振動実験 2015 年版 目 的: 機械及び電気工学実験における「機械振動の測定」では、1自由度振動系に関して自由振動よ り固有振動数および減衰比を、強制振動より振幅倍率と位相差の周波数変化を求めた。本実験で は、写真1に示す実験装置を用いて、写真2に示す1自由度振動系の振幅倍率と位相差を求める 実験方法を考え、 予備実験により測定する振動数を決定し、実際に測定してその結果を考察する。 なお、 「機械振動の測定」では松平式振動試験機をカム加振方式で使用したので振動数にかかわ らず加振台の振幅はほぼ一定であった。しかし、この実験では写真3に示すように電磁式加振機 を用いるため、2自由度振動系となることに注意が必要である。したがって、機械力学Ⅱを履修 していない学生は、機械力学Ⅰの教科書で2自由度振動系について勉強しておくこと。 実験装置(写真1) : ○ 測定対象(1 自由度振動系) (写真2) ○ 動電式加振機(写真3) (EMIC 製 514-A) 最大加振力:30 kgf(5 ~200 Hz),最大振幅:10 mm,最大加速度:40 G, 可動部質量:0.9 kg,バネ定数:30 kgf/cm. ○ 加振機用電力増幅器(写真4) (EMIC 製 361 C) 最大出力:300 W,最大入力電圧:1 Vrms. 電流増幅率(LEVEL) :実験中は指示された値に固定しておくこと。 (最大電流:2.75 A 以下) ○ 加振テーブル内蔵加速度ピックアップ 電荷感度(加振機 No.21927) :61.4 pc/G. 電荷感度(加振機 No.21929) :62.5 pc/G. ○ 質点用加速度ピックアップ(EMIC 製 541-AT) 電荷感度(CX-55,加振機 No.21927 用) :61.8 pc/G. 電荷感度(CX-57,加振機 No.21929 用) :63.2 pc/G. ○ 圧電式加速度ピックアップ用チャージアンプ(EMIC 製 600-A-CC,2ch または 4ch) 周波数範囲:0.5~100 kHz. 出力係数:1 G/V に固定しておくこと。 ○ RC 発振器(写真3) (KIKUSUI 製 ORC11) 周波数範囲:5 Hz~500 kHz(周波数はオシロスコープの波形より読み取ること) . 減衰率:-15 dB に固定しておくこと。 ~VARIABLE:右一杯に回して「CAL'D」にしておくこと。 ○ ペン型オシロスコープ(写真1右端) (2ch) <注意:使用時には、感度と共に紙送り速度を記録しておくこと。> -1- 写真1 実験装置全景 写真2 測定対象 チャージアンプ RC 発振器 加振機用増幅器 写真4 RC 発振器,加振機用増幅器, 写真3 加振機と測定対象 チャージアンプ 理 論:<実験前にまとめておくこと!> 測定対象は直動ガイド(LM ガイド)可動部に取り付けたアルミ角パイプをコイルばねで動電 型加振機の加振テーブルに接続したものである。したがって、アルミ角パイプ,ばね取り付け用 アルミ円柱,加速度ピックアップおよび直動ガイド可動部をまとめて1つの質点と仮定し、ばね と並列に粘性減衰器を加えると図1に示すシンプルな1自由度振動系となる。しかし、動電型加 振機がコイルを有する加振テーブルをばねで支える構造であるため、加振テーブルを含めた全体 モデルは図2に示すような2自由度振動系となる。 ○ 図1に示す測定対象モデルに関して自由体線図を描き、運動方程式、自由振動の式、および 振幅倍率と位相差の式をまとめなさい。 ○ 図2に示す加振テーブルも含めた全体モデルに関して、自由体線図を描き、運動方程式、固 有円振動数、振動モードを導き、振幅倍率をまとめなさい。 <参考:機械力学Ⅰの教科書の2自由度振動系> -2- 𝑘 𝑚 𝑋(𝑡) 𝑥(𝑡) 𝑐 図1 測定対象モデルの解析モデル(1自由度振動系) 𝑘 𝐾 𝑀 𝑋(t) 𝑚 𝑥(𝑡) 𝐹 = 𝐹0 sin(𝜔𝜔) 図2 実験装置全体の解析モデル(2 自由度振動系) 実験方法: 課題1(1日目の実験) 測定対象である1自由度振動系について、振幅倍率と位相差の周波数変化を求める実験手順を 次の順に立案しなさい。 1.測定対象のコイルばねの外径は 30.5 mm、線径は 2.5 mm である。巻き数を測定し、ばね定 数を計算しなさい。ただし、横弾性係数は𝐺 = 78.4 GPa (ピアノ線)とし、有効巻き数はばねを 取り付けているアルミ円柱から出ている部分としなさい。 2.アルミ角パイプは外寸が 50×50×50 mm で肉厚が 3 mm、ばね取り付けアルミ円柱の寸法 はφ42×13 mm である。アルミニウムの密度を 2700 kg/m3 として質量を求めなさい。そして 直動ガイド可動部の質量を 47 g、取り付けられている加速度ピックアップの質量を 32 g、取 り付けボルト6本の質量を 13.9 g として質点の質量を計算しなさい。また、固有振動数を計 算するときに考慮すべきばねの質量を導き、質点の質量に加えなさい。 3.固有振動数(𝑓𝑛 )を計算しなさい。 4.加振テーブルを含めた実験装置全体(2自由度振動系)の固有振動数を求めなさい。 5.測定対象の減衰比(𝜁)と、固有振動数(𝑓𝑛 )を求める実験を立案しなさい。 (注意:アルミ角パイプに初期変位を与えて自由振動させると加振テーブルも振動して2自 由度振動系の自由振動となる。このことを考慮して1自由度振動系の減衰比と固有振動数を 求める実験を考えること。 ) 6.立案した計画にもとづいて実験しなさい。 -3- 7.計算より求められた固有振動数と実験より求められた固有振動数を比較し、検討しなさい。 8.振幅倍率と位相差の周波数変化を求める実験手順(目的,装置(機器接続図を含む),実験方 法,結果処理手順)をまとめなさい。実験手順では、振幅倍率および位相差の図を実験値のみ で描けるよう加振振動数を決定し、「機械振動と測定」における表3に相当する表の原案をつ くり、次回までに Excel で作成しておきなさい。このとき、質点および加振テーブルの変位振 幅を測定電圧、加速度振幅から求めるための列、および加振機用電力増幅器のメーターから読 み取った電流値の列を追加しておくこと。本実験では、振幅倍率を変位振幅で計算する。また、 課題2の4で電流値が必要となる。 (実験振動数は必ずしも等間隔でなくてよい。共振付近で多くの測定をするとわかりやすい 図が描ける。 ) 課題2(2日目の実験) 1.立案した計画で実験を実施し、測定対象の振幅倍率と位相差の表と図を作成しなさい。 (注意:加振機用増幅器の電流増幅率(LEVEL)は一定(最大電流:2.75 A)にしておく こと。また、変位振幅を計算できるようペン型オシロスコープの感度と紙送り速度も控えて おくこと。 ) 2.振幅倍率の図より減衰比を求め、1日目の実験で求めた減衰比と比較し、検討しなさい。 3.振幅倍率と位相差の図に理論曲線を加え、理論値と実験値を比較し、検討しなさい。 4.加振機は筐体に取り付けられた永久磁石で磁界を形成し、加振テーブルに取り付けられたコ イルに電気を流すことでフレミングの左手の法則により生じる電磁力で駆動されます。コイル は固定されているので磁束密度が一定であれば、電流に比例した電磁力が発生します。加振機 用電力増幅器の電流を入力とし、加振テーブルの振幅を出力とする振幅倍率の周波数変化を求 めて図に表し、考察しなさい。 5.理論では考慮していない摩擦について考察しなさい。 -4- ○ 評価基準 採点は減点法とし、下記の項目で不充分なところについて 0.5 点ずつ減点する。また、指示さ れていない自分で考えた検討については1点ずつ加点する。 <第1日目> 実 験: 2点(実験の準備がされていな場合は0点、2日目の開始時点で1日目の形式が整っ たレポートが未提出または未完成の場合も0点) 課題1: 3点 1.ばね定数の計算 2.質量の計算 3.固有振動数の計算 4.2自由度振動系の固有振動数の計算 5.固有振動数と減衰比を求める実験方法の立案 6.固有振動数と減衰比の実験結果 7.計算値と実験値の比較・検討 <第二日目> 実 験: 2点(形式が整ったレポートが未提出または未完成の場合は0点) <形式が整ったレポートとは、目的、実験装置、理論、実験方法、実験結果、 考察、結論、参考文献の順に必要な内容が記載されているもの。> 課題2: 3点 0.振幅倍率および位相差を求める実験計画 1.振幅倍率および位相差の実験結果(表および図を含む) 2.振幅倍率の図より減衰比の決定、および1日目の実験で求めた減衰比との比較・検討 3.振幅倍率と位相差の理論値と実験値の比較・検討 4.加振テーブル振幅の実験結果と考察 5.摩擦に関する考察 以 -5- 上
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