資料2 「農用地区域内農地面積の目標について(案)」及び 「都道府県が定める確保すべき農用地等の面積の目標の設定基準(案)」 に対する地方六団体としての考え方 地方六団体では、平成26年8月5日に取りまとめた「農地制度のあり方について」 (以 下、提言という。)において、「真に守るべき農地を確保しつつ、住民に身近な地方自治体 が主体となって都市と農村を通じ地域の実情に応じた土地利用を実現する観点から、農地 制度のあり方を見直すべき」ことを提言してきた。 この提言を踏まえ平成27年6月19日に成立した「地域の自主性及び自立性を高める ための改革の推進を図るための関係法律の整備に関する法律(第五次一括法)」により、農 地転用に係る事務・権限について地方に移譲されるとともに、農地の総量確保の仕組みの 充実が図られたことは、地方分権改革の取組の中でも特筆すべき決断であり、地方分権改 革の歩みを大きく進めるものとして評価している。 地方は、移譲された農地転用許可権限に基づき、農業の再生と総合的なまちづくりを両 立させ、地方創生の実現に尽くすとともに、特に、農地の確保については、提言の趣旨を 踏まえ、国とともに責任を果たしていく決意である。 国においても、これら地方の決意を重く受け止めるとともに、今後、制度の詳細設計に 当たっては、提言の内容を十分に踏まえるべきである。 特に、 「農用地区域内農地面積の目標について」 (以下、国目標という。)及び「都道府県 が定める確保すべき農用地等の面積の目標の設定基準」 (以下、都道府県の目標面積設定基 準という。)の策定にあたっては、提言の内容を十分に踏まえるとともに、都道府県知事、 市長及び町村長の代表者と協議する場における議論の内容を十分に尊重し、その内容を適 切に反映させることで国と地方が双方の立場で納得できる点を見出すべきである。 また、国も設定された国目標については、必要な施策の充実を図ること等によってその 達成に責任を持つべきであり、達成状況の客観的な検証を可能とするために、算定根拠を 明確化し、根拠のある目標管理を行うべきである。 なお、国目標及び都道府県の目標面積設定基準の具体的な検討にあたり、以下の事項に 留意するべきである。 1 1. 国目標、都道府県の目標面積設定基準及び国・都道府県の目標の達成状況について 国が提示した国目標と都道府県の目標面積設定基準に基づき各都道府県の積み上げた 目標面積との間に相違がある場合には、国は地域の実情を十分に踏まえた要因分析等 を行い、地方の意思を尊重し、協議を行うべきである。 国・都道府県の目標達成状況の評価を行う際には、設定された目標の期間内の施策の 進捗状況や目標の期間内に生ずる社会情勢の変化等を十分に加味するべきであり、設 定された目標と達成された数値を単純に比較することのみにより、評価を行うべきで はない。 2. 農用地区域内の農地面積のすう勢 荒廃農地の発生のすう勢について、平成22年時策定の都道府県の目標面積設定基準 から算定手法が変更されているが、その変更理由を明らかにするとともに、新たに盛 り込まれた係数の導出根拠を明示し、検証可能性を高めるべきである。 荒廃農地の発生のすう勢については、現実を踏まえたものとするべきであり、荒廃農 地の新規増加面積のすう勢の平均を計画期間分乗じた数値を基本とし、すう勢を過小 に見積ることがないようにするべきである。 3. 農用地区域への編入促進 今回、国から示された、 - 20ha 以上の集団的農地 - 10ha 以上 20ha 未満の集団的農地の内、基盤整備が実施されている農地 は全て編入するとした考え方は、現状における農用地区域への編入促進のすう勢から 乖離したものである。 地方としても、基盤整備実施済の農地はもとより、その他の農振白地地域の農地の編 入にも積極的に取り組んでいくが、その目標は、農業生産の基盤の保全、整備及び開 発の見地から、地域の実情に即し、現実を踏まえたものとするべきである。 それでもなお、現状のすう勢を上回る目標を提示するのであれば、農用地区域への編 入促進に係る新たな施策を示すとともに、地方における施策の進捗状況・見込みを踏 まえた上で、個々の農地の条件や地域の状況を反映可能な方法により算定するべきで 2 ある。 4. 荒廃農地の発生抑制 地方としても、農地中間管理機構の活用による担い手への農地の集積は、耕作放棄地 の発生抑制効果を見込めるものと認識しており、当該施策効果は、耕作放棄地の発生 抑制効果において見込むべきであるが、一方、基盤整備が実施されていない等、条件 の整っていない農地も存在していることを踏まえると、農地中間管理機構を活用した 担い手への農地の集積において、一律に、すう勢による「農用地区域内農地における 荒廃農地の発生率」を乗じる算定方法では、過大な施策効果を見込むこととなる。 個々の農地の条件や地域の状況を反映可能な算定方法により、現実を踏まえた適切な 施策効果を見込むべきである。 地方も各都道府県において既に策定された目標を基本として、農地中間管理機構を活 用した担い手への農地の集積を積極的に押し進めていくが、今後、国においても、目 標の達成状況を適切に検証し、その結果、集積の実態と目標との間に乖離が生ずる場 合には、その原因を分析し、制度改善を図るとともに、新たな施策を実施する等、目 標の達成に資する更なる施策効果の上積みを行うべきである。 5. 荒廃農地の再生 再生可能な荒廃農地面積には、今後、再生利用が困難と見込まれる荒廃農地となる農 地面積が含まれることから、再生可能な荒廃農地面積に「再生可能な荒廃農地の再生 割合」を乗じる算定方法では、過大な施策効果を見込むこととなる。 農地中間管理機構を活用した担い手への農地の集積において、中山間地の農地など条 件の悪い農地で、すでに耕作放棄地となっている農地の集積は困難であり、条件の良 い農地と同様の集積率により、一律に集積が進むと見込むことは、施策効果を過大に 見込むこととなる。 地方における施策の進捗状況・見込みを踏まえた上で、個々の農地の条件や地域の状 況を反映可能な方法により算定するべきである。 一方、地方も地方自治体独自の補助制度、自助努力による再生等をこれまで以上に押 し進めていくとともに、それらの施策効果を適切に見込む所存である。 3 6. その他 食料の安定供給や国土の保全等の多面的機能を果たしている有限で貴重な資源である という観点等、全国的な立場から国目標を定めることは、十分に認識しているが、都 道府県の目標面積設定基準に基づき設定される「都道府県が定める確保すべき農用地 等の面積の目標」については、各都道府県が算定した数値を十分に尊重するべきであ る。 食料の安定供給や国土の保全等の多面的機能の維持等の基礎となる農地面積の把握に ついては、地域ごとの実情により正確に反映されていない可能性があることを国と地 方が認識を共有する必要がある。 平成27年11月5日 全国知事会 全国都道府県議会議長会 全国市長会 全国市議会議長会 全国町村会 全国町村議会議長会 4
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