エネルギー使用合理化取引市場設計関連調査 (排出削減量取引市場

平成 16 年度経済産業省委託業務
エネルギー使用合理化取引市場設計関連調査
(排出削減量取引市場効率化実証等調査)
平成17年3月
東京工業品取引所
東京工業品取引所 市場構造研究所の事前の許可なく、
本報告書を複製、転載、引用、または配布することは、
固くお断りします。
はじめに
地球温暖化対策に関する国際的枠組みである京都議定書は、発効に不可欠であった
ロシアの批准により本年 2 月に発効した。これにより先進各国は、2008 年から開始す
る第一約束期間において、各国が約束した温室効果ガスの排出に係る数値目標を遵守す
る義務を負ったことになる。今後、先進各国の取組みの強化が予想される。
EU は、京都議定書発効前の本年 1 月、キャップ&トレード型の域内排出権取引制度
をスタートさせた。これまで、取引を国内に限定した英国制度や自主参加型のシカゴ気
候取引所はあるが、京都メカニズムとのリンクを可能にした広域取引は EU 排出権取引
制度が世界初であり、先進 20 数ヶ国が参加する巨大取引市場が創設されたことになる。
一方、我が国は、昨年から地球温暖化対策推進大綱の評価・見直しの作業を進めて
おり、その結果は 2 月施行の地球温暖化対策推進法に基づき策定される京都議定書目標
達成計画に反映される。現時点ではこの目標達成計画は、ほぼ大綱をひきついで,自主
行動と省エネ法の拡張になるようだが、今後、民生・運輸部門の排出削減が期待通り進
まず、産業界の自主的取り組みの実効性も担保されないという状況に陥れば、第 2 ステ
ップの途中からでも追加的措置が導入されることは明白である。
この追加的措置に関して、環境省は,環境税導入を主張する一方、補助金によって追
加的削減を引き出す仕組みを兼ね備えた自主参加型の国内排出権取引制度を来年度か
ら約 2 年間に亘って実施すべく準備を進めている。
こうした動きがある中で、我が国にとって温室効果ガスの削減目標を経済効率的に達
成できる制度としてどういう制度が望ましいのかを、事前かつ早急に検討しておくこと
は意義のあることである。
本調査は、昨年度に引き続き経済産業省からの委託を受けて実施するものであり、京
都議定書上、我が国に課せられた温室効果ガス削減目標を経済効率的に達成するために
有効な手段である排出権取引制度を中心に研究を行うものである。
昨年度は、主に公平性、目標達成の確実性、経済効率性の観点から理論的考察を加え
ながら各種排出権取引制度の比較検討を行ったが、今年度は実験経済学や一般均衡経済
モデル分析を踏まえて前回分析のレビューを行なっている。また、先行する欧米先進諸
国の国内制度についても追加調査を実施した。
今後、本調査の成果が我が国の排出権取引に係る制度設計の一助となれば幸甚である。
なお、本調査の実施にあたり、長島・大野・常松 法律事務所、(財)日本エネルギー
経済研究所を始め、関係諸機関・企業等の皆様より並々ならぬご協力を賜ったことに対
し、厚く感謝の意を表したい。
平成17年3月
東京工業品取引所
市場構造研究所
《
目次 》
市場構造研究所 研究スタッフ
1
サマリー
3
序
地球温暖化を巡る国内外の動向
21
第1部 国内制度設計
39
第1章 実験経済学の手法による制度設計
40
1.1 昨年度の実験のレビュー
40
1.2 本年度の実験の目的
41
1.3 実験のデザイン
42
1.4 エキスパート養成と実験本番までの手続き
58
1.5 実験の評価基準
63
1.6 実験結果の概要
64
1.7 実験結果の比較・検証
108
1.8 制度比較
133
1.9 実験の結語
145
第2章
148
CGE を用いた国内排出権取引制度の定量評価
2.1 経済モデルの基本構造と GTAP-E モデル
148
2.2 取引制度要素
172
2.3 前提条件
172
2.4 シミュレーション分析の結果と評価
173
2.5 リーケージ評価
212
2.6 シミュレーション分析の結言
229
第2部
233
2008 年以降を見据えた具体的な国内制度の設計
第1章 望ましい国内制度に関する考察
234
1.1 望ましい規制方式に関する考察
234
1.2 実験結果からの検証
238
1.3 望ましい上流規制制度の考察
248
1.4 政府が国際排出権取引を利用不可能な場合の制度比較
268
1.5 結語
270
第2章 取引円滑化のための論点整理
275
2.1 制度インフラの検討
275
2.2 クレジット価格
331
2.3 取引に掛かる法的安定性 − 日本におけるクレジット取引について
352
第3章 制度上の論点抽出と整理
397
3.1
397
CO2 以外の温室効果ガスおよび燃料の燃焼以外からの CO2 の取扱い
3.2 京都クレジットの調達に向けて
410
3.3 下流モニタリング費用と取引費用
430
3.付
437
UKETS ディセンディング・クロック・オークション
第3部 排出権取引に関する海外の動向
451
第1章
EU 排出量取引制度における排出枠の初期割当
452
1.1
EUETS の概要
452
1.2
EUETS 割当概要
456
1.3
EUETS の割当決定方法(英国、ドイツ、フランス、オランダ)
470
1.4
EUETS 割当量の数値分析
519
第2章 カナダにおける国内排出量取引制度の導入に向けた検討動向
527
第3章 米国における排出権取引の動向
544
第4章 ノルウェーの排出量取引制度
556
第5章
562
EUETS を中心とした温室効果ガス排出量取引制度のリンケージ
第6章 欧米取引所の動向
570
【参考資料】
580
参考資料1
制度設計のための実験とは(15 年度報告書の再掲)
参考資料2
実験実施のためのインストラクション・操作マニュアル
参考資料3
饗場孝夫著「日本国政府が CER を購入する際の選別基準」
参考資料4
交信記録
参考資料5
上流オークション制度の解説
5.1 上流オークション制度の優位性(15 年度報告書の再掲)
5.2 上流オークション制度問答集(15 年度報告書の再掲)
5.3 上流オークション制度の一例
参考資料6
CGE を用いた国内排出権取引制度の定量評価(Appendix)
参考資料7
英国及び EU における排出量取引に係わる法的安定性