山下高史(東海大学医学部付属病院)

【教育講演】逐次近似法の基礎と各種補正方法
座長集約
山下高史(東海大学医学部付属病院)
教育講演は横浜創英大学の橋本雄幸先生による『逐次近似法の基礎と各種補正方法』と
題しまして、難解だけども避けて通ることは出来ない画像再構成の特に逐次近似法に関す
る講演を企画しました。
逐次近似法の歴史は古く、ML-EM 再構成法の大元の理論である期待値最大化(EM)ア
ルゴリズムは 1977 年に Dempster らによって紹介され、その後 Shepp らや Lange らによ
って、PET 画像再構成に応用されたのが最初となります。当初は膨大な計算時間がかかる
という理由により実用化までには至らなかったのですが、ここ数年においてコンピュータ
性能の大幅な向上や OS-EM 法、RAMLA 法、DRAMA 法などの高速演算アルゴリズムの
開発などにより臨床現場においても一般的に使用されるようになってきました。ML-EM 法
の特徴として「計算値に負の値がでない」、「低カウント領域での S/N がよい」、「高集積か
らのストリーク状アーチファクトがない」があり、従来まではこれらの特徴を生かす使い
方がなされてきました。そして近年において、PET-CT や SPECT-CT が普及し始めたこと
で吸収や散乱及び分解能補正といった「測定系で起こり得る物理現象を織り込むことでさ
まざまな補正ができる」が臨床現場でも行われるようになり、今後は逐次近似法が核医学
画像再構成法のスタンダードになりうると考えています。しかしながら、計算方法などは
メーカー毎に異なり、さらにその中身がブラックボックス化されているため、実際にどの
ように画像が作られているかをユーザーにはあまり知らされていないのが現状です。
そこで今回、逐次近似法を再認識するために、画像解析のエキスパートであられる橋本
先生に基本的な逐次近似法の考え方から計算式の意味について、講演をして頂きました。
考え方の解説では逐次近似法には加減型と乗除型があり、その違いについて、りんご 10
個の総量から 1 個あたりの重さを求めるといった簡単な例題や Excel を使用した計算過程
のシミュレーションから分かりやすく解説して頂きました。さらに実際の画像再構成では、
加減型は CT に適していること、核医学で使用されている ML-EM 法は乗除型であること
を示したうえで、計算式が表す意味とその違いについてまで、詳しく解説して頂きました。
今回の内容は一見すると難しいと感じるかもしれません。しかし、逐次近似法を使用す
る機会は今後も確実に増えていきます。その時に今回の企画が少しでも役に立ち、今後の
診療の糧になることを願っています。