グローバルな研究開発体制 カンパニー経営における 研究開発体制

研究開発・生産
グローバルな研究開発体制
現在、世界の医療機器市場では、大きな変化が起きて
カンパニー経営における
研究開発体制
います。
日本ではますます高齢化が進むとともに、
医療・介
カンパニー経営における研究開発体制は、
「 カンパ
護の産業化により異業種の参入が活発化しています。一
ニー研究開発」
と「コーポレート研究開発」の2つのグ
方、
新興国では、
経済発展に伴い医療のインフラ整備が進
ループに分かれており、両グループが連携して、
グルー
み、
急激に市場が拡大しつつあります。
また、
欧米において
プ全体の研究開発を推進しています。
は、
医療費の削減を課題として、
より一層経済価値を提供
「カンパニー研究開発」
では、3カンパニーの経営戦略
できる製品やシステムが望まれています。
このように市場
に基づき、計8事業がそれぞれ製品開発から生産・販売
環境が複雑化する中、
テルモは、
グローバルで存在感のあ
まで一気通貫の運営体制となり、各事業戦略に沿った
る企業へと成長することを目指して、
地域ごとの市場ニー
製品パイプラインの開発を担います。
ズに合わせた新製品の開発・導入を推し進めています。
もうひとつは、研究開発本部が担う
「コーポレート研
究開発」です。
ここでは、既存事業の次世代製品の開発
テルモグループのR&D拠点(2015年10月1日現在)
や、現行カンパニーにはない新たな事業を創出する研究
テルモメディカルCorp.
開発を目指しています。
また、研究開発本部では、
テルモ
テルモカーディオ
バスキュラーシステムズCorp.
の競争優位な基盤技術を深化させる機能や薬事申請に
バスクテックLtd.
テルモBCT,Inc.
テルモヨーロッパN.V.
マイクロベンション,Inc.
います。
さらに、全社の研究開発力を強化するための人
材育成や新たな開発手法にも取り組んでいます。
テルモ
テルモペンボールLtd.
必要な有効性/安全性データを取得する評価機能も担
研究開発本部
テルモメディカル
愛鷹工場
イノベーション,Inc.
富士宮工場
甲府工場
テルモ・
クリニカルサプライ
(株)
カンパニー経営における研究開発体制
コーポレート研究開発
カンパニー研究開発
次世代開発・新事業創出に
繋がる開発
カンパニー開発との連携・支援
カンパニーの事業戦略に即した研究開発
開発・生産・販売を一気通貫で運営
心臓血管
カンパニー
ホスピタル
カンパニー
IS事業
●ニューロ
バスキュラー事業
●CV事業
●血管事業
●
基盤医療器事業
●D&D事業
●DM・ヘルスケア事業
●
血液システム
カンパニー
血液システム事業
●
カンパニー研究開発との連携・支援
新製品の移管に加え、競合優位な基盤技術開発や申請に向けた効果/安全性評価を担う
また開発力強化のための人材育成や新たな開発手法にも取り組む
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TERUMO CORPORATION Annual Report 2015
研究開発本部
新規開発
企画管理部
●コアテクノロジー
センター
●評価センター
●ソフトウェア
ソリューション
センター
●
●
イノベーション創出に向けた
取り組み
「コーポレート研究開発」のミッションは、
「イノベー
ションによる新しい価値の創出」です。現場のニーズを
的確にとらえ、
早期事業化を見据えた新規開発活動を進
めています。現在、
内部活動と外部活動の両軸において、
アーリーステージから事業化に至るまでの開発体制を
構築し、
将来のポートフォリオを幅広く探索しています。
Terumo Medical Innovation, Inc.での活動
新規開発のフローと取り組み方
内部活動
外部活動
アイデア
新規探索
現場・ニーズ
探索活動
新規案件
ベンチャーキャピタル
(EMP-II)
初期評価
プロジェクト制
事業を見据えた
運営
オンサイト開発
インキュベーター活用
ベンチャー設立
テーマ化・事業化
要な知財、薬事承認、保険償還なども考慮した戦略を立
案し、最終的な事業化を目指します。
外部活動においては、米国シリコンバレーをはじめ、
グローバルに活動しています。
2013年10月に、
発明家で
あり、心臓血管領域で著名な医師でもあるDr. Thomas
Fogartyが運営するベンチャー・ファンドEmergent
Medical Partners Ⅱ(EMP-Ⅱ)に出資を決め、最先端
のベンチャー企業の早期技術取得を視野に入れるとと
もに、同氏の運営する早期製品開発育成の場(インキュ
ベーター)であるFogarty Institute for Innovationに、
テルモ社内テーマでベンチャー企業(Terumo Medical
内部活動では、領域を決めて新規探索活動を推進し、
技術者だけでなく、幅広い機能軸の社員や現場でのニー
Innovation, Inc.)を設立し、
移籍させました。
現在、
事業
化を目指して開発を進めています。
ズ探索活動を行っています。
また、社外のエキスパート
も含めたプロジェクトチーム制を導入することで、出口
を明確にしたスピードある事業化を目指します。2014
年度には、米国スタンフォード大学の実践教育講座「バ
イオデザイン」の提唱する手法を用いて、革新的な医療
機器の開発を目指す
「メドテックデザインチーム」
を新た
に発足させました。バイオデザインの開発手法では、ま
ず臨床現場の観察を通じて、現場に潜むニーズを特定し
ます。特定したニーズをもとにそれに見合う技術を探索
し、
プロトタイプの開発を行います。同時に、事業化に必
メドテックデザインチーム
(左右各2名)
TERUMO CORPORATION Annual Report 2015
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研究開発・生産
M&Aによる開発力の強化
1999年以降、
テルモは積極的に国内外の企業の買収
や子会社の設立等を行ってきました。
これは単に、
技術の
獲得や製品のラインアップの強化、
シェアの拡大を目的
としているだけではなく、
テルモが長年強みとしてきた基
盤技術とそれぞれの企業の卓越した技術とを融合させ、
グループ会社が一体となって新しい価値を生み出すこと
M&Aによる開発力強化の歴史
1999年度
心臓血管
● 3M社人工心肺事業買収
2002年度
心臓血管
● バスクテック社買収
2005年度
心臓血管
●マイクロベンション社買収
2008年度
心臓血管
●クリニカル・サプライ社買収
2011年度
血液システム
●カリディアンBCT社買収
心臓血管
● ハーベストテクノロジーズ
も目的としています。
海外子会社とのシナジー効果を生み出すために、
テル
モは、近年日本の開発者を積極的に各子会社に派遣し、
現地開発者と共同して研究開発を進めています。例え
ば、
心臓血管カンパニーでは、
心臓・末梢血管カテーテル
治療分野の技術者を、脳血管治療用のコイル、
ステント
などの開発を行っている米国のマイクロベンション, Inc.
ためにそれぞれの会社が連携すると共に、各事業部の本
社機能を事業部によっては海外に置くなどして、
いち早
く新製品をグローバル展開できる体制を整えています。
さらに、他社との提携も積極的に行っています。例え
ば、2013年4月には、末梢血管領域事業の拡大を図る
べく、株式会社カネカとペリフェラル(下肢血管)用PTA
バルーンカテーテルの共同開発契約を締結しました。
ま
た、2014年3月には、生体吸収性ステントを開発する仏
ART社の独占買収権取得、同社との薬剤溶出型生体吸
収性ステントの共同開発、
および同社への段階的な投資
に関する契約を締結しました。自社開発の他に、他社と
も積極的に提携していくことで既存の領域から新たな
領域へと市場の幅を広げていきます。
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TERUMO CORPORATION Annual Report 2015
イギリス・人工血管
アメリカ・脳血管治療
日本・放射線科領域
アメリカ・血液事業
社買収※
アメリカ・細胞治療
● オンセットメディカル社買収
アメリカ・大口径シース
に派遣し、
共同で開発を行っています。
また、各国の独自の薬事制度に則した行政対応を行う
アメリカ・人工心肺事業
2012年度
心臓血管
●アンジオケア社と戦略的提携
2013年度
心臓血管
● ART社から独占買収権取得
中国・腎除神経カテーテル
フランス・生体吸収性ステント
● EMP-II社に出資
アメリカ・技術的知見の獲得
※ 従来は心臓血管カンパニーに含まれていましたが、
2014年10月より、
血液シス
テムカンパニーに含めています。
グローバル生産体制
近年テルモは、生産体制のさらなるグローバル化を推
既存のベトナム工場の敷地に新棟を、注射器および針の
進しています。国内工場をマザー工場と位置づけながら
増産のために既存のフィリピン工場の敷地に新棟をそれ
も、主にアジア地域をテルモの生産センターとして発展
ぞれ増設しました。
また、脳動脈瘤のカテーテル治療で
させていくべく、生産技術を積極的に伝達・移管し、海外
使用するコイルの需要に対応するため、
コスタリカに新
においても性能や品質を保ち安定的に生産できるよう支
工場を開設しました。
さらに、輸血需要に対応するため、
援を行っています。
ベトナムに同国2拠点目となる新工場を建設し、2014年
国内では、生産拠点の多極化を兼ねて、静岡県の富士
に竣工しました。
アジアと日本を軸にグローバル生産体
宮工場、
愛鷹工場、
山梨県の甲府工場に加えて、
山口県に
制を整え、
コスト競争力を高めながら世界の需要に応え
新工場を建設し、
2014年4月より操業を開始しました。
てまいります。
海外では、2013年に、
カテーテル製品の増産のために
テルモグループの生産拠点(2015年10月1日現在)
欧州
4
拠点
英国
3拠点
ベルギー 1拠点
アジア他
5
ベトナム
フィリピン
中国
インド
拠点
2拠点
1拠点
1拠点
1拠点
日本
7
米州
拠点
日本
海外
計
7
17
拠点
8
拠点
米国
7拠点
コスタリカ1拠点
拠点
24
拠点
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