資料8 ◇ 紛争解決事例 1 労働局長による紛争解決の援助 [婚姻したことを理由とする解雇] 結婚後、いつ妊娠して産休を取得するかを懸念して、退職の書面に押印させられ解 雇と同様の状況になっている。継続就業を求める申立て。 女性労働者からの申立内容 結婚したところ、いつ妊娠して産休を取得するかわからないからとして、何度も説得 され、本人の意向を無視して退職届である認識がないまま書面に押印させられた。解雇 と同様の状況である。 いずれは産休・育児休業を取得する希望があり、継続就業を求めたい。 事業主からの聴取内容 次年度の仕事に積極的に取り組んでもらうため、例年全従業員に次年度継続の意思確 認を行っている。労働者にもっと大きな職務を負ってほしいと考えていること、業務内 容から年度途中で退職することは困ることを伝えたが、退職を強要したことも解雇でも なく、本人の意思によるものと思っている。 労働者から退職届が提出されたことを踏まえ、すでに来年度の体制が決定しているた め、労働者の要望に応じられない。 労働局長による援助 労働者と事業主との関係から、退職届を提出せざるを得なかったとして申立てがあっ たことを踏まえ、人員不足が生じた場合に優先的に労働者が雇用されるよう対応を求め た。 結果 労働者は、人員不足が生じた場合は優先的に雇用されることになったが、人員不足は 生じなかった。 なお、労働者は、今後退職日まで熱意を持って業務に当たりたいと意志を示した。 [参考] 男女雇用機会均等法 (婚姻を理由とする解雇の禁止) 第 9 条第2項 事業主は、女性労働者が婚姻したことを理由として、解雇してはならない。 ※ 事案の特定を避けるため、事案に修正を加えて掲載しています。 1 [育児のための時間外労働の制限] 育児のための時間外労働の制限を申し出ているが、制限を超えて時間外労働を行っ ている。申出どおりの時間外労働の制限を求める申立て。 男性労働者からの申立内容 双子の育児のため、時間外労働を 1 月 24 時間以内、1 年 150 時間以内に制限するよう 申し出ているが、実際は制限を超えて時間外労働を行っている。 残業を減らしてほしい。保育所の後の育児サービスを手配する時間を持ちたいため、 せめて突発的に残業を命令しないよう配慮してほしい。 事業主からの聴取内容 労働者の時間外労働を減らすために、業務を外注したり派遣労働者に代替させる等の 対応を行っているものの、納期及び業務上の必要性から、夜間・休日における時間外労 働と突発的な時間外労働は避けられない。 労働者の業務については、制限を超えて時間外労働を行わせなければ事業の正常な運 営が妨げられるため、当該者からの申出は拒否せざるを得ない。 労働局長による援助 労働者の時間外労働を申出どおり 1 月 24 時間、1 年 150 時間とするよう可能な限り努 力するよう求めた。 結果 従来は現場任せで時間外労働を行わせていたが、上司の指示の下行わせることにした。 その結果、労働者の残業時間が減少した。 [参考] 育児・介護休業法 (時間外労働の制限) 第 17 条 事業主は、労働基準法第 36 条第 1 項本文の規定により同項に規定する労働時間(以下この 条において単に「労働時間」という。)を延長することができる場合において、小学校就学の始期 に達するまでの子を養育する労働者であって次の各号のいずれにも該当しないものが当該子を養育 するために請求したときは、制限時間(1 月について 24 時間、1 年について 150 時間をいう。略) を超えて労働時間を延長してはならない。ただし、事業の正常な運営を妨げる場合は、この限りで ない。 一 当該事業主に引き続き雇用された期間が 1 年に満たない労働者 二 前号に掲げるもののほか、当該請求をできないこととすることについて合理的な理由があると認め られる労働者として厚生労働省令で定めるもの 2 2 調停 [セクシュアルハラスメント] 会社にセクシュアルハラスメントの相談をしたが対応してもらえず、退職せざるを 得なくなったため、会社に慰謝料を求める調停申請。 女性労働者からの申請内容・主張 上司から「おばさん」、「結婚できない」等のセクシュアルハラスメント発言をされ、 会社に相談したが十分に対応してもらえず、体調を崩し退職せざるを得なくなった。会 社の対応に納得がいかないため、慰謝料を求めたい。 事業主からの聴取内容 セクシュアルハラスメント防止対策として従業員への周知啓発や相談窓口の設置等を していなかった。当事者と他の従業員に事情聴取を行い、申請内容どおりの発言があっ たことを確認した。会社としての対応が不足していたことから、金銭解決の対応を行う。 調停会議での対応 調停委員が女性労働者及び事業主から事情や意見を聴き検討した結果、男女雇用機会 均等法に定めるセクシュアルハラスメント対策として雇用管理上必要な措置が十分でな かったことから、事業主から女性労働者に対し、解決金を支払うこと等を内容とする調 停案の受諾を勧告した。 結果 当事者双方が受諾し、解決した。 [参考] 男女雇用機会均等法 (職場における性的な言動に起因する問題に関する雇用管理上の措置) 第11条 事業主は、職場において行われる性的な言動に対するその雇用する労働者の対応により当該労 働者がその労働条件につき不利益を受け、又は当該性的な言動により当該労働者の就業環境が害さ れることのないよう、当該労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その 他雇用管理上必要な措置を講じなければならない。 3 3 相談 [期間雇用者の育児休業] 育児休業等の取得を申し出たところ、前例がないため取得できないと拒否された。 相談概要 3か月契約、16 回更新の期間雇用者。直属の責任者に産前・産後休業、育児休業の取 得を申し出たところ、前例がないため取得できない、出産後落ち着いた時期に会社が求 人募集を行っていたら応募すればよいと拒否された。仕事を続けても退職しても条件は 変わらないのか。会社に拒否されたら退職するしかないのか。 雇用均等室の対応 期間雇用者であっても、産前・産後休業を取得できること、また、勤続1年以上等の 一定の要件を満たせば、育児休業を取得できることを説明。 社会保険・雇用保険などから一定の経済的支援があることを情報提供。 また、産休・育児休業の取得の申出を理由に契約を更新しないことは、それぞれ男女 雇用機会均等法、育児・介護休業法違反である。妊娠前は問題なく契約が更新されてき たのに、契約が更新されなくなった場合、会社にその理由を確認するようアドバイス。 結果 相談者が雇用均等室への相談を踏まえ会社の人事担当責任者に再度取得を申し出たと ころ、育児休業等を取得できることとなった。 [参考] 育児・介護休業法 (育児休業の申出) 第 5 条 労働者は、その養育する 1 歳に満たない子について、その事業主に申し出ることにより、育 児休業をすることができる。ただし、期間を定めて雇用される者については、次の各号のいずれにも 該当するものに限り、当該申出をすることができる。 一 当該事業主に引き続き雇用された期間が 1 年以上である者 二 その養育する子が 1 歳に達する日(以下「1 歳到達日」という。)を超えて引き続き雇用されるこ とが見込まれる者(当該子の 1 歳到達日から 1 年を経過する日までの間に、その労働契約の期間が満 了し、かつ、当該労働契約の更新がないことが明らかである者を除く。) (育児休業申出があった場合における事業主の義務等) 第 6 条第 1 項 事業主は、労働者からの育児休業申出があったときは、当該育児休業申出を拒むこと はできない。ただし、当該事業主と当該労働者が雇用される事業所の労働者の過半数で組織する労 働組合があるときはその労働組合、その事業所の労働者の過半数で組織する労働組合がないときは その労働者の過半数を代表する者との書面による協定で、次に掲げる労働者のうち育児休業をする ことができないものとして定められた労働者に該当する労働者からの育児休業申出があった場合に は、この限りでない。 一 当該事業主に引き続き雇用された期間が一年に満たない労働者 二 前号に掲げるもののほか、育児休業をすることができないこととすることについて合理的な理 由があると認められる労働者として厚生労働省令で定めるもの 4
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