尾花沢某所の生き物調査

尾花沢市内某所の溜池調査報告書
平成27年9月8日
今回の場所は、平成26年○月○日にも調査しましが、先の調査は時期的に
遅かったことなどもあったので、追加の調査を行いました。
記
1 い
つ
平成27年8月31日
2 どこで 尾花沢市某所
個人所有の池、農業用水路及び農業用溜池
3 調査方法と結果
目視は別として、モンドリを仕掛けるにあたっては、池及びため池の所有
者の了解をいただきました。また、採集した生き物はすべて元の場所に戻し
ました。
場所
方
法
モンドリ
池
前回確認した生き物
なし
トウヨシノボリ
モツゴ属の魚
鯉
目
視
今回確認した生き物
グサ
ジュンサイ ヒツジ
ヒルムシロ
睡蓮
-左記の外に-
イヌタヌキモ
ミソハギ
サンカクイ
ドジョウ アブラハヤ
ヌカエビ
トウヨシノボリ
農業
叉手網
コオイムシ
調査なし
タニシ(種名判別不能)
用水
カワニナ
路
トビケラ(種名判別不能)
手さぐり
目
視
ドブガイ
同左
セキショウモ
-左記の外に-
場所
方
法
前回確認した生き物
今回確認した生き物
ミクリ
農 業
用 溜
池
4 考
モンドリ
目
視
調査なし
トウヨシノボリ
スジエビ モツゴ属の魚
〃
ヒルムシロ
察
今回新たに確認した生き物のうちモツゴ属の魚(以下「A」とします。)は、
在来種のシナイモツゴであるかモツゴであるかを断定できません。しかし、
明らかに北村山地域で見られるモツゴ属の魚とは様相を異にしています。下
の写真で見られる村山市中沢のモツゴ属の魚(以下「B」とします。)は、婚
姻色と追星が出ている特殊な状況にありますが、北村地域の一般的なに生息
しているモツゴ属の魚と基本的な形が一致しています。AとBの大きな違い
は口吻から背びれに至る陵の部分に表れています。Aは滑らかな曲線で続い
ているのに対して、Bは頭部が凹み加減の曲線を描き、頭部を過ぎると直ぐ
上でがくんと曲線が崩れています。ただし、Bのタイプの幼魚ではAと似て
いる場合がありますし、しばしば他の魚種でも栄養状態が悪い場合にも痩せ
てこのような状態になることもあります。しかし、少なくとも北村山地域の
モツゴ属の魚はBの形に共通しています。
今回あらたに生息を確認したモツゴ属の魚(A)
村山市中沢のモツゴ属の魚(B)
そもそもモツゴとシナイモツゴの違いについては、インターネットや図鑑
などで「側線が完全であるのがモツゴで、側線が途中から不明瞭になるのが
シナイモツゴ」と説明されています。しかし、AとBの写真でもお分かりの
とおり両者ともに側線が完全に尾鰭に達しています。このことは以前から気
になっていたのですが、少なくとも北村地域のモツゴ属の魚は共通して側線
が完全ですので、宮城県などのシナイモツゴとどこか違いがあるような気が
します。もちろん、モツゴとははっきり異なるのですが。あれこれ言葉を並
べても、結局は同定できないことに尽きます。勉強が必要です。
次に今回初めて確認したミクリは、昔はどこにもあったそうですが、今で
は絶滅が危惧されている種だそうです。実が栗のようだと言う意味のようで
す。○○周辺の貴重な種と言えるようですが、植物に詳しい方から確認する
必要があります。
花
実
スジエビの個体数はかなり多いので、安心できます。先の調査ではヌカエ
ビだけだったので、スジエビはいないものと思ってしまいましたが、○○の
上流に淡水産エビが二種類いる
ことは心強いことです。ブラック
バスのために、今では○○内に全
く淡水産エビを見ることができ
ませんが、かつては二種類が生息
していた可能性があります。そし
て、○○からブラックバスを駆除
できれば、二種類のエビが復活するでしょう。
ここまでは確認できた種について説明しましたが、逆に生息を期待してい
たが確認できなかった種があります。昨年の調査の際に、池の所有者から「タ
ナゴを放流した」と聞いていましたので、今回はその確認をするのも一つの
目的でした。放流していたタナゴ類が在来種であったならば、絶滅が危惧さ
れるタナゴ類の避難場所になっていることが期待されたからです。しかし、
池に三つのモンドリを仕掛けましたが、どれにも入っていませんでした。採
集できなかったからと言っても「生息していない」とは断定できませんが、
生息していない可能性のほうが高いと思われます。所有者が放流した後で繁
殖 で き た か ど う か がポ
イントです。繁殖には二
枚貝の存在が必要で、二
枚 貝 の 生 息 に は ト ウヨ
シノボリが必要です。
幸い、トウヨシノボリ
の 生 息 を 確 認 で き まし
たが、二枚貝は池の底を
探 っ て い ま せ ん の で確
認できません。
【独立行政法人
土木研究所
自然共生センター】
最後に地元の方々に感心しました。水辺をきちんと監視していることです。
今回、調査をしていると、溜池の隣に住んでおられる人から「何をしている
のだ」と声をかけられました。怪しい人間が何かしているのを知らないふり
をしないで、勇気をもって確認したようです。
また、溜池には立入禁止の看板もありました。
事故防止の意味もありますが、ブラックバス釣
りを排除する役割も果たします。徳良湖にはブ
ラックバスが密放流されているのに、近くにあ
る溜池には一切、放流されていません。地元の人たちのブラックバスを寄せ
付けさせない強い態度が効果を奏しています。同じことは、尾花沢市の□□
地区でも見られました。ブラックバス対策には、如何に地元の人たちの力が
必要であることが分かります。これからも、強い態度で故郷の自然を守って
いただきたいと思います。
文責
大戸次男