「モノポーラーセッシを使った剥離郭清操作」 三菱京都病院 外科 尾池 文隆 【背景】近年の超音波凝固切開装置、バイポーラ型シーリングデバイスなどのエネルギ ーデバイスの進歩はめざましいが、いまだ繊細さに欠け操作性に不満を感じることも多 い。またシングルユースのものが多く地球環境保護の点でも好ましくない。肝移植では、 強い凝固異常、側副血行路の発達や手術既往・炎症による癒着のなかで脈管を損傷せず に確実に露出する剥離操作が必要とされるが、この難条件に対応した剥離手技として pinch-burn-cut method (PBC method、つまみ焼き)が多用される。 【目的】PBC method を市中病院での癌手術に応用できるようにモノポーラセッシを使 った。 【方法】エルベモノポーラーセッシ P-20195-095 を使用し、PBC method を、胃癌、大 腸癌、肝門部胆管癌、膵癌などの開腹手術におけるリンパ節郭清に応用した。 【成績】出血のないドライな視野でリンパ節郭清が可能であった。鈍的剥離、切離、つ まみ焼きによる剥離、出血に対する止血などの操作が一本のセッシで可能である。 【考察】肝移植における PBC method は、漏電を防ぐようプラスティックコーティング されたセッシを使用。繊細なセッシの先で層に沿った剥離を行い、残った線維組織を少 しずつつまみ上げたセッシに助手が電気メスをあてて通電することで凝固切離する。京 都大学肝胆膵移植外科などで多用され強力な止血能力と同時に繊細な剥離が可能な方 法であるが、助手との息が合わないと手術進行に支障をきたす。モノポーラーセッシを フットスイッチで使用することで、助手の手を余分にとられることなく術者のリズムで 手術を進めることができ、少人数で手術時間も短縮できて市中病院における開腹癌手術 に適した手技となる。 【結論】モノポーラーセッシは、シンプル・安価な凝固デバイスであり、PBC method に使用することで、出血のない迅速かつ繊細なリンパ節郭清が可能である。
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