ため池築堤土のせん断弾性係数に及ぼす諸要因について

た め池 築 堤 土のせん 断弾性係数 に及 ぼす 諸 要 因に つ い て
Soil quality factors on shear modulus about compacted soil of small dams
○ 奥野日出 *
Hizuru Okuno
小山修平**
Shuhei Koyama
1.はじめに
本研究はため池堤体や 盛 土 道 路の法面変形解析 を行う に あ た り,必 要な地盤定数 (せん
断弾性係数 G 等 )に 及ぼす 諸要因( 等 方 圧 密 圧 力σ ,細 粒 分 含 有 率 Fc, 塑性指数 Ip, 間 隙 比 e,
締固 め度 D 等) の影響 を物理・ 力 学 特 性 1) から 定性的 かつ定量的に把 握することを 目的と
し た も の で あ る. Fc > 35,Ip> 15 の締 固め土 において , G はσ と Ip に 相関があり, D の影響
を受 けること が 分っ た. また 締固 め土 と 築堤 の不 攪 乱 土に つ い て G の 定 式 化を 試み た.
2. 静 せん断弾性 係 数 G50 の 算定方法
> 50 ( % ) , 塑 性 指 数 Ip> 15 ), Fig2 に は φ 成分
微 小 ひ ず み 領 域 (せ ん 断 ひ ず み γ =10 )
を 含 む C 材 (50 > Fc > 35,Ip > 15 )の結 果 を示 し
におけるせん断 弾 性 係 数(剛性率) G は一 般
た .同 図より G5 0 とσ は全 般に線 形の 相関
-6
に( 1 )式 を用 いて 与えられる .
12,000
τ
σ
=
γ
d
2 ( 1+ν)ε
------------ ( 1)
10,000
a
G = 49.3 σ
こ こ に , τ は せ ん 断応力 で あ り , 軸 差 応 力
σ
d
を用 いて τ = σ d /2 より 得られる.
ま たγ は軸 ひずみ ε
γ =( 1+ ν)ε
a, ポ ア ソ ン 比ν よ り
G50 (kN/m2 )
G=
よ り 得 られ , νは 飽 和 試 料
a
の非排水試験 で はν =0.5 を 用い る.
8,000
6,000
G = 38.6 σ
G = 21.6 σ
4,000
G = 26.6σ
G = 18.9 σ
2,000
ここで ,静 せん 断 弾 性 係 数を 提示 する 場
0
0
合は 三 軸 圧 縮 試 験( CU 条 件 )か ら求め ,( 1 )
100
120
14,000
------------------( 2)
140
160
180
200
50
はσ
max /2
max
の軸ひず
みである .
G = 72.8 σ
10,000
8,000
6,000
G = 74.9 σ
G = 33.8σ
4,000
3. 締 固め度 D90 の G50 と 圧密圧力σ の関 係
近畿圏複数 の土 取り 場か ら採 取し たコ ア
用土 の締 固め供試体 より, G5 0 と圧 密 圧 力
σと の関 係を Fig1 に C 材 (細 粒 分 含 有 率 Fc
* 株式会社 ア ス カ ソ イ ル コ ー ナ ー
** 大阪府立大学大学院 生命環境科学
キ−ワ −ド: ①せん断 弾 性 係 数
G5 0 (kN/m2)
こ こ に ,G50 は静 せん 断弾性係数 ,σ
G = 70.9σ
12,000
50
は 最 大 軸 差 応 力, ε
80
16,000
max
3ε
60
C 材の G50 とσとの関係
Fig.1
よ う に改 める.
σ
40
σ (kN / m 2 )
式 が 静 的 な 場 合も 成 り 立 つ と し て ( 2 )式 の
G5 0=
20
② 塑性指数
G= 31.8σ
2,000
0
0
20
40
60
80
100
120
140
160
180 200
σ(kN/m 2 )
Fig.2 φ成分を含む C 材の G5 0 とσとの関係
Co.,Ltd. AsukaSoil Corner
Osaka Prefecture University Life & Environmental
③圧 密 圧 力
Sciences
が認 め ら れ ,傾 き a と 各供試体 の Ip と の
こ れ ら の 試料 は G5 0=a ・ σ の正 の 相関 が
関係 は Fig3 の よ う に表 わ さ れ, Fc > 35,Ip > 15
得 ら れ ず ,締固め 時の 初期間隙比 e0 や Fc (<
な る D90 締 固 め 土 では , a=-2.4+106.2 の 相
35% )に支配 されると考 えられる .また D95
関式 が得 られた .
のσ
D90締固め土
80
max
は D90 のそれよりも 大き い が D95
の G5 0 は σ の 増 加 に対 し て D90 よりも 小
さ く な る結 果も 得られた .す な わ ち, マト
リ ッ ク ス の 細 粒 分 が 締 固 め時 ( D95 )や σ 増
a 60
加 に対 して オ ー バ ー コ ン パ ク シ ョ ンが 生じ
a = -2.4 Ip + 106.2
て G5 0 に 影響を 及ぼすと考 えられる .
a = -2.5 Ip + 112.6
5.G50 の 実 験 式について
40
微小 ひずみ 領域 の G に つ い て は, Hardin
20
らによる実験式
a = -1.3 Ip + 69.6
C材
1)
よ り , 有 効 拘 束 圧 (σ ' ) n
φ成分を含むC材
の べ き 乗 ( n=0.5) ,e, 実 験 定 数 A な ど で 示 さ
線形 (全体)
れ ,自然地盤 を対 象と し て い る.
著者 らは 締固 め土 を対 象とした 大ひずみ
0
0
10
20
30
40
Ip
案 する .
Fig3.D90 供試体 の a と Ip の 関係
一方 ,築 堤の 不攪乱土 10 試 料に お い て は ,
a=-2.2+106.2 の 相 関 式 が 得 ら れ ,D90 締 固 め
土と 比べ て大差 はなかった .
4.G 5 0 に影 響を 及ぼ す諸 要 因に つ い て
Fig4 には 締固 め度 D95 の φ成 分を 含む C
材と D90,Fc < 35 ( %)の C 成 分を 含む φ材 の
供 試 体について G50 とσ との 関係を 示す .
25000
G
50 =
a ・ F (e )・σ
n
+ b ---------( 3 )
a=106.2-2.4Ip ( Fc > 35 ( % ) ,Ip> 15 の D90
供試体)
a=106.2-2.2Ip ( Fc > 35 ( % ) ,Ip> 15 の 不 攪 乱
供試体)
1+e0
F( e ) =α
1+emin
(αは 実験定数 ,e0 は締 固め 時の間隙比 ,emin
は 最 大 乾 燥 密 度 ρ dmax の 間 隙 比 で あ る . )
σ ; 圧密圧力 (kN/m2)
G = -35. 2σ +24660. 5(φ 材 )
20000
領 域 の 実 験 結 果 よ り ,G5 0 の 式 を 以 下 に 提
G=2 4.0 σ+ 1 5 1 0 3.2 (φ 材)
Fig1,2 に は ( 3)式 を用 い て, n=0.8 ∼1 ,
G50 (kN/m 2 )
α =1,b=0 と し て各 現 場 毎に破 線で 表した .
なお , b 値は 築 堤 後 の年 代 効 果を 経 たセ
15000
メ ン テ ー シ ョ ン定 数と し て導 入し た.
G=12.5σ+7290.8(D95)
こ の よ う な実測値 に基 づくせん 断弾性係
10000
数 の近 似 曲 線は ,大 ひ ず み領 域で の実用的
G=- 45. 6σ +13096. 3(φ 材 )
な 変形解析に 有効 に活用 で き る.
5000
< 引 用 文 献>
G= 1.5 σ+ 3570 .8( φ材 )
1)奥野日出,小山修平(2005):主として細粒土から
G=-19.9σ+2767.3(D95)
0
0
50
100
150
200
250
300
2
σ(kN/m )
Fig4. φ 材 ,D95 供 試 体の G5 0 とσとの関係
構成された盛土斜面の安定解析手法の提案,平成17年
第40回地盤工学会研究発表会(函館),論文No.679
2)Hardin,B.O and Black,W.L.:“ Vibration modulus
of
normally consolidated clay ", Proc,of ASCE,
Vol.94,NO.2,1968,pp.353∼369.