復旧・復興は、防災基盤施設の補強と新たな建設、居住地域の適切な選定、復興住宅の建設、まち づくり、生活環境の回復、被災者のケア、産業の回復と雇用の再生、教育の再生、そして財源の確 保など多岐にわたっており、土木・建築等の理工学分野のみならず、社会学、経済学、商学、法学、 政治学、教育学など多分野の連携が重要である。 国の復興会議によるグランドデザインでは、復興のための大枠を定めることになると考えられる。 地域毎のきめ細かな復興計画は自治体の責任において策定されなければならない。 このような状況を踏まえ、総合大学である早稲田大学が以下の復旧・復興支援活動を地域の稲門会の 全面協力のもとに全学的に推進することを提案する。 1)代表的な対象地域を選び、この地域の復旧・復興活動を全学的に支援する。 対象地域を選定する理由は上記のように地域の特性によって復旧・復興の行程が異なるためであり、 一般論を避け、具体的に被災地に貢献することにある。 支援内容と必要事項について以下の事項が考えられる。 ①被害状況の全容把握と被災原因等の検証 ②対象自治体との協働による復旧・復興計画素案の立案、および実施段階での各種支援、助言等 ③地域でのボランティア活動への積極的な参画(住民のケア、子どもを対象とした防災教育等) ④大学に自治体・住民からの相談窓口を設ける。これは選定対象地域に限定せず被災地域全域を対 象とする(専用 web サイトの開設) ⑤長期的な自治体による行政への支援 2)早稲田大学と特定自治体との協力関係が動き出すことにより、このことが先行事例となって他の主 要大学も他の自治体への支援活動を開始することが期待される。大学毎の分担地域を決め、全国の 主要大学がこのような国民運動に参画する。 3)以上の復旧・復興支援のために、早稲田大学として活動資金を用意する。 4)水産・農業等の復興に関しては、他大学の応援を受けることを考える。 5)以上の一連の活動は早稲田大学における社会実装型の防災研究の推進につながる。
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