設計品質改善手法 DFSSにおける Crystal Ball の活用 DFSS(Design for Six Sigma)をはじめとする設計品質改善手法は、製品開発の初期の段階で製品品質を上げることを目 的としています。DFSS の実践に Crystal Ball を使用すると、さまざまな設計オプションをシミュレートすることができます。 DFSS は以下のような効果をもたらします。 (1) 製品開発費用を削減する (2) 製品開発時間を短縮する (3) 再作業や廃棄の発生を排除し、プロトタイプのテストを減らす一方で、顧客満足度を上げる 以下では、 http://www4.kke.co.jp/cb/sample/download/SampleFiles_JP/DFSS%20Fluid%20Pump.xls を例に紹介しています。 ボトリングポンプの設計: 性能の目標値を設定する ストーリー 下方規格限界(LSL):47.2617 ml/秒 上方規格限界(USL):53.9283 ml/秒 目標値:50.5950 ml/秒 ある食品会社が、タンクに貯蔵されている加工済みの飲料を一定 の速度でビン詰め(ボトリング)するポンプシステムを、あなたが勤 めるポンプメーカーに発注してきました。 この食品会社は、全国に多くの工場を展開しているため、相当数 のポンプシステムを必要としています。飲料の需要は地域によって 異なり、各工場にはそれに応じたラインがあります。タンクからビン に飲料を移すボトリングポンプは、ラインに見合った流量を適切に 保つ必要があります。 まず、マーケティングと製造の立場から受容できる流量の範囲を 決定します。この決定は、飲料の需要に見合った毎日の生産本数、 食品工場の環境や生産性から見て適当な毎日の稼働時間、各工 場に設置するポンプ数に基づきます。顧客はマーケティング面の要 件をこれらの技術仕様に置き換えて、左のような流量の条件をあな たに提示しました。 これらの条件に基づいて、あなたはボトリングポンプを提案します。ワークシートの図は、システムの概略を示しています。 基本流量Fは以下の関係があります。 F=流量(ml/秒) R=ピストンの半径(mm) S=モーターの回転速度(rpm) F = (K p R2L - B) S K=定数 L=ストローク長(mm) B=逆流量(ml/秒) Crystal Ballに条件を埋め込む 基本流量と変数 基本流量F は、上記のように「ピストンの半径(mm)」「ストローク長(mm)」「モーターの回転速度(rpm)」「逆流量(ml/秒)」の 4つの変数で定義されます。ボトリングポンプの性能が条件を満たしているかどうかは、この基本流量で評価します。 工程能力分析機能の有効化 基本流量を評価するために、Crystal Ballにおける「工程能力分析」機能を有効 にします。設定は下記の手順で行います。 1. 2. 3. Crystal Ballメニューの「実行プリファレンス」を選択します 統計量タブを選択し、「工程能力指標の計算」にチェックを入れます(右図) オプションをクリックすると詳細な設定が可能です。その中にある「Z値シフト」 は短期指標と長期指標の差で、短期指標でのZ値が3.0である場合、長期指 標は1.5と想定できます。 仮定の定義 基本流量の式に含まれる4つの変数をCrystal Ballの仮定(確率分布、仮想的な サイコロ)として扱えるように設定します。これにより、各変数に変動幅を持たせて モンテカルロ・シミュレーションを実行することによって、ラインを稼働したときに流 れる流量のシナリオをいくつも生み出すことができます。 今回の例では、正規分布を使用して仮定を定義します。基本流量の変数分布の パラメータは以下の通りです。 • • 平均値 : 表の「設計値」欄の初期値 標準偏差 : 表の「標準偏差」欄の初期値 評価項目を決定する 評価項目の決定と設定 Crystal Ballの工程能力分析機能を有効にすると、基本流量を「予測」として評価 項目に設定する際、流量の下方規格限界(LSL)、上方規格限界(USL)、目標値を 設定することが可能です。実際に設定している様子が左図です。 ここまでの設定が終了したらシミュレーションを実行します。Crystal Ballのサイト にあるサンプルモデル「ボトリングポンプの最適化」では、既にここまでの設定がな されておりますので、シミュレーションを実行するだけで結果を得ることができます。 ■ダウンロードURL http://www.kke.co.jp/cb/sample/download/SampleFiles_JP/DFSS%20Fluid%20Pump.xls シミュレーションを実施する 流量のシミュレーション結果(ヒストグラム) シミュレーションを実行すると、流量の予測値がヒストグラ ムとして表示されます。これは、設定したシミュレーション回 数分、仮想的にボトリングポンプを作動させた結果です。 加えて、設定した目標値、下方/上方規格限界、3σの値 が補助線と共に表示されます。また、ウィンドウの右側には ヒストグラムの統計量と工程能力分析の指標が表示されま す。 ヒストグラムが青い部分と赤い部分に分かれていますが、 これは下方規格限界の値で分割していることを表していま す。分割したときの青い部分の面積、つまり下方規格限界 と上方規格限界の範囲に収まるのは94.28%であることが、 下の信頼度よりわかります。また、平均値は目標値よりも 下回っており、改善する必要があると言えます。 流量のシミュレーション結果(正規性検定) 次に正規性を確認します。結果ウィンドウの右上を見ると「正規性検定にパスしました」という文言がありますので、このシ ミュレーション結果はおおよそ正規性を持っていると言えます。その上で、改めて下方/上方規格限界を確認してみます。上 方規格限界については、Z-USLの値が3.72であることから問題はありませんが、Z-LSLの値は1.57であり3を下回っているこ とから問題があると言えます。また、工程能力指数であるCpの値を見ると、最低許容値と考えられている1.33を大きく下回っ ています。したがって、ボトリングポンプの中に改善すべきパラメータがあることがわかります。 感度分析による工程能力の改善 改善点を見つけ出す シミュレーション結果に対して感度分析を行ってみると、左図のような結果になり ます。基本流量の品質に影響を与えているのは「ピストンの半径(mm)」であること がわかりました。 改善してシミュレーションを行う ピストンの半径のパラメータを変更してシミュレーションを 行うとどうなるでしょうか。試しにモデル上のピストン半径の 標準偏差が0.33333となっている部分がありますので、これ をより少ない値に変更します。今回は半分の0.16667に変更 します。 変更してシミュレーションを行った結果が右図です。平均 値は目標値より低いままですが、上方規格限界は5.70、下 方規格限界は2.39となり、合わせて下方規格限界と上方規 格限界の範囲に収まるのは99.44%であることがわかります。 株式会社構造計画研究所 〒164-0011 東京都中野区中央4-5-3 オペレーションズ・リサーチ部 製品ホームページ: http://www.kke.co.jp/cb/ http://www.kke.co.jp TEL : 03-5342-1090 FAX : 03-5342-1246 E-mail :[email protected] ※このパンフレットの記載内容は2015年1月現在のものです。※本製品・サービスの内容の条件は、改善のために予告無く変更することがあります。 ※構造計画研究所、構造計画研究所ロゴは、株式会社構造計画研究所の登録商標です。 ※記載されている会社名や製品名は、各社の商標または登録商標です。※本製品の開発元は、Decisioneering, Inc.です。
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