原子力基礎工学研究部門 腐食損傷機構研究グループ ひずみ付与下でイオン照射したSUS316Lステンレス鋼の腐食特性 近藤啓悦, 三輪幸夫, 大久保成彰, 加治芳行, 塚田隆 日本原子力研究開発機構, 原子力基礎工学研究部門 研究背景と目的 高経年化した軽水炉におけるオーステナイト系ステンレス鋼の損傷事象 ⇒ 照射誘起応力腐食割れ (IASCC) M t i ld Material degradation d ti b behavior h i Stress distribution Thermal + Residual stress by welding Radiation Induced Stress relaxation 0 Welding • 熱応力、溶接残留応力、スエリングなどにより生じる材料のひず みレベルもまた、IASCC発生に重要な要因となる。 Synergistic effect • これらの影響因子は異なる照射量依存性を持つことから、 IASCCによる材料損傷は単純な材料劣化に支配されない。 Damage behavior (ex. IASCC) (Radiation hardening) Pressure vessel (Swelling) Swelling Radiation hardening Embrittlement Water coolant Dimension change • 照射硬化による脆化と照射誘起偏析による粒界の局所的耐食 性劣化などがIASCC発生に関しての要因と考えられている。 Radiation induced segregation Radiation induced stress relaxation Damage proba ability Compressive Tensile stress stress Core Low temp. side Degradation degree Core shroud High temp. side Degradation of local corrosion resistance (Radiation induced segregation) Materials degradation only Radiation induced stress relaxation 0.1 dpa 1 dpa 10 dpa Dose (dpa) • IASCC発生予測のためには、ひずみ付与下で照射した材料の マクロ/ミクロ特性変化を定量的に評価する必要がある。 本研究では、圧縮および引張ひずみを付与したSUS316L鋼のイ オン照射後の材料劣化挙動を評価した。 100 dpa • イオン照射実験 (タンデム加速器 TIARA JAEA) @TIARA, • ひずみ付与下でのイオン照射実験を 行うための試験片固定ジグ 9 イオン種 : 12 MeV-Ni3+ 圧縮ひずみ付与 ⇒2%弾塑性ひずみ (200MPa圧縮応力) 9 照射量 : 1~45 dpa 15 Displacement damage ((dpa) • 供試材 ; SUS316L (溶体化材) 12 9 照射速度: ~1.7×10-3 dpa/s 引張ひずみ付与 ⇒ 2%, 7%弾塑性ひずみ (200MPa, 300MPa 引張応力) 10 12 MeV Ni3+ ⇒ 316L SS ; Ed = 40 eV, Average displacement damage : 5 dpa 8 9 6 6 Average dpa 4 3 2 0 0 0 1 2 3 4 5 Depth (μm) 9 照射温度: 330ºC 330 C Concentraation of implanted Ni (appm) 実験方法 • 照射後試験 9 耐食性評価 : 電気化学的再活性化 (EPR)法 ; シングル・ループ法 9 照射硬化 : ナノ・インデンター 9 照射誘起応力緩和 : X線残留応力測定 9 微細組織評価 : 3次元アトムプローブ (3DAP) 透過電子顕微鏡 (TEM)観察 Depth distribution of displacement damage calculated by TRIM code 結果と考察 耐食性 100 照射硬化 1200 ひずみ付与なし 2% 引張ひずみ付与 7% 引張ひずみ付与 2% 圧縮ひずみ付与 0.01 0.8 800 0.6 600 400 ひずみ付与なし 2% 引張ひずみ付与 7% 引張ひずみ付与 2% 圧縮ひずみ付与 200 0 10 20 30 40 0 50 Displacement Damage (dpa) 10 20 30 40 ・ 圧縮および引張ひずみを付与 することにより、照射による耐食 性劣化が抑制された。 ・ 照射硬化は2%引張ひずみ付 与材で抑制される。 0.4 0.2 0.0 -0.2 0 1E-3 9 ひずみ付与することにより、 材料の照射劣化挙動が変化。 2% 引張ひずみ付与 7% 引張ひずみ付与 2% 圧縮ひずみ付与 1.0 σ/σ0 0.1 Yield Stress (MPaa) 1 照射誘起応力緩和 1.2 1000 10 Corrosive Normalized Charge, Paa (C/cm2) ¾ 材料劣化の照射量依存性 50 -0.4 0 Displacement Damage (dpa) 10 20 30 40 50 Displacement Damage(dpa) ¾ 照射 照射による耐食性劣化と微細組織変化(6dpa照射材) る耐食性劣化 微細組織変化( p 照射材) 微細組織観察結果 照射誘起偏析のひずみレベル依存性 Ion range 1μm 9 照射によって、粒内の転位、フランク・ループのような点欠陥シ ンクにおいてSiやNiが濃縮 FeやCrが希薄化(照射誘起偏析)。 ンクにおいてSiやNiが濃縮、FeやCrが希薄化(照射誘起偏析)。 9 圧縮と引張ひずみ付与材で損傷組織の発達が異なり、圧縮ひ ずみ付与材ではフランク・ループの生成が抑制された。 Si Ni 12 8 4 0 -4 4 -8 -12 2% 圧縮ひずみ付与 ひずみ付与なし 2% 引張ひずみ付与 7% 引張ひずみ付与 Cr シンクにおけるSi濃度変化量, at.% バル ルクからの濃度変化, at.% Ion range 10nm 16 12 100 10 10 8 1 6 0.1 4 0.01 2 劣 耐食性 TEM 観察 Si Si 照射誘起偏析と耐食性の相関 20 7%引張ひずみ付与材 再活性化電気量, C/cm2 3DAP分析 2% 圧縮ひずみ付与材 優 0 1E-3 2%圧縮 ひずみ 2%引張 ひずみ 付与なし ひずみ 7%引張 ひずみ 9 粒内シンクにおける照射誘起偏析は、2%圧縮ひずみ、2%引張ひずみ付与 材で抑制される。また、引張ひずみレベルを7%まで増大させると抑制効果が小 さくなる。照射によって導入された点欠陥のシンクへの拡散挙動が、付与したひ ずみレベルよって変化した可能性がある。 9 粒内シンクにおける溶質元素濃度変化量と耐食性劣化度に相関性がある。 ⇒ ひずみレベルよってミクロレベルでの照射誘起偏析挙動が変化したことが、 耐食性劣化の程度を変化させた原因の一つと考えられる。 まとめ • 圧縮および引張ひずみを付与することによりSUS316Lステンレス鋼の照射による材料劣化挙動が変化した。 • 耐食性劣化挙動が変化した原因の一つに、ひずみ付与により点欠陥シンクでの照射誘起偏析挙動が変化したことが考えられた。
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