生徒高2 (センター試験 02年) 次の文章を読んで、後の問に答えよ。

生徒高 2
(
セ ンター試験
02年)
次 の文章を読 ん で、後 の問 に答 えよ。
ことば が語と文法 からな ると いう のは、 ことば をあ る切り 口で切 ったとき の 一つの事実 ではあ る。
しかしそう して切り取 った ことば には、 一つ、決定的 に欠け る点があ る。それ は ことば のも つ対話性
を 二次的 にしか考えられな いと いう点 であ る。 ことば はそもそも他者 と のかかわり の場 で働 くも の。
と ころが 〈
語─ 文法〉的な ことば観 は、 しば しば
独我論的 で、 そ こに他者 と のかかわ りが見え
(
注 1)
てこな い。
もち ろん、ことば を道 具と して獲得 した のち には、そ の道 具を使 って他者 と対話す る こと にはな る。
しかしそ こにお いて、 対話 は ことば獲得 の結 果 であ って、 それ以上 のも のではな い。 言 い換えれば、
こ のことば観 のな かでは、ことば が獲得さ れた のち、それ によ ってはじめ て他者 と の対話が可能 にな
る のであ って、他者 と の対話 (
もち ろん ことば 以前 の)から ことばが生まれ てくると いう発想がな い。
つまり ことば そ のも ののも つ第 一次的、本質的な対話性 に目を向け る視点が、そ こにはす っぽ り抜け
落ち て いる のであ る。 (A)こ のことば観 によ っては、ことば が私たち の生活世界 にお いて働 くそ の様
をあ り のままに見 る こと はできな い。
身体 と ことば を共通 の糸 でむすぶ のは、おそらく この対話性 であ る。とすれば、ことば自体 のも つ
対話性 の切り 口を離 れ て、身体 と ことば のかかわりを見 てと る こと はできな い。現 に 〈
語─ 文法〉的
ことば観 にお いては、 ことば が身体性 に接続す る土俵がま ったく見えな いよう に、私 には思え る。
では、私たち はど のような ことば観 のもと に出発すれば よ いのか。ともあれ、まず は ことばが私た
ち の生活 にお いて働 いて いるそ の現場を、 いく つか の例 から取 り出 して見 てみる ことが必要とな る。
「
ことば の宇宙」と いう言 い方があ る。それ は私たちが、直接 に目 で見、耳 で聞き、手 で触 って確
認 でき るも のの世界を離 れ て、ことば が ことばだけ で 一つの世界をなす ことを いう。ことば で語られ
ひ ゆ
た物語世界を聞き、 また読 むとき に、 この比喩がぴたりと はま る。
しかし、もとより ことば は最初 から宇宙 をな して いた のではあ るま い。 (ア)ケイ統発生的 にも個体
発生的 にも、ことば が最初 に降 り立 つのは、人 々がそ の生身 の身体 で生き て いる世界 であ る。身体 で
生き る膨大な広が り のな かでみたとき、そ の最初 のことば はまだ大海 にたら した ほん の 一滴 の水 のよ
うなも の。そ こから ことばが ことばだけ で世界を立ち上げ るよう にな るには、ず いぶ ん長 い過程を へ
なければならな か ったはず であ る。いや、す でに ことば の宇宙をそれな りに成 り立たせ て いる私たち
にお いても、日常的 に体験す る ことば の多 く は、周囲世界 にはめ こまれたかたち ではじめ て意味 を得
て いる のであ って、 それだけ で立 つこと は少な い。
「
あ っ、雪 !」
、幼 い息 子が叫 び声を上げ る。 そ の声 に つられ て空を見上げ ると、綿帽 子 のような
ほお
雪片がふわふわと高 い空 から舞 い落ち てき て、そ の雪 の 一ひらが頬 にあた る。こう いう場面を私が じ
かに体験 したとす る。息 子は、もち ろん雪 の落ち るそ の世界を目 の前 にしてことば を発 した のであ り、
また聞 いた私も、自分 の身体 に感 じた この世界 のな かに これを受けとめた のであ る。そ こでことば が
身体 の世界 に寄 り添 い、そ こに重な る。ことば が発 せられた こと で、身体だけ で生きられた のと は違
うもう 一つの世界 への窓 が、ここにわず かであれ開 かれたと言 ってもよ い。しかしもち ろん、それだ
け で宇宙をなすと ころま では遠 い。
もち
では、こんな場面 ではどうだ ろう か。閉 めき った障 子 の内 で火鉢 にあたりながら餅 を焼 いて いる私
の耳 に、外 から 子ども のはず んだ声が飛び込ん でく る。
あ っ、雪 !
ここで私 は、自分 の身体 でそ の雪を直接 に感覚 しては いな い。 にも かかわらず、 子ども の 一声 に、
私 のな かで雪 の舞 い落ち る世界が立ち上が る。自分が身体 でじかに体験 して いる のは部屋 のな か の光
景、そ のうえ に不意 に飛び込ん できた ことば が、別 のもう 一つの世界を立ち上げ る のであ る。もち ろ
んそう は言 っても、障 子 一枚を はさ ん で、私 の身体 は、 子ども の生き る世界 にほとんど
(
イ)リ ン場
して いる のであ って、 これをまだ ことば の宇宙 とま では言え ま い。
しかし、次 のような場面を書物 で読 んだとすれば どうだ ろう か。
庭 で コマ回しに興 じて いた子どもが、不意 に 「
あ っ、雪 !」と叫 ん で空を見上げ た。大きなぼ たん
雪が、 (ウ)ナ マリ色 の空 から ゆら りゆら りと舞 い落ち てく る。
ここでも私たち は、し っかりそ の雪 の落ち てくる情景を思 い浮 かべる。たとえ これを読 ん で いる の
うちわ
が真夏 で、ステテ コ 一枚 で、団扇を バタバタや って いたと しても、そ の雪 の場面を理解す る のに不都
合 はな い。 ここま できたとき、 ことば は現実 の場面を離 れ て、 それだけ で 一つの世界を立ち上げ る、
そう いう力をも つと言え る。 そ こに
(
B)ことば の世界と身体 の生き る世界 の二重化を は っき り見 る
ことが でき る。
これ は私たちが しじ ゅう何気なく経験 して いる こと であ る ので、ことあらため て言う ほど のこと で
はな いと思われ るかも しれな い。しかしこ のご く 日常的な 二重化 の構図 こそ、まず は私が ここで確 認
しておきた いことな のであ る。念押 しに、 (C)手近 で見 つけた小さな詩歌 からさら に 二 つ例を引く。
雪が コン コン降 る。
人間 は
そ の下 で暮ら して いる のです。
戦後、 日本がまだ非常 に貧 しか った ころ、 山形県 の寒村 に暮ら した子どもたち の
つづ
生活綴 り方
(
注 2)
の 一作品 であ る。しかし、そ のことを知らなくとも、これを読 む私たち のまえ には、 一つの光景があ
る気分をも って広が る。 いま これを読 ん で いる私 の目 のまえ では、もち ろん雪など降 って いな いし、
家 々を厚く真 っ白 におお った雪景色 も見えな い。しかしこ の三行 の文を読 んだだけ で、そう した世界
が眼下に広が る思 いがす る。 た った これだけ の文章が 一つの宇宙 を語 って いるとも言え る。
あ る いは こんな歌があ る。
四十代
こ の先生き て何があ る風 に群 れ咲く コスモスの花
みちうら も と
こ
こ の少 々虚無的 で、悲 し い歌 は、道浦 母都 子 の作品。彼女 はたまたま、私と同じ 一九四七年 の生ま
れ であ る。学生時代を ほぼ 同じ時代状況 のな かに生き て、そ の是非 はともあれ 「
全 共闘歌 人」と呼ば
れ てきた。しかしこ の作者 の生き てきた過程 のあれ これを知らず とも、こ の歌 は歌 で 一つの世界を立
ち上げ て いる。
ここでも私たち は、いま コスモスの花群 れを見 て いるわけ ではな いし、それをそよがす風を頬 に感
じ て いるわけ でもな い。にも かかわらず 不思議な こと に、こ の文字 のならび のな かに 一つの情景が浮
かん でしまう のであ る。
身体 がそ の生身 で直接 に生き る世界と は別 に、ことば がそれだけ で独自 に開く世界があ る。そ のこ
とを人は 「
ことば の宇宙」と呼ん できた。もとよりそれ は 一つの比喩 であ る。ことば がま ったく身体
の世界 から の支えな しに、 それだけ で成 り立 つなどと いう こと は、本来あ りえな い。
身体 が生き る世界を離 れ、それと の関係 の 一切を断 ってしま ったと ころ では、個 々のことば自体 が
し
意味 をなさな い。だ いいち、語り出す声 は身体 から発す る息 の音 であ り、書き つけた文字 は身体 の仕
ぐさ
こんせき
草 の痕跡 であ る。 こ の身体 を出入りす る息、身体 の
(エ)ツムぎ 出す仕草 ぬき に、 ことば はあ りえな
い。 これはあまりに当たり前 のこと であ る。
しかしそれだけ ではな い。ことば で語り出す世界 の中身 そ のも のが、こ の生身 で生き る世界を離 れ
]
ては、根を失う。雪を 肌に受 け て震え る身体、 そ の下 で冷 た い冬 を過ごす身体 をぬき には、 [ yuki
はただ の音声 にすぎな いし、 「
雪」 の文字 は意味 不明 の模様 にすぎな い。 あ る いは風 の音 を聞き、 そ
]はただ の無意味な音声 以外 のも のではなく、「
か
れが頬 に触 れる感触をも つ身体 を離 れ ては、[ kaze
ぜ」 はただ の無意味な綴 り でしかな い。 (D)ことば はす べて、ど こかで身体 の世界 に根ざ して いる。
これもまた自 明 の理 であ る。
にも かかわらず、 「
ことば の宇宙」と いう言 い方 は単な る比喩を越え た側面をも つ。な にしろ身体
の世界 は、 そ の身体 のいる 〈
ここ のいま〉 に
(
オ)シバられ、 そ の身体 の位置を基点 とす る遠 近法を
まぬがれる ことが できな い。
と ころが ことば が立ち上げ る世界 のな かでは、知らな いうち に 〈
ここ のいま〉の自分 の身体 の位置
を抜け出 し、視点を移動さ せ て、そ のことば の世界 のな かに身 を移 してしま って いる。たとえば 小説
を読 みふけ るとき、読 ん で いる自分がそ の世界 のな かに移 り住 ん で いるか のよう に錯覚す る。そう し
た錯覚 のうえ で人は ことば の宇宙 を楽 しみ、 またそ こに巻 き 込まれ て苦悩す る。
こ のこと は別 に文章 のうま い下手にかかわらな い。いかにたどたど しくとも ことば は ことば であ る。
ことば は身体 に根ざ し、 それ で いて身体 を越え るも の。 そう した両義 を本性とす る。
(
浜 田寿美男 「
『私』と は何 か」 による)
― 哲学用語。自分 の自我だけを絶対視するような考え方 のこと。
生活綴 り―
方
子どもたち に、自分 の生活をあり のまま に表現さ せた文章。
(
注) 1 独我論
2
問 一 傍線部 (
ア)~ (
オ) の漢字 と同じ漢字 を含 むも のを、次 の各群 の① ~⑤ のうち から、それぞ
れ 一つず つ選 べ。
(
ア) ケイ統
①
ケイチ ョウ に値す る意 見
③ 事 のケイイを説明す る
⑤
②
ケイリ ュウ で釣 りを楽 しむ
④
友 人にケイ ハツされ る
近代 日本文学 のケイ フ
(
イ) リ ン場
①
ジ ンリ ンにもと る
②
高層 ビ ルがリ ンリ ツす る
③
タイリ ンの花を咲 かせる
④
リ ンキ応変 に対応す る
⑤
キ ンリ ンの国 々
(
ウ) ナ マリ色
①
雨天によるジ ュン エン
②
のど に エンシ ョウが起き る
③
エン コを頼 る
④
ア エンの含有量
⑤
コウ エンな 理想
(エ) ツムぎ
①
針 小ボ ウダ イに言う
②
仕事 にボウサ ツされ る
③
流行性 のカ ンボ ウ
④
理科 のカイボ ウ実験
⑤
綿 とウー ルの コンボ ウ
(
オ) シバられ
ア
①
景気 回復 のキバク剤
② 真相を バク ロす る
③
首謀者 を ホバクす る
④
⑤
バクガ飲料を飲 む
イ
ウ
エ
バクゼ ンと した印象
オ
問 二 傍線部 (
A) 「
こ のことば観」とあ るが、 それはど のような 「
ことば観」 か。 そ の説明と して
最 も適当なも のを、次 の① ~⑤ のうち から 一つ選 べ。
①
ことば は他者 と の対話 から生まれ、 〈
語─ 文法〉的 に運用さ れ て いると いう ことば観。
②
ことば は道 具と して獲得さ れ、他者 と の関係 の場 で機能 して いると いう ことば観。
③
ことば を生活世界と のかかわ り で運用 し、 対話性 への視点を欠落さ せ て いる ことば観。
④
ことば を 〈
語─ 文法〉的 にとらえ、他者 と の対話性を模索 しようとす る ことば観。
⑤
ことば を他者 と の関係 の場 から切り離 し、本質的な対話性を喪失さ せ て いる ことば観。
問 三 傍線部 (
B)「
ことば の世界と身体 の生き る世界 の二重化」とあ るが、それはどう いう こと か。
そ の説明と して最 も適当なも のを、次 の① ~⑤ のうち から 一つ選 べ。
①
他者 の身体 が体験 して いる現実 の情景が、他者 の発 した生き生きと した ことば を通 じて、自
己 の身体 によ って無意識 のうち に受け止められ るよう にな る こと。
②
ことば が ことばだけ で独立 した世界を生成 し、私たち の身体 が実際 に生き て いる現在 と はま
た別 に、私たちがそ の世界をあ りありと感 じ取 る ことが でき る こと。
③
息 子 の発す る 「
あ っ、雪 !」と いう ことば が、それを聞く私 の身体 に降 り立 つこと で、こと
ば が ことばだけ で立ち上げ た世界が、身体 と の対話性を持ち始 める こと。
④
よ
ことば によ って喚 び起 こさ れ る想像 の世界と、私たち の身体が現実 に向 か い合 って いる現在
の場面とが、 一致 して重な り合う よう に感 じられる こと。
⑤
息 子 の発す る 「
あ っ、雪 !」と いう声 に 「
雪」を実感す る こと で、そ の場 に居合わ せながら
気づ いて いな か った世界が、生き生きと立ち上が ってく る こと。
問 四 傍線部 (
C) 「
手近 で見 つけた小さな詩歌 からさら に二 つ例を引く」とあ るが、例と して引 か
れた詩歌を、筆者 の考え方 に即 して説明 したも のはどれか。最 も適当なも のを、次 の① ~⑤ のう
ち から 一つ選 べ。
①
「
四十代
こ の先生き て何があ る……」の短歌 は、四十代 の人間 にしか感 じられな いような
虚無感を、 同世代 の読者 に対 して雄弁 に訴え かけ る。
②
「
雪が コン コン降 る。……」の詩 は、雪景色 を知らな い読者 にも、雪国 に生まれた人間が感
じる のと同じような雪 の冷 たさや白さを追体験さ せ、雪国 の生活とそ こに生き る人 々に対す る
共感を抱 かせる。
③
「
雪が コン コン降 る。……」の詩 は、読者が現在 ど のような環境 にあ るかにかかわらず、降
り積 も る雪 の下 の家 々で、 一人 一人 の人間が生き て いる のだ、と いう ことを読者 の眼前 にあ り
あ りと描き出す。
④
「
四十代
こ の先生き て何があ る……」の短歌 は、読者が作者 の年齢や 人生 に対す る思 いを
せき り ょう
共有 したとき に、初 め て、秋 の風 に吹 かれ る コスモスの群 れ の寂 寥 を感 じさ せる。
⑤
「
雪が コン コン降 る。……」の詩 は、果 てしなく降 り続く雪 のもと で の人 々の生活を想像さ
せるととも に、読者 が か つて目にした雪国 の情景をそ のままよみがえら せ、重層的な世界を つ
くり出す。
問 五 傍線部 (
D) 「
ことば はす べて、ど こかで身体 の世界 に根ざ して いる」とあ るが、 それはどう
いう こと か。 そ の説明と して最 も適当なも のを、次 の① ~⑤ のうち から 一つ選 べ。
①
「
ことば の宇宙」は、身体 から独立 して成 り立 った独自 の世界 であ るが、個 々のことば が現
実 の身体 をとおして初 め て意味 を持 つ以上、身体 から切り離され て存在 す る こと はできな い。
②
ことば が身体 を出入す る息、身体 の生 み出す仕草 によ って表現さ れ るも のであ る以上、それ
らをぬき にして生 み出さ れた 「
ことば の宇宙」は、ただ の音声と記号 からな る抽象的なも のに
すぎな い。
③
ことば が身体 の世界を離 れ る こと で立ち上げられた 「
ことば の宇宙」は、われわれを生き生
きと した空想 の世界 に巻 き込むが、そ のような世界 は錯覚 であり、
実体 を持 つことが できな い。
④
「
ことば の宇宙」は、現実 と は別 に独自 に形成された世界 であ るが、ことば そ のも のは、あ
くま で直接的な身体 の世界 にはめ こまれる形 でしか意味 を持ちえず、機能す る こともな い。
⑤
「
雪」と いう ことばが、雪 の冷 たさを体験 した ことな い人間 には実感 できな いよう に、 「
こ
とば の宇宙」も、生身 の身体 に支えられたも のであ り、直接 に体験す る ことがなければ成立 し
な い。
問六 本文 の内容と合致す るも のを、次 の① ~⑥ のうち から 二 つ選 べ。ただ し、解答 の順序 は問わな
い。
①
「
ことば の宇宙」は、視覚や聴覚や触覚 によ って確 かめる ことが でき る生活世界と対話的 に
かかわ りあ いながら成立 しており、 〈
ここ のいま〉 にお いて独自 の世界を立ち上げ てゆく。
②
小説を読 むと いう こと の 一面は、作中 人物と同化 し、そ の苦悩や喜 びを生き る こと であ るが、
私たち の想像力 には限界があ る ので、
読者 と して の経験 は錯覚 のうえ に成 り立 つも のでしかな
い。
③
読書と いう行為 にお いて、私たちが現実 の日常 を忘 れ、本 の中 の主 人公にな ったか のような
錯覚 を覚え る のは、ことば の世界と身体 の生き る世界とが、対話的 にかかわりあ って いるから
であ る。
④
私たち は限られた場所 に いながら、ことば によ ってそ の場所 から解 き放たれ、日常生活 にお
け る出会 いと同じよう に、 「
ことば の宇宙」 で多 く の人と出会 い、苦 しみや喜 びを経験す る こ
とが でき る。
⑤
ことば を人間 の生活 に即 してとらえな い〈
語─ 文法〉的 ことば観 の限界を克 服す るためには、
物語世界を立ち上げ る 「
ことば の宇宙」 の比喩的な働きを活用 しなければならな い。
⑥
ことば の両義性と は、身体 の世界が身体 を基点 とす る遠 近法をまぬがれな いのに対 して、こ
とば が身体 に根ざ しながら、それを越え てことば の世界 へ移行 し、独自 の世界を立ち上げ る こ
とを意味 して いる。