141.「一杯の紅茶の世界史」 140.「茶席の会話集

編 集:入 間市博 物館ボラ ンティ ア会
発 行:入 間市博 物館
〒358-0015 埼玉県入間市二本木100番地
平成27年2月1日発行
℡04-2934- 7711
( ホームページ) http://www.alit.city.iruma.saitama.jp/
茶書通鑑は、古から現代までの茶書の中から真に価値あるものを見極め、その分り易い批評・紹介
を“お茶の博物館ALIT”から発信する定期刊行紙です。
140.「茶席の会話集-亭主の言葉・客の言葉-」
茶 会 に 参 加 し た こ と の あ る 人 は 、茶 席 の 会 話 を 耳 に し た こ と が あ る だ ろ う 。道 具 自 慢
に 聞 こ え か ね な い 紋 切 型 の 会 話 だ が 、客 を も て な す た め に 揃 え た 道 具 を 客 は 点 前 の 合 間
に 亭 主 に 尋 ね る こ と に な っ て い る 。も て な し の 心 に 感 動 し た 客 は 、そ の 感 動 を 言 葉 や 体
で 表 現 す る の が マ ナ ー だ 。言 葉 に 表 現 す る た め に は 、文 化 的 な 知 識 が 必 要 で あ る 。言 葉
遣 い や 、間 合 い 、質 問 す る 順 番 に も 気 を 遣 う 。日 頃 の 訓 練 が な い と な か な か で き る も の
ではない。
「 茶 の あ る 人 」と い う 言 葉 が あ る 。そ の よ う な 人 た ち は 容 姿 、所 作 、会 話 に 独 特 の 美
し い オ ー ラ を 発 し て い る こ と が 多 い 。茶 道 を 何 十 年 も 続 け て 積 み 上 げ て き た 知 識 や 経 験
を 自 分 の 人 生 の 豊 か さ に 結 び つ け た 人 の こ と を 言 う よ う だ 。茶 道 は 修 行 だ と 感 じ て い る 。
茶 席 の 会 話 を 修 練 し て い く と 、職 場 、学 校 、家 庭 等 人 と の コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン の 場 で
た び た び 活 か さ れ て い る こ と に 気 づ く 。茶 道 は 古 来 よ り 人 と 人 、道 具 の 勉 強 と 教 え ら れ る 。
今も昔も人々をつなぐ言葉は重要な要素。茶席の会話
集を収めた本書をたびたび参考にしたいと思う。
三田富子著・淡交社・2003.12.18 刊
A5判・141 ページ・1,800 円(税別)
(文責:安部清子 入間市博物館嘱託専門員)
入間市博物館学芸員)
141.「一杯の紅茶の世界史」
私達が毎日飲んでいるお茶は、緑茶や紅茶、ウーロン茶・・・など いろいろですが、茶
は 中 国 を 起 源 と し て 世 界 各 地 に 伝 わ り 、そ れ ぞ れ の 気 候 や 風 土 に よ っ て 喫 茶 文 化 が 広 ま っ
てきました。
もともとは万病に効果を発揮する東洋の神秘薬として広まった“茶”。
十七世紀に入るとヨーロッパの人たちは、茶について関心を深め、緑茶は貴族や裕福な
人 々 の 間 で 人 気 を 呼 び 、日 本 の 抹 茶 の 飲 み 方 や 茶 道 が 珍 し い も の と し て 紹 介 さ れ て い ま す 。
中国の茶器や日本の茶碗も輸入され、茶を持つことは権力や富の象徴でもありまし た。
やがて、激しい貿易戦争の時代に入り、国家財政を揺るがすほどになる“茶”。
本 書 で は 、「 ヨ ー ロ ッ パ で い つ か ら 紅 茶 が 飲 ま れ る よ う に な っ た の か 」「 ど の 様 に し て
紅 茶 が 作 ら れ る よ う に な っ た の か 」「 戦 争 を 引 き 起 す ほ ど 茶 を 輸 入 し 、植 民 地 で 紅 茶 を 栽
培 し て き た の か 」な ど 、国 の 文 化 や 風 土 に よ り 変 化 し て い っ た 様 子 を 、紅 茶 研 究 家 で エ ッ
セイストでもある著者が紹介しています。
後半には、アメリカの発明品であるティーバッグや万国博覧会で生まれたアイスティー、
他 に 完 璧 な 紅 茶 の 入 れ 方 な ど も 紹 介 さ れ て お り 、 磯淵 猛著・文藝春秋社・2005.8.20 刊
さらりと読むことができる一冊です。
新書版・205 ページ・680 円(税別)
(文責:宮岡美智代 入間市博物館展示解説員)
茶書通鑑-第35号
142.「リプトン物語
~世界の紅茶王のお話~」
リプトンと言えばイギリス、いや世界を代表する紅茶ブランドとして知られている。日
本 で も「 イ エ ロ ー ラ ベ ル 」又 は「 黄 色 缶 」と し て 知 ら れ て お り 、私 が 初 め て 飲 ん だ 紅 茶( テ
ィーバッグだったかも知れないが)もリプトンだったと記憶している。
本書は、そのリプトン社の創始者にして「紅茶王」と言われたトーマス・J・リプトン
の没後60周年を翌年にひかえた1990年に、リプトン紅茶輸出開始百周年事業の締め
括りとして刊行された短編伝記本である。
本書は、「グラスゴーでの少年時代」、「青年実業家への道」、「世界の紅茶王へのス
タート」、「百万長者から億万長者へ」の4編構成で出来ており、リプトンの生涯におけ
る画期的なエピソードが紹介されている。「グラスゴーでの少年時代」は、彼が食料品店
の子供として生まれ、機転のきく子供で、10歳頃からはアメリカに渡って実業家になる
ことを目指していたことが簡単に紹介されている。「青年実業家への道」では、15歳で
アメリカに渡ってから19歳までの間に、さまざまな商いの知恵を学び、グラスゴーに戻
ってからは21歳で父から独立して食料品店を開業し、さまざまな広告手法を駆使して次
第に大きな会社へと発展していく過程が紹介されている。
本書の中核となるのは「世界の紅茶王へのスタート」であり、19世紀後半にイギリス
で紅茶の喫茶習慣が日常的になると、紅茶業に専念し、今日の基礎を築いていく過程が紹
介されている。彼は単なる実業家ではなく、実際に自園を巡ってそれぞれの茶園の気候等
を調査し、消費地の水質に適したブレンドをするなど、さまざまなアイデアと努力が成功
を導いたものと言える。「百万長者から億万長者へ」では、1898年にエドワード七世
より「ナイト」の爵位を授かるなど、彼のサクセスストーリが描かれている。
本書は短編伝記本ではあるが、ポスターや広告看板、茶缶など挿絵も多く、デザイン画
としても面白いので、ぜひ一読していただければと
思う。
荒木安正編著・リプトンジャパン株式会社・非売品
1990 年 11 月刊・190 ㎜×190 ㎜・57 ページ
(文責・今井正美 入間市博物館学芸員)
143.「知識ゼロからの日本茶入門」
本書は、「お茶を飲むと太りにくい って本当?」など“Q&A ”10問で始まり、日本茶の
基礎知識、日本茶のおいしい淹れ方、日本茶のおもてなしと愉しみ方、日本茶と お茶請けの合
わせ方を多くの図入りで述べ、最後に自分流のお茶の淹れ方のヒント を述べてい る。おいしい
お茶を淹れる基本手順は、①信頼できる店で茶葉を選ぶ
イズ・形状が 異なるので適した茶器を選ぶ
②お茶により適した急須や茶碗のサ
③水道水でお茶を淹れるときは十分にカルキ抜き
をする。鉄瓶で沸かしたお湯で淹れたお茶はまろやかになる
④茶葉の適した温度に調節する
⑤茶葉をお湯に浸す時間はおいしいお茶を淹れるポイント、慣れるまでは時計で正確に計るこ
と
である。
我が家は手間のかからないインスタントコーヒーを飲むことが多い。特に“このお茶が好き”
というのがないので茶葉もスーパーで購入している。本書名から分かるようにお茶に関する基
本的な知識が書かれており、既知のことが多いと思うが 、日本茶の良さを再認識するためにも
一度は読む価値があると考えている。
山下昌弘著・㈱幻冬舎・2009.4.25 刊
A5判・143 ページ・1,300 円(税抜)
(文責:菊池秀勝 入間市博物館ボランティア会)