2015年9月7日付「準備書面(10)」(PDFファイル)

平成26年(行ウ)第2号
原告
藤森
被告
国
違憲行為差止請求事件
克美
2015年9月7日
静岡地方裁判所
民事2部合議係御中
原告弁護士
藤
森
克
美
準備書面(10)
第1
安倍政権の数々の違憲行為の推移
1.2013年5月
憲法96条改憲の明言と撤回
(1)2013年5月、発足間もない第2次安倍政権は、憲法96条改憲を
明言した。「9条改憲が本丸だが、本丸攻めは難しい」「それなら、まずは
外堀を埋めてしまえ」「96条の改憲手続きを変えて、明文改憲のハードル
を下げるところから手を付けよう」という構想であった。
安倍内閣は、野党の一部を捲き込んでの96条先行改憲に自信満々であっ
た。
しかし、世論はこれに反発し「自分に不利だからといってプレーヤーがル
ールを変えてはならない」「汲々たるやり口が姑息この上ない」「正門から
入らずに、裏口から入学しようという如きもの」と批判した。全ゆる世論調
査 の 結 果 が 反 対 多 数 で 、安 倍 政 権 は 9 6 条 先 行 改 憲 の 策 動 を 諦 め て 撤 回 し た 。
(2)しかし安倍政権は諦めず、「明文改憲が無理なら解釈改憲がある」と
して、内閣だけで憲法の条文の解釈を変更して、実質的に96条の手続を省
いた改憲をやってしまえと動き始めた。
解 釈 改 憲 な ら 国 民 の 意 思 を 問 う 手 続 を 経 な く と も い い し 、国 会 で の 議 論 も 、
野党の意見を聞く必要もないという驕慢な論理である。
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2.本件特定秘密保護法の2013年11月26日衆議院、12月6日参議院で
の強行採決
これに関しては訴状で記載のとおりである。
3.2014年7月1日
集団的自衛権行使容認等憲法解釈変更の閣議決定
(1)自・公両党に支えられた安倍政権は、2014年7月1日集団的自衛
権行使等の容認を認める閣議決定に踏み切った。
( 2 )当 然 の こ と な が ら 同 決 定 は 立 憲 主 義 と 恒 久 平 和 主 義 に 反 し 違 憲 で あ る 。
同日付で日弁連会長は「集団的自衛権の行使等を容認する本閣議決定は、立
憲主義と恒久平和主義に反し、違憲である。かかる閣議決定に基づいた自衛
隊等の法改正も許されるものではない」と批判した。
(3)7月1日の閣議決定は正式には、「国の存立を全うし、国民を守るた
めの切れ目のない安全保障法制の整備について」というタイトルである。長
文であるだけでなく、本音を隠すための無意味な修飾語が多用されているた
めに読みにくい。読み返す意欲を滅殺させる文書である。修飾語を省き、分
かりやすく要約すれば、以下のとおりとなる。
①.グレーゾーンにおける自衛隊対応の迅速化と武器使用拡大
②.(1)戦闘地域での他国軍支援活動を可能に
(2)駆けつけ警護における武器使用容認
③.集団的自衛権行使容認
いずれも戦争と平和に大きく関わり、立憲主義と恒久平和主義に反するもの
である。
まずは、第1項。グレーゾーン問題。もちろん尖閣を念頭においての議論
である。軍隊ではない武装集団が離島を占拠した場合に自衛隊がどう対応す
べきか。
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閣議決定は、こう言っている。
「離島の周辺地域等において外部から武力攻撃に至らない侵害が発生し、
近傍に警察力が存在しない場合や警察機関が直ちに対応できない場合(武装
集 団 の 所 持 す る 武 器 等 の た め に 対 応 で き な い 場 合 を 含 む 。)の 対 応 に お い て 、
治安出動や海上における警備行動を発令するための関連規定の適用関係につ
いてあらかじめ十分に検討し、関係機関において共通の認識を確立しておく
とともに、手続を経ている間に、不法行為による被害が拡大することがない
よう、状況に応じた早期の下令や手続の迅速化のための方策について具体的
に検討することとする。」
まさしく一触即発事態の具体的想定である。一定の場合の武器使用を認め
るための法整備も明言されている。国内警備の問題として、海上保安庁や警
察の問題に留めようとはせず、敢えて自衛隊の出番を拵えよ うというのだ。
わが国が軍事力で対応すれば、相手国も「自国民の生命の安全を擁護するた
めに」軍事力で応じることとなろう。相互の武力による威嚇のエスカレーシ
ョンは、偶発的な要因によって暴発する危険を伴う。万全な備えをしての威
嚇が日本の国民に安全をもたらすとは限らない。外交の努力を放棄しての武
力の威嚇の危険は明白である。
次に、第2項(1)。これまではできないとされてきた「戦闘地域」での
他国の軍隊への支援活動の容認である。面倒な話しだが、これまでは、「後
方地域」あるいは「非戦闘地域」でなくては支援活動はできないとされてき
た。自衛隊が戦闘に巻き込まれる危険を避けてのことでもあり、理屈の上か
らは「後方支援活動が支援対象の国の武力行使と一体化することになる」か
らでもある。これを「現に戦闘行為を行っている現場」でなければ、「戦闘
地域」においても、「補給、輸送などの我が国の支援活動については、当該
他国の『武力の行使の一体化』するものではないと割り切ろうというのであ
る。そのような考え方に立って、「他国軍隊に対して、必要な支援活動を実
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施できるようにするための法整備を進める」という。自衛隊員に危険を背負
わせることである。
次いで、第2項(2)。「駆けつけ警護における武器使用容認」。
閣議決定のポイントは、「多くの日本人が海外で活躍し、テロなどの緊急
事態に巻き込まれる可能性がある中で、当該領域国の受入れ同意がある場合
には、武器使用を伴う在外邦人の救出についても対応できるようにする必要
がある」とする。
民間NGOや他国のPKO要員の危機を、「自衛隊が駆けつけて武器を使
用して救助できるようにしてあげます」というものだ。しかしながら、救出
されるはずの海外NGOがこぞって反対していることに注目すべきである。
彼らは、「平和の国日本に対する現地の信頼に守られてきた」「謂わば、憲
法9条によって現地の反発から免れてきた」という。自衛隊が出てくる事態
が、最悪であり、最も危険だと言っているのだ。今回の閣議決定に落胆し怒
りを燃やしてもいる。もう、活動を続けられなくなるのではないかという声
さえある。このことを噛みしめてみるべきだろう。
そして最後が、集団的自衛権行使容認である。分かりやすくこう表現せず
に 、回 り く ど く「 憲 法 第 9 条 の 下 で 許 容 さ れ る 自 衛 の 措 置 」な ど と 言 う の は 、
底 意 が 見 え て い る 。個 別 的 自 衛 権 も 、集 団 的 自 衛 権 も 、実 は「 基 本 的 な 論 理 」
において同じなんですよ、とアピールしたいのである。
(4)集団的自衛権とは何か。日本が攻撃されていなくても、どこか他国が
攻撃されたら、そのケンカを買って出る権利である。他国の紛争に割り込ん
で、戦争を仕掛ける権利というしかない。そんなことは、憲法が許していな
い。
憲法9条2項には、「陸海空軍その他の戦力はこれを保持しない」と明記
されている。日本は「戦力」をもつことはできない。1954年にできた自
衛隊は、「戦力」ではない、とされてきた。だから、憲法違反ではないとい
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う論理である。
これまでの政府の解釈は、「憲法は国の自衛権を認めているはずだ。自衛
に徹する実力は『戦力』に当たらず、違憲の問題は生じない」というものだ
った。専守防衛に徹することによって、自衛隊の合憲性を説明してきた。そ
れは、「絶対に、自衛以外の武力の行使はしない」から合憲という論理であ
って、当然に「自衛以外の武力の行使はあり得ない」「他国のために戦うこ
とはできない」とされてきたのである。
これを180度変えて、集団的自衛権の行使容認となれば、日本を攻撃す
る意図のない国に対して、こちら側から先に武力を行使することがありうる
ことになってしまう。安倍首相は、記者会見で「外地から帰国す る日本人が
乗せてもらっている米軍の艦艇が攻撃を受けた場合に、日本が一緒に応戦し
なくてよいのか」と述べた。これは驚くべき発言である。
「米軍の艦艇が攻撃を受けた場合に、日本が一緒に応戦したら」一体どう
なるのか。日本は戦争に中立国としての地位を失って戦争当事国となること
は必定である。米国の艦艇に武力を行使した側の軍と戦争状態となるわけで
あるから、日本の全土が攻撃されるおそれを覚悟しなければならない。全国
54基の原発も標的とされることを覚悟で集団的自衛権の行使に踏み切るの
であろうか。これまでは、殺し殺される自衛隊ではなかった。これからは殺
し 、殺 さ れ る 自 衛 隊 と な る 。本 当 に そ れ で よ い の か 、国 民 に 信 を 問 わ ず し て 、
そんなことをやって良いのか。
憲法とは、本来が権力者にとって邪魔な存在である。権力者を縛る存在で
あ り 、為 政 者 は こ れ に 縛 ら れ な け れ ば な ら な い 。権 力 者 に よ る 人 治 で は な く 、
法の支配、立憲主義の由来である。ところが、その縛りを不都合として取っ
払ってしまえというのが、解釈改憲なのである。憲法をないがしろにするに
もほどがある。立憲主義の否定であり、法の支配の否定でもある。
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4.2015年5月15日
安倍政権は戦争法案を国会に提出
(1)5月15日政府が国会に提出した新法「国際平和支援法案」と、下記
10法の一括改正を内容とする「平和安全法制整備法案」について、原告は
「戦争法案」と呼ぶ。
①武力攻撃事態法改正案
②重要影響事態法案(周辺事態法を改正)
③PKO協力法改正案
④自衛隊法改正案
⑤船舶検査法改正案
⑥米軍等行動円滑化法案
⑦海上輸送規正法改正案
⑧捕虜取り扱い法改正案
⑨特定公共施設利用法改正案
⑩国家安全保障会議(NSC)設置法改正案
(2)「国際平和」や「平和安全」はまやかしであって、「戦争法案」とい
う呼び名こそがこの法案の本質を表している。そう考える理由を以下に述べ
る。
憲法9条は1954年自衛隊創設によって「半殺し」の目に遭った。「陸
海空軍その他の戦力はこれを保持しない」はずの日本が、常識的には治安警
察力を遙かに超える軍事力をもったのだ。違憲の状態が生じたことは誰の目
にも明らかだった。しかし、このとき憲法9条は死ななかった。しぶとく生
き延びた。
このときから、自衛隊は、「国に固有の自衛権を行使する実力部隊であっ
て 、憲 法 に い う 戦 力 に は 当 た ら な い 」と さ れ て 来 た 。自 衛 隊 の 発 足 と 同 時 に 、
参議院では全会一致で、「自衛隊の海外出動を為さざることに関する決議」
が成立してもいる。自衛隊の任務は、専守防衛に徹することとされ、その限
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度を超えた装備も編成ももたないことが確認されたのである。
このとき、非武装に徹することによって平和を維持しようとした憲法9条
の理念は大きく傷ついたが、「専守防衛」というかたちでは生き残ったと評
価することができよう。
その後、「自衛隊を一人前の軍隊にせよ」「そのためには9条改憲を」と
いう圧力は強かった。この「押しつけ改憲」と闘い、せめぎ合って、日本の
国民世論は9条を守ってきた。そのため、自衛隊が防衛出動に踏み出せるの
は、国土が侵略を受け蹂躙されたときに限られた。だから、自衛隊は、外征
や侵略に必要な武器の装備はもてなかった。外国に派遣されたことはあって
も、海外での戦闘行為はできなかった。満身創痍の憲法を活用し、9条の旗
を押し立てた国民運動とそれを支えた国民世論の成果であったと言うことが
できる。
歴代の保守政権も9条をないがしろにはして来なかった。
今 ま で は 、自 衛 隊 が 武 力 を 行 使 す る 局 面 は 、「 我 が 国 土 に お け る 防 衛 行 為 」
としてのものに限られていた。飽くまでも、必要な限りでの自衛・防衛行為
で あ れ ば 、こ れ を 戦 争 と は い わ な い 。し か し 、集 団 的 自 衛 権 の 行 使 と な れ ば 、
まったく話しは違ってくる。他国の戦争の一方当事者に加担して、自らも戦
争当事国となるべく買って出て、武力を行使することになる。これは明らか
な戦争加担行為に外ならない。
「戦争をしないから9条違反の存在ではない」とされてきた自衛隊に、戦争
をさせようという法案だから「戦争法案」。この呼び方が、体を表す名とし
てふさわしいのである。かくて、戦争法が成立すれば、これまでしぶとく生
き残ってきた「半殺し」状態の9条に、トドメが刺されることになる。
安 倍 内 閣 は 5 月 1 4 日 閣 議 決 定 、1 5 日 国 会 に 法 案 を 提 出 。5 月 1 9 日 は 、
衆議院本会議で戦争法案審議のための特別委員会設置が可決された。
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5.2015年7月16日
戦争法案が衆議院で強行採決される
2015年7月16日、戦争法案が衆議院本会議において与党のみによる
賛成多数で強行採決され、参議院に送付された
全国の憲法学者・研究者の9割以上が憲法違反と断じ、日弁連をはじめ全
国の弁護士会も憲法違反を理由に法案の撤回・廃案を求めている。 歴代内閣
法制長官も戦争法案の違憲性を表明している。元最高裁判事の那須氏、浜田
氏( い ず れ も 弁 護 士 出 身 )は 戦 争 法 案 の 違 憲 性 を 表 明 し 、那 須 氏 に お い て は 、
廃案を求める集会でスピーカーとして反対発言をしている。 法律専門家のみ
ならず、各マスコミの世論調査によれば、国民の約6割が反対を表明してい
るし、約8割が「説明不足」だとしている。
このように、法律専門家の大多数が憲法違反と主張し、国民の多くからも
強い反対や懸念の表明があるにもかかわらず、『安全保障関連法案』を政府
及び与党が衆議院本会議における強行採決で通したことは、国民主権を無視
し立憲主義及び憲法9条をないがしろにする暴挙と言わざるを得ない。
安倍総理自身が、「十分な時間をかけて審議を行った」と言いながら「国
民の理解が進んでいる状況ではない」と認めており、そうであるならば主権
者たる国民の意思に従い本法案を撤回すべきである。国民の理解が進んでい
ないのではなく、国民の多くは、国会の審議を通じ、本法案の違憲性と危険
性を十分に理解したからこそ反対しているのである。
参議院の審議においては、このような多くの国民の意思を尊重し、慎重か
つ丁寧な審議がなされるべきであり、政府及び与党による強行採決や60日
ルールによる衆議院における再議決など断じて許されてはならない。
第2
1.
戦争法案を巡る国会論議と特定秘密保護法適用の危惧
2015年8月11日、参議院特別委員会で共産党の小池晃議員は、自衛隊が法
案の成立を前提に武器使用基準の見直しや日米間の具体的な調整内容をまとめた資
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料を独自に入手したとして自衛隊の独走だと追及した。中谷元・防衛相は同名の内
部文書の存在を認め、「国会の審議中に内容を先取りするようなことは控えなけれ
ばならない」と釈明した。
小池議員によると、資料は陸海空の各自衛隊を束ねる統合幕僚監部が作成し、四月
に再改定した日米防衛協力のための指針(ガイドライン)と安保法案に沿って検討
項目を列挙。南シナ海の警戒監視への「関与のあり方を検討していく」と明記し、
南スーダンに派遣している国連平和維持活動(PKO)に関しても「駆け付け警護
が業務に追加される可能性がある」と見通しを示している。五月に作成されたとみ
られ、法案の成立時期も「八月」と明記されていたとする。
小池議員は「戦前の軍部の独走(と同じ)だ。絶対に許されず、議論できない」と
批判した。他の野党も同調し、委員会は紛糾。予定した審議時間を一時間半以上残
して散会した。
2.
この資料から読み取れる大きな問題点が二つある。
一つは、小池議員が指摘したとおりの「軍部独走」である。防衛大臣の知らない
ところで、統合幕僚監部は、当然に法案が成立することを前提とした作戦計画を立
てているのだ。シビリアンコントロールができていないと批判されて当然な事態 で
ある。
もう一つは、新ガイドラインの政府・自衛隊に対する絶対的権威性である。政府・
防衛省・自衛隊にとって、ガイドラインは憲法に優位する規範となっているという
実態があぶり出されている。
資料を引用した小池質問の中に次の文言がある。
「この説明文章の中にこうあります。ガイドラインの記載内容については、既存の
現行法制で実施可能なものと平和安全法制関連法案の成立を待つ必要があるものが
あり、ガイドラインの中ではこれらが区別されることなく記載されていると。これ、
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本当に率直に書かれているんですね。大臣、法案が成立しなければ実施できない内
容を、国会で議論もしないうちに日米合意し、発表したことになる、そういうこと
ですね。」
これは的確にガイドラインの性格を言い表している。まずはガイドラインありき
なのである。現行法でガイドラインに盛り込まれた自衛隊の任務ができなければ、
できるように法律を作るのだ。違憲だという批判をものともせずに、である。小池
議員自身が言っているとおり、「独立と主権をないがしろにする異常な対米従属の
姿勢」に外ならない。
3.
ここで危惧されるのは、小池議員に資料を提供したのは誰かと犯人捜しを
防衛省では躍起になっている筈である。提供された資料は特定秘密に指定さ
れていることは間違いないと考える。すると提供した人物も、小池議員も特
定秘密保護法23条によって処罰される危惧がある。
戦争法案反対運動の高まりの中で、自衛隊内にいる情報提供者や小池議員
に対し捜査当局が動き出せば、更に反対運動に火を注ぐことにな るので様子
を窺っているのであろう。
国会議員として安倍政権の数々の憲法違反の所業を批判するのは正当な、
当たり前の活動であり、その活動を封じ制限する特定秘密保護法の違憲性は
明白である。
断じて情報提供者や小池議員を特定秘密保護法で処断する時代の到来を許
してはならない。
第3
1.
山口繁元最高裁長官の安保法案は違憲発言
2015年9月3日山口繁元最高裁長官(1997年10月~2002年
11月在任)は、朝日新聞と共同通信のインタビューに応じて、「集団的自
衛 権 行 使 は 違 憲 」、「 砂 川 判 決 は 集 団 的 自 衛 権 行 使 を 容 認 し た も の で は な い 」
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ことを明言した。
安倍政権の言い分を、「論理的な矛盾があり、ナンセンスだ」「何を言っ
ているか理解できない」とまで言って厳しく批判している。
第4
1.
まとめ
本件特定秘密保護法制定の流れは、第1項の時系列で明かなとおり、憲法
解釈変更の閣議決定(2013.7.1)の後に国会に上程されたものであ
り、日本を戦争をする国にがむしゃらに移行させるために、国民の目・耳・
口を塞ぐ手段として立法化したものであったことは、一連の策動から明々
白々である。
2.
安倍内閣のやり口は、解釈改憲という乱暴極まるファッショ的なものであ
った。次にとった戦争法の立法によって改憲状態を作り出すという手法は、
ナチスの全権委任法制定によってワイマール憲法の効力を停止せしめる手法
を真似た、これまた違憲無効なものである。
3.
安倍内閣は僅か17%の国民の投票によって衆議院の議席の7割を獲得す
るといった日本の議会政治の矛盾をそのまま体現した内閣である。それを奇
貨として日本社会を変えようとしているが、それは戦後70年を支えて来た
「戦後民主主義体制」を解体せしめようとの意図を含んだ変革である。
4.
安倍晋三がいう戦後レジウムからの脱却が戦前の日本のように海外侵略や
植民地支配を追求するものではなく、米国の従属国として戦争のできる国に
変革させようとしているものであるとしても、特定秘密保護法の制定によっ
て、官僚組織(特に警察、検察、防衛省等)に国民支配の最大武器を賦与さ
れたことによって、戦前の官僚組織のように、官僚と安倍ら国家主義的な政
治家が国民弾圧の道具として有効に国民支配を続けていくは明らかである。
5.
言論の自由のない社会、思想の自由のない社会、集会結社のない社会に未
来がないことは歴史の教えるところである。
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自由な社会、基本的人権が享受できる社会を裏方で支えるのが弁護士の職
務であり、弁護士の職責は憲法上も弁護士法上も保障されているところであ
る。
弁護権を侵害する特定秘密保護法及び同法の存立と一体不離の関係にある
戦争法案は日本国憲法の下では絶対許容することはできない。
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