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修士論文要旨
論文タイトル: 「中国における日系小売企業の現地化に関する研究―イトーヨーカ
堂の事例を通じて―」
学籍番号:AM13022
氏
名:余 歓
指導教授:池島
政広
【論文の構成】
はじめに
第1章 問題意識の提示と研究目的
第2章 日系小売業の海外進出の状況
第3章 日系小売企業の現地化に関する研究
第4章 仮説の提示と実証(事例研究―イトーヨーカ堂)
おわりに
参考文献
【論文の内容】
1. 研究背景
中国の改革開放が幕を開けて以来、世界的小売企業の多くが中国へ進出している。1990 年代中
期から外資参入は加速し、国際的な小売企業の進出が活発化している。たとえば、ウォルマート、
カルフール、テスコ、メトロなどである。日系小売企業もこの 1990 年代中期以降の対中進出が特
に目立っている。アジア各国では、所得水準の向上とともに、小売チャネルが個人経営の小規模
店からスーパーマーケット、コンビニ、専門店や百貨店など近代的店舗へシフトする動きが見ら
れて、日本企業が参入可能な小売サービス市場が生まれている。特に、中国市場においては、2008
年以降、沿海部の主要都市に加えて内陸部への店舗展開が加速している。外資小売業態は近年、
大都市に定着し、消費生活の主流的存在として確立している。
2. 研究目的
本研究では、中国市場へ積極的に進出している日本型総合スーパーを展開する日系小売企業イ
トーヨーカ堂の事例を中心に、日系小売業が中国の現地に適応するため、どのような競争優位性
を発揮できるかを考察する。また、どのように日本の小売ノウハウを中国に移転するかについて
分析する。イトヨーカー堂は中国の北京と成都の二つの都市へ進出し、12 店舗を出店している。
イトヨーカー堂は如何に中国の現地市場に適応するか、そして、その競争の優位性や現地化の具
体的な方法と課題を明らかにし、日系小売企業が中国の各都市、特に中国の内陸部の発展途上の
都市において多店舗の展開を行う上での参考に資する視点を提示することを目的とする。
3. 研究方法
(1)関連文献調査
まず、小売業やイトーヨーカ堂などの中国事業戦略に関する文献(図書、雑誌論文、新聞記事
など)を調査する。
(2)事例研究
イトーヨーカ堂の原材料調達、生産、物流コスト削減、市場拡大などの戦略課題について分析
する。また、成都イトーヨーカ堂の成功の原因と北京イトーヨーカ堂の失敗の原因二つの方面を
分析する。
4. 研究結果
本研究では、日系小売企業について、日系小売業の現地化に基づき、中国に進出している小売
企業イトーヨーカ堂の事例研究を行った。
日本国内では、高齢化・少子化に伴う市場が飽和状態になっていることに加えて、円高やバブ
ル経済の崩壊の影響などの原因で海外市場へ積極的に進出している企業が増加している。中国国
内では、改革開放以来、内需拡大のために、外資参入の刺激で、経済開発が進み、世界的小売業
の多くが進出している。中国は工場だけではなく、消費市場としても広がっている。小売市場は
大型化と多様化の方向に進んでいる。90 年代から日系小売企業の進出が活発化している。日系小
売業はアジア市場、特に中国を中心とした市場において発展、成長過程を探している。
成都イトーヨーカ堂は中国の内陸部へ進出している成功の事例の一つである。中国の内陸部で
の戦略展開には、日本の小売企業の海外移転の戦略と現地化戦略を結びつけなければならない。
成功する優位性は現地市場、消費者ニーズなどを重視することである。しかし、遅い開店スピー
ド、人材育成などいろいろな課題がまだ残っている。また、北京イトーヨーカ堂の失敗の原因を
分析した。北京イトーヨーカ堂の経営の苦戦から見ると、主な原因としては、北京現地の消費者
に浸透しなかったことである。
本研究では、日系小売業は中国へ進出する際に、経営現地化が必要である。中国の現地化を実
現するために、小売業における標準化-適応化を適用しなければならない。また、日系小売企業
は中国へ進出する際に、
「現地の人材育成」に力を入れるべきだと考えている。
【主要参考文献】
1.陳剛(2013)「日本的小売システムの国際移転-成都イトーヨーカドーの事例を中心にー」.『国際ビジネス研
究』第 5 巻第 2 号、61-73 頁.
2.葛島知佳・鶴田裕二・川津のり・渡正光(2009)
「急速に変化する中国小売業市場成長の見込める内陸部市場で
の日系企業の成功に向けて」野村総合研究所『知的資産創造』
、46-59 頁.
3.胡欣欣(2003)
「国際小売業の中国戦略カルフールとイトーヨーカ堂の事例比較」矢作敏行編著『中国・アジア
の小売業革新』第 1 部第 2 章、日本経済新聞社.
4.喬晋建(2007)
「日系企業の経営現地化」
『熊本学園大学産業経営研究』第 26 号、pp. 27-48.
5.鈴木洋太郎・陳突男(2009)
「中国における日系小売業の現地適応化についての一考察」
『経営研究』第 59 巻第
4 号、155-170 頁.
6.矢作敏行(2005)
「イトーヨーカ堂の中国現地化プロセス」
『経営志林』第 41 巻 4 号、71-88 頁.
7.楊陽(2013)「中国における小売業態の多様化の発展プロセス―外資系小売企業の進出を中心として―」『専修
マネジメントジャーナル』専修大学経営研究所 第 2 巻第 2 号 pp.57-68.