修学院離宮の美学 活動レポート

造園 CPD 認定プログラム 2.0 単位(認定番号:14-0376)
JLAU 庭園文化セミナー Vol.04
修学院離宮の美学
活動レポート
日時:2015 年 3 月 6 日(金)13:30 ∼ 16:00
場所:修学院離宮(京都市左京区)
講師:吉田昌弘氏(㈱空間創研取締役会長、JLAU 理事)
主催:(一社)ランドスケープアーキテクト連盟(JLAU)
共催:(一社)ランドスケープコンサルタンツ協会関西支部(CLA 関西)
企画:吉田昌弘、片木孝子、坪倉淳、山田匡、吉武宗平
参加者:20 名(講師、スタッフ含む)
日本を代表する名園見学を通じて、わが国固有の庭園文化や技術に触れる連続セミナー。第 4 回目は、
他に類を見ない雄大さが魅力の修学院離宮を訪れました。穏やかな天候にも恵まれて、ゆっくりと庭園を巡
りながらその魅力に触れる見学会となりました。今回は関西圏のみならず関東、名古屋、四国からも参加者
があり、見学会後の懇親会も合わせて有意義な研鑽・交流の機会となりました。
■ 講座:修学院離宮
はじめに、吉田昌弘講師から回遊式庭園および修学院離宮について解説を頂きました。◎回遊式庭園とは、
上代からの池庭とは異なり、園路(又は水上路)を巡ることによって庭園の鑑賞と利用が全うされるものを
言い、修学院離宮庭園は、桂離宮庭園、渉成園庭園に続いてわが国 3 番目の回遊式庭園であること、◎回
遊式庭園では池を巡ることによって近景と遠景が逆転するため、それぞれの場所は近景としての細やかな意
匠と遠景としての大きな景観とを両立させる必要があり、それゆえ作庭には高度な技術が必要となること、
◎周辺の風景と連続する雄大な修学院離宮庭園は、イギリス風景式庭園に先んじて造られたわが国随一の風
景式庭園であること、◎後水尾天皇の生きた時代の文化や土地の風土との連続性の中で庭園を捉える事が重
要であること、等のお話がありました。
▲講座の様子:参観者休所にて .
▲吉田講師による講座資料(一部).
■ 下離宮
御幸門をくぐり寿月観へと緩やかに登っていく苑路に沿って、穏やかな水の流れと苔の庭が広がっていま
す。庭の南側には田園が広がっており、現在は生垣で区切られていますが、造営当時は遮るものもなく田園
と連続するおおらかな風景が展開していたとのこと。築山式の庭とは異なる、野の風景を思わせる庭の様式
は、後年の植治の作庭にも影響を与えたであろう、と吉田講師は仰います。宮内庁の記録にも植治が修学院
離宮の庭園管理者として入っていた時期があるそうです。
▲下離宮:寿月観にて .
▲下離宮の穏やかな庭.生垣の背後に田畑の風景が広がる .
■ 御馬車道と赤松林の再生
下離宮を東門から出ると、中離宮・上離宮へ続く御馬車道(松並木)があり、その周辺には田園、背後に
は山の風景が広がります。松並木は明治になってから植えられたもので、造営当時はかなりオープンな様相
だったそうです。松が植えられたのは、背後の山の緑との連続性を意図したようですが、現状の山は松食虫
被害で松はほとんどなく、植林の杉林とクヌギ・コナラなどの雑木に覆われた風景となっています。近年で
はナラ枯れによる被害も出ていることもあり、現在山に生き残った強い遺伝子を持った赤松を生産して、徐々
にかつての赤松林を再生する試みが進められているとのことでした。
▲御馬車道の松並木と背後の山の景観 .
▲田園の向こうに見える上離宮の大刈込 . かつては農作業小屋等は
ほとんど無く、田園、大刈込とモミジ等の木立、そして背後の樹
林(赤松林)で構成された、おおらかで美しい景観でした.
■ 中離宮
中離宮は後水尾天皇の離宮として計画されたものではなく、皇女の御所として造営されたものが明治に
なって離宮に編入されたとのこと。全体が木立に覆われたひっそりと落ち着いた雰囲気の空間です。客殿へ
と向かう飛び石も同系の石でまとめられて統一感があり、前回訪れた桂離宮の飛石と比べると対照的です。
客殿前の巨大な手水とそれに添えられた八汐躑躅の絶妙なバランスや、土塁に施された垂直面の緑などにも
参加者の関心が集まり、ディテールとしても見どころの多い庭でした。
▲中離宮:客殿(正面)と楽只軒(左)を望む .
▲中離宮:客殿へ向かう飛石 .
▲中離宮:客殿前の手水鉢と八汐躑躅 .
▲中離宮:土塁に施された垂直面の緑 .
■ 上離宮
御成門から入り、刈り込みに挟まれた急な階段を上り切ると、隣雲亭で一挙に視界が開けます。浴龍池越
しに背後の山並みが見渡せる大パノラマ景観が広がり、修学院離宮最大の見せ場となっています。この景観
を維持するために、背後の山の一部も宮内庁管轄地となっています。ただ残念なことに、それより遠方にあ
る山の中に、採石場の削られた山肌とゴミ焼却場の白い煙突が目立って見えてしまっており、参加者の話題
となりました。上離宮ならではの庭園景観維持の難しさが窺えます。
隣雲亭を下り、回遊式庭園の景の移り変わりを体感しながらゆっくりと池を巡って見学会を終えました。
▲上離宮:隣雲亭からの眺め .
▲上離宮:舟着から隣雲亭を顧みる .
▲上離宮:土橋 .
▲上離宮:大刈込近景 .
▲参加者による記念撮影 .
▲懇親会の様子 .
(文・写真:吉武宗平)