2015/1/21 「初期化」生命の常識変えた 山中・ガードン両教授 10日,ノーベル賞授賞式 朝日新聞 (本紙記事より) 2012年12月 6日 ES細胞とiPS細胞 問題点と未来 ノーベル賞決定後,初めて顔を 合わせた山中伸弥さんとジョン・ ガードンさん=10月24日,米 サンフランシスコのグラッドス トーン研究所 京都大の山中伸弥教授と英ケンブリッジ大 のジョン・ガードン教授が10日,ストック ホルムでノーベル医学生理学賞を受ける。授 賞理由は「成熟した細胞を初期化して万能 な状態に戻せることの発見」だ。2人の発 見には半世紀近い隔たりがあるが,ともに生 命の常識を塗り替えた。万能性を身につけた iPS細胞(人工多能性幹細胞)は進化を続 け,まもなくヒトの治療に使える品質に達し ようとしている。 朝日新聞 (本紙記事より)2012年12月 6日 受精卵 幹細胞とは 生殖細胞 胚盤胞 原腸胚 精子 外胚葉 (外層) 内胚葉 (内層) 中胚葉 (中層) 沿軸 頭部 消化管 咽頭 呼吸管 肺 細胞 甲状 腺細胞 すい臓細胞 側面 顔面筋 骨格筋細胞 脊索 色 素 細胞 ニューロン 皮 膚細胞 中間 赤血球 背側 腎尿細管 中枢 外面 神経系 神経堤 卵子 ・・ ・ https://www.skip.med.keio.ac.jp/general/article/01/ Waddington (1957) 遺伝要因と環境要因が相互作用し最終 的な生物を形成する=エピジェネティクス 受精卵を斜面から転がり落ちるボールに例えて,正常な発生の過程で受精卵は 決して元の状態に戻ることはなく,またほかの細胞に転換することもないという説 https://www.skip.med.keio.ac.jp/general/article/02/ https://www.skip.med.keio.ac.jp/general/article/03/ http://www.pref.aichi.jp/cancer‐center/ri/01bumon/10genom_seigyo/ 1 2015/1/21 ⽣物の体はなぜ再⽣できるのか? https://www.skip.med.keio.ac.jp/general/article/planaria/ PubMed http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23883928 epigenetics 【名】《遺伝》エピジェネティックス,後成的遺伝学, 後生学,後生説学 中国では「表現遺伝学」と表記 epigenetic 【形-1】《生物》後成の,後成的な 【形-2】《遺伝》エピジェネティックな,〔変異が〕DNA の塩基配 列の変化なしに起こる,非遺伝の,遺伝子外の,〔病気の原 因が〕従来の遺伝子の働きではなく遺伝子を制御する部分 の働きの異常による,遺伝子を越えたところの 【形-3】《地質》後生の,後生的な ⽣物の体はなぜ再⽣できるのか? https://www.skip.med.keio.ac.jp/general/article/cynops/ ①DNAのメチル化 メチル化されると遺伝子発現が抑制 ②ヒストンのアセチル化 アセチル化されると遺伝子が働きや すくなる ③マイクロRNA(miRNA) タン パク質をコードしない小さな機能 性 RNA 分子で,翻訳抑制などを 行 っている。 Akai et al. (2010) Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A 107, 8153-8158 hi-MOST (histone modifications to structural change of the nucleosome) モデル 2 2015/1/21 ほ乳類でも,卵子のなかに 「体細胞を全能性胚細胞に 初期化する能力」 があることが証明された 再び受精卵となる」という能力の一端は,卵子が持っている?! https://www.skip.med.keio.ac.jp/general/article/04/ https://www.skip.med.keio.ac.jp/general/article/04/ ES(Embryonic Stem)細胞 倫理上の問題 拒絶の問題 2014年2月6日 iPS細胞の誕⽣ https://www.skip.med.keio.ac.jp/general/article/07/ 人工多能性幹細胞(induced Pluripotent Stem,iPS) induced Pluripotent Stem Cells 山中伸弥(Shinya Yamanaka)京都大教授が作製に成功した人工多能性幹細胞 (2007年11月27日,山中教授提供)。(c)AFP/SHINYA YAMANAKA / KYOTO UNIVERSITY 朝日新聞・朝刊 2008.1.1 3 2015/1/21 山中伸弥(Shinya Yamanaka)京都大教授が作製に成功した人工多能 性幹細胞(左上)。人工多能性幹細胞から作り出した,筋肉細胞(左下), 神経細胞(右下),軟骨細胞(右上)。(2007年11月27日,山中教授提 供)(c)AFP/SHINYA YAMANAKA / KYOTO UNIVERSITY 体細胞を初期化し,万能性(分化多能性)を誘導する方法としては,これまで体細胞の 核を未受精卵に移植する核移植法と,ES細胞と融合する方法が知られています。しか しいずれの場合も,ヒト胚や,胚に由来するES細胞を利用することになり,倫理的な課 題があります。今回私達は,体細胞に少数の因子を導入することにより,卵子や胚を用 いず,直接的に万能幹細胞を誘導することに成功しました。 ②レトロウイルスベクターを利用 してiPS因子を導入する iPS細胞をマウスの皮下に移植すると腫瘍が形成され,組織的に解析す ると神経組織(外胚葉),消化管様の菅腔構造(内胚葉),軟骨組織 ①ヒト皮膚繊維芽細胞 (ホスト細胞) ③外来遺伝子が導入された 細胞を赤色で示した ④ES細胞様の細胞コロニーが 形成される。これがiPS細胞 (中胚葉)など三胚葉に由来する各種分化組織,細胞が認められる。 iPS細胞作成の手順 多能性幹細胞の誘導 皮膚線維芽細胞に less famous Specifically expressed in ES cells and/or Important roles in ES cells Oct3/4,Sox2,Klf4,c-Mycの4種類の遺伝子 iPS細胞とES細胞の関係 メリット ES細胞 iPS細胞 (proto)oncogenes Important for proliferation of ES cells, but not in early embryos ES cell‐specific transcription factors Essential for pluripotency in ES cells and early embryos 共通の課題 Pluripotency-inducing factors (PIF) 1.多能性をもつ 2.ほぼ無限に増殖 3.遺伝子の導入不要 4.知見が蓄積されている 1.多能性をもつ 2.ほぼ無限に増殖 3.移植時の拒絶なし 4.胚が必要ない デメリット 1.移植時に拒絶の可能性あり 2.胚利用による倫理的問題 3.胚の入手が問題 1.遺伝子の導入が必要で, がん化の可能性あり 2.初期化のメカニズムが不明 1.多能性維持などのメカニズムが未解明 2.ほぼ無限に増殖するため,がん化の可能性あり 3.目的の細胞,組織に分化誘導する技術がまだ確立されていない ES細胞とiPS細胞の特徴 4 2015/1/21 山中教授は,それまで卵子を使ったクローン技術が可 能にしてきた「初期化」という現象を,卵子も使わず, たった4つの遺伝子を細胞に導入することにより再現で きることを,2006年マウスで,2007年にはヒトで示した。 ・ http://www.cira.kyoto‐u.ac.jp/nakagawa/?page_id=990 http://ameblo.jp/doctor‐away/entry‐11380271904.html iPS細胞の課題 http://www.cira.kyoto‐u.ac.jp/nakagawa/?page_id=990 iPS細胞の課題 iPS細胞の課題 朝日新聞 2011年5月14日 5 2015/1/21 (朝日新聞 2012年12月6日掲載) iPS細胞の利⽤ https://www.skip.med.keio.ac.jp/general/article/06/ iPS細胞による再⽣医療 http://www.jst.go.jp/ips‐trend/about/story/no10.html iPS細胞による再⽣医療 iPS細胞による再⽣医療実現に向けて 2007年12⽉6⽇、⽶科学雑誌「Science」 の電⼦版に⽶ホワイトヘッド⽣物医学研究 所のRudolf Jaenischらの研究グループが、 iPS細胞を⽤いてマウスの鎌状⾚⾎球貧⾎ 症を治療することに成功したと発表しまし た。 http://www.jst.go.jp/ips‐trend/about/story/no11.html http://www.jst.go.jp/ips‐trend/about/story/no12.html 6 2015/1/21 再⽣医療と⽣命倫理 iPS細胞の未来 http://www.jst.go.jp/ips‐trend/about/story/no13.html http://www.jst.go.jp/ips‐trend/about/story/no15.html 疾患特異的iPS細胞 https://www.skip.med.keio.ac.jp/general/article/09/index.html 組織幹細胞 • 骨髄には造血幹細胞があ り,赤血球や白血球など の血液細胞を作っていま す(多分化能)。 • その他,皮膚や肝臓など 様々な場所で見つかって います。骨折が治るのも, 髪の毛を切ってもまた生 えてくるのも,それぞれ の場所に存在する組織幹 細胞の働き(自己複製 能)のおかげです。 臨床応用における 組織幹細胞と多能性 幹細胞の関係 多能性幹細胞はわた したちのからだの中 のどのような細胞に もなる(分化する) ことができ,培養皿 のなかではほぼ無限 に増殖します。 7
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