核黄疸(アルブミンとビリルビンの相互作用) 淀川キリスト教病院小児科 船 戸 正 久 研究 目 的 本研究で測定した正常成熟児の血清ALB濃度 アルブミソ(以下AL Bと略す)には2つのビ リルビソ(以下BRと略す)結合部位が存在し・ は,2。8−4.39/dl(Mean±SD,一3.47±0.28 9/dl)であった。 理論上1モルのBRが第1結合部位において強く 2)ALBのBR結合能 結合する(1gのALBに対して約8.5㎎のBR 図1は,成熟児血清(5生日)のBR結合能を に相当)。この第1結合部位が飽和されるとBR はAL Bの第2結合部位に移行し,ここでより弱 い結合を保つ。第2結合部位にあるBRは容昆に 求めたものである。上段は,BR titration curve ALBより遊離し,unbound bilinlbin(以下U。B. と略す)として脳継織へ入り核黄疸を惹起すると におけるT・B・・EBの関係を示している。これか らT。B,C。(total binding eapacity)亭ま26.2㎎/d1 ということがわかる(すなわちALBの第1結合 部位において26.2mg/d1のB Rが結合可能)。 いわれているo また下段は同じくBR/ALBモル比とU,B.の関 今回は,正常成熟児におけるALBとBRの相 互作用にっいて検討し,AL BのBR結合能の面 係を示している。これからM・B・C・(molar bin一 から成熟児の光線療法および交換輸血の適応基準 なわち1モルのALBに対して0.82モルのBRが について考察を加えた。 第1結合部位において結合可能)。 出ngcapacity)は0.82ということがわかる(す 図2は,全検体のBR titration curveを回帰直 研 究 方 法 0−7生日の正常成熟児74例の血清101検体 線より統計的処理を行い,上段はT.B.に対するU. (ただし同一症例では生日の異なるもの)に,0.1 Mean±2S.D.で表したものである。このグラフ N NaOHに溶解したBR(シグマ社)を適宜加 から正常成熟児のT・B・C・は22.5−27・7mg/d1, え少total bilirubin(以下丁。B。と略す)の増加に M。B.C.は0.79−0.87の範囲にあることが推測さ 伴って上昇するU,B.を測定することによりALB れる。またALBめBR結合能の面から,図のよ B、を,下段はBR/ALBモル比に対するU,B.を のBR結合能を求めた。またこのうち72例,99 うな安全域,境界域,ハイリスク域および危険域 検体についてALBを測定し,ALBのBR結合 の4つの領域に分けることができる(後述)。. 能をモル比からも検討した。 3)交換輸血例での検討 なお,T.B.およびU,B.の測定は,Arrows社製 図3は,従来の基準(『成熟児ではT。B。≧20mg U・B・Analyzerを使用し,それぞれspectropho− /dl,U.B・≧1,0μg/d1)で交換輸血を施行した tometryおよびgluc・seoxidase−per・xidase法で 52例のT.B・,U・B・値(輸血前)を図2上段のグ 0.1M phos画ate buffer+5%glucose液内(pH ラフと比較したものである。ほとんどの症例は, −7.40,30℃)にて測定した。ALBの測定は 第1結合部位が飽和されて第2結合部位にBRが B.C.P.(ブロムクレゾールバープル)法によった。 移行した危険域にあるか,またはT・B・が低くても また統計的分析は主にそれぞれの回帰直線をもと U.B.が高いハイリスク域に入っているのがわかる。 にして行なった。 考察およびまとめ r正常成熟児のBR titratiOn CUrVeを求め,ALB 研究結果 1)血清ALB濃度 のBR結合能について検討した。この結果成熟児 一411一 のT・B・C・は22・5−27・7㎎/dl(平均24.2mg/ 今後未熟児についてもさらに症例を重ね検討予 m),M・B・C.は0.79−0.87(平均O.85)の範囲 定である。 内にあることが推測された。またとくに図2上段 のグラフは・臨床上次のような点で有用であると 考えられた。 参考文献 1)船戸正久,他:Uhbomdbilinlbinの臨床的 1)T・B・・U・B・を測定し・このグラフ上にプロッ 有用性の検討,周産期医学,14:809,1984, トすることにより児の高ピ血症が一眼でわかり治 2)船戸正久,他=Kemluteの臨床的評価,第 療の選択に有用である。例えば, 20回日本新生児学会総会学術講演会抄録,P. a)安全域(Safety area)……観察のみで可 382,1984. b)境界域(Border area)……光線療法の適応 3)Cashore,W Jらet al:C1血cal application c) ハィリスク域(Highr直skarea) of neonatal bllinユbin−bindi㎎dcterm血ations; ・・交換輸血を考慮 Current status, 」。Ped血tr触93:827,1978. d)危険域(Da㎎er area) 4)Cashore,W。」。:Free bilirubin concent− ・交換輸血の絶対適応 rations and bilirub血一bindi㎎affi血ty in te− ii)正常成熟児であれば・1点のT・B・・U・B・を測 定することによりこのグラフから児のALBの第 1結合部位に結合できるBRすなわちT。B.C.を予 m and pretem infants。J.PedEatr。,96: 521,1980. 5) James,L.S。,et al: Standard and Reco一 測できる。 ㎜endationforHospita1CareofNewbom ili)継日的にT,B.,U.B.を測定することにより, Infants。6th ed。Ame血can Acadcmy of Pe− このグラフから上に(≧十2S.D・)はみだしてい diatrics。,1977. くハイリスク児を早期に発見し適切な処置ができ 6)中村 : 黄疽,小児科臨床,36;697,1983. る。 一412一 U. B. (unboull' biNrubin) ,,9ldt 7. O E0 t,-. 5 d,Iy of llfe al609, 399.wk. ALB-3:9 g/dl 6Lo 5. o 4.0 LO T. B. C. -26.2 mg/idl I ; Ist binding sitC ( total binding cap8city) Y=0.05X-0.50 ll ll ; und binding site Y 0. 1 5X -3. 1 2 2. o I 1 .O ,, 40 1 O 20 aG・; 30 T.B! ( total bilirubin) 50 / dl U. B. (,mbound bilirubin) ,gl d, 7.0 ao 5. o 4. o ao 0_ t:-, 5 di,y of life al609, 39 9.,dc. A LB=3.9 g/dl M. B. C. = 0.82 I ; Ist bipding site (m018r binding c,Ipacity) Y= 171 X -OJ51 ll ; Ilnd bindihg site Y-4.84X-3.08 Il 2. o I 1 .O , 82 0.2 04 0.6 0.8 1.0 1 .2 [ l - 13 - r BIA r'tio, 14 1.6 I 3 aO U.B. ( unbound bilirubin) + 2 SD JJ9/dl 7.0 6.0 5.0 4. O 3.0 - 2. O t60 Cl 1 .O 0.56 Border area 27. O 1 O 202 5 40 50 m9/dt T. B. (total bilirubin) u. B. Safety area +2SD (unbound bilirubin) ・q/dl 7.0 6.0 5.0 2 SD 4. O 3.0 2.0 1.41 1 .O o* 63 0.2 0.4 06 08 10 12 1.4 1.6 1.8 2.0 B//A ratio, r 12 - 14 - C!l High-risk area Danger area U. B. (unbound bilirubin) ,gld ' 7. O 6.0 Case of B. E.T. e Hemolytic disease (bF16) of the newborn e L,awt. infant (N--18) 5.0 ' <2 500 9 (N=18) O Others o * 4.0 * Kernieterus (+) o 3. O 2. O 'r-___ _ O e e 1 -- 1 O 20 T.Be 30 40 ( tota' bilirubin) l3 - 15 = V 50 ngldl
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