第 55 回 国際理解・国際協力のための全国中学生の作文コンテスト東京

第 55 回 国際理解・国際協力のための全国中学生の作文コンテスト東京都大会
特 賞
「世界から貧困をなくすために国連は何をすべきか」
豊島岡女子学園中学校 2 年
髙橋 ひまり
私にとって国連とは、人権尊重の促進と貧困削減のための組織だ。国際紛争の解決も毎
日ニュースで取り扱われているが、目まぐるしく状況が変わっていくため、解決の難しさ
だけが印象にある。貧しい人々のための活動は、私の身近にも常にあり、スーパーのレシ
ートで募金活動ができたり、履かなくなった革靴を寄付したり、いつでも協力することが
できる。アフリカの貧困の状況を子どもたちにも知らせようと、学校の授業やテレビでも
扱われることが多いので、私たちにとって世界の貧困は身近な課題だ。だから私は、これ
からの国連の貧困援助を考えてみた。
貧困の地域というと、アフリカの乾いた大地に野生動物が遠くに見える景色と、遠くま
で水を汲みにいく女性や子どもの姿しかイメージできなかったが、ある貧困地域の現状を
扱った本を読んで、貧困の裏に隠れた人間の醜い欲を見た。著者はサハラ横断の旅で、『人
間が生きるための原始的な姿勢』を教わったと書いている。砂漠の旅では途中で物資の調
達ができないため最悪の事態に備え、必要なものは全て自分たちで持って行かなくてはな
らない。しかし『生きるための原始的な姿勢』とは物資を万全に整えることではなく、実
は現状を知れば知るほど備えなければならないのは心だった。世界中には泥棒があふれて
おり、日常的なすりや置き引きはもちろん、貧しい人への援助や資金を平気で使い込む為
政者にまで備えなければならない。
『姿勢』とは、そうした醜い、人を騙そうとする人々に
向かう『姿勢』のことを言っていた。この本の中ではガソリンを補給するとき、タンクに
入れる前に本物かどうかガソリンを舐めて確かめるのである。その経験もあり、援助資金
が正しく使われているかどうか、本当に学校が建設されているかどうか著者はアフリカの
僻地まで自ら確認に行くことになる。食料や医薬品を善人めかした泥棒から守り、困って
いる人々に届けるためには、自分の目で確認するのが最も確実だとすると、私たちはお金
を寄付したり、物を提供したりするだけで誰かの助けになったと思ってはいけない。だが、
この本の著者のように、アフリカまで行って確かめることは、危険地帯や辺境地域の状況
を考えると無理だろう。
私は物やお金で支援するのは最低限にし、これからは現地調達、現地消費ができるよう
にするための支援へ変えたらよいと考えた。例えば、現地の荒れ果てた土壌で農業をする
のではなく、そこに野菜工場を建設するのだ。電気は太陽光発電。水は循環できるような
システムにし、野菜工場内で使う水は空気中の僅かな水分までも利用する。宇宙ステーシ
ョンや惑星など現地で食料を調達できない場所で生活することを目指した野菜栽培や家畜
飼育の最新技術がアフリカの厳しい状況の中で生かせられるのではないか。だからこれか
ら国連は、それらの最新技術開発を援助したり実験施設の提供をしたりしてはどうだろう
か。周りの環境に一切影響されない農業や畜産が成功すれば、どのような場所でも食料は
作れる。工場は雇用もつくる。食料問題と雇用問題が解決される。食料不足に悩む人々の
お腹の中に食料を確実に届けるためには、多くの人の手や遠い道のりを経ていては駄目な
のだ。できるだけ現地の人々が自分たちの手で食料を作り出す手段が必要だ。出荷できる
ほどの食糧が生産できれば現金が入り、医薬品や教育施設にも使えるだろう。もちろん、
緑のアフリカ、野生動物の楽園を取り戻す事も忘れてはいけない。過剰耕作、過剰放牧で
失われた草原を取り戻すためにも、食料の工場生産は有効ではないだろうか。
これからの国連は、全く新しい技術で貧困問題を解決していくことになるだろう。農業
の技術だけではなく、宇宙で行われる植物実験などにも協力し、あらゆる技術開発に新し
い発想で関わりを持つことが必要だと思う。
参考文献:「貧困の僻地」
曽野綾子