特集 老健施設ビフォー・アフター~建物老朽化対策、改修・改築に向けて

特集
1
August Vol.26 No.5
老健施設ビフォー・アフター ∼建物老朽化対策、改修・改築に向けて∼
動いてもらい、最終的には社会復帰をめざしても
施設が受賞したのみで、近年、介護施設で受賞し
らうという設えにしていけばよいということにな
ているのは特養がほとんどです。
ります。
生活の場、終の棲家という位置づけが創設以来
とはいえ、話はそう単純でもなく、実際はいろ
変わらず明確にある特養のほうが、建築的には、
いろと難しいのも現実です。 6 月の政府の専門調
いろいろと思い切った取り組みがしやすいのだと
査会でも「向こう 10 年の間に、病院のベッド数
思います。老健施設とは、特養的な側面もあり、
を 16 万~ 20 万床削減していく」という見解が発
一方では回復期病棟の側面もあるというように、
表されました。もしもそうなれば、その受け皿は、
サービス提供の位置づけが複雑であることが、建
当然のことながら介護施設や高齢者住宅に移って
物設計においても単純にはいかない所以かもしれ
老健施設が利用者の尊厳を重視し、安全に配
在宅医療を受けるということになるでしょう。
ません。
慮したサービスを提供するためには、その中味
現に、近年医療機関も平均在院日数をできるだ
が重要なのはいうまでもないが、入れ物となる
け短縮化する方向にあるため、老健施設では在宅
老健施設には建物とサービスの
一体性が求められる
宇田 淳 氏
広島国際大学医療経営学部教授、一般社団法人日本医療福祉建築協会理事
「建物」も実は非常に重要である。
復帰率を向上させるという目標を掲げる一方で、
経営者も補助金制度を押さえて
専門の施工業者を選ぶ各種制度
医療経営学の立場から医療機関や介護・福祉
病院からの医療依存度の高い入所者が増加すると
しかしながら、2025 年に向けた地域包括ケア
施設の設計・建築にも明るい、一般社団法人日
いう傾向にあります。そうしたニーズは、この先
システム構築という大きな社会全体の動きのなか、
本医療福祉建築協会(以下、JIHA)の理事を
も増えこそすれ減ることはないと思われますので、
医療も介護もできる限り在宅でという方向性は、
務める宇田淳氏に、これからの老健施設の建物
建物も、利用者の生活機能の向上のみに特化した
どうやら 1 つの流れとなりそうです。そこにおい
の役割や求められる機能についてうかがった。
整備ではなく、一定の医療行為にも対応できるよ
て、老健施設は本来の機能である病院と自宅の中
う配慮しなければなりません。
間施設として在宅復帰・在宅療養支援機能の強化
また、看取りもこれからは無視できない問題と
が明確に打ち出されているわけですから、今後は
なるはずです。平成 24 年の報酬改定以降、看取
老健施設も大きく変わっていく時期を迎えること
平成 24 年度介護報酬改定に続き平成 27 年度改
りを含むターミナルケアには、高い評価がつくよ
になると思います。
定でも、在宅強化型へのさらなる評価や、リハビ
うになりましたし、今後、多死社会を迎えるなか
とりわけ、初期に建設された老健施設では、建
リテーションマネジメント加算Ⅱの新設に象徴さ
で、家族からのニーズも必ずや増加すると予測さ
物本体もさることながら、内部のさまざまな設
れる濃厚なリハビリの推進など、老健施設は「利
れます。必要以上の医療行為は望まないといって
備・備品の老朽化により、早晩、改修・改築・交
も、在宅で最期まで看取るというのは、ハードル
換など何らかの手立てを考えなければならない状
が高すぎます。医師の常駐する老健施設で、とな
況にあるでしょう。
るのは当然の流れかもしれません。
繰り返しますが、建物と中味のサービスはつな
したがって、それらすべてを見込んだ建物整備
がっていますから、改築や改修にあたっては、施
をとなると、なかなか焦点が絞れず二の足を踏ん
設経営者は、当たり前のことながら、大前提とし
時代とともに建物も変化すべき
老健は建物設計も単純ではない
用者の生活機能を向上させ、在宅へ戻す場所」と
いう位置づけがより明確に示されました。
また、入所者の口腔・栄養管理についても、よ
り「口から食べる」ことを意識した支援に高い評
うだ・じゅん
工学博士。国立医療・病院管理研究所を経て、広島
国際大学へ。現在、医療経営学部教授。研究支援セン
ター センター長。
専門領域は、医療福祉施設計画、医療情報、医療・
病院管理、介護経営。
価をつけていくという方向性に変わりつつありま
す。つまり、胃ろうをしたまま寝たきりにしてお
提供する器となる建物も、それに合わせて変化し
でしまうのは無理もないことだと思います。もち
て時代のトレンドだけでなく、関連する制度・法
むつをして…といった介護は、もはや完全に時代
ていくべきでしょう。実際、医療福祉施設の建物
ろん財政的な理由も大きな障壁となるでしょう。
律などの最新情報をしっかりと把握しておく必要
遅れであり、介護予防の視点や、たとえ要介護と
ほど器と中味の一体性が求められるものはありま
JIHA では毎年、デザイン性だけでなく利用者
があります。最低でも、介護保険制度、建築基準
なっても再び元気になってもらう、できるかぎり
せん。
の快適性や、職員の使い勝手といった視点も併せ
法、消防法、バリアフリー新法などは、押さえて
自立を促すことに、社会全体が重きを置くように
そういう意味では、これからの老健施設は、で
総合的に評価した結果、特に優れている建物に対
おきたいものです。あと重要なのは、各種補助金
なってきていることは明らかです。
きるだけ入所者が居室にこもりきりにならないよ
して「医療福祉建築賞」を授与していますが、老
についてでしょうか。
したがって、当然ながら、それらのサービスを
う、安全に配慮した上で、施設内をできるかぎり
健施設では過去(平成 6 年、10 年、12 年)に 3
老健施設の新設・増築・改修・改築にあたり活
12 ●老健 2015.8
012-017特集1 宇田氏インタビュー(五)0715.indd
老健 2015.8 ● 13
12-13
2015/07/15
17:12:33
特集
1
August Vol.26 No.5
老健施設ビフォー・アフター ∼建物老朽化対策、改修・改築に向けて∼
用できる補助金事業としては、国庫補助金と県単
祉施設等耐震化促進事業(耐震診断経費)補助
業計画が立てやすくなることでしょう。
事業の 2 種類があります。国庫補助金としては、
金」を利用し、建物の耐震診断に際しての補助が
さて、実際に改修・改築の計画がまとまれば、
今年度創設された「地域医療介護総合確保基金」
受けられます。
次は施工業者の選定ですが、よく「一般の業者と
があり、これは、国が 3 分の 2 を負担し、残り 3
さらに、見落としがちなところでは、国土交通
医療・福祉系の建物を専門とする業者は、何が違
分の 1 を各都道府県が負担して必要な補助事業が
省の「既存建築物省エネ化推進事業」もあります。
うのか?」ということを聞かれます。これは、一
なされます。
これは「エネルギー消費量が 15%以上削減され
般家庭の住宅改修でもそうですが、やはり設計
県単事業は、都道府県が実施する単独の事業で
る建築物の省エネ改修および省エネ改修と併せて
者・施工者に介護の知識があるかどうかで差が出
あり、自治体ごとに募集期間や事業要綱、助成金
実施するバリアフリー改修に対して、上限を
ます。知識のあるなしは、施工後の使い勝手の面
額等は異なります。ちなみに、東京都では、介護
5,000 万円とする 3 分の 1 を補助」するものです。
や安全面に違いとして現れます。介護施設等を多
保険施設種別ごとの整備費補助金(
「介護老人保
各種補助金については、厚生労働省や国土交通
く手掛けている専門の事業者は、前述の補助金制
健施設施設整備費補助金」など)がありますが、
省、各自治体のホームページなどで事前に情報収
度のみならず、老健施設の経営や運営の中味をよ
私の勤務地である広島県では「老人福祉施設等施
集をすることが重要です。せっかくの補助金制度
く知っています。介護報酬上のさまざまな加算の
設整備費補助金」という名称で一括りとなってい
ですので、上手に利用していただきたいものです。
こと、現場でどのようなサービスが提供されてい
ます(表参照)
。
事実、過去には、周知がされていなかったばかり
るか、その流れを理解した上で設計しているかど
う造語(バリアが“ある”という意味)をつくり、
東京都を例にしますと、国庫補助金では「地域
に、申請者が少なすぎていつの間にか廃止になっ
うか、これは大きな要素だと思います。
建物内に意図的に段差や障害物を設置して階段の
医療介護総合確保基金」を利用して、従来型個室
てしまった補助金事業もありました。もちろん、
ちなみに JIHA では、フォーラムや研修(病院
上り下りなどをリハビリとして積極的に取り入れ
もしくは多床室からユニット型個室への改修の補
これらの知識は、当然ながら施工業者ももってい
建築基礎講座や福祉建築基礎講座)を定期的に実
ているデイサービス事業所があります。つまり、
助が受けられます。また、県単事業では「社会福
ますが、施設側の担当者も知っていると、より事
施し、施工業者・施設経営者への情報提供を行っ
住み慣れた自宅のような環境で日常生活動作を繰
ています。扱うテーマは、医療福祉建築のトレン
り返すことを施設でのリハビリとし、そういう環
ドのほか、当然、診療報酬・介護報酬改定時には、
境で訓練した結果の退所こそが、本当の意味での
改定内容の解説なども含まれます。毎回、多くの
在宅復帰・社会復帰というわけです。
関係者が出席し、非常に熱心に聞いておられます。
そのような考え方は近年、徐々に増えてきてお
補助対象となる
事業内容
(目的・概要)
特別養護老人ホームや介護老人保健施設等の整備を促進するため、市町又は社会福祉法人
等が行う施設整備に要する経費に対し補助金を交付し、その負担を軽減する。
(対象施設)
特別養護老人ホーム・養護老人ホーム・ケアハウス・介護老人保健施設
地域のなかの老健施設という視点
サービスと建物を捉える
り、あえてバリアフリー改修を最小限に留めた古
民家を、そのままグループホームや複合施設など
補助対象となる
事業主体
市町、社会福祉法人等
採択要件
・市町老人保健福祉計画・介護保険事業計画に位置付けられた施設であること
・設備及び運営の基準を満たしていること
・資金計画が適正であること
ここで、これからの老健施設建物のトレンドと
うした取り組みを成功させるためには、介護職員
めざすべき方向性を考えてみましょう。やはり、
の技量も必要となりますが…。
テーマは地域包括ケアシステムを見据えた設えと
また、保育園を併設したり、学童保育を受け入
いうことになるのではないでしょうか。
れるスペースを確保して世代間のコミュニケー
いまやバリアフリーという概念は当たり前です
ションを図るとか、病院や施設の敷地のなかに公
補助率・融資額
その他の
財源措置の内容
○補助率 県単事業
○補助金額
・特別養護老人ホーム
創設・増築:2,250 千円×定員数/改築:2,700 千円×定員数(既存施設の解体を伴
うもの)、2,250 千円×定員数(既存施設の解体を伴わないもの)
・養護老人ホーム
改築:2,812 千円×定員数(既存施設の解体を伴うもの)、2,475 千円×定員数(既存
施設の解体を伴わないもの)
・ケアハウス
創設・増築:2,250 千円×定員数
・介護老人保健施設
創設・改築:25,000 千円(1 施設につき)
が、最近では、逆説的に、日常生活におけるさま
園を造り、建物のなかでも外でも快適かつ安全に
ざまな障壁をあえて用意し、それに対応しながら
リハビリができるような環境整備をする、建物内
生活することで身体機能を向上させようという考
に昭和の街並みを再現したフロアをつくる、デイ
え方もあります。
サービスと娯楽施設を合体させたような施設にす
代表的な例として、
「段差も何もない施設は、
る ― などなど、地域を意識した環境づくり・
高齢者ががんばって回復しようという意欲を奪っ
地域住民を巻き込んだまちづくりといった取り組
てしまう」との考え方から「バリアアリー」とい
みは、すでにあちこちで始まっています。
表 「老人福祉施設等施設整備費補助金」の概要(広島県の例)
14 ●老健 2015.8
012-017特集1 宇田氏インタビュー(五)0715.indd
として活用している例もあります。もっとも、そ
老健 2015.8 ● 15
14-15
2015/07/15
17:12:34
特集
1
August Vol.26 No.5
もちろん、前にも述べた通り、老健施設の機能
にしているという施設も一方であります。
は多岐に渡っており、地域特性も考慮しなければ
「老人の見当職に配慮した行動しやすい回廊式
なりませんから、それらすべてがそのまま老健施
廊下等を可能な限り設けること」と算定要件にあ
設へ導入可能というわけにはいきません。ただ確
り、利用者がぐるぐる回る回廊式廊下などがあり
実にいえることは、これからは、施設単体ではな
ましたが、いまは居宅に近い生活環境でケアを行
く地域のなかの施設、地域の高齢者ケアを牽引す
うユニット化が推されています。
る施設という視点で老健施設のサービスと建物を
捉えていくべきだということです。
建築的なトレンドでは、木の温もりを重視した
気持ちよく効率的に働けるよう
職員のためのスペースを割く
老健施設ビフォー・アフター ∼建物老朽化対策、改修・改築に向けて∼
〈東日本大震災からの 10 の提言〉
提言 1:これまでの震災の教訓を生かそう
東日本大震災では、建物構造に関わる部分の損壊以外にも、間仕切り・天井等の 2 次部材や内部
の設備破損、また、医療機器や情報端末等の落下・散乱が多く報告された。落下防止のため、室
内のものを可能な限り固定したり、安定した形状のものに変更したりなど工夫が必要。
提言 2:地域の組織との連携を強化しよう
あらかじめ行政や医療機関、他の福祉施設等とも連携し、地域のあらゆる資源を活用して災害時
に速やかに緊急体制が構築できるようにしておくことが大切。また、普段より情報通信手段、食
料、生活用品、車両、ガソリンなどを計画的に確保しておくことも心がけるべき。
提言 3:超広域災害を考慮したロジスティクスを考えておこう
デザインが見直されています。自然回帰というか、
いずれにせよ、初期のまだ年号が昭和の時代に
やはり無機質なものよりも、視覚的にほっとする、
建設された老健施設は、建物のトレンドや基準も
癒しを求めているのでしょう。室内はさることな
いまとは異なります。昔は、おしなべて居室が狭
東日本大震災では、交通網寸断により物流に大きな混乱が生じ、ガソリン不足も長期化したため、
非常用発電機や給湯設備の燃料として重油の確保が必要だった。また、超広域を対象とした、食
材・医療品等の調達に備え、平時より遠隔地の組織との関係の構築を行うことも備えとして有効。
がら、外壁や窓の外側、バルコニーなどに木製
かった。また、リハビリやレクリエーションの一
提言 4:災害時に求められる新たな機能に備えよう
ルーバー(木製の格子)を設置するだけでも、建
環として簡単な調理をしたりするための、利用者
物の印象がガラリと変わり、周辺環境にも自然に
用キッチンなどもありませんでした。これからは、
溶け込んだ優しい印象が演出されます。最近では、
在宅復帰のためのリハビリを兼ねた生活支援とい
住宅にも多用されています。
う観点からも、そうしたキッチンは必要でしょう。
そして、今後、老健施設が在宅復帰を目的とし
認知症でも料理はできるという方は少なくありま
た中間施設とするなら、医療ニーズは、がんなど
せん。生きることは食べること。口から食べるこ
よりも、脳梗塞・脳出血の後遺症に対するリハビ
との大切さは、今後、もっと重視されていくはず
リが主になっていくでしょう。あとは認知症の対
です。
応です。
また、職員がカンファレンスや研修会を行った
しかしながら、2025 年には、認知症高齢者が
りするための、老健施設のいわばバックヤード部
現在の約 1.5 倍の 700 万人を超えるといわれる社
分も、古い老健施設では十分に確保されていませ
会において、はたして施設のなかだけでケアしき
ん。
れるでしょうか。これからの認知症ケアは、その
よい施設は、利用者のみならず職員のためにも
病気への理解を住民一人ひとりが深め、地域ぐる
時間と労力、そしてスペースを割いているもので
みで温かく見守る社会をつくっていくことのほう
す。職員が気持ちよく効率的に働け、よりよい
が、よほど現実的な解決方法だと私は思います。
サービス提供で地域にも貢献する。そんな老健施
大規模な老健施設のなかには、認知症専門棟の
設を実現するために、建物の構造から考えるとい
出入口に顔認証センサーを取りつけ、認知症利用
うアプローチも必要です。
者にはドアが開かないようにして屋外へ徘徊に出
さらに、東日本大震災を経験したことで、災害
ることを防ぐという設備投資をしているところも
時における医療・福祉施設のあり方も見直されま
あります。それも方法論の 1 つとしては否定しま
した。JIHA では、3・11 の教訓を踏まえた「10
せんが、そうではなくて、地域住民への認知症に
の提言」を作成しています(次頁参照)
。いま一
対する理解・周知を施設から積極的に推進し、認
度、自施設の災害対策を見直す際の指針としてい
知症高齢者を建物内に閉じ込めず、出入りを自由
ただけたらと思います。
16 ●老健 2015.8
012-017特集1 宇田氏インタビュー(五)0715.indd
東日本大震災では、医療機関にはトリアージ・災害医療機能が求められた。同様に老健施設にお
いても、機能に合わせた災害支援が求められる。空間をより円滑に設営するために、求められる
状況を想定した上で、必要な設備の配置や動線計画を、事前に検討しておくことが有効。
提言 5:避難者や要介護者への対応を事前に考えよう
災害時、老健施設には地域の拠点として、自施設の利用者のみならず周辺地域の在宅高齢者の受
け入れなどが求められる。老健施設には医師も常勤しているため、東日本大震災では、医療依存
度の低い患者を病院から受け入れたというケースも報告されている。
提言 6:患者の避難・籠城について判断と方法を考えよう
利用者を施設内に留まらせるか屋外に避難させるかの判断は、地震時の安全確保の上で必須の課
題だ。したがって、自施設の建物についての耐震診断等の調査・評価をしておくことが重要。新
耐震基準(1981 年)が制定される以前の基準で設計された建物については調査が必要となる。
提言 7:エレベータ(ELV)の早期復旧手段を確保しよう
停電等により ELV が使えない場合、人海戦術で人や物を搬送することになり、施設機能の著しい
低下を招く。平時から ELV の早期復旧手段、停止時の代替移送手段を確保しておくことが必要。
2009 年の耐震基準改訂以降に製作された機器では被害報告が減少している。
提言 8:災害時に必要な機能が停止する要因を知ろう
近年の建物は、さまざまなシステムが複雑に絡み合い機能しているため、災害発生時には思わぬ
要因により機能継続停止となる可能性がある。機能停止しないための事前対策として、平時より
シミュレーションを行い、関係要因の洗い出しをしておくことが必要。
提言 9:インフラ設備の耐震対策を実施しよう
大震災発生後は、公共水道・商用電源・都市ガスなどの供給は停止する可能性があり、特に災害
が広域であれば、外部からの支援にも時間がかかる。施設の機能維持を図るためには、基盤シス
テムの耐震化を実施しておくことが必要。省エネ対策・設備機器は災害時にも有効である。
提言 10:施設職員の災害対策を進めよう
東日本大震災では、職員の食料不足が課題として多く指摘された。食糧備蓄に限らず、とかく利
用者のことのみを想定した対策になりがちだが、職員の衣食住の確保も忘れてはならない。泊ま
り込みになる際の宿泊場所、家族や職員間の通信手段は、事前に複数の情報手段を確保しておく
ことが重要。
※一般社団法人日本医療福祉建築協会が提案する「病院の震災対策」より、老健施設向けにして抜粋
老健 2015.8 ● 17
16-17
2015/07/15
17:12:34