第2回「エンパワーメント大賞」受賞組織の取り組み 【優秀賞】株式会社ブリヂストン 住 所:東京都中央区京橋 3-1-1 ホームページ:http://www.bridgestone.co.jp 従業員数:16,614 人(内訳:男性 15,284 人 女性 1,330 人) 業 種:製造業 1.取り組み・支援に至る経緯・課題・目標 (1)経緯 従業員の満足度を正しく把握し働きがいのある職場づくりにつなげていくため、従業員 満足度調査(アンケート)を毎年実施し、従業員の声を吸い上げ様々な施策や制度の導入 につなげてきた。女性活躍推進に関する設問も設けており「女性が活躍できる雰囲気」の 有無を問う設問について、2009年の調査結果は<表1>の通りとなった。 全体では「女性が活躍できる雰囲気がある」と回答した割合が「ない」と回答した割合 を9.7%下回る結果となった。女性総合職、管理職に限ると「女性が活躍できる雰囲気があ る」と回答した割合はどちらも6割程度となったものの、女性総合職の2割程度が「ない」 と回答し、管理職の「ない」と回答した割合より6.1%高い結果となった。管理職と女性総 合職の乖離が見られ、女性総合職の方がより「女性が活躍できる雰囲気がない」と感じて いることが分かった。 <表1>女性が活躍できる雰囲気の有無(従業員満足度調査結果:2009年) 全体 女性総合職 管理職 ある 29.3% 58.9% 61.3% ない 39.0% 18.9% 12.8% 「女性が活躍できる雰囲気がない」理由として、2009年に実施した女性ワークショップ 等から、<表2>のように女性管理職や女性社員が少ないこと、海外や工場の経験者が少 なく活躍できる職域が狭いことから、女性のロールモデルがいないことによる将来のキャ リアが描けない不安や、育児と仕事の両立への不安、女性総合職のネットワーク不在があ げられた。 <表2>女性の管理職・総合職数、海外・工場経験者数(2008年) 2008年 管理職 7名 管理職及び総合職 184名 海外赴任経験者 1名 工場配置経験者 3名 (2)課題 女性が活躍できる職場づくりの取り組みとして、女性総合職の人数を増やし定着させる こと、定着を図るために女性のキャリアを支援する取り組みや、仕事と育児の両立支援施 策の充実を図る取り組みを行うこととした。また、それまで女性社員が少なかったことか ら、女性もキャリアを積み、将来は管理職として活躍できるように育成していくという認 識を持っていない女性社員を部下に持つ上司も多く、そういった認識を変えるための研修 ©(公財)日本生産性本部 第2回「エンパワーメント大賞」受賞組織の取り組み や情報提供の場を設けることとした。 さらに、女性社員やその上司のみならず、会社全体のダイバーシティへの理解を深める こと、制度を周知し理解促進を図る取り組みを行うこととした。 (3)目標 上記課題を実行することで、採用した女性社員が定着し、育成(成長)され、力を発揮 することが組織活性化、企業の競争優位に繋がっている状態とすることを目指した。 2.具体的な取り組み、仕組みや工夫について 2008年にダイバーシティ推進専門の推進部署を設置し、女性をはじめ様々な人材が「働 きやすく、活躍できる」職場環境の構築に取り組み、様々な活動を進めてきた。 (1)女性の採用・配置 女性総合職採用の数値目標を立て、計画的に女性を採用している。また、女性の配置・ 職域の拡大として、海外赴任や工場配置の経験を付与するようにした。 ・2009年:定期新入社員の初任配置として工場への配置を開始 ・2011年:トレーニーだけでなく海外赴任も開始 ・2014年定期採用の女性総合職実績:事務系総合職全体の45.0%、技術系総合職全体の 25.0% (2)女性総合職のキャリアサポートおよびネットワーク構築 女性社員がキャリアプランを考える上で感じる不安や疑問を解消するため、2009年より 入社5年目前後の総合職女性社員を対象に「キャリアデザイン研修」を開始した。研修は、 活躍する女性管理職との対話を通しキャリア形成や仕事と家庭の両立について考え・情報 を得ることを目的とし、毎年実施している。また、女性総合職のキャリアアップに対する サポート意識の向上を目的に、女性総合職を部下に持つ管理職を対象とした「キャリアサ ポート研修」も実施している。2014年11月末時点で、女性総合職183名、管理職239名が受 講した。 女性のさらなる活躍と管理職登用を促進するため、2014年より入社10年目前後の総合職 女性社員を対象としたキャリア研修を新規に開始し、また「女性管理職登用促進プログラ ム」を導入して中期的な視点で女性管理職候補層の育成を行っている。女性管理職人数の 目標値を2018年に2013年度比3.6倍と設定して取り組みを推進し、「女性管理職登用促進プ ログラム」では、個別のキャリアプランを作成し計画に沿って配属・育成を行うとともに、 経営トップとの懇親会や社外の女性社員との交流を図るための社外研修への派遣を行って いる。 (キャリアデザイン研修) (キャリアサポート研修) ©(公財)日本生産性本部 第2回「エンパワーメント大賞」受賞組織の取り組み (3)多様な働き方を支援する各種制度の充実 多様で柔軟な働き方を支援するため、法を上回る育児・介護支援制度、週3日までの在 宅勤務制度などを導入している。さらに、育児・介護・配偶者の転勤への帯同等を理由に 退職した従業員の再入社を促進する再入社(ウエルカム・バック)制度や、配偶者が海外 転勤した際に最大3年間休職できる配偶者海外転勤休職制度を導入した。 ◇法を上回る育児支援制度(例) ・育児休職制度:子どもが満1歳に達した後、最初に到来する3月末まで(4月末まで 延長可)、または子どもが1歳6カ月に達するまでのどちらか長い方。保育所に入園 できない場合はさらに6カ月休職期間を延長できる。(最長で子が2歳7カ月まで) ・勤務時間短縮の措置:子が中学校就学始期に達するまで1日最大3時間所定労働時間を 短縮できる。 ・看護休暇:子の病気やケガ、予防接種、健診などの理由で中学校就学の始期に達する までの子1人につき、年間10日取得することができる。 ◇再入社(ウエルカム・バック)制度による再入社実績:8名(2014年11月末時点) ◇配偶者海外転勤休職:取得実績14名(2014年11月末時点) (4)育児休職からの復職支援策 育児休職者と休職から復職を経験した従業員が、育児と仕事の両立について情報交換す る「育児休職者セミナー」や、本人と上司が人事部門を交え復職後の働き方について話し 合う「復職前・復職後面談」を実施するとともに育児休職者及び復職者を対象とした社内 SNSを開設し、育児休職者や復職者のコミュニケーションの場を提供している。仕事と育児 の両立等をテーマとした社員同士の交流会(パパママ交流会)も定期的に行っている。 また、従業員の子育てをサポートし仕事と家庭の両立を応援するという観点から、子供 を持つ従業員にとって働きやすい職場環境を提供する為、2008年に東京都内最大規模とな る事業所内保育所「ころころ保育園」(2014年11月末時点の園児数:114名)を設置し、2013 年には本社ビル内の社外保育施設との提携を開始した。2015年7月には神奈川県横浜市に 事業所内保育所を開設予定であり、これにより首都圏すべての事業所における保育環境が 整備される。2013年の育児休業からの復職率は96.7%であった。 (事業所内保育所の園庭で遊ぶ園児) (パパママ交流会) (5)女性活躍支援に関する理解の促進 ダイバーシティ講演会、新任管理職研修等の階層 別研修、Eラーニング、職場研修等を実施し、社員 のダイバーシティへの理解を深める取り組みを行 っている。 また、育児・介護などにかかわる社員やその上司 のみならず、会社全体の育児・介護支援制度への理 (ダイバーシティ講演会) ©(公財)日本生産性本部 第2回「エンパワーメント大賞」受賞組織の取り組み 解を深めるため、社内イントラネットでダイバーシテ ィ推進活動や制度利用者を紹介しているほか、育児・介護に関する会社制度などをまとめ たガイドブックを国内のグループ社員に配付し、制度の周知と利用促進を図っている。 3.取り組み、活動により得られた成果 <表3>に示すように、2014年12月時点で女性管理職14名、女性管理職および総合職348 名となり、2008年比で女性基幹職7名、基幹職および総合職161名の増加となった。海外赴 任経験者は18名、工場配置経験者は27名となり、女性の活躍の場が広がってきている。キ ャリアデザイン研修の実施により、参加者からは「5年後、10年後のキャリアを考えるこ とができ、モチベーションが上がった」等の感想が寄せられており、2014年11月末時点で 女性総合職183名、管理職239名が受講している。 また、次世代育成支援対策推進法に基づいた第4期行動計画で目標を達成し、2010年、 2012年、2014年に認定マーク(くるみんマーク)を取得する等、仕事と育児の両立支援施 策が充実してきたこともあり、2013年に実施した従業員満足度調査結果<表4>では、「女 性が活躍できる雰囲気がある」と回答した割合は全体で32.4%(2008年比+3.1%)、 「ない」 と回答した割合は全体で33.6%(同-5.4%)となり、また、2009年に見られた管理職と女性 総合職における「ない」と回答した割合の乖離が解消されてきた。会社全体においてダイ バーシティへの理解が深まり、女性が活躍できる雰囲気が醸成されてきており、特に、「女 性が活躍できる雰囲気がある」と回答した割合の増加幅が大きい女性総合職自身が、その 変化をより感じていることが分かった。 <表3>女性の管理職・総合職数、海外・工場経験者数人数(2008年、2014年) 2014年(12/1時点) 2008年 14名(+7) 管理職 7名 348名(+161) 管理職及び総合職 187名 海外赴任経験者 1名 18名(+17) 27名(+24) 工場配置経験者 3名 ※カッコ内は2008年比 <表4>女性が活躍できる雰囲気の有無(従業員満足度調査結果:2009年、2013年) 全体 女性総合職 管理職 2009年 2013年 2009年 2013年 2009年 2013年 ある 29.3% 32.4%(+3.1) 58.9% 65.8%(+6.9) 61.3% 65.3%(+4.0) ない 39.0% 33.6%(-5.4) 18.9% 12.9%(-6.0) 12.8% 11.0%(-1.8) ※カッコ内は2009年比 ©(公財)日本生産性本部
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