平成24年度完了報告書 大樹寺小

①事業実施報告書詳細
事業実施報告書詳細
学校名
時間数
場所
概要
1
教室
「ビスタラインって何
岡崎市立大樹寺小学校
活動記録(写真)
だろう」
対象者の反応
大樹寺の陣が総
門付近で繰り広げ
・ビスタラインについ
られ、それを機に
て現在児童が得てい
家康が自立したこ
る知識を紹介し合
とはよく理解して
う。
いる。ビスタライ
・運動会の野外劇「家
ンは見慣れている
康の自立」のビデオ
風景ではあるが、
を見て、大樹寺の陣
詳しくは知らない
を想起する。
ことに気付いた。
・学習計画を立てる。
2
家光が祖父・家
大樹寺
「ビスタラインについ
境内
てのお話を聞こう」
康への尊敬の念を
・大樹寺の野村さんか
込めて伽藍を配置
らビスタラインにつ
したことを知り、
いての講話を聞く。
「本当に家康のこ
・大樹寺境内から見え
とが好きだったん
る岡崎城の眺めを確
だね」と、家光の
認する。
願いに思いを寄せ
教室
・3代将軍徳川家光の
願いを知る。
ていた。
大樹寺と岡崎城
・大樹寺を拝む岡崎城
の双方向からの思
主の思いを知る。
いを予想し、世の
中の平和が続くこ
とを願う気持ちを
感じ取ることがで
きた。
-1-
2
ビスタ
「ビスタラインを実際
ライン
に歩いてみよう」
公園までのビスタ
(大樹
・ビスタラインの鋲を
ラインの鋲20個
寺小か
たどって、実際に歩
をまるで宝探しを
ら井田
き、周辺の様子を調
するかのように歩
公園ま
べる。
いてたどった。そ
で)
大樹寺から井田
うする中で、岡崎
城が目視できる地
域が想像以上に少
ないことを知っ
た。
2
教室
「市の景観計画・まち
今まで守られて
づくり条例について
きたビスタライン
知ろう」
の景観に対して、
・岡崎市役所の都市計
なぜ条例を制定す
画課の木下さん、鈴
る必要があるのか
木さんからまちづく
疑問に感じた。
り条例についての講
話を聞く。
岡崎城を望む景
観を妨げるように
・市の方針や条例の内
容を知る。
建物が建てられた
フォトモンタージ
・校歌に歌われている
ュを見て、違和感
景色と市の方針が同
を覚え、この景観
じであることに気付
を残していきたい
く。
という思いを強め
・ビスタラインが保た
た。
れないと、校歌の歌
景観が守られな
詞も変わってしまう
ければ、校歌の歌
ことをフォトモンタ
詞が変わってしま
ージュにより実感す
うということに驚
る。
嘆し、自分たちの
・ビスタラインについ
ての自分の考えや立
場をまとめる。
-2-
できることを考え
始めた。
4
ビスタ
「ビスタライン下に住
岡崎を訪れた観
ライン
む人の気持ちをイン
光客からは、共感
(大樹
タビューしよう」
の意見を聞くこと
寺小か
・インタビューの方法
ができたが、岡崎
ら岡崎
を教室で確認してか
城が目視できない
ら出かける。
地域に住む人から
城まで)
・グループごとに担当
は「ビスタライン
場所を決め、ビスタ
を守ることは賛成
ライン下に住む人の
ではあるが、得な
気持ちや条例への考
ことがない」「二
えをインタビュー
世帯住宅を建てる
し、立場による考え
ためには、引っ越
の違いを理解する。
さないといけな
い」という声を聞
き、困惑した。
2
教室
「条例ができたことに
インタビューの
ついて考えよう」
集計をすると、高
・岡崎市役所の都市計
齢の方ほど、ビス
画課の鈴木さんに話
タラインを知って
し合いの様子を聞い
おり、守っていき
てもらう。
たいと考える人が
・インタビューの結果
を整理する。
多いことが分かっ
た。そのため、い
・条例が必要になった
かに若い世代にビ
理由(景観意識の低
スタラインの価値
い地域の人の存在)
を伝えていくかの
を知る。
必要性を感じた。
・毎日当たり前に見て
また、自分たちの
きた景観の価値を実
世代が家を建て替
感する。
えるときに、便利
・「知る」ことが「守
さと景観のどちら
る」ことにつながる
を優先するかが守
ことに気付く。
る鍵となることを
知った。
-3-
1
教室
「『総門』の役割を考
えよう」
岡崎城を望む景
観を、総門を通し
・校内にある『総門』
た場合と通さない
が額縁の役割を果た
場合を比較し、通
し、岡崎城が一枚の
すことでより岡崎
絵として景観を形成
城がくっきりと目
していることを改め
立って見えること
て確認し、その『総
に気付いた。その
門』が校内にあるこ
ことから、「総門
とに誇りをもつ。
はビスタラインに
とって欠かすこと
ができないパズル
のピースのような
もの」と表現した
児童もいた。
4
教室
学区
「自分たちの住む地域
石畳を走る自動
の景観を見直してみ
車の音から、正門
よう」
前の景観を想起す
・学校の塀が白壁にな
ることができた。
っていたり、前の道
そのことをきっか
路が石畳になってい
けに、大樹寺周辺
たりするなど、いろ
の景観が大樹寺の
いろなところで景観
雰囲気に合わせた
を意識した整備がさ
景観づくりがなさ
れていることに気付
れていることをあ
く。
らためて感じた。
・大樹寺学区内に残さ
そして、大樹寺小
れているものの価値
学校もビスタライ
や意義を考え、地域
ンの景観を妨げな
の特徴やよさについ
いように、地下道
て話し合う。
を作るなど工夫を
していることを確
認できた。
-4-
②学習指導案(
学習指導案(計画段階の
計画段階の指導案)
指導案)
指導にあたり作成された書類で、下記の項目が含まれているもので構いません。
様式は不問。下記は一例。その他授業実施に作成された資料等添付してください。
学習指導案(計画段階の指導案)<様式不問・・・例>
単元名
奇跡の景観「ビスタライン」を守ろう
(全 18 時間)
学習のねらい
校歌にも歌われている「ビスタライン」に寄せる人々の熱い思いを通して、
地域を見つめ直し、地域への愛着を深める。
学習内容
1
ビスタラインの歴史や家光の思いを知る。
2
ビスタラインの鋲をたどり、そこに住む人へのインタビューを行う。
3
岡崎市の景観づくりについて知り、条例が制定された理由を話し合う。
4
ビスタラインを意識した大樹寺小学校の環境整備を知り、大樹寺や岡崎
城との関わりの深さを感じ、地域への愛着を深める。
参考資料
・大樹寺小学校 120 周年記念誌
準備品
・デジタルカメラ、パソコン
実施場所等
・大樹寺、岡崎城、ビスタライン
学習の流れ
時間
1
学習活動
教師の指導
・ビスタラインについて既知の
・児童の意見のつながりを意識し
ことを確認する。
2
て、板書をまとめる。
・大樹寺の野村さんから、家光
・ビスタラインを実際に望みなが
が祖父・家康を思って岡崎城
ら、ゲストティチャーの話を聞く
が大樹寺から見えるように
場を設ける。
評価
関心・意欲
課題設定能力
課題追究能力
伽藍を配置した話を聞く。
3
4,5
6,7
・大樹寺を拝む岡崎城主の絵か ・歴史学習を行っていない5年生で
ら、城主が何を願っているか
も情景を思い浮かべられるよう
を考える。
に、場面絵を作成し、提示する。
・ビスタラインの鋲をたどり、 ・ビスタラインの鋲から岡崎城が確
岡崎城が目視できる地域を
認できるかを、デジタルカメラで
確認する。
撮影させる。
・市都市計画課の方から、岡崎 ・プレゼンテーションソフトを利用
市の景観への取り組みやま
して、児童が理解しやすいように
ちづくり条例の内容につい
説明をしていただけるように、ゲ
て話を聞く。
ストティチャーに依頼する。
-5-
課題追究能力
観察力
課題追究能力
8
・ビスタライン下に住む人へイ ・あらかじめインタビューの仕方を
~
ンタビューを行い、意見やそ
11
の思いを聞く。
確認する。
コミュニケーショ
ン能力
・グループごとにインタビューする
地域を定め、様々な立場の方に話
が聞けるように指示する。
12
・インタビュー結果の集計を行 ・インタビュー結果から、児童と共
い、表にまとめる。
表現力
に集計表を作成する。
・集計表をもとに、場所や年齢を視
点に考察させる。
13
・条例が必要になった理由を話 ・都市計画課の方に依頼し、児童の
し合う。
資料選択能力
話し合いの様子や考えの方向性
コミュニケーショ
が正しいかを評価してもらう場
ン能力
を設ける。
14
・校地内にある「総門」のビス ・総門の有無や総門への距離の違い
タラインにおける役割を考
など、ビスタラインの景観を比較
える。
できるように写真を提示し、総門
課題追究能力
の役割に気付かせる。
15
・大樹寺学区の景観を見直し、 ・石畳を走る自動車の音を録音し、 課題追究能力
~
その特徴やよさについて話
音から大樹寺周辺の景観を想起
18
し合う。
させる。
自己評価力
・大樹寺小学校の環境整備の変遷を
写真で確認することで、学校が常
にビスタラインを意識してきた
ことに気付かせる。
<留意点>
生活科での「まちたんけん」の学習と差別化を図るべく、活動内容の吟味を十分行う。
-6-
③
実施内容について
実施内容について
(1)実施にあたり工夫した点
・児童の姿から、史実やエピソードではなく、今実際に触れ合える人との出会いによって目標に
迫りたいと考え、ゲストティチャーと出会わせる機会を複数設けた。
・他者理解が深められるように、インタビュー活動を取り入れ、様々な立場の人の意見を聞く場
を設けた。
・単元の最後には、広がったビスタラインへの意識を収束し、自分にできることを考えられるよ
うにするために、校内にある「総門」を扱った。
(2)実施にあたり苦労した点
・徳川家康や家光など、歴史に関わることは5年生の児童たちには理解がしづらい。そのため、
伝承やエピソードをいかに分かりやすく教材化するかということ。
・大樹寺とのつながりなど、特色のある地域のため、地域偏重になることが懸念される。そのた
め、自分たちの地域への愛着と共に、他の地域もその地域に住む人にとって大切な「ふるさと」
であることが理解できるように視野を広げること。
(3)児童の反応
当たり前のように感じていた「総門」を通しての大樹寺から岡崎城への眺望に対して、多くの
人々の支えがあってこその奇跡の景観であることを理解することができた。また、それぞれの思
いを聞くことで、漠然と感じていた「ふるさと・大樹寺」のよさをあらためて見つめ直すきっか
けとすることができた。ある日の体育科の授業で運動場への集合を指示したが、子供たちはいつ
もと異なる場所に集合をしていた。その理由を問うと、
「ビスタラインの写真を撮っている人がい
たから移動したんだ」
「ぼくたちはいつも見えるけれど、観光客の人には今しか見えない景観だか
らね」と答えた。この観光客に配慮して行動する姿は、普段当たり前に見ていた景観の価値を知
り、自分たちの学校にある「総門」に誇りをもったことの表れと思われる。
(4)担当教諭及び担当外教諭の変化
本校では、生活科・総合的な学習の時間を中心に、家康にまつわる人・もの・ことを教材化し
6年間で継続的・系統的に学びを進める「家康学習」の時間をもっている。
「ビスタライン」や「総
門」について複数の学年で取り上げているが、それぞれの発達段階に応じた学びがあり、その教
育的価値の大きさを感じている。
本実践においては、都市計画課のご協力を得て「景観」についての基礎的な知識を得たり、実
際にビスタライン下に住んでいる方々へのインタビューで、担任の予想を超えた反応を得たりし
たことで、学習の展開や方向性を明確にすることができた。
今年度の実践がより精選されながら、本校の家康学習カリキュラム(5年生)に位置づけられ、
実践が進められていくものである。
-7-
(5)今後の課題と取り組み〔児童の思考過程と指導内容との関連付けから、留意すべき事項等〕
現段階としては、まだ発信活動まで至っていない。児童は、ビスタラインの意味や価値につい
て知ったことで、これからも守っていきたいという思いを強くもったことから、
「知ること」が「守
ること」につながることに気付いた。そこで、多くの人にビスタラインのことを知らせるための
活動の必要性を感じている。子供たちの思いを受け、今後は、発信活動を進めていきたい。
その際には、
「誰に」
「何を」
「どのように」伝えるかを明確にし、内容に責任をもつことを自覚
させたい。また、国語科の学習と関連づけたり、不足している知識を補ったりしながら、情報収
集・整理・表現の力を獲得させていきたい。
この1年間の学びが、
「奇跡の景観・ビスタライン」を守り受け継ぐ一人としてのベースになり、
これから先も生かされていくこと、ビスタラインだけでなく、
「景観」について敏感な心をもつ人
となることを願っている。
-8-