「知の地域づくり推進事業」業務処理報告書

食関連「知の地域づくり推進事業」
業務処理報告書
機関名
財団法人
十勝圏振興機構
十勝産業振興センター
1
研究開発テーマ
太陽光エネルギーで走行する農業機械の要素技術の開発、および高出力新型
機種の開発
2
研究開発の目的
太陽光発電を利用した環境負荷の低い、
また農業生産者の作業環境(騒音、振動、
排ガス)の改善効果も高い電動農業機械の
普及拡大を目的として、要素技術の開発と
新製品の開発を実施する。具体的には、フ
ク ザ ワ ・ オ ー ダ ー 農 機 (芽 室 町 )が 製 品 化 し
ている「ソーラー式長いもプランター(図
1)」が現在抱える技術的課題を解決し、
現行製品の完成度を高め、電動農業機械の
更なる普及を図る。また、農業生産者から
動力性能向上の要望が多いことから、動力
性能向上のための要素技術開発を行い、高
出力化した次期モデルを開発する。
図1 ソーラー式長いもプランター
3 研究開発の概要
要 素 技 術 の 開 発 ・ 構 成 部 品 の 調 査 と 評 価 ( 平 成 23 年 度 )
■軽量かつ剛性の高い新型フレームの開発
■市販モータドライバの調査/ラジオノイズの評価
■ 市 販 PV パ ネ ル ・ チ ャ ー ジ ャ の 調 査 / コ ス ト ・ 性 能 評 価
■市販二次電池の調査/コスト・性能評価
■ 電 源 の 48V 化 技 術 の 開 発 ( 現 行 機 種 は 24V)
■レンジエクステンダ(発電機)の調査/コスト・性能評価
上記性能評価、改良のための試作
高 出 力 次 期 モ デ ル の 開 発 ( 平 成 24 年 度 )
■ 電 源 を 48V 化 し た 新 型 電 動 農 機 具 の 開 発
4 業務処理体制
研究開発実施者: 財団法人十勝圏振興機構 十勝産業振興センター
■ 田 村 知 久 ( ラ ジ オ ノ イ ズ 対 策 、 48V 化 技 術 の 開 発 な ど )
■西條大輔(新型フレームの開発など)
■ 佐 藤 悠( ラ ジ オ ノ イ ズ 対 策 、48V 化 技 術 の 開 発 、ソ ー ラ パ ネ ル・2 次 電 池 の 調 査 な ど )
技術支援: 北海道立総合研究機構 工業試験場 情報システム部
■多田達実(新型フレームの解析・評価など)
■新井浩成(ラジオノイズの評価・対策など)
■浦池隆文(新型フレームの解析・評価など)
協力(担い手)企業: フクザワ・オーダー農機
■福澤加津良(評価用ソーラープランターや部品の試作・評価など)
■福澤剛志(評価用ソーラープランターや部品の試作・評価など)
5 業務処理の経過(進捗状況)
■新型フレームのモデル作成・設計評価:
作業台の軽量化が達成できた。
■市販モータドライバ調査/ラジオノイズの評価
・ドライバの調達まで完了している。
・ラジオノイズの軽減を達成できた。
■ 市 販 PV パ ネ ル ・ チ ャ ー ジ ャ 調 査 / コ ス ト ・ 性 能 評 価
・ PV パ ネ ル の 調 査 ま で 完 了 し て い る 。 実 機 に 組 み 込 ん で の 性 能 評 価 お よ び 単
体での性能評価が未実施。
・チャージャについては調査中。
■市販二次電池の調査/コスト・性能評価
リチウムイオン電池の調達が完了している。実機に組み込んでの性能評価お
よび単体での性能評価が未実施。
■ 電 源 の 48V 化 技 術 の 開 発 、 市 販 品 調 査
モータドライバのみ調達が完了している。実機組み込み評価が未実施。
■レンジエクステンダの調査/コスト・性能評価
調査が完了している。要求仕様に合致する汎用品がないので、来期導入の予
定はない。
6 研究開発成果
6 -1
軽量かつ剛性の高い新型フレームの開
発
コスト、重量削減を目的とし、新型フレ
ームの開発を行った。現行機のフレーム部
分 を 3D-CAD の 応 力 解 析 シ ミ ュ レ ー シ ョ ン で
確認し、実際に静荷重・動荷重ひずみ測定
試験を実施してシミュレーション結果と照
ら し 合 わ せ 、相 関 関 係 を 確 認 し た 。 図 2 に 、
現行機のフレームを示す。
図3に応力解析シミュレーションの図を
示 す 。800kg の 荷 重 を か け た 状 態 で の 結 果 で
ある。赤色に近いほど応力が強いことを表
している。
( a)
(a)
(c)
(b)
図2 現行機フレーム
(b)
図3 応力解析シミュレーション結果
(c)
図4
ひずみ試験の様子
図5
ひずみゲージ貼り付けの様子
表1
(a),(b)の ひ ず み 値 ( 静 荷 重 )
※シミュレーション値には拘束条件にねじりを加えている。
静 荷 重 ひ ず み 測 定 試 験 で は フ レ ー ム に 23
個のひずみゲージを貼り付け、荷重をか
けたときのひずみ値を測定した。図4、
図5にひずみ測定試験の様子を示す。図
6にひずみゲージ貼り付け箇所を示す。
荷重はシミュレーションの条件と同等の
800kg( 26kg タ ン ク ×30 個 )と し た 。動 荷
重ひずみ測定試験では、静荷重ひずみ測
定試験と同様の荷重をかけたままプラン
タ ー を 駆 動 さ せ 、ひ ず み の 値 を 測 定 し た 。
静 荷 重 ひ ず み 測 定 の 結 果 、 最 大 で 491
μ ε 、 動 荷 重 ひ ず み 測 定 で は 最 大 で 717
μεのひずみを生じた箇所があったが、
SS 材 に お け る 塑 性 変 形 ・ 破 断 の 限 界 値 は
1000μ ε で あ る た め 、 十 分 な 強 度 を 有 し
図6 新型フレーム
ていることがわかり、各部材のサイズ、
板厚を小さくし軽量化可能と判断した。
条件を最適化させ新型を設計・製造した。表1に実測値とシミュレーション値を
示す。図6に新型フレームの図を示す。プランター後方部分のリブとフレームの一
部 が 小 型・薄 型 化 し 、荷 台 フ レ ー ム の 重 量 は 330kg か ら 280kg と な り 、約 15%の 削 減
と な っ た 。同 様 に ひ ず み 測 定 を 行 っ た 結 果 、静 荷 重 試 験 で は 最 大 570μ ε 、動 荷 重 試
験 で は 最 大 616μ ε と 、問 題 な い 値 と な り 、十 分 な 剛 性 を 保 っ た ま ま 約 15%の 重 量 が
削減できた。
6 -2
市販モータドライバの調査/ラジオノイズの評価
6 -2 -1 市 販 モ ー タ ド ラ イ バ の 調 査
汎用の製品を利用することでコストを抑え、調達が容易になるとして、市販
のモータドライバの調査を行った。また、高出力のモータを搭載する目的で、
48V で 扱 え る モ ー タ の 調 査 も 実 施 し た 。 汎 用 ・ 少 量 で も 調 達 可 能 な ド ラ イ バ は
少 な く 、国 内 代 理 店 経 由 で 調 達 で き る メ ー カ ー は 海 外 の 1 社 の み だ っ た 。ま た 、
ソーラープランターの動力として使用するには、ウォームギア式の減速機は効率が低
いため、ヘリカルギア等の効率の高い減速機を調査したところ、少数の販売が可能な
メーカーは国内1社のみだった。出力許容トルクの大きい機種は質量も大きく、本用
途には適さないため、トルクの小さい機種を調達し、モータと組み合わせて動作確認
を行った。
6 -2 -2 ラ ジ オ ノ イ ズ の 評 価
差分
エンジンを廃し静音性の上がった現行機だ
駆動時
電 源 OFF
が、ラジオを乗せて駆動させたとき、ラジオ
にノイズが入り音声が聞こえないことから、
ラジオノイズ対策を実施した。スペクトラム
アナライザを用いての周波数の波形を測定
と 、帯 広 で 受 信 可 能 な AM 放 送 局 の う ち 2 局 お
よ び FM1 局 で の 聴 感 テ ス ト を 行 い 、対 策 前 後
の比較を行った。
対 策 前 の 聴 感 テ ス ト で は AM2 局 で は ノ イ ズ
で ま っ た く 音 声 が 聞 こ え ず 、 FM に つ い て は 、
音声は聞こえるもののブラシノイズの入り方
図 7 対 策 前 波 形 比 較 (AM)
が大きく不快であった。また、波形からも放
差分
送局周波数付近でのノイズの影響が大きいこ
駆動時
と が わ か っ た 。 図 7 に 通 常 時 ( 駆 動 電 源 OFF
電 源 OFF
のとき)の波形と駆動時の波形を比較したも
のを示す。
プランターの各箇所でノイズの強さを確認
したところ、モータ部分のブラシノイズとモ
ータ線付近のノイズが強いことがわかった。
ドライバを鉄製のシールドケースに収納し、
GND 線 と フ レ ー ム を 電 気 的 に 接 続 し 、 モ ー タ
線短縮のためシールドケースをモータ直近に
配置するなどの対策を行った結果、ノイズが
図 8 対 策 後 波 形 比 較 (AM)
低減した。図8に対策後の波形を示す。高周
波帯にはノイズが残っているものの、ラジオ
の 周 波 数 帯 へ の 影 響 は ほ と ん ど な く な り 、AM、FM い ず れ の 局 で も 聴 感 上 ノ イ ズ は 消
え、問題なく聞き取りが可能になった。
6 -3
市 販 PV パ ネ ル ・ チ ャ ー ジ ャ の 調 査 / コ ス ト ・ 性 能 評 価
コ ス ト 削 減 を 目 的 と し て 、 現 行 機 の 200W 以 上 の 出 力 を 有 す る パ ネ ル を 基
準 と し 、太 陽 電 池 パ ネ ル の 市 販 品 に つ い て 調 査 を 行 っ た 。パ ネ ル 単 体 、少 量
で の 調 達 は 国 内 ・ 海 外 問 わ ず 多 く の メ ー カ ー で 可 能 で あ る が 、国 内 に 代 理 店
のある海外メーカーよりも国内メーカーは比較的コストが高い傾向にある。
6 -4
市販二次電池の調査/コスト・性能評価
現行機では鉛電池を使用しているが、寿命や重量の面から、リチウムイオ
ン 電 池 へ の 移 行 を 検 討 し た 。 車 載 用 ・ 24V、 100Ah の 製 品 を 市 販 し て い る メ
ー カ ー は 非 常 に 少 な く 、コ ス ト も 考 慮 し た 場 合 、該 当 す る 製 品 を 売 っ て い る
の は 国 内 メ ー カ ー で は 1 社 の み で あ る 。他 の 大 手 国 内 メ ー カ ー で 扱 う 二 次 電
池 は 携 帯 電 話 等 の 容 量 の 小 さ な も の が 多 く 、本 用 途 に は 向 か な い 。海 外 で は
中 国 ・ 台 湾 メ ー カ ー で 該 当 す る 製 品 が あ る が 、国 内 に 代 理 店 を 持 つ メ ー カ ー
がなく、日本までの調達が困難である。
6 -5
電 源 の 48V 化 技 術 の 開 発
高 出 力 化 を 目 的 と し た 48V 化 技 術 の 調 査 の 結 果 、 国 内 で は 0.7kW~ 1.5kW 程 度 の
PMDC モ ー タ メ ー カ ー が 3 社 あ っ た が 、コ ス ト 面 、納 期 面 で 調 達 可 能 な の は 1 社 の み
だ っ た 。 海 外 で も 3kW 以 上 の EV 用 DC モ ー タ が 安 価 で 販 売 さ れ て お り 、 国 内 代 理 店
経由で購入可能なのは1社のみだった。
6 -6
レンジエクステンダ(発電機)の調査/コスト・性能評価
ユーザの使用状況によっては、補助電源として小型発電機を併用する場合
が あ る 。現 在 は 、ユ ー ザ が バ ッ テ リ 残 量 を 確 認 し 、必 要 に 応 じ て 発 電 機 を 始
動 し て い る 。利 便 性 向 上 の た め 、発 電 機 を 自 動 始 動 ・ 停 止 で き る よ う に す る
こ と を 目 的 と し 、 市 販 の 発 電 機 の 調 査 を 行 っ た が 、 2.5kW ま で の 小 型 発 電 機
で セ ル モ ー タ が 搭 載 さ れ た も の は 見 つ か ら な か っ た 。 2.5kW を 超 え る も の で
あれば該当の機種が存在するが、現在プランターに搭載されている発電機
12.7kg に 対 し 、 2.8kW 出 力 の モ ー タ は 67kg と 重 量 が 重 く 、 コ ス ト も 高 い 。
ま た 、現 行 機( プ ラ ン タ ー )の 販 売 台 数 で は セ ル モ ー タ 付 き 小 型 発 電 機 の 開
発は困難と判断した。
7 今後の課題
■軽量かつ剛性の高い新型フレームの開発:
作業台のたわみを抑制した形状の検討を行う。
■市販モータドライバの調査/ラジオノイズの評価:
実機搭載機種の最適化を進める。
■ 市 販 PV パ ネ ル ・ チ ャ ー ジ ャ の 調 査 / コ ス ト ・ 性 能 評 価 :
コ ス ト の 低 い PV パ ネ ル を 組 み 込 み 、 実 機 で 評 価 を 行 う 。 ま た 、 単 体 で の 性 能
評価も実施する。チャージャについては引き続き調査を続行する。
■市販二次電池の調査/コスト・性能評価:
調達済のコスモウェーブ製のリチウムイオン電池を実機に組み込み評価す
る 。ま た 、48V 化 と 合 わ せ 、評 価 を 実 施 す る 。 ま た 、単 体 で の 性 能 評 価 も 実 施 す
る。
■ 電 源 の 48V 化 技 術 の 開 発 :
48V シ ス テ ム を 実 機 に 組 み 込 み 、 評 価 を 実 施 す る 。
■レンジエクステンダの調査/コスト・性能評価:
導入の予定はないが、必要に応じ調査を実施する。