市販直後調査 終了報告 - 医療用医薬品基本情報

選択的 SGLT2 阻害剤
2 型糖尿病治療剤,処方箋医薬品注)
(エンパグリフロジン製剤)
注) 注意-医師等の処方箋により使用すること
市販直後調査 終了報告
(2015 年 8 月 23 日現在)
謹啓
時下,先生方におかれましては益々ご清栄のこととお慶び申し上げます。
平素は格別のご高配を賜り厚く御礼申し上げます。
さて,ジャディアンス®錠10mg・25mgは2型糖尿病を効能・効果とし,2015年2月24日より販売
を開始し,2015年8月23日までの6カ月間にわたり市販直後調査を実施いたしました。市販直後調
査実施におきましては,ご多忙にもかかわらず多くの先生方に多大なご協力を賜り厚く御礼申し
上げます。
この度,販売開始から8月23日までにご報告いただきました副作用をまとめましたので,ご高
覧くださいますようお願い申し上げます。
本剤の市販直後調査は8月23日をもちまして終了いたしましたが,自主的な安全性監視活動と
して市販直後調査期間中の情報収集・評価体制を販売開始1年後(2016年2月23日)まで継続いた
します。今後とも,適正使用のための情報収集に努める所存でございますので,引き続きご協力
を賜りますよう,よろしくお願い申し上げます。
謹白
2015年10月
日本ベーリンガーインゲルハイム株式会社
日本イーライリリー株式会社
-1-
1.
市販直後調査の概要
ジャディアンス®錠 10mg・25mg
2 型糖尿病
2015 年 2 月 24 日~2015 年 8 月 23 日
121 例 168 件(うち重篤な副作用報告症例数 4 例 4 件)
製品名
効能・効果
調査実施期間
副作用報告症例数
2.
副作用の発現状況
調査期間中に報告された副作用は121例168件であり,重篤な副作用は4例4件,非重篤な副作用
は117例164件でした(P6〜P7)
。
重篤な副作用は「糖尿病性ケトアシドーシス」,
「ケトン尿」
,
「低血糖症」
,
「ストレス心筋症」
(各1件)でした。
また,非重篤な副作用のうち3件以上報告された事象は,「頻尿(夜間頻尿6件を含む)
」
(13件)
,
「膀胱炎」,「便秘」,「そう痒症」(各7件),「低血糖症」,「浮動性めまい」,「無力症」(各6件),
「発疹」,「倦怠感」,「グリコヘモグロビン増加」,
「体重増加」
(各5件)
,
「下痢」
,「湿疹」
,
「筋痙
縮」,「陰部そう痒症」,「異常感」,「体重減少」(各4件),「外陰部カンジダ症」,「脱水」,「背部
痛」,「排尿困難」(各3件)でした(上記以外の非重篤副作用の報告件数はP6〜P7の一覧を御確
認ください)
。
2. 1
ケトン体増加について
本剤投与後に「糖尿病性ケトアシドーシス」1件(重篤)
,
「ケトン尿」1件(重篤)及び「尿中
ケトン体陽性」1件(非重篤)が報告されています。
【糖尿病性ケトアシドーシス】
本剤投与後に報告された「糖尿病性ケトアシドーシス」の重篤1症例の概要をお示します。本
症例は発現後の検査により内因性インスリン分泌能が低下している2型糖尿病患者であると判断
されました。
性
年齢
別
処方薬
1日
処置
投与量
発現か
発現ま
ら転帰
での日
転帰
までの
数
日数
疾患・
区分
有害事象・PT 名
合併症
糖尿病性ケトアシドーシス
3日
合併症
嘔吐
5日
-
未記載 重篤でない 否定できない
脂質異常症
合併症
倦怠感
3日
-
未記載 重篤でない 否定できない
タバコ使用者
合併症
脱水
3日
-
未記載 重篤でない 否定できない
疾患名
男 30 ジャディアンス錠
10mg 中止 2型糖尿病
性 歳代 メトホルミン塩酸塩 500mg 中止 高血圧
アルコール摂取 合併症
前治療薬:不明
本剤投与開始時 随時血糖:789 mg/dL,HbA1c:14%以上
発現時 総ケトン体:16,047 µmol/L,アセト酢酸:4,272 µmol/L
発現後 血中 C ペプチド:0.3 ng/mL,総ケトン体:98 µmol/L
処置:生食補液+ヒューマリン R の経静脈持続投与
-2-
9 日 回復
重篤性
因果関係
重篤(入院) 否定できない
【ケトン尿】
本剤投与後に報告された「ケトン尿」の重篤1症例の概要をお示しします。現時点で詳細な症
例の情報は得られておりません。
性別 年齢
不明
処方薬
40
ジャディアンス錠
歳代
1日
疾患・
処置 疾患名
投与量
区分
有害事象・PT 名
発現までの 発現から転帰ま
転帰
日数
での日数
-
ケトン尿
-
-
-
-
-
重篤性
未記載 重篤
因果関係
否定できない
発現時 血糖値:未記載
本剤投与後に,ケトアシドーシス(糖尿病性ケトアシドーシスを含む)があらわれることがあ
るため,観察を十分に行い,異常が認められた場合には本剤の投与を中止し,適切な処置を行っ
てください。また,以下に本剤の添付文書の記載の抜粋をお示しします。本剤の使用に際しては,
十分ご留意ください。
【使用上の注意】,重要な基本的注意(9)
(抜粋)
本剤の作用機序である尿中グルコース排泄促進作用により,血糖コントロールが良好であっても脂肪
酸代謝が亢進し,ケトーシスがあらわれ,ケトアシドーシスに至ることがある。著しい血糖の上昇を
伴わない場合があるため,以下の点に留意すること。
(1)悪心・嘔吐,食欲減退,腹痛,過度な口渇,倦怠感,呼吸困難,意識障害等の症状が認められ
た場合には,血中又は尿中ケトン体測定を含む検査を実施すること。異常が認められた場合に
は投与を中止し,適切な処置を行うこと。
(2)特に,インスリン分泌能の低下,インスリン製剤の減量や中止,過度な糖質摂取制限,食事摂
取不良,感染症,脱水を伴う場合にはケトアシドーシスを発現しやすいので,観察を十分に行
うこと。
(3)患者に対し,ケトアシドーシスの症状(悪心・嘔吐,食欲減退,腹痛,過度な口渇,倦怠感,
呼吸困難,意識障害等)について説明するとともに,これらの症状が認められた場合には直ち
に医療機関を受診するよう指導すること。
2. 2
低血糖症について
本剤投与後に「低血糖症」(6件)が報告されており,うち1件は重篤な症例でした。重篤1症例
の概要をお示しします。
本剤と他の糖尿病用薬との併用においては,低血糖症のリスクが増加するおそれがありますの
で十分に注意してください。
性
年齢
別
処方薬
男 40 ジャディアンス錠
性 歳代 メトホルミン塩酸塩
1日
処置
投与量
10mg
発現か
発現ま
ら転帰
有害事象・PT 名 での日
転帰
までの
数
日数
疾患名
疾患・
区分
継続 2型糖尿病
原疾患
低血糖症
4日
-
回復
合併症
体重減少
-
-
未記載 重篤でない 否定できない
4日
-
回復
1250mg 中止 脂質異常症
ミチグリニドカルシウム水
和物
-
継続
アログリプチン安息香酸塩
/ピオグリタゾン塩酸塩配
合剤
-
継続
筋痙縮
発現時 血糖値:未記載
処置:メトホルミン塩酸塩のみ投与中止
-3-
重篤性
重篤
因果関係
否定できない
重篤でない 否定できない
また,『SGLT2 阻害剤の適正使用に関する Recommendation』※での下記記載をご参照ください。
Recommendation(抜粋)
:
1. インスリンや SU 薬等のインスリン分泌促進薬と併用する場合には,低血糖に十分留意し
て,それらの用量を減じる。インスリンとの併用は治験で安全性が検討されていないことか
ら特に注意が必要である。患者にも低血糖に関する教育を十分行うこと。
7. 原則として,本剤は当面他に 2 剤程度までの併用が推奨される。
※ 社団法人日本糖尿病学会「SGLT2 阻害薬の適正使用に関する委員会」より発出(策定:2014 年 6 月 13 日,改訂:
2014 年 8 月 29 日)
2. 3
ストレス心筋症について
本剤投与後に報告された「ストレス心筋症」の重篤1症例の概要をお示しします。
性
年齢
別
処方薬
1日
処置
投与量
疾患名
疾患・
区分
10mg
中止 2型糖尿病
原疾患
500mg
継続 高血圧
合併症
アナグリプチン
400mg
継続 動脈硬化症
合併症
アスピリン
100mg
継続 膀胱癌
合併症
カルベジロール
10mg
継続
-
継続
女 70 ジャディアンス錠
性 歳代 メトホルミン塩酸塩
カンデサルタン シレキセチ
ル/アムロジピンベシル酸
塩
発現か
発現ま
ら転帰
有害事象・PT 名 での日
転帰
までの
数
日数
ストレス心筋症
15 日
15 日 回復
重篤性
重篤
因果関係
否定できない
発現時:ストレスが負荷される状況となり,タコツボ型心筋症(ストレス心筋症)を発症したと考えられた
2. 4
皮膚症状について
本剤投与後に「そう痒症」(7件),「発疹」
(5件)
,
「湿疹」
(4件)及び「そう痒性皮疹」
(2件)
等が報告されており(いずれも非重篤),これら症状の発現までの日数について情報が得られて
いる症例のうち9例は投与後1日~10日,5例は18日~62日に発現が認められています。複数の
SGLT2阻害剤において,薬疹,発疹,皮疹,紅斑などの皮膚症状は,非重篤のものを含め頻度の
高い副作用となっており,SGLT2阻害剤投与後1日目からおよそ2週間以内に多く発症※していま
す。本剤投与後は十分な観察を行っていただき, 薬疹を疑わせる紅斑などの皮膚症状が認めら
れた場合には速やかに本剤の投与を中止し,皮膚科にコンサルテーションしてください。
※ 上述の『SGLT2阻害剤の適正使用に関するRecommendation』より引用
2. 5
尿路感染,性器感染について
本剤投与後に「膀胱炎」
(7件),「外陰部膣カンジダ症」(3件)(いずれも非重篤)などが報告
されています。
他のSGLT2阻害剤において,尿路感染を起こし,腎盂腎炎,敗血症(敗血症性ショックを含む)
等の重篤な感染に至った例が報告されていますので,十分ご注意ください。また,本剤の使用に
際して,患者に尿路感染及び性器感染の症状並びにその対処方法についてご説明ください。
-4-
2. 6
頻尿・多尿,体液量減少に関連する事象について
本剤投与後に「頻尿」(7件)及び「夜間頻尿」(6件)(いずれも非重篤)が報告されています。
また,「脱水」(3件,非重篤)も報告されています。本剤投与中は適度な水分補給を行うよう指
導し,十分な観察を行ってください。
また,他のSGLT2阻害剤において,脱水に引き続き「脳梗塞を含む血栓・塞栓症等の体液量減
少に関連する事象」を発現した例が報告されております※ので,十分ご注意ください。頻尿,多
尿,口渇,血圧低下等の症状があらわれ脱水が疑われる場合には,休薬や補液等の適切な処置を
行ってください。
※ 上述の『SGLT2阻害剤の適正使用に関するRecommendation』より引用
その他,本剤の使用に際しましては,「体重減少」などの発現にご留意いただき,本剤の添付
文書,適正使用のお願いなどをご参照の上,慎重にご使用いただきますようお願いいたします。
また,本剤を処方いただく際は,次にお示しします用法・用量をご確認ください。
【用法・用量】
(抜粋)
通常,成人にはエンパグリフロジンとして 10mg を 1 日 1 回朝食前又は朝食後に経口投与する。な
お,効果不十分な場合には,経過を十分に観察しながら 25mg 1 日 1 回に増量することができる。
社団法人日本糖尿病学会「SGLT2阻害薬の適正使用に関する委員会」から『SGLT2阻害薬の適
正使用に関するRecommendation』が発出されておりますので,あわせてご参照ください。
(http://www.jds.or.jp/modules/important/index.php?page=article&storyid=48)
-5-
ジャディアンス®錠 報告副作用集計
(2015 年 8 月 23 日現在)
器官別大分類
副作用名
感染症および寄生虫症 (14 件)
*
*
血液およびリンパ系障害 (1 件)
代謝および栄養障害 (14 件)
*
*
*
*
*
*
精神障害 (1 件)
神経系障害 (10 件)
*
*
眼障害 (3 件)
*
*
*
*
耳および迷路障害 (1 件)
心臓障害 (3 件)
血管障害 (2 件)
呼吸器,胸郭および縦隔障害
(2 件)
胃腸障害 (20 件)
*
*
*
*
*
*
*
*
*
*
*
*
肝胆道系障害 (1 件)
皮膚および皮下組織障害 (24 件)
*
*
*
*
外陰部腟カンジダ症
性器感染
腟感染
膀胱炎
尿路感染
帯状疱疹
溶血
過食
食欲亢進
食欲減退
糖尿病性ケトアシドーシス 1)
高カリウム血症
脱水
低血糖症
不安
頭痛
浮動性めまい
感覚鈍麻
精神的機能障害
眼痛
網膜出血
回転性めまい
動悸
ストレス心筋症
潮紅
高血圧
呼吸困難
咳嗽
下痢
便秘
消化不良
腹部膨満
上腹部痛
腹部不快感
悪心
嘔吐
口内乾燥
肝機能異常
皮膚乾燥
皮膚障害
湿疹
そう痒症 1)
そう痒性皮疹
発疹
脱毛症
(次ページに続く)
-6-
発現件数
重篤
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
1
0
0
1
0
0
0
0
0
0
0
0
0
1
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
非重篤
3
1
1
7
1
1
1
1
1
1
0
1
3
5
1
2
6
1
1
1
2
1
2
0
1
1
1
1
4
7
1
1
1
1
2
2
1
1
1
1
4
7
2
5
2
合計
3
1
1
7
1
1
1
1
1
1
1
1
3
6
1
2
6
1
1
1
2
1
2
1
1
1
1
1
4
7
1
1
1
1
2
2
1
1
1
1
4
7
2
5
2
器官別大分類
皮膚および皮下組織障害
筋骨格系および結合組織障害
(9 件)
副作用名
非重篤
1
1
4
1
3
1
0
3
1
7
6
4
1
1
6
5
1
1
1
4
2
1
0
1
1
0
0
0
0
5
1
4
5
5
1
4
5
* 皮膚擦過傷
0
1
1
* 運動不足
0
4
1
164
1
168
*
*
*
*
*
*
*
生殖系および乳房障害 (5 件)
一般・全身障害および投与部位の
状態 (21 件)
*
*
*
*
*
*
*
臨床検査 (17 件)
*
*
*
*
社会環境 (1 件)
総計
合計
重篤
0
0
0
0
0
0
1
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
0
腎および尿路障害 (18 件)
傷害,中毒および処置合併症
(1 件)
発現件数
冷汗
爪破損
筋痙縮
筋骨格硬直
背部痛
四肢不快感
ケトン尿
排尿困難 1)
排尿異常
頻尿
夜間頻尿
陰部そう痒症
外陰腟そう痒症
発熱
無力症
倦怠感
顔面浮腫
浮腫
末梢性浮腫
異常感
口渇
血中乳酸脱水素酵素増加
アスパラギン酸アミノトランスフェラー
ゼ増加
グリコヘモグロビン増加
尿中ケトン体陽性
体重減少
体重増加
1
1
4
1
3
1
1
3
1
7
6
4
1
1
6
5
1
1
1
4
2
1
【集計表をご参照いただくときの注意事項】
- 集計表の副作用名は,報告いただいた副作用名を ICH 国際医薬用語集日本語版(MedDRA/J)の基本語(PT:
Preferred Terms)に読み替えて記載しております。
- 本集計は,販売開始(2015 年 2 月 24 日)以降に第 1 報が入手された症例を対象とし,調査が終了していない症
例や評価の確定していない報告も含んでいるため,調査の進捗により,今後,その取り扱いが変更されることがあ
ります。
- *印は,集計時点の添付文書から予測できない副作用です。
1) は,2015 年 9 月 15 日付の添付文書改訂により,予測できる副作用に変更しました。
- 表中の副作用名ごとの数字は,発現件数です。1 症例に複数の副作用を認めている症例もあります。
- 重篤の件数は,先生方から重篤とご報告いただきました件数に加えて,社内検討により重篤と判断した件数の合
計です。
- 本集計は,自発報告による症例の集計のため,総使用症例数が明らかではありません。したがって,発現頻度は
不明です。
-7-
0 1 3 0 5 2
J A D- N 0 0 8( R 0)
-8-