特許権の失効に対する代替知的財産権の活用法(その1) ~著作権の

特許権の失効に対する代替知的財産権の活用法(その1)
~著作権の活用による発明保護~
並木幸久 1、中込大介 2
1
株式会社国際総合知財ホールディングス
2
学校法人専門学校東洋美術学校
概要
1990年から1999年までの10年間で、日本特許庁への特許出願件数は1996年をピークと
して年々減少傾向にあった。出願された発明は、特許庁の審査を経て、拒絶される発明と登録が可能な
発明に別れる。また、拒絶を受けなかった発明でも様々な事情や目的によって特許として登録されない
こともある。そのため、特許の出願件数と登録件数は一致していない。本研究では、特許登録された特
許が今後失効する件数を分析し、失効する特許権に代替できる知的財産権を研究する。
知的財産権は特許法や商標法などの工業所有権法に基づく権利、著作権法に基づく権利及び契約法
(日本では契約法がないため、民法と商法が代替法)に基づく権利の3つに大別できる。工業所有権法
は安定権利で、権者が排他権を有することができる強力な権利である。その一方で、著作権法は不安定
権利で、権者は差止請求権を行使し、損害賠償の請求に限られる。しかしながら、著作権は工業所有権
のような審査は必要なく、著作物の創作と共に著作者人格権と著作財産権が権利化される。つまり、著
作権は第三者の審査を必要としない権利で、その存在の証明が難しく、不安定な権利とされている。こ
のような問題を緩和する対策として、日本の文化庁は著作権法に基づく著作権の登録制度を設けている。
この登録制度は、工業所有権のような審査制度はなく、書面審査のみで、登録された著作権は、第三者
に対抗する要件にしかならない。つまり、著作権の存在と帰属のみを登録できる制度で、工業所有権の
ような排他権はない。また、限定的な著作権に限られているため、受益権を保護する実用性に欠ける。
その一方で、米国にも著作権の登録制度がある。著作物を作成したこと自体を登録することができる制度
で、この制度を利用すると、全ての著作物について著作権登録を受けることがでる。米国で登録された著作
権は他国でもその証明書を行使することができる。米国で登録された著作権が日本の最高裁判決で、著作権
を侵害した被告に対して仮処分が執行された判例がある。この実例のように、特許権の失効を著作権で代替
的に保護することが可能である。本研究では、特許権の失効に対して著作権を活用する方法を開発し、持続
的な知的財産権による発明の受益権保護に役立てる。
特許庁統計データ引用
出願件数
Application
登録件数
Registration
登録率
R/A Ratio
1990
1991
1992
1993
1994
1995
1996
1997
1998
1999
367590
369396
371894
366486
353301
369215
376615
391572
401932
405655
59401
36100
92100
88400
82400
109100
215100
147686
141448
150059
16%
10%
25%
24%
23%
30%
57%
38%
35%
37%