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3 テキスト 曲線と曲面の微分幾何 小林昭七著 裳華房
3 プリント http://www.gem.aoyama.ac.jp/∼nakayama/print/
3 Def (Definition の略) 定義 · · · 名前を付けること
Thm (Theorem の略) 定理 · · · 重要な性質
Prop (Proposition の略) 命題 · · · ちょっと重要な性質
Lem (Lemma の略) 補題 · · · 定理を導くための道具となる性質
Cor (Corollary の略) 系 · · · 定理から簡単に導かれる性質
§1. 球面の幾何学
3 三角形の内角の和は180度だろうか?
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‫&ܛ‬
‫ܛ‬%
$
(1) 球面上の “線分”
3 球面上の2点 A, B を結ぶ最短曲線は何か?
中心を通る平面と球面との切り口を大円という.
例えば,赤道は大円の1つである.
3 球面上の2点を結ぶ最短曲線は大円の一部になる.
以下,この大円の一部を,球面上の “線分” と考えていく.
(2) 球面三角形 △ABC の面積
(以下,球の半径 r は 1 とする)
3 点 A と B を通る大円,点 B と C を通る大円,点 C と A を通る大円により,球面は
8つの部分に分かれる.それぞれの部分の面積を,図のように,(1),(2),· · · , (8) と
する.
3 球の中心に対して,点 A の真反対の点を A∗ と書き,対心点という.
例題 1 △ABC と △A∗ BC を合わせた部分の面積 (1)+(3) は,
2
角 A の大きさを ∠A とするとき,
4πr2 ·
∠A
= 2∠A (r = 1)
2π
になる.
問題 1 △ABC と △AB ∗ C を合わせた部分の面積 (1)+(4) を,角 B の大きさ ∠B を
用いて表せ.また,△ABC と △ABC ∗ を合わせた部分の面積 (1)+(2) を,角 C の
大きさ ∠C を用いて表せ.
例題 2 △A∗ B ∗ C ∗ は △ABC を裏返したものなので,面積は変わらず,(1) = (8) が成
り立つ.
問題 2 同様にして,(2), (3), (4) と同じ面積のものをあげよ.
3 球面の面積は
(1) + (2) + (3) + (4) + (5) + (6) + (7) + (8) = 4π
より,上の考察から,球面三角形 △ABC の面積 (1) が
∠A + ∠B + ∠C − π
になることがわかる.一般には次が成り立つ.
定理 1 (ガウス・ボンネの定理)
半径 r の球において,球面三角形 ABC の面積は
r2 (∠A + ∠B + ∠C − π)
になる.
系 2
三角形の内角の和は 180◦ より常に大きく,いろいろな値を取ることができる.
§2. 平面曲線
定義 1 (曲線の表示)
平面内の曲線上の点を,パラメータ t を使い,p(t) = (x(t), y(t)) と表す.
ẋ = dx
, ẏ = dy
dt
dt
ṗ = (ẋ(t), ẏ(t)); 速度ベクトル
√
|ṗ| = (ẋ(t))2 + (ẏ(t))2 ; 速さ
∫ t
s(t) =
|ṗ(t)|dt; 曲線の長さ
0
3 曲線のパラメータとしては曲線の長さを取ることが重要である.このとき,弧長パ
ラメータという.
命題 3 曲線は曲線の長さ s でパラメータ表示すると速さが 1 になる.
3
逆に,速さが 1 のパラメータ表示が弧長パラメータ表示になる.
命題 4 曲線の長さはパラメータの取り方によらない.
定義 2
p(s); 曲線の弧長パラメータ表示
dp
e1 (s) を,p(s) における単位接ベクトルとする.特に,e1 (s) = p′ (s) = ds
e2 (s) を,e1 (s) を反時計回りに 90◦ 度回転したベクトルとする.
3 
まとめ (e1 , e2 をフレネ標構という)

e1 = p′ (s)


 e ·e =1
1
1

e2 · e2 = 1



e1 · e2 = 0
命題 5
d
(内積の微分の公式) dt
(a · b) = a′ · b + a · b′
命題 6
実数 κ(s) が存在して,
{
e′1 = κe2
e′2 = −κe1
が成り立つ.
定義 3 κ(s) を曲線 p(s) の曲率 (curvature) という.
( )
t
例題 3 p(t) =
について,その曲率を計算せよ.
2t
問題 3 半径 r の円
{
x(t) = r cos t
y(t) = r sin t
について,その曲率が常に 1r になることを示せ.
定義 4
e2 (s) の始点を原点に集めて描くとき,ガウスの表示という.
定理 7
曲率が恒等的に 0 になることと,曲線が直線になることは同値である.
(必要十分条件)
定理 8
2 つの平面曲線 p(s), p(s) の曲率をそれぞれ κ(s), κ(s) とする.
曲線 p(s) を回転したり平行移動して曲線 p(s) にできることと,どのような s に
ついても κ(s) = κ(s) が成り立つことは同値である.
4
{
例題 4
x = a cos t
(a > b > 0) の曲率は
y = b sin t
(楕円)
κ=
ab
(a2
3
2
sin t + b2 cos2 t) 2
になる.
問題 4 (アステロイド曲線) (x(t), y(t)) = (cos3 t, sin3 t) (0 ≦ t ≦ π2 ) の曲率を求めよ.
(∫ t
)
∫ t
au2
au2
注意. (クロソイド曲線) (x(t), y(t)) =
cos
du,
sin
du の曲率は時間に
2
2
0
0
比例する.このため,インターチェンジやジェットコースター等で利用されている.
注意. 上の例題の解き方は一般的に成り立ち,曲率だけを求めるのならば,次の便利
な公式がある.
ẋÿ − ẍẏ
3
(ẋ2 + ẏ 2 ) 2
ここで,ẋ =
∫
dx
,
dt
ẍ =
d2 x
.
dt2
b
|κ(s)|ds を全曲率という.
定義 5
a
定義 6 p + κ1 e2 のことを曲率の中心といい,曲率の中心の軌跡を縮閉線という.
曲線 c の縮閉線が ℓ のとき,c を ℓ の伸開線という.
§3. 空間曲線


x(s)


p(s) = y(s) (a ≦ s ≦ b); 空間曲線
z(s)
ただし,
|p′ (s)| = |


 s は弧長パラメータとする(すなわち,
x′ (s)
 dp  ′ 
= y (s) を e1 (s) とする.
p′ (s) =
ds
z ′ (s)
定義 7
dp
(s)|
ds
= 1)
|e′1 (s)| を κ(s) と書き,曲線 p(s) の曲率という.
補題 9 e′1 ⊥ e1
3 以下,{
κ(s) ̸= 0 と仮定する.
e2 = κ1 e′1
定義 8
e3 = e1 × e2
で e2 , e3 を定めるとき,補題より e1 , e2 , e3 は正規直交基底になる.
e1 , e2 , e3 を,Frenet 標構 (Frenet frame) という.
補題 10 e′2 + κe1 と e3 は平行になる.
5
れいりつ
定義 9
e′2 + κe1 = τ e3 により τ を定める.τ を捩率(torsion) という.