2015 年 7 月 10 日 大阪市長 橋下 徹 様 「君が代」不起立処分当該 大阪市立中学校教諭 松田幹雄 児童・生徒の「君が代」学習・指導にかかわる公開質問書 私は、2015 年 3 月の大阪市立中学校卒業式での「君が代」不起立不斉唱を理由に戒告処 分を受けた松田です。私は、入学式の式次第に位置づけられている「国歌斉唱」にかかわ って、「君が代」の歌詞の意味も扱いの変遷も児童・生徒に伝えることなく、「国歌だから 歌え」という「指導」が行われていることに大きな危惧を感じています。国旗・国歌、「日 の丸」・ 「君が代」についてどう考えるかということは、児童・生徒それぞれが自分の考え を深めていくべき課題であって、日本国民がかつて経験したような、大日本帝国憲法下の 「洗脳」 「調教」教育をくり返させてはならないと考えています。 橋下大阪市長は、府知事時代から「バカ教員の思想・良心の自由よりも子どもたちへの 祝福が重要だろう。 」「職務命令に従わず、国歌を起立・斉唱しない者は公務員にしておけ ない。辞めさせる。 」などと繰り返し発言され、愛国心の高揚などを目的に教職員に国歌(「君 が代」 )の起立・斉唱を義務づける『国旗国歌条例』や同一職務命令に 3 回違反すれば免職 にするという規定を盛り込んだ『職員基本条例』の制定を主導してこられました。 市長という立場は、職員の服務監督に責任があるとともに、子ども達の教育のあり方に も大きな責任があるはずです。私が抱いている危惧にかかわって、「君が代」の学習や指導 のあり方についての橋下大阪市長の認識をうかがいたいと思います。以下、質問します。 (1) 「君が代」が、大日本帝国憲法下の修身の教科書で「天皇陛下のお治めになる御代は、 千年も萬年もつづいておさかえになりますやうに」という意味だと記載され、教えら れていたことをご存知でしたか。 (2)戦前、 「君が代」斉唱が、天長節・紀元節などの厳粛な学校儀式の中に「御真影に最 敬礼、教育勅語奉読」などとともに位置づけられ、召集令状が来た人に「おめでとう ございます」と言わざるを得ない、本音の言えない建前社会をつくった一因であった ことをご存知でしたか。 (3)1999 年に国旗・国歌法が制定されたとき、政府が、「君が代」の「君」は今も天皇を 指すが(直訳すれば「天皇の代」となるが)、天皇の憲法上の位置づけが変わったため、 「君が代」は「我が国」と理解し、「君が代」の歌詞は、「我が国の末永い繁栄と平和 を祈念したもの」と解することが適当であるとしたことをご存知でしたか。 1 (4)大阪市教育委員会は、 「君が代」の歌詞の意味や扱いの変遷について児童・生徒にど う伝えるかという指導文書を何も出しておらず、その結果、ほとんどの学校では、 (1) ~(3)の事実は児童・生徒にほとんど何も伝えられないまま、 「君が代」は国歌であ るので歌いなさいという「指導」しか行われていないこと、 「君が代」の歌詞の意味を 聞くとほとんどの子どもたちが知らないと答える実態であることをご存知でしたか。 (5)橋下市長は、 (4)の大阪市立学校で学ぶ児童・生徒に「君が代」の歌詞の意味も伝 えず、しっかり歌えと「指導」している大阪市立学校の国歌「君が代」学習・「指導」 の実態について、どうお考えですか。考えを聞かせてください。 (6)橋下市長が、教職員の場合「君が代」を起立・斉唱しなければ国旗国歌条例と職命 令違反で罰し、くり返す者は免職にするという考えをもっておられることは理解して いますが、 「君が代」の意味や扱いの変遷、それが社会にもたらした影響等を知り、歌 いたくないと意思表明した児童・生徒にはどう対応すべきと考えておられますか。 (7)子どもの権利条約では、児童・生徒には、自分に起立・斉唱が求められる「君が代」 について十分な情報を求め、卒業式・入学式で扱いについて自分に関わることとして 意見をいう権利が認められています(第 12 条、第 13 条) 。橋下市長は、 (1)~(3) の「君が代」についての事実を児童・生徒に伝えるべきだとお考えですか。それとも 伝えるべきでないとお考えですか。 (8) (7)の問いについての回答は、国旗・国歌などにかかわる考え方は、 「事実を十分 伝えた上で児童・生徒一人ひとりが自分の考えを持ち、深めていくものだ」と考える のか、 「教育によって身につけるものであり、児童・生徒は正しい考え方を教えられる 立場である」と考えるのかということにもかかわっていると考えます。橋下市長はど ちらの考え方ですか。 以上 私たち大阪市立学校教職員は、橋下市長の方針と『国旗国歌条例』『職員基本条例』の下 で、 「自身の『君が代』起立・斉唱によって、子ども達に『君が代』に対してとる態度の範 を示せ。疑問や異議は許さない。考えることは必要ない。クビになりたくなければ従え。」 と言われています。私は、この命令に従うことが、自分の保身のために自分に加えられた 圧力を子ども達に転嫁すること、自分の人間性を捨て去ることであると感じています。質 問事項は、私たちが子ども達にどう向き合うべきか考えるとき、避けて通れないものです。 橋下市長には、必ず、お答えいただきますよう、よろしくお願いいたします。 2
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