開発項目 「SIP(戦略的イノベーション創造プログラム)/革新的設計生産技術 次世代型 高性能電解加工機の研究開発」 「平成26年度 委託先名 1. ~ 平成27年度のうち平成26年度分中間年報」より抜粋 東京農工大学 研究開発の内容及び成果等 開 発 テ ー マ の「 次世代型高性能電解加工機の研究開発」は、「 電 解 加 工 現 象 の 解 明 と シ ミ ュ レ ー シ ョ ン 技 術 の 開 発 」と「 高 付 加 価 値 部 品 加 工 法 の 開 発 」、「 高 精 度 電 解 加 工 シ ス テ ム の 開 発 」の 三 つ の 部 分 が 構 成 さ れ て い る 。本 学 は 、そ の う ち 、「 高 付 加 価 値 部 品 加 工 法 の 開 発 」を 担 当 し 、本 学 、東 京 大 学 、豊 田 工 業 大 学 、関 東 学 院 大 学 、静 岡 理 工 科 大 学 と 共 同 で 、(1) 微 細 電 解 加 工 、(2)難 加 工 材 の 電 解 加 工 、(3)複 雑 形 状 の 電 解 加 工 に 関 す る 研 究 開 発 を 行 っ て いる。 (1)微 細 電 解 加 工 直 流 電 源 や 幅 が ms 以 上 の パ ル ス 電 源 を 用 い た 電 解 加 工 は 、極 間 距 離 が 数 mm 程 度 で も 加 工 電 流 が 流 れ る た め 、 微 細 加 工 に 向 い て い な い が 、 幅 が 数 十 ns の 超 短 電 圧 パ ル ス を 用 い る こ と に よ っ て 、電 解 加 工 の 極 間 距 離 を ミ ク ロ ン ま た は サ ブ ミ ク ロ ン ま で 狭 め 、微 細 電 解 加 工 を 実 現 で き る 。し か し 、超 短 電 圧 パ ル ス に よ る 微 細 電 解 加 工 は 、次 の よ う な 致 命 的 な 欠 点 を 解 決 し な い と 実 用 化 が 難 し い 。a )周 波 数 特 性 の 非 常 に 高 い 信 号 発 生 器 と 増 幅 回 路 が 必 要 で あ り 、ま Ica ICa た 、配 線 方 法 に よ っ て は 超 短 パ ル ス が 得 ら れ な い Ca Ca Ira Ra ra IRa A A B B 。b )超 短 電 圧 パ ル ス を 利 用 し た 微 細 電 解 加 工 は Rs Rs 、幅 の 短 い パ ル ス を 利 用 す る う え 、パ ル ス と パ ル Icc ス の 間 に 長 い 休 止 時 間 が 必 要 で あ る の で 、加 工 速 ICc 度が極端に遅くなる。 そ こ で 、超 短 電 圧 パ ル ス を 簡 単 に 実 現 で き る 静 Irc Cc Cc Rc rc IRc C C Rm 電誘導給電 法を用 いて 極間距離が ミクロン に なる Is 微細電解加工を実現する。今年度は、極間距離を検 出し、加工の進行に伴い、工具を自動的に送るため 図1 電解加工の等価回路 、微細穴 加工に ついて 、工具電極 のサーボ 送 り制 100 工 速 度 を 向 上 さ せ る た め 、 電解加工等価回路の数 80 値解析により、必要最小限のパルスオフ時間を把握 する必要がある。そこで、電 解 セ ル を 設 計 ・ 製 作 し、陽極と陰極の材質の組み合わせを変化させるこ とにより、図1に示す等価回路における陽極と陰極 の各パラメータを区別して同定できた。同定結果の 一例を図2に示す。また、印加電圧、電解液の種類 Resistance [Ω] 御装置を開発し 微細加 工実験を行った 。 また 、加 Ra Rc 60 40 20 0 5 や濃度が各パラメータに及ぼす影響を調査し、一般 的に知られ ている 電解 加工現象と 比較する こ とに より、同定結果の有効性と信頼性を確認した。 図2 10 Concentration [%] 電荷移動抵抗の同定結果 15 (2)難 加 工 材 の 電 解 加 工 チタン合金や、金型や切削工具向けの超硬合金などの切削加工と放電加工は、激しい工具摩 耗と極端に低い速度により、加工コストが高騰し、生産性が悪化するという大きな欠点を抱え ている。このような難削材の加工は、電解加工の利用が望まれるが、加工表面の不動態被膜の 発生、材料のそのものの難溶性、合金材料の不均一な溶出、電解液の電蝕性などにより、上記 材料の電解加工は速度が遅い、または高精度加工ができないという問題がある。 そこで本研究では、不動態被膜の機械的除去に有効な超音波振動や機械研磨等との複合加工 により、難加工材の電解加工を実現する。今年度は、超音波振動付与電解加工装置を構築した 。また、複雑形状の電解複合研磨を実現するため、 チタン系材料への小径工具を用いた電解複 合研磨について、基礎実験を行い、形状創成の制御方法の調査を行った 。その結果、チタン材 の電解複合研磨において、工具走査速度による加工量の制御が有効であること、工具走査速度 を変化させることにより自由断面溝を創成できることを明らかにした。 また、超硬合金の電解加工について、加工電源の構築、パルス波形の影響調査、Co と WC の溶 出状況の確認を行った。なお、電解液ジェットによる超硬合金のターニング加工における加工 電源方式の影響、工作物回転速度の影響を調 500 rpm 3000 rpm べ、複雑形状の加工を行った。回転数が加工 合金微細軸の電解加工における電源方式の影 響を調査し、電解加工に適した加工電源を明 らかにした(図4を参照)。 2 0 -2 -4 -6 -8 -10 -750 -500 -250 0 250 500 750 Width [µm] Depth [µm] 形状に及ぼす影響を図3に示す。また、超硬 また、無機絶縁体の電解放電加工法に関し ては、今年度は加工中に押付力を制御するた め、センサを組み込んだ工具ホルダをこれま での測定データに基づき設計を行った。 1500 rpm 4500 rpm 図3 超硬合金の電解液ジェット加工 においける加工形状の変化 (3)複 雑 形 状 の 電 解 加 工 成形品の品質を大きく影響する金型内部 冷却流路の電解加工の実用化を実現するた め、大電流供給と高速スラッジ除去機構な どを持つ曲がり穴電解加工装置の開発と電 極構造の最適化を行う。今年度は、加工の 進行を阻害する最大の要因となっているス ラッジを速やかに加工領域から除去するた め 、超音波振動発生装置を製作し、スラッジ 除去と加工速度に与える影響を調査した。 一方、複雑形状の創成に電解液吸引工具を 利用することは有効であるが、加工中に大量 の空気が電解液と一緒に加工間隙に吸引され ると、加工速度の低下と放電の発生を招くた め、吸引工具を用いた加工特性を調べている 。今年度は、外形 5mm の小径吸引工具を設計 図4 電源方式が超硬合金加工面に及ぼす影響 ・製作し、硝酸ナトリウム電解液と塩化ナトリウム電解液による加工特性を調べた。 その結果 、図5に示すように、吸引工具を用いることで、工具直下にしか電解液が存在しないため、高 い腐食性を持つ塩化ナトリウムでも領域限定の電解加工が可能であることを明らかにした。ま た、周囲からの空気の吸引量を減少させると、加工生成物の吸引を円滑に行えるため、加工精 度が向上することが分かった。 (a) Photo of machined hale 図5 (b) Cross-sectional shape of machined hole 塩化ナトリウムによる穴加工の結果 2. 成果 (1) 研究発表・講演(口頭発表も含む) 発表年月日 発表媒体 発表タイトル 発表者 2014年12月 電気加工学会全国大会(2 電極材料が吸引式工具を用いた 佐藤 敦、夏 恒 4日 014)講演論文集、35-38 2014年12月 電気加工学会全国大会(2 超硬合金の電解加工におけるパ 倉畑大輝、夏 恒 4日 014)講演論文集、47-50 2014年12月 電気加工学会全国大会(2 電解加工面の濡れ性調査 5日 014)講演論文集、73-74 2015年1月1 Proc. of The 2nd Sympos A Novel Approach of Realizatio 佐藤 0日 ium for International Coo n Local Electroplating with Suc 領域限定電解めっき膜形成に及 ぼす影響 ルス波形の影響 前田 健、夏 敦、夏 恒 恒 peration on Micro and Pr tion Tool ecision Electrical Machini ng, CD-ROM 2015年3月4 電解加工研究委員会講演 旋盤型電解放電加工機による絶 古谷克司 日 資料 縁物の加工 2015 年 3 月 2015 年度精密工学会春季 ワイヤ電解加工の特性に最適な 山口晃輝、夏 17 日 大 会 学 術 講 演 会 論 文 集 、 パルス波形の調査 55-56 恒 2015 年 3 月 2015 年度精密工学会春季 Investigation on Pulsed Wire El 米 大海、夏 恒 2015 年 3 月 2015 年度精密工学会春季 小径工具を用いた電解複合研磨 石井雄基、夏 恒 17 日 大 会 学 術 講 演 会 論 文 集 、 ectrochemical Machining Proces 57-58 s Considering Machining Accura cy 17 日 大 会 学 術 講 演 会 論 文 集 、 の形状創成に関する研究 61-62 2015 年 3 月 2015 年度精密工学会春季 電解液ジェットによる回転体超 高橋 晃、夏 恒 2015 年 3 月 第22回精密工学会学生会 電解加工等価回路のパラメータ 永島直晃、夏 恒 17 日 に及ぼす加工条件の影響 17 日 大 会 学 術 講 演 会 論 文 集 、 硬合金の加工特性調査 67-68 員卒研研究発表講演会論 文集、73-74 2015 年 3 月 第22回精密工学会学生会 電解液吸引工具を利用した油だ 高嶋佑樹、夏 17 日 まりの高速形成に関する研究 員卒研研究発表講演会論 恒 文集、105-106 2015 年 3 月 第22回精密工学会学生会 導電領域制御工具による複雑形 野村英碩、米 17 日 状穴の電解加工 夏 吸引工具を用いたNaCl溶液の 名古屋 員卒研研究発表講演会論 大海、 恒 文集、107-108 2015年3月1 2015年度精密工学会春季 8日 大会学術講演会論文集、8 電解加工特性 寛、夏 恒 3-84 パルス微細電解加工における極 門倉宏充、夏 2015年3月1 2015年度精密工学会春季 8日 大会学術講演会論文集、8 間距離の検出と制御に関する研 5-86 究 恒
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