平成27年度 甲種化学講習に係る 技術検定の解答のポイント

平成27年度
技術検定実施日
甲種化学講習に係る
技術検定の解答のポイント
平成27年 5 月31日
・模範解答ではありません。
・問題を解くための主なポイントを示したものです。
・電話等での解答に関する質問にはお答えできません。
学識 問1
(1)
理想気体では、分子は大きさをもたず、分子同士の相互作用はないものと仮定して
いるが、実在気体では分子は大きさをもち、分子間に引力が働いている。
定数 b は分子 1 モルが占める体積(排除体積)を表す。実在気体のモル体積 Vm か
ら b を減じた Vm - b が理想気体の示す体積になるとした。
一方、分子間に働く引力の大きさは、分子の濃度の 2 乗に比例すると考えられるた
め、a / Vm2 で表した。分子間に引力が働けば、圧力は引力が働かない場合よりも小さ
くなるので、実在気体の圧力を p とすると、 p + a / Vm2 が理想気体の示す圧力になる
とした。
(2)
式(1-2)に 3 / Vm,c を掛け、これに式(1-3)を加えると、
2 R Tc
3
( Vm,c - b )
-
3 R Tc
2
Vm,c ( Vm,c - b )
=0
これを整理すると、2 Vm,c - 3( Vm,c - b )= 0
 b =
(3)
V m,c
3
臨界点において、式(1-1)は次式のように表される。
R Tc
-
Vm,c - b
pc =
上式に、 a =
pc =
a
Vm,c
2
Vm,c 9 R Tc Vm,c 、 b=
を代入すると、
3
8
3 R Tc
9 R Tc
3 R Tc
-
=
2 Vm,c 8 Vm,c 8 Vm,c  Vm,c =
3 R Tc
8 pc
平成27年度
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技術検定の解答のポイント
平成27年 5 月31日
・模範解答ではありません。
・問題を解くための主なポイントを示したものです。
・電話等での解答に関する質問にはお答えできません。
学識 問2
(1) 等温膨張過程ではボイルの法則が成り立つため、p1 V1 = p2 V2 となる。
したがって、
p2 / p1 = V1 / V2 =( 2 V0 )/( 6 V0 )= 1/3
(1)より p1 = p2 × 3 = 1.26 × 3 = 3.78 MPa
(2)



断熱過程では、pV = 一定 が成り立つので、p0V0 = p1V1 となる。
V1 = 2 V0 であるから、
p0 = p1 × ( 2 V0 / V0 )1.4 = 3.78 × 21.4 = 9.98 MPa
また、体積 V0 は状態方程式より、
V0 = n R T0 / p0 = 1.00×103 × 8.31 × ( 273 + 227 )/(9.98 × 106 ) = 0.416 m3
(3)
断熱膨張後の気体の温度を T1 とすると状態方程式より、
T1 = p1V1 / ( nR )= 3.78 × 106 × 2 × 0.416 / ( 1.00 ×103 × 8.31 ) = 378 K
一方、等温膨張前後での体積比は( V2 / V1 )で題意より 3 であり、また、等温膨張過
程における吸熱量は気体が外部にした仕事と等しいから、
Q = W = n R T1 ln( V2 / V1 )
= 1.00 ×103 × 8.31 × 378 × ln 3
= 3.45×106 J = 3.45 MJ
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・模範解答ではありません。
・問題を解くための主なポイントを示したものです。
・電話等での解答に関する質問にはお答えできません。
学識 問3
p (N2O4 )
[ p(NO2)]2
(1)
Kp =
(2)
全圧 100 kPa において、p( NO2 ) = 30 kPa 、p( N2O4 )= 70 kPa なので、
Kp = 70 / 302 = 0.078 kPa-1
(3)
「注射器を(A)の方向から見たときの色の濃さ」
NO2 の分圧がおよそ 30 kPa から 20 kPa に減少するので薄くなる。
「注射器を(B)の方向から見たときの色の濃さ」
ル・シャトリエの法則により、NO2 の総量が増加するので濃くなる。
(4)
温度上昇により平衡が左に偏るので、発熱反応である。
(5)
NO2 のモル分率は、全圧 100 kPa では 0.50 で、すべての圧力で 298 K の場合より
NO2 モル分率〔-〕
大きい。また全圧が低下するにつれて、1.0 に漸近する。よって、下図のようになる。
全圧〔kPa〕
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・問題を解くための主なポイントを示したものです。
・電話等での解答に関する質問にはお答えできません。
学識 問4
エチレンの燃焼反応および燃焼熱 QC は、
C2H4 + 3 O2 → 2 CO2 + 2 H2O
QC =(+ 53 )-(- 394 × 2 - 242 × 2 )= 1325 kJ/mol
エチレンのモル質量は 0.028 kg/mol であるので、TNT 当量 Weq は、
Weq =
1000
 1325
0.028
4190
 0.089 = 1005 kg
換算距離  は、
1/3
 = 200 / (1005)
≒ 200 / 10.0 = 20.0 m/kg1/3
換算距離 20.0 m/kg1/3 のときの爆風ピーク過圧  p は、換算距離と爆風ピーク過圧の
関係のグラフより、
 p ≒ 5.5×103 Pa = 5.5 kPa
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・模範解答ではありません。
・問題を解くための主なポイントを示したものです。
・電話等での解答に関する質問にはお答えできません。
学識 問5
(1)
ガス名
ガス名
イ
アセチレン
ホ
メタン
ロ
アンモニア
ヘ
硫化水素
ハ
二酸化炭素
ト
一酸化炭素
ニ
ブタジエン
(2)
① 分子式
C2H4O
エチレングリコールの原料
② 用
途
エタノールアミンの原料
③ 容器に充てん
する場合
充てん容器内に窒素または二酸化炭素を加え希釈する。
④ 容器から取り
出す場合
液相から取り出す。
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・模範解答ではありません。
・問題を解くための主なポイントを示したものです。
・電話等での解答に関する質問にはお答えできません。
学識 問6
(1) 飽和蒸気圧および沸点
十分多量の液体が一定温度で限られた空間と接している場合、平衡状態に達すると
液体が蒸発して発生した蒸気の圧力は一定になる。この状態を飽和といい、そのとき
の圧力を飽和蒸気圧または蒸気圧という。飽和蒸気圧は温度が上昇すると高くなる。
大気圧下において液体が加熱されて、飽和蒸気圧が大気圧に等しくなると、液体内
部からもさかんに気泡が生じるようになる。この現象を沸騰といい、このときの温度
を沸点という。
(2) 閉じた系における熱力学の第一法則
閉じた系ではエネルギーの出入りは可能であるが、物質の出入りはできない。閉じ
た系に熱量 Q が流入するとき、Q は内部エネルギーの増加  U と外界への仕事 W の
和に等しい。これを式で表せば、
Q = U + W
となる。これを熱力学の第一法則またはエネルギー保存則という。
(3) 総括化学反応式と素反応
例えば、水素ガスと酸素ガスの燃焼反応は、全体として、
2 H2 + O2 → H2O
のように表される。このように反応全体を表した式を総括化学反応式という。ただし、
実際の化学反応は総括反応が直接起こっているのではなく、種々のラジカル、原子、
分子がかかわる多くの反応が同時に進行している。それらの反応を素反応という。
総括化学反応式は、多くの素反応の総和としての収支を表す式であるということが
できる。
(4) 固体吸着剤における吸着の原理
気体または液体の分子が固体の表面に付着する現象を吸着という。また、表面で吸
着を生じる固体を吸着剤、吸着される気体や液体を吸着質という。吸着剤には、一般
に多孔質で表面積が大きい物質が用いられる。吸着には、ファン・デル・ワールス力、
静電気力あるいは水素結合によって生じる物理吸着と、化学変化によって生じる化学
吸着がある。物理吸着は、吸着剤の温度や雰囲気の圧力を変化させることで吸着分子
を吸脱着させて吸着と再生を繰り返すことができるので、吸着分離操作では主に物理
吸着が利用される。