旧浦知小学校再利用計画 [PDFファイル/307KB]

旧浦知小学校再生利用計画について
浦知地区活性化協議会
平成26年12月
目 次
1 再生利用基本構想について
2 地域の現状と課題について(針木・浦知・塩定・柿之浦)
3 再生利用計画について
4 運営方針について
5 終わりに
1
1基本構想
地域の課題を解決するために、また、協働のまちづくりと新しい公共空間の形成を進
めるにあたって、我々市民と行政が協働の考え方や進め方等についての目標を掲げ、
行政の支援をうけながら当計画を実行するため、ここに基本的な方針を定めるもので
す。
現在、我が国においては、基幹産業である第一次産業の低迷という内的要因と、国の
三位一体改革や世界的な不況の影響など外的要因が重なり、地域の経済情勢や雇用にお
いても非常に厳しい状況が続いています。更に、少子高齢化、若年者を中心とした人口
流出が進み、地域を取り巻く情勢は、これまでにない速度で大きく変化しています。こ
の状況は市の周辺部、所謂、過疎地域において顕著な傾向がみられ、我々も対応に苦慮
しているところであります。
特に、地場産業の低迷等を起因とする若年層を中心とした人ロの流出によって、地域
社会の構成員が大幅に減少したことは、地域の求心力の低下を招き、地域社会の支え合
う関係の脆弱化か進行することとなりました。
このような状況を打破するためには、地域に残った我々と行政が協働しながら、現状
に即した地域コミュニティの再構築を行い、地域が本来持っていた活力を取り戻す必要
があります。 今回の小学校廃校という出来事は、我々にとって辛い経験でありました
が、浦知小学校の再生を足掛かりに、地についたコミュニテイ活動や社会貢献活動を積
極的に推進することで、新たなパワーを地域に取り戻すとともに、更なる発展への道を
切り拓いていきたいと考えています。
地域の更なる発展
新たなパワーを取り戻す
地域コミュニティの再構築
2
2地域の現状と課題(針木・浦知・塩定・柿之浦)
津島町でも当該地域(針木・浦知・塩定・柿之浦)を含む下灘地区では、古くから半農
半漁により生活を維持してきましたが、近年は、昭和30年代に導入された真珠母貝養
殖・真珠養殖業を中心として発展してまいりました。
中途において、昭和41年頃から始まった生産過剰による真珠の輸出不振や続いて起
こった大暴落は、真珠・母貝養殖業者を直撃しましたが、家族経営であったことや養殖
期間の短縮等で克服することができました。
その後バブルも相侯って真珠産業は以前にも増して堅調な伸びをみせましたが、平成
6年頃から、猛暑と海況異常に加え感染症という要因が加わり、真珠産業は過去に前例
がないほどの深刻な危機に直面しました。このことは真珠母貝の大量へい死による珠の
品質の低下と市場の低迷を招き、真珠養殖業者の経営が危機的状況に陥り、生産基盤
そのものが根底から揺らぐこととなりました。
ついには平成16年、下灘漁協は財務悪化により再建計画を策定し、現在も経営の立
て直しを図っていますが、組合員数は激減するなど順調に回復しているとは言い難い
状況です。これら真珠産業の斜陽化等に起因した経済不況、さらにはリーマンショック
以降の構造不況により地域は疲弊し減退の一途をたどっています。
加えて、近年の少子化傾向も地域の衰退に拍車をかけ、当該地区の人口は、市の平
均をはるかに上回り激減している状況です。
平成17年、新市合併当時、当該地区(針木・浦知・塩定・柿之浦)の人口は496人でした
が、平成26年では397人となり、この9年間で99人の減、19.96%もの減少率となっていま
す。これは、宇和島市全体の減少率11.20%の約2倍であり、加速度的に人口が減少し
ているといえます。
〔市HPより〕 〔単位:人・%〕
宇和島市
伸率
針木
浦知
塩定
柿之浦
合計
伸率
H17
92,485
-
116
133
78
169
496
-
H18
91,538
△1.02
115
127
75
163
480
△3.23
H19
90,318
△1.33
110
126
74
155
465
△3.13
H20
89,006
△1.45
112
115
78
156
461
△0.86
H21
87,841
△1.31
114
112
75
144
445
△3.47
H22
86,736
△1.26
112
109
76
139
436
△2.02
H23
85,614
△1.29
106
108
76
137
427
△2.06
H24
84,349
△1.48
104
106
73
135
418
△2.11
H25
83,481
△1.03
103
102
67
132
404
△3.35
H26
82,123
△1.63
109
101
63
124
397
△1.73
特に児童・生徒の減少率が著しく、このため平成24年3月には、永い歴史を誇る浦知小
学校が閉校となりました。行政と地元の協議の結果ではありますが、我々は大きな代償
を払い、大きな精神的支柱を失ったのであります。
3
振り返るに、当地域の教育は、明治7年6月、浦知第2番地にある家屋を校舎
とした「開明小学校」が設立されたことにより近代化が進んでいきました。
明治16年には開明小学校を本校とし、柿之浦、平井、須下、竹ケ島、曽根、田
颪、鼠鳴、嵐の8校を分校とする広範囲な教育エリアを形成するに至りました。
記録によると、本校の児童数が(男)23人・(女)22人、曽根分校においては、
(男)34人・(女)O人、柿ノ浦分校(男)24人・(女)4人、鼠鳴分校(男)23人・(女)O
人、田颪分校(男)15人・(女)9人、嵐分校(男)7人・(女)4人とあります。
それらの中心となったのが、前述のとおり我が開明小学校であります。
地域経済状況の変化は、住民の就業構造の変化のみならず、ライフスタイルま
で変えてしまいました。今回の小学校廃校問題は、地域にとって大きな心の拠り
所を失うことでしたが、時代の要請とはいえ行政や我々にとって苦渋の決断であ
りました。
しかしながら、地域の核を失われたまま放置するということは、コミュニティの崩壊に繋
がり、地域が物と心の両面からますます疲弊してくこととなります。
今、我々に与えられた課題は、地域住民の力を結集して、旧浦知小学校を違う形で再
構築し、地域に活力を甦らせることであります。座して待つことは出来ない、傍観者では
いられないとの強い思いから我々「浦知地区活性化協議会」は旧浦知小学校の再生利
用計画の検討を行うものであります。
200
150
100
針木
浦知
塩定
柿之浦
50
H17
H18
H19
H20
H21
H22
H23
H24
H25
H26
0
柿之浦
塩定
浦知
針木
4
3 再生利用計画について
基本構想に基づき、目標を達成するため次のとおり基本計画を定めるものです。
学校施設再利用の概念は、旧校舎等を地域住民の総合的な福祉活動に利用すること
で、高齢者から子どもまで全ての住民が安心して暮らすことができ、更には多世代交流
を通じて、年をとっても生き生きとした生活ができる地域づくりを行うことです。
地域貢献事業
(1) 子どもたちのために
◎子育て支援事業(放課後保育事業)
核家族化や地域のつながりの希薄化に起因し、小学生の放課後保育事業へのニー
ズが高まっています、これに応えるため放課後や長期休暇中に小学生を預かる保育施
設を開設するものです。また、将来的には子どもの成長に合わせた保育環境を整備す
ることや、仕事で遅くなっても安心して預けられる保育時間を提供することなど、利便性
に配慮した施設を展開し、保育園から小学校まで、シームレスな子育て支援のあり方を
提案したいと考えています。
□対象者:旧浦知小学校校区に在住する児童1年生∼6年生及び中学生
□開所時間
(平日)放課後∼午後7時まで
(長期休業中)午前10時∼午後7時まで
□経費:月単位で若干の有償の方向で検討中
◎地域文化伝承教室開催事業
地域の豊かな自然や言葉、地域に根ざした文化等は、それ自体が独自の価値を持つ
だけでなく、住民の地域への誇りや愛着を深め、住民共通のよりどころとなり、地域社会
の連帯感を強めることにも繋がります。
しかしながら、近年では住宅事情の変化や地場産業の衰退、人口の都市化等の物理
的事情により、子ども世代が、長寿化してきた親夫婦と同居が困難になっている現状が
あり、このことが文化の伝達に大きな障害となっています。
以上のことから地域のお年寄りの潜在能力を活用し、指導を受けながら地域の歴史、
風土等に培われた特色ある伝統的な文化を継承・発展させるため、「地域文化伝承教
室」を開催するものです。
□対象者:津島町内の幼児・低学年児童
□経費:基本的には無料で検討中
5
(2) 高齢者のために
◎予防デイサービスセンター設置
高齢者一人ひとりの生きがいや生活の質の向上を援助するため、予防デイサービスセ
ンターを開設します。
対象者は地域の概ね70歳以上の自立している高齢者とし、機能向上のためのレクリ
エーション等を通じてスムーズな介護保険制度への移行の一助とするものです。
□経費:検討中
◎閉じこもり予防事業の実施
出不精になりがちなお年寄りの閉じこもりを解消するため、「閉じこもり予防事業」を開
催します。対象者は地域の概ね65歳以上の自立している高齢者とし、レクリエーション
等により発散し交流することで、閉じこもり予防の一助とするものです。
□経費:検討中
収益的事業
(1) 通所介護(デイサービス)
通所介護は、利用者が可能な限り自宅で自立した日常生活を送ることができるよう、自
宅にこもりきりの利用者の孤立感の解消や心身機能の維持回復だけでなく、家族の介
護の負担軽減などを目的として実施します。
利用者が通所介護の施設(デイサービスセンターなど)に通い、施設では、食事や入浴
などの日常生活上の支援や、生活機能向上のための機能訓練や口腔機能向上サービ
スなどを日帰りで提供します。生活機能向上グループ活動などの高齢者同士の交流も
あり、施設は利用者の自宅から施設までの送迎も行います。
□利用定員:検討中
□利用時間:9時∼16時
(2) 老人ホーム
低額な料金で、家庭環境および住宅事情などの理由により居宅で生活することが困難
な60歳以上の方に、日常生活上必要なサービスを提供する施設です。
□利用定員:検討中
□利用時間:
6
(3)給食配食・見守りサービス事業
地域内の独居などの見守りが必要な要援護高齢者等に対する食事(昼食)の提供や
配達時の声かけで安否確認を行う見守りサービスを活動の中心とし、その他真珠養殖
関連事業繁忙期の給食など、需要の掘り起こしに努め配食サービスを実施するもので
す。また、実施にあたっては、職員の雇用や食材の仕入れを地元中心で行う地域内還
流システムを目指します。
4 運営方針について
すでに、基本構想で述べましたように、この「旧浦知小学校再生利用計画」の基本的
な考え方は、学校の再生を足掛かりに、地についたコミュニテイ活動や社会貢献活動を
積極的に推進することで、新たなパワーを地域に取り戻すとともに、更なる発展への道
を切り拓いていくということであります。
これを実現するために、「開明HUEK」を中心とした下図のような組織イメージにより順
次可能な事業から実施していきます。
浦知地区活性化協議会
地域貢献事業
子育て支援
地域文化
伝承教室
予防デイ
閉じこもり
収益的事業
通所介護
デイサービ
軽費老人
ホーム
給食配食
見守りサービ
支援
募集による運営事業者
(1) 運営方法
地域貢献活動事業については、地域住民やボランティアの協力を得ながら、また、収
益的事業については、一定の公共性を担保するため、開業当初は募集による運営事業
者の参入を予定しています。また、今後、協働者として参入する団体の選定についても
浦知地区活性化協議会が最終的な決定権を有します。
運営に当だっては、地域の意向を十分反映できるよう努めます。
(2) 運営費用
予防デイサービスセンター、閉じこもり予防レク、及び地域文化伝承教室については利
用料が無料のため、基本的には収益的事業を展開している募集による運営事業者の
収益の一部を充てることで運営費用を捻出するものです。
また、無償または有償ボランティアの活用や企業の支援、あるいは国・県及び市等の
補助についても積極的に取り入れたいと考えています。
7
5 終わりに
当該構想の実現は、収益的事業及び地域貢献事業を通じ、我々の地域において雇
用の拡大を生み、地場産品の使用などから地域経済に貢献できるものと確信していま
す。言い換えると、地域に密着し、地域の中で人と物とお金が循環する「地域内還流シ
ステム」作りといえます。
しかしながら、実施にあたっての最大の問題点は、資金とノウハウにあります。我々は
構想の実現にあたりその問題を解消するため、パートナーとして協議会の基本構想を
理解して頂ける事業者を広く募集していく予定であります。将来的には我々独自でも収
益事業の運営について検討を重ねているところですが、実現に向け努力し我々本来の
目的である地域貢献活動に邁進したいと考えています。
いずれにしても、我々の思いと力だけではこの計画の実現は到底不可能であり、地域
住民の方々の深いご理解とお力添えが不可欠であることは言うまでもありません。新た
なパワーを地域に取り戻し、更なる発展への道を切り拓くことで、現在の住民だけではな
く、次の世代に何か残せるか、皆様と一緒に歩んで行きたいと考えています。
8