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閣議
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閣議(かくぎ)とは、内閣の職権行使の内容に際して、その意思を決定するために開く国務大臣の会議
のことである。
目次
1 日本国憲法下
2 大日本帝国憲法下
3 脚注
4 関連項目
5 外部リンク
日本国憲法下
閣議は内閣法で規定されているが、会議の手続きについては明文
で規定されておらず、慣行によっている。 内閣総理大臣が主宰し
(議長となり)、内閣官房長官が進行係を務める。三人の内閣官
房副長官(政務担当二人、事務担当一人)と内閣法制局長官が陪
席する(この四人は意思決定には参加できない)。
閣議には毎週2回、火曜日と金曜日の午前中に開かれる定例閣議
と、必要に応じて開く臨時閣議があり、原則として全閣僚が総理
大臣官邸閣議室(通常国会会期中は国会議事堂内の院内閣議室)
に集まって行われる。しかし早急な処理を要する案件の場合に
は、内閣総務官が閣議書(閣議内容の書かれている文書)を持ち
回りそれぞれの閣僚の署名を集めるという回議によって意思決定
する場合がある。これを持ち回り閣議という。閣議決定は閣議書
に花押をもって署名することで行われる。閣議書は午後には皇
居・御座所に送られて天皇に提出され決裁を受ける。定例閣議で
意思決定された案件を決裁するために、天皇は閣議がある日の午
後は皇居に滞在しているが、静養や行幸のさいに臨時閣議が行わ
れた場合は、クーリエの宮内庁職員が閣議書を滞在先まで運び決
裁を仰ぐ。閣議は非公開が原則である[1]。
歴代内閣総理大臣の花押(初代から
44代まで)。閣議で作成される文書
には、署名の代わりに花押が用いら
れる。
なお、全閣僚による閣議(決定)書への署名は原則であり、法律
や条約の公布、特命全権大使等に交付する信任状や全権委任状などの案件については、内閣総理大臣の
みが署名する[2]。
閣議案件には次のような区分がある。
一般案件(国政に関する基本的事項で、内閣としての意思決定が必要であるもの)。高級官僚や
陸海空自衛隊将官の人事を含む。
国会提出案件(法律案および予算案、条約など、承認を求めて国会に発議すべきもの)。質問主
意書に対する答弁書なども含む。
法律・条約の公布
政令の決定
報告(国政に関する調査、審議会答申などを閣議に報告するもの)
配布(閣議の席上に資料を配付する)
閣議の意思決定には、閣議決定と閣議了解の2つがある。内閣としての意思決定を閣議決定と言う。本
来は主務大臣の管轄事項だがその重要性にかんがみ閣議に付され閣議として意思決定をおこなったもの
を閣議了解と言う。閣議の意思決定は出席した閣僚の全員一致を原則とする。これは、内閣が、「行政
権の行使について、全国民を代表する議員からなる国会に対し連帯して責任を負う」(内閣法第1条第2
項)ことに基づく。
なお、慣例として、閣議に引き続き「閣僚懇談会」が開かれる。閣議で取り上げられなかった議題がこ
の席で了承されることがあり、閣僚が自由に意見を述べたり、情報交換を行ったりすることもできる。
首相が入院したために、閣議を開催できない状態で首相臨時代理を指定しないまま定例閣議の時間を迎
えた第1次安倍内閣末期の場合、定例閣議に代わる閣僚懇談会が閣議の議事進行役の内閣官房長官が主
導する形で行われ、全閣僚が閣議書に署名した後で首相が入院先の病院で決裁する「持ち回り閣議」の
手法をとっていた。
閣議及び閣僚懇談会には長らく公式的な議事録は作られてこなかった。記録を残すと、外に出た場合、
閣内不一致を指摘される恐れがあるからである[3]。しかし、2014年4月より閣議や閣僚懇談会にて議事
録を作成することが第2次安倍内閣において決定している [4]。非公式的なものとしては、例えば内閣官
房長官など閣議に関わる複数の役職を務めた後藤田正晴が著書の中で、「閣議では事務担当の官房副長
官が議事について、メモ(非公式議事録)を取る慣行になっていた」ことを明かしている。また自身が
官房副長官時代は自身がメモを取ることを嫌いだったため、同じく陪席していた吉國一郎内閣法制局長
官に、「君がメモを取ればいい」(なお後藤田は元内務官僚として吉國の先輩に当たる)と指示し、吉
國がメモを取っていた。だがこの法制局長官がメモを取る慣行が後藤田・吉國以降も続いたかは不明で
ある。
よく新聞やテレビなどで閣議の際に閣僚がソファーに座って懇談する様子が伝えられるが、これは閣議
室の隣の閣僚応接室の模様であり、先述のように閣議自体は非公開。閣議室の内部については、かつて
はその様子が知られることはほとんどなかったが、現在は首相官邸公式サイトに新・旧両首相官邸の閣
議室の写真が掲載されている [5][6]。現在の首相官邸閣議室は広さ約110平方メートルで、直径5.2メー
トルの円形テーブルが置かれており、通常は閣僚がこのテーブルを取り囲むように着席。それぞれの前
には花押を記すための墨汁入り硯と細筆が用意されている(陪席の内閣官房副長官・内閣法制局長官は
別テーブル) [7]。
大日本帝国憲法下
この場合の閣議とは、各国務大臣の合議体である内閣において、国務および行政に関する協議を行なう
ことである。
内閣は各国務大臣の合議機関でもあり、行政各部の長官である各省大臣の合議機関でもあるから、閣議
は国務上の閣議と行政上の閣議とに分けられることがある。
その詳細な規定は、内閣官制(明治22年勅令135号)にあり、必要的閣議附議事項として以下のものが
ある。
1. 法律案および予算決算案
2. 外国条約および重要な国際事項
3. 官制または規則および法律施行にかかる勅令
4. 諸省間の主管権限争議
5. 天皇から下附され、または帝国議会から送致する人民の請願
6. 予算外の支出
7. 勅任官および地方長官の任命および進退
8. 各省主任の事務につき高等行政に関し事態やや重きもの(内閣官制第5条)
9. その他個別法令により所管としたもの、たとえば都市計画の区域および事業の認可(都市計画
法)、各種委員の任免など
その他任意附議事項として、各大臣が適当と信ずる事項を提出することができる。
閣議の議題については、内閣官制第7条に「事の軍機軍令に係り奏上するものは勅令により特に内閣に
下附せらるるものを除く外閣議を経るの必要なく唯陸海軍大臣より内閣総理大臣に報告すべし」という
規定がある。
脚注
1. ^ 閣議が公開された例として、1985年の内閣制度創始100周年記念における公開、2002年5月7日の冒
頭公開、2013年1月8日の冒頭公開がある。
2. ^ 平成11年(1999年)10月5日以降(同日付け閣議決定による)。ただし、財政法の規定による財政状
況に関する国会および国民への報告(昭和23年(1948年)6月15日閣議決定)、質問主意書に対する答
弁書(昭和51年(1976年)5月25日閣議決定)などについては、同日以前も内閣総理大臣のみが署名し
ていた。
3. ^ 佐藤丈一; 横田愛 (2009年12月1日). 閣議議事録:「作成、保有していない」と不開示
(http://mainichi.jp/select/seiji/news/20091201k0000m010130000c.html). 毎日新聞 2009年12
月3日閲覧。
4. ^ 憲政史上初、閣議議事録を4月から作成、3週間前後で公開へ
(http://sankei.jp.msn.com/politics/news/140304/plc14030411580015-n1.htm). 産業経済新聞
社. (2014年3月4日) 2014年3月4日閲覧。
5. ^ 旧首相官邸バーチャルツアー -2階正面階段編-閣議室(http://www.kantei.go.jp/jp/vt2/main/03/photo-kakugi01.html)
6. ^ 首相官邸バーチャルツアー -4階・5階編-閣議室(http://www.kantei.go.jp/jp/vt/main/03/photo02_1.html)
7. ^ 新官邸で初閣議 冒頭部分を公開
(http://www.47news.jp/CN/200205/CN2002050701000037.html). 共同通信社 (47NEWS).
(2002年5月7日) 2009年12月3日閲覧。
関連項目
内閣
全会一致
国事行為 - 火曜日と金曜日の午前中の閣議で決定されたことをその日の午後に天皇が決裁する
(文書が皇居の御座所に送られ、天皇が読んで捺印する)。そのため公務のスケジュールは閣議
に拘束される。
国家安全保障会議
経済財政諮問会議
事務次官等会議
沈まぬ太陽 - 映画のなかで円卓を閣僚が囲む閣議の様子が登場する。
外部リンク
閣議(首相官邸ホームページ) (http://www.kantei.go.jp/jp/rekidai/1-2-5.html)
閣議案件(首相官邸ホームページ) (http://www.kantei.go.jp/jp/kakugi/index.html)
閣議室(首相官邸バーチャルツアー)
(http://www.kantei.go.jp/jp/vt/main/03/photo02_1.html)
閣議決定等文献リスト及び本文(国立国会図書館ホームページ)
(http://www.ndl.go.jp/horei_jp/kakugi/kakugi_main.htm)
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カテゴリ: 日本の内閣
最終更新 2015年1月29日 (木) 05:23 (日時は個人設定で未設定ならばUTC)。
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