大極殿前で華やかに完結式 - 平城宮跡サポートネットワーク

2010 年 6 月
NPO平城宮跡サポートネットワーク
歴史街道ウォーク
35 号
2 年半かけゴール
大極殿前で華やかに完結式
㊧相撲甚句で完結式を祝う宮岡功一さ
ん(中央)らNPO平城のメンバー
㊦天平衣装のボランティアの先導で大極
殿に向かうウォーク参加者たち
大阪・奈良歴史街道リレーウォークは 5 月1日、
ラのシャッターを切っていました。
大極殿前広場にゴールイン、2 年半にわたったウォー
完結式は大極殿前広場の特設ステージで行われ、リ
クが完結しました。ゴールの平城宮跡では、完結式が
レーフラッグが、NPO平城の伊部和徳理事長からリ
華やかにくり広げられました。
レーウォーク実行委員会の吉良隆司委員長に引き渡さ
19 年 9 月 24 日、大阪市中央区の難波宮跡をスター
れました。つづいてNPO平城のメンバーが平城遷都
ト。街道沿いの 14 か所で、地元の観光団体らがイベン
1300 年を祝う相撲甚句を披露しました。メンバーのひ
トを盛り上げました。最終回は平城宮跡めぐりには約
とり宮岡功一さんが自作の相撲甚句を唄い、NPOメ
400 人が参加して朱雀門から大極殿まで宮跡内をめぐ
ンバーたちが、
「アー、ドスコイ、ドスコイ」と唱和し
りました。
ました。
NPO法人平城宮跡サポートネットワーク
(NPO平
期間中のべ約 5,000 人が参加し、39 人が 15 回すべ
城)などリレーウォークの街道沿いの観光ボランティ
てを踏破、宮岡さんもそのひとりです。また 29 人が
アのメンバー約 150 人が天平衣装や各地ゆかりの衣装
10 回以上参加しました。参加スタンプの数に応じて記
をまとって参加しました。堺市のボランティアは南蛮
念品が贈られました。
大阪・奈良歴史街道リレーウォークの第 2 次リレー
人のいでたちです。パレードは四神旗を先頭に、天平
行列、
特別出演の県立添上高校吹奏楽部などが先導し、
ウォークが『遣唐使の道をたどる旅路』と題して、今
リレー参加者約 400 人は佐伯門から大極殿までパレー
秋から行われます。10 月 11 日、平城宮跡をスタート
ド。観光客もきらびやかなパレードに向け盛んにカメ
し、遣唐使船が船出した難波津へ向けて歩きます。
―1―
22 年度NPO総会
祖先の遺産を守ろう
1300 年祭に積極参加
「遷都 1300 年祭」という記念すべき年に巡
りあわせたことに感謝したい。同時に平城宮跡
事業報告と計画承認
サポートネットワーク
の22 年度通常総会が5
月 16 日、
平城宮跡資料
館講堂で開かれました。
伊部和徳理事長が、
平城遷都 1300 年祭へ
忘れず、この貴重な遺跡を後世に確実に引き継
全体計画を語る伊部理事長
NPO法人平城宮跡
の保存に生涯を賭けた棚田嘉十郎翁の精神を
ぐのが私たちの使命だと思っています。そのた
めにも、市民参加の「みまもり隊」によるパト
ロールをさらに充実させたいものです。
( 理事長 伊部和徳 )
■財政強化
正会員ならびに賛助会員の増強や助成金の確保に
の取り組みや新しくス
努める。
ターとした「みまもり
環境保全部会
隊」で宮跡の防災・防犯を強化するなど全体の 21 年度
事業報告と 22 年度事業計画を提案しました。
つづいて、宇治郷瑩環境保全部会長、本井建治広報・
清掃活動を年 11 回
企画部会長、宮岡功一教育・文化部会長がそれぞれの
■「地域の宝」
と予算を提案し、審議、承認されました。以下はその
平城宮跡を世界に誇る「地域
計画概要です。
の宝」として、だれもが快適
に過ごせる憩いの場とする。
全体計画
■清掃活動
平城宮跡および周辺の清掃
みまもり隊で防災強化
活動を年 11 回実施する。
この
宇治郷環境保全部会
部会の事業報告と事業計画、西上和雄事務局長が決算
うち、4 月 10 日(土)には市
■ 遷都 1300 年祭
民参加の大がかりな「第 8 回平城宮跡クリーンフェス
平城宮跡内で展開される遷都 1300 年祭記念事業
に協力し、諸事業に参画する。NPO平城独自の事
ティバル」開催した。
奈良県主催の「みんなで、守ロード事業」に年 4 回
業も積極的に取り組む。
参加する
■関連諸団体との連携
9 月 5 日(日)に開催される奈良県「2010 クリーン
平城宮跡の保存、継承とその活用の目標を同じく
アップならキャンペーンの平城宮跡地区に参加する
する関連諸団体との連携を強化する。
■みまもり隊
■みまもり隊
「平城宮跡安全・安心連絡協議会」の一員として、
平城宮跡の防災・防犯を強化するためみまもり隊
「平城宮跡みまもり隊」の防災・防犯パトロール
を中心にしたパトロール活動に取りくむ。
に参加する。 クリーン活動日に定期パトロール
■組織の充実
をするほか、随時パトロールを毎月 2 回、計 24
NPO活動に参加する人材の発掘、増強を図る。会
回実施する。
員の高齢化が進んでおり、若い会員確保が急務だ。
(5)万葉集の勉強会を開催する。
―2―
広報・企画部会
■古代瓦の拓本づくり
学校、公民館などへの出前学習をする。1300 年祭
会報の紙面充実
期間中、来場者に「なりきり体験館」で拓本づくり
を体験してもらう。
■会報「天平のひろば」
本井広報・企画部会長
年 4 回(3 月、6 月、
9 月、12 月)発行する。
発行部数は各回 1500
部。1300 年祭の特集と
して「平城宮跡を歩く」
シリーズを毎号掲載す
■歴史体験学習
出土遺物の保存・整理、東院庭園などの施設を使
って歴史体験をしてもらう。
■万葉集勉強会
毎月 1 回開催する。万葉人の意識、感情、時代背景
などの理解を深める。
る。
■情報発信
こども歴史体験教室
文化庁提唱の「関西元気文化圏事業」に登録する。
新しい受講生で開講
イベント案内を奈良県、奈良市、その他の公共機関に
配布する。ミニコミ誌にも掲載する。
平成 22 年のこども歴史体験教室が 5 月 8 日、平城
受講生とNPOスタッフ
■ホームページ
「天平のひろば」をPDFで掲載する。NPO平城主
催の事業計画を掲載。 掲示板「今日の平城宮跡」を
充実する。
アクセス回数の累計 23,000 回を目標とする。
「関西元気文化圏」
「奈良県ボランティアネット」
「奈
良リビング」
「近鉄ケーブルテレビ」
「奈良21世紀
フォーラム」
「大阪・奈良歴史街道リレーウオーク」
宮跡資料館講堂で開講しました。
のHPとリンクする。
受講生は一般公募で選ばれた小学校高学年 18 人。
開講式では、受講者と主催者のNPO法人平城宮跡サ
教育・文化部会
ポートネットワークのスタッフがお互いに自己紹介し
文化講座で遺跡見学
ました。
オリエンテーションで、奈良時代と平城京全体につ
いて学習したあと、遷都 1300 年祭の観光客でにぎわ
う宮跡内を、資料館→第一次大極殿→第二次大極殿→
■歴史文化講座
宮岡教育・文化部会長
内裏→宮内省→遺構展示館のルートで見学しました。
5 月 16 日、9 月 25 日、23
奈良市の玉川優実さん(5 年)
、橿原市の森島日向さ
年1 月29日の年3 回開催する。
共通テーマは「古代都城を探
ん(5 年)のお母さんは「この体験教室を通じて歴史
る 3 つのアプローチ」
。
新たに
に興味を持ってくれたらと思います」と期待をこめて
遺跡見学会を 10 月か 11 月に
話しています。こども歴史体験教室は来年 2 月まで 10
開催する。
回開き、
「平城京かるた」遊び、古代瓦と瓦工場見学、
■平城京かるた
発掘現場の体験見学、天平の衣装着付け体験、木簡づ
活用して歴史学習を進める。
「平城京すごろく」の
くりと税の仕組み、古代建築物などさまざまな体験学
作成作業を引き続き進める。
習をします。
―3―
東アジア世界に対して宣言、認知してもらうことだっ
遷都 1300 年特集
たといわれています。
第 12 次天平勝宝の遣唐使副使・大伴古麻呂が帰国
『宮跡を歩く』⑤ 遣唐使船
し報告した記事によりますと、長安城含元殿で行われ
た元旦の儀式の場で、日本より上席にいる新羅と席次
唐の制度や文明伝播
について唐に抗議し、改めさせたということです。
帰国にあたって、この時の大使・藤原清河や阿倍仲
観光客でにぎわう遣唐使船
麻呂らが乗った第 1 船は安南に漂着したあと唐に引き
返し、ついに日本へは帰国できませんでした。第 3 船
に乗船していた吉備真備がさいわい帰国できました。
■鑑真と唐招提寺講堂
唐僧・鑑真は唐から日本への渡航を試み、6 回目(第
来日した鑑真は、東大寺
で、聖武・光明・孝謙に戒
朱雀門の近くに展示されている唐使船の周囲はい
つも観光客でにぎわっています。遣唐使の歴史は「遭
難の歴史」といわれるように、唐に渡った遣唐使や渡
航に駆り出された人たちは大変な苦労をしたことでし
ょう。渡航した人の 6 割ぐらいしか帰国できず、あと
を授け、その後、天武天皇
の新田部親王旧宅を払い下
げられ唐招提寺の建立をし、
ここを戒律の道場としまし
﹁平城京かるた﹂の絵札
12 次遣唐使船)にやっと日本に到着しました。
た。
は海難にあって帰国できなかったようです。
平城宮内にあった唯一の建物である唐招提寺の講
■遣唐使の始まり
堂は、平城宮の壬生門と東地区の第二次朝堂院の間に
唐は隋を滅ぼし 618 年に成立しました。
あった東朝集殿が天平宝字 4(760)年から 6(762)
わが国から遣唐使を派遣する計画は、630 年から
年にかけて行われた平城宮の改作の際に移築され、現
894 年までの間に 20 回ありましたが、実行されたの
在でも使用されており、奈良時代の官衙(役所)の面
は 16 回です。航路は北路、南路、渤海路の 3 つのコ
影を残しています。
(歩く人 本井 建治)
ースがありました。
■漢籍や工芸品を持ち帰る
『延喜式』大蔵省によると、日本から唐に持って行
った物は、絹製品、麻布、銀などの鉱物製品、油・樹
脂・植物性甘味料などでした。
唐から日本にもたらされた物は、漢籍・仏教経典、
ヒバリのひな
宮跡の緑が濃くなる初
仏像などを含む美術工芸品・薬物・香料と動植物など
夏はヒバリのひなの巣立
です。有名なのは吉備真備が持ち帰った暦や天文観測
ちの季節です。あどけな
用具、楽器・楽書など膨大な文物です。
い顔とおぼつかない足取
■新羅と席次争い
りで餌を捜している姿が
『続日本紀』の記事によると、701 年に大宝律令が
完成し、翌 702 年、第 8 次遣唐使が 32 数年ぶりに派
遣されました。
遣唐執節使・粟田真人の最大の役目は、
日本が文物の儀が備わる一人前の国となったことを、
―4―
草むらのあちこちで見ら
れます。
寄稿:宮跡の野鳥を愛するつどい
クリーンフェスティバル
資料館・遺構展示館
美しい会場めざし
リニューアル
市民ら約 370 人が参加
遷都 1300 年祭の開幕にあわせ、4 月から平城宮跡
家族づれで参加した市民
資料館と遺構展示館がリニューアルオープンしました。
奈良文化財研究所が半世紀にわたって実施してきた
平城宮跡の発掘調査の成果を、よりわかりやすく楽し
く理解できる工夫が盛り込まれています。
【平城宮跡資料館】
古代の食卓=資料館展示室
平城宮跡で 4 月 10 日、
「第 8 回平城宮跡クリーンフ
ェスティバル」が開かれ、家族づれ、地域住民、ボラ
ンティアら約 370 人が参加しました。
NPO法人平城宮跡サポートネットワークと奈良
文化財研究所が共催。参加者は主催が用意した火バサ
テーマごとにブースが設けられ、豪華な宮殿居室
や役所内部などを実物大に復元して展示されているほ
か、木簡の読み解きや瓦・土器などの変遷をディスプ
レイによって解説しています。
【遺構展示館】
ミ、手袋、ゴミ袋を手に広い史跡内を 3 コースに分か
れて歩き、草むらや側溝に捨てられた空き缶などを回
収しました。
1300 年祭を 2 週間後にひかえ、史跡内にはあちこ
ちに施設ができ、主催者も例年以上に気を配ってコー
スを誘導していました。参加者のひとりは、大極殿を
見上げながら「すばらしい建物にふさわしい美しい環
建物群の柱跡=遺構展示館
境を保ってほしいですね」と話していました。
NPO会員募集
私たちは、世界遺産の平城宮跡の歴史を
学び、史跡の保存の大切さを訴える活動を
しているボランティアグループです。
参加お待ちしています。
年会費 個人 3,000 円 法人 10,000 円
奈良時代、複数回にわたって建て替えられた建物群
NPO 法人平城宮跡サポートネットワーク
の柱跡の重なりや古代レンガ敷き建物の遺構を理解で
TEL/FAX 0742-34-7713
きる展示になっています。
E-mail: [email protected]
内裏正殿のジオラマは臨場感にあふれたレイアウ
トになっています。
―5―
としきりに働きかけた話が古文書に出てくる。二条大
歴史文化講座
路から出土の木簡にその名があり、実在が証明される
『古文書からのアプローチ』
一方で、中宮の舎人でありながら藤原麻呂邸へ出向し
て手数料をもらってことが木簡の記述でバレ
(?)
た。
天平宝字 2(758)年、西市で瓜や大豆を買い上げ、
舘野和己・奈良女子大教授
東大寺まで運んだ。瓜の代金が 180 文、大豆が 36 文、
第 11 回平城宮
跡歴史文化講座が
5 月 16 日、平城宮
跡資料館講堂で開
かれ、
『古文書から
のアプローチ』と
題して舘野和己奈
良女子大教授が講演しました。 講演要旨は次の通り。
■身体的特徴まで記録した「戸籍」
『正倉院文書』によると、奈良時代には、課税台帳
である「計帳」というものがあった。
「右京計帳」には、
「天平 5(733)年に作成された右京三条三坊に住む伊
美吉子首(いみきこおびと)という役人の家族は「男
6 人、女 4 人、奴婢(男女の奴隷)5 人の計 15 人」
。
「47 歳の男の左下くちびるにホクロがある」
「奴婢 2
人は和銅 7 年に行方をくらました」など実に細かい。
■ある借金常習者の借用書
『正倉院文書』には、丈部浜足(たけつかべのはま
大八車を雇った代金が 55 文という記述もある。
六条二坊に住む役人が天平 7(735)年 8 月、
「麻の
礼服など 13 種の品が盗難にあった」と左京職に届け
出たという話もある。
いずれも当時の人々の生活ぶりがうかがえる興味
深い内容である。
(文責:
「天平のひろば」編集部)
〈 たての・かずみ 〉1950 年生まれ。京大文学部大
学院博士課程修了。1984 年奈良文化財研究所入所、同
資料研究室長をへて現職。
次回の歴史文化講座
日 時 9 月 25 日(土)午後 1 時 30 分∼
会 場 平城宮跡資料館講堂
テーマ 『遺構・遺物からのアプローチ∼古代の便所
(トイレ)遺構について』
。
講 師 黒崎直・富山大学教授
聴講料 500 円
定 員 200 人(申し込み先着順)
。
申込み NPO法人平城宮跡サポートネットワーク
たり)という写経生が東大寺写経所に借金を申し入れ
る経緯が記されてある。
彼は借金の常習者で、
「宝亀 3(782)年の 1 年間に
天平の窓
4 回も給料の前借を頼み込んだ。希望額の半分しか貸
してもらえず、利息は月 13%の高利。担保物件は右京
NPO平城の総会(5 月 16 日)で、伊部和徳
三条三坊の自宅と葛下郡(現香芝市)に所有している
理事長が「会員の高齢化が進んでいる。このままで
口分田」などとある。
「返済期日が過ぎたら 2 倍にし
は活動に支障が出る」と強調しました。
て返す」
「妻子を売ってでも約束をはたします」と涙ぐ
同じ日、
「飛鳥古京を守る会」は、会員の平均年齢が
ましい。
70 歳を超えて活動が困難になったとして、40 年の歴
■猟官運動や出向なども
史に幕を閉じたそうです。若い人材確保はNPO平
中宮の舎人の他田日奉部直神護(おさだひまつりべ
城にとっても喫緊の課題です。
(孝仁)
あたいじんご)が「故郷の下総国の長官にしてほしい」
発行者
NPO法人平城宮跡サポートネットワーク
理事長 伊部 和徳
〒630-8577 奈良市二条町 2-9-1 奈良文化財研究所内
/Fax 0742-34-7713
HP http://heijyonet.org
―6―
E-mail
[email protected]