架橋反応性ペプチド核酸(PNA)を用いた遺伝子発現制御法の開発

第 26 回万有仙台シンポジウム Poster 発表要旨
架橋反応性ペプチド核酸(PNA)を用いた遺伝子発現制御法の開発
Development of a methodology for the regulation of gene expression
using peptide nucleic acid (PNA) having a crosslink ability
秋澤拓也、永次史
東北大学、多元物質科学研究所、生命機能分子合成化学研究分野
近年、癌や糖尿病等の疾患が遺伝子異常に基づくことが明らかにされ、遺伝子レベルにおける治
療法をめざし標的核酸に強固に結合する人工核酸の開発がさかんに行われている。その人工核酸の
一つにペプチド核酸(PNA:図 1)がある。PNA は標的鎖に対し安定な二重鎖を形成することが可
能であり、さらに、この高い二重鎖形成能に基づく他の人工核酸にはない特徴として、高次構造を
形成した核酸に対しインベージョンする性質がある。この性質はアンチジーン法やアンチセンス法
に基づくバイオドラックや、分子ツール等への展開が期待できるため、大変興味深い性質である。
しかしながら、生理的条件下(高塩濃度条件下)では、PNA と標的鎖の二重鎖の安定性が減少す
ることがわかっている。そこで私たちはこの問題点を改善する方法として、架橋反応に注目した。
架橋反応性をもつ PNA は標的鎖と二重鎖形成後共有結合を形成することで、二重鎖の安定性が飛
躍的に向上すると期待した。
HN
PNA1
N (Ac)GTTXGGGTTAG Arg Arg Gly C
PNA1a: X=AVP, PNA1b: X=AOVP
PNA2
N (Ac)XGTTAGGGTTAG Arg Arg Gly C
PNA2a: X=AVP, PNA2b: X=AOVP
O
BASE
N
O
AVP (1)
図 1, ペプチド核酸(PNA)
図 2, 架橋反応性塩基の構造
図 3,
今回合成した PNA の配列
当研究室では既に 2-アミノ-6-ビニルプリン(AVP, 1:図 2)を含むオリゴヌクレオチドが相補的
な位置に存在するチミンと選択的に架橋を形成することを報告している 1)。そこで本研究では、生
理的条件下でも安定な二重鎖を形成する PNA として、AVP をもつ PNA を開発することとした。
図3に示す配列を持つ AVP を含む2種類の PNA を合成し、その反応性を検討したところ、配列
末端に AVP を持つ修飾 PNA2 が DNA 中のチミン及び RNA 中のウラシルと選択的に架橋形成する
ことがわかった。さらに AVP を持つ修飾 PNA を用いて miRNA の生合成に関わる酵素である Dicer
の阻害を検討した。末端に AVP を導入した修飾 PNA は、標的 RNA に架橋形成し、架橋反応性を
持たない PNA に比べ、Dicer の阻害効率を向上することがわかった。本発表では、これらの PNA
の合成、反応性の評価さらに Dicer の阻害について詳細に報告する。
<参考文献>
1)Shuhei Imoto et al., Bioorg. Med. Chem. Lett., 20, 2010, 6121
研究室紹介写真
発表者紹介
氏名 秋澤拓也
所属 東北大学
氏名
多元物質科学研究所
合成化学研究分野
学年 博士 3 年
研究室
あきさわたくや
永次研究室
生命機能分子